東海テレビ×WOWOW共同制作連続ドラマ『ギフテッド』はフジテレビ「土ドラ」枠(土曜23:40~)で2023年8月12日(土)スタート。がんばれ泉里香。
てことで(まったく関係ないが)めっちゃくちゃ満席の新幹線に乗って実家に帰りました。お盆と正月に帰省したとき、わりとよくやる企画が実写版撮影台本の全文採録。でも、手許にある未紹介の台本も少なくなってきたなぁ……と思ってふと気づいたが、Act.2をまだ紹介していないんじゃないか? そうか、Act.2をまだ紹介していなかったんか~い。
こんなブログにお付き合い頂いているみなさまは、それぞれ「実写版セーラームンだったらこれ」というお薦めのエピソードはあると思う。しかしAct.2が実写版独自の世界の出発点である、という意見に反対な方はおられないだろう。そういう意味で、すべてはここから始まった。できればビデオも準備の上、台本と比較しながら鑑賞していただきたい。小林靖子は、物語終盤の舞台となる進学塾(アルトゼミナール)を「高い吹き抜けの最上階からは水が落ちている」特殊な高層ビルとして設定し(シーン17)、まるで『タワリング・インフェルノ』や『ダイ・ハード』のパロディみたいにクライマックス・シーンを描いているのだが、それを田崎竜太がどう演出したかが、見どころのひとつだと思う。
あと、いろんな資料に出ていない、アルトゼミナールの講師の先生(春木みさよ)の名字が「野田」だということも、この台本を見ないと分からない。あと、進学塾に侵入するとき、台本ではうさぎが塾の講師の姿に変身するのだが、実はこれ、アニメ無印の第8話と同じ趣向である。ちなみに原作漫画では、ナース姿に変身している。
具合の悪い生徒が出てきたから駆けつけた、ということのようだが、塾に侵入するなら塾講師に変身するのが当たり前だよね。そういう意味では、どうこう言うポイントでもないけど、まあ、原作を飛ばしてアニメと実写がシンクロしている数少ない実例なので、指摘してみた(結局じ、実写版ではカットされたが)。
ま、なにはともあれ、お盆に相応しいスペシャル企画、Act.2台本テキスト紹介をお楽しみいただければ幸いです。
なお当サイトでは過去に計15本の実写版台本を扱っています。(Act.ZERO、Act.1、Act.5、Act.8、Act.12、Act.13、Act.15、Act.16、Act. 23、Act. 28、Act. 29、Act.34、Act.40、Act.48、Final Act、)それぞれ様々な同好の士から頂戴したものです。
毎回言っていることですが、これは実写版セーラームーンマニアのための研究資料として提供するものです。閲覧されるみなさまは、その点をよろしくご了承のうえ、扱いにはくれぐれもご注意ください。
1. アバン(前回より)
うさぎが初めてセーラームーンに返信する。
うさぎ「私は、月野うさぎ。不思議なぬいぐるみ猫、ルナと出会って、何とセーラー服美少女戦士、セーラームーンに変身しちゃいました」
セーラームーンが必殺技で妖魔を浄化する。
うさぎ「妖魔っていう敵を倒してなるちゃんを守っただけなんだけど、戦いは始まったばかりって感じ。仲間の戦士も見つけなきゃいけないみたいだし、何だか心臓バクバクです」
セーラームーンとルナが立って——
3. 同・中
ジェダイトが跪く。
ジェダイト「クイン・ベリル様」
正面に立っているクイン・ベリル。
ベリル「ジェダイト、セーラー戦士の一人が目覚めたというのはまことか」
ジェダイト「はい、セーラームーンと名乗りました」
ベリル「……あの小娘らが再び私の前に現れるとは……。恐らくはあやつらの狙いも……」
一瞬手を握りしめたベリルがジェダイトを見る。
ベリル「よい、ジェダイト、お前は今まで通り人間どものエナジーを集め続けよ」
ベリルが石を一つとってジェダイトに渡す
ベリル「我が命、無駄にすることは許さぬ」
ジェダイト「はい」
押し頂くジェダイト
ベリル「エナジーを集め続ければ、やがてこの地球に滅びの日が訪れる……。最良の破滅だ」
6. 同・受付
カウンター内で水槽の亀をのんびり観察し、時々大事そうに指で甲羅を突いたりしている古幡元基。ルナを抱いたうさぎが入ってくる。
古 幡「いらっしゃい」
うさぎ、ルナマークが付いたパスポートを見せる。
うさぎ「はい」
古 幡「年間パスポート? ふーん、じゃあ、どうぞ」
うさぎ「ありがと」
うさぎが奥へ行く
古幡、再び亀を観察するが
古 幡「年間パスポートなんてあったっけな……。ま、いいけど」
7. 同・戦士の部屋(仮称)
ドアが開いて、ルナのぬいぐるみを抱いたうさぎが入ってくる。
うさぎ「すごーい!」
部屋の中はお洒落な内装がされ、カラオケ一式はもちろん、テレビや鏡台など、何でもそろっている。
うさぎ「これ、ルナが作ったの?」
うさぎはルナを放り出して、あちこち見て回る。
ル ナ「ちょっとスペース借りたの。うさぎちゃん達戦士だけしか入れないし、わからないようになっているから」
うさぎは歌本を広げている。
うさぎ「あー! 愛野美奈子の新曲も入ってるー!」
ル ナ「ここでなら秘密の話もできるでしょ。私達の氏名は、目覚めようとしている巨大な悪の塊を封じる事よ。でもそのためにはプリンセスと幻の銀水晶を捜さないと——」
というルナの説明をよそに、うさぎはいつの間にか派手な服装に変身し、カラオケから流れるイントロにマイクを構えている。
ル ナ「うさぎちゃん! 何してるのよ!」
うさぎ、携帯アイテムを見せて、
うさぎ「さっき道ですれ違った人、カッコ良かったから。これいいよー。何にでも変身できるもんね」
ル ナ「うさぎちゃん、これは遊びじゃないのよ!」
うさぎ「わかってるけど、難しい話はちょっと苦手かなー」
ル ナ「もう……。とにかく、敵は人間のエナジーを集めて悪のエネルギーにしてるわ。今は街の人達を守る事がセーラー戦士として——」
うさぎ「あー!」
いきなり立ち上がるうさぎ。
ル ナ「な、何?」
うさぎ「明日テストあるの忘れてた!」
慌ててカバンをひっくり返して教科書をバラもくと、闇雲にめくり出す。
うさぎ「まずいよ~。覚え切れない~」
ルナが溜息。
ル ナ「早く仲間の戦士見つけなくちゃ……」
9. 同・廊下
掲示板にテスト結果の上位の生徒の名前が張り出されている。
見ている生徒達の中にうさぎとなるもいる。
うさぎ「あ、すごい、なるちゃん一五位!」
な る「たまたまだよ」
うさぎ「たまたまでも載りたいよ。私なんてさ……。あー、またママが怒るんだろうなぁ」
な る「それより、また一番だよ。ほら、ウチのクラスの天才」
うさぎ「あー、水野さんか。すごいよねぇ」
少し離れた所で、亜美が掲示板を見ている。
うさぎ「全然嬉しそうじゃないけど」
後ろから香奈美と桃子が加わってくる。
香奈美「そりゃそうでしょ。一年の時からずっとだもん」
桃 子「勉強ばっかりしているし。あの××ゼミナールにも通ってるんでしょ、超有名な塾」
香奈美「他に興味ないんじゃないかな。友達もいないし」
うさぎ「でも、あの人達は?」
数人の女生徒が「水野さんすごーい!」などと誉めている。
香奈美「あれは、水野さんのお母さんが有名なお医者さんだから、そっち系狙ってる人が近づいてんの」
桃 子「普通はちょっとね、とっつきにくいもん」
な る「お嬢様なんじゃない?」
うさぎ「やめなよ、聞こえるって」
だが亜美は表情を変えずにその場を離れる
うさぎ「まぁ確かに、あんなに頭いいと、別世界のひとだもんね」
10. 同・教室
昼休み。
あちこちで生徒達が机をつけて弁当を広げている。
うさぎは、なるや香奈美、桃子と一緒。
しかし、一人コンビニの袋と参考書を持って教室を出ていく亜美。
うさぎが気づいてちょっと見る。
11. 同・廊下(本編になし)
歩く亜美に、先ほどの女生徒達が声をかける。
女生徒「水野さん、お弁当一緒にいいかな。テストのヤマとか教えてほしーなーなんて」
亜 美「ごめんなさい……。読みたい本があるから」
愛想なく立ち去る亜美。
女生徒「(小さく)ガード硬いよね」
と亜美の後ろ姿を睨む。
14. 道
一人で帰宅している亜美。
と、目の前にルナがくたっと堕ちている。
亜 美「?」
周囲を見回す亜美
なると手を振って別れるうさぎ。
うさぎ「バイバイ!」
一人で歩き出し、ふと前方に亜美がいるのに気づく。
亜美が持っているのはルナであると気づく。
うさぎのM「ルナ? どうして……」
亜美は丁寧にルナの埃を払ってやる。
亜 美「持ち主とはぐれちゃったんですか? 困りましたね」
ちょっと意外そうに亜美を見ているうさぎ。
亜美はルナを近くの塀の上に置く。
亜 美「はい、ここで待ってれば、きっとお迎えに切れくれると思いますよ」
うさぎ「水野さん」
驚いて振り向く亜美。
うさぎ「ありがとう、それ、私のなんだ」
亜 美「あ……、そう。落ちてたから……」
愛想なく、そそくさと歩き始めている。
ルナを抱いてその後を歩くうさぎ。
しばらくして、うさぎは思い切って亜美と並ぶ。
うさぎ「あのさ、水野さんって……」
亜 美「え?」
うさぎ「ぬいぐるみに敬語使うんだ」
亜 美「! あ、あれは……、知らない子だったから」
うさぎ「知らない子?」
亜 美「……」
うさぎ「(笑って)水野さんって面白いね」
亜 美「……」
15. 商店街
歩いてくるうさぎと亜美
亜 美「じゃあ、私塾があるから」
うさぎ「うん」
が、行きかけた亜美がCDショップの店頭に美奈子のポスターを見つけて足を止める。
うさぎ「あれ、もしかして愛野美奈子好きなの? えー、意外ー! 私もすっごい好き。いーよねー!」
亜 美「暗記するときにこの人の声がはまるから」
うさぎ「暗記……? やる事が違うなぁ。あ、こないだ出たセカンドアルバムは? 買った?」
首を振る亜美。
うさぎがカバンからMDウォークマンを出す。
うさぎ「じゃあこれ、セカンド入ってるから。貸したげる」
とMDを出して渡す。
うさぎ「はい、亜美ちゃん」
名前を呼ばれて少しとまどう亜美。
うさぎ「私の事も、うさぎって呼んでよ」
亜 美「……それじゃ」
うさぎ「じゃ明日ね。後さ、今度、お弁当一緒に食べよ」
亜美がちょっと振り返るが、そのまま走って行く。
うさぎ「何か水野さんって全然みんなが言っているような子じゃないよ。面白いし、ホントは普通の子なんじゃないかな」
が、ルナがうさぎの手から飛び降りる。
ル ナ「普通じゃないわ」
うさぎ「どうして」
ル ナ「彼女、戦士だもの。見つけたわ。二人目!」
うさぎ「え! ホントに⁈」
ルナの三日月が青く光っている。
17. 塾・全景(夕方)
豪華な内装。
高い吹き抜けの最上階からは水が落ちている。
入って来た亜美に野田が歩み寄る。
野 田「水野さん、この間の模試、また最高得点よ。このレベルなら高校どころか大学だって受験できるわ」
亜 美「でも、医学部志望ですから、まだ……」
歩きながら話す二人。
野 田「大丈夫よ。でもどうしてそんなに医者になりたいの?」
亜 美「母の希望なんです。私も母に喜んでほしくて」
野 田「親孝行なのね」
亜 美「私、勉強ぐらいしか取り柄ないですから……」
亜美がMDを取り出す。
うさぎの声「今度お弁当一緒に食べようよ」
亜美に小さな笑みが浮かぶ。
19. 同・うさぎの部屋(夜)
ベッドの上のうさぎとルナ
うさぎ「亜美ちゃんが戦士の一人なんてすっごいラッキーだよね。頭もいいし、愛野美奈子のファンだし、かわいいし!」
ル ナ「ま、確かに頭脳面は今弱点だしね」
うさぎ、枕をルナに投げる。
ル ナ「いたーい」
うさぎ「あー、早く亜美ちゃんに言いたい! 今日はもう寝よっと!」
布団に潜り込み、電気を消す。
ル ナ「もう! うさぎちゃんは緊張感がないんだから」
21. 同・一角(夜)
音もなく現れるジェダイト。
ベリルの石を、飾られた埴輪(人と犬)に置く。
埴輪が妖魔に変化。
ジェダイト「エナジーを集めろ。若く優秀な者達のエナジーを」
通路の向こうから近づいてくる野田。
妖魔が動き出す。
22. 学校・門(翌日)
亜美が登校してくる。
手に持っている小さな箱を大事そうに確かめる。
後ろから追いかけてくるうさぎ。
うさぎ「亜美ちゃーん!」
亜 美「あ……」
うさぎ「もう、早く言いたくて走って来ちゃった。ちょっと来て。ね、ちょっと」
亜 美「え?」
23. 同・校庭一角
うさぎと亜美がいる。
亜 美「え……。私が?」
うさぎ「そ。私も亜美ちゃんも、選ばれた戦士ってわけ。だからこれから一緒に戦お。さっき言ったルナっていうのが変身アイテム持ってくるから、それでこうパーッと変身して——」
が、亜美がうつむき加減なのに気づく。
うさぎ「亜美ちゃん? だめ?」
亜 美「……そっか。月野さん、私が戦士だから友達になろうとしたんだ」
うさぎ「え? どういうこと?」
亜 美「私……、戦士なんかなりたくない」
うさぎ「えぇ⁈」
亜 美「勉強が忙しいし、塾もあるから。じゃ」
足早に去っていく亜美。
うさぎ「ちょっと亜美ちゃん!」
そこへ来るルナ。
ル ナ「うさぎちゃん、亜美ちゃんに話した?」
うさぎ「うん……。でもイヤだって。断られちゃった」
ル ナ「え!」
チャイムが鳴る。
26. 月野家・全景(本編になし)
27. 同・うさぎの部屋の中
制服のまま意気消沈して座っているうさぎと、その側にいるルナ
うさぎ「あーあ、ガッカリ。亜美ちゃんと一緒に戦いたかったのになー」
ル ナ「私が説得するわ」
うさぎ「やめなよ。イヤだって言ってるんだから可哀相だよ」
ル ナ「戦うのは戦士である者の使命なの。替わりはいないんだから、亜美ちゃんには戦士になってもらわなくちゃ」
うさぎ「無理にやらせるなんてひどいって! 私は絶対反対」
うさぎがプイッと出て行こうとするが、丁度ドアを開けて入ってくる育子
育 子「うさぎ、はいこれ」
と紙を渡す。
うさぎ「え?」
育 子「塾の地図。あんな点数とってたんじゃ心配だわ。申し込んどいたから今日から行って基礎からやり直しなさい」
うさぎ「えー!」
育 子「文句はいい成績とってから! 行きなさい!」
28. 塾・全景(本編になし)
29. 同・教室
生徒達の中には、沈んだ様子の亜美がいる。
ポケットから取り出すMD。
前で講義しているのは野田。
普通にしゃべっているのだが、何か反響するような音が響いている。
野田にイメージが重なる妖魔が、口から音波を発している。
30. 同・前
うさぎがビルを見上げている。
うさぎ「××ゼミナール……」
ル ナ「亜美ちゃんと同じ塾ね。説得するチャンスじゃない」
うさぎ「そんな事絶対しないからね」
言いながら入ろうとして、歩いてきた衛とぶつかってしまう。
一瞬お互いに「?」とミルが、
うさぎ「あ!」
衛 「ああ……モデルもどき。よそ見して歩くな」
うさぎ「そっちこそ」
フンッと塾へ入ろうとするが、地図を拾った衛が、うさぎを止める。
うさぎ「何よ!」
衛 「ここじゃない。あっちだ」
うさぎ「え」
と見たそこには『みんなの○○教室』とある。
うさぎ「……ママってば……基礎すぎるよ……」
衛 「ぴったりだな」
ぼそっと言って立ち去っていく衛
うさぎ「バカにされた~。ムカつく~」
ル ナ「うさぎちゃんが亜美ちゃんと同じレバルなわけないか」
うさぎ「何よ!」
その時、ルナの三日月が赤く光る
ル ナ「うさぎちゃん!」
うさぎ「⁈」
33. 同・ロビー(本編になし)
Kうさぎがルナと入ってくる。
と、受付嬢がカウンターに突っ伏しているのが見える。
Kうさぎ「あ……!」
ル ナ「やっぱり妖魔がいるわ。気を付けて!」
Kうさぎ「……亜美ちゃん‼」
吹き抜けを見上げるうさぎ。
34. 同・教室
塾生達が皆突っ伏した中、亜美だけが起きている。
亜 美「どういう事……」
いきなり野田が亜美からウォークマンを取り上げる。
亜美から落ちるイヤホン。
野 田「講義中にこんなものを聞いてはいけないわ……」
亜 美「先生、これは……」
野 田「しょうがないわね……まずあなたからエナジーを頂きましょうか……」
野田が妖魔の形相になる。
悲鳴をあげて後じさる亜美。
亜 美「もしかして、月野さんの言ってた妖魔⁈」
野 田「なぜ我々の事を……?」
亜美は周囲を見回す。
亜 美「ひどい……。先生を利用してこんな事……」
野田が手を伸ばしてくる。
亜美は咄嗟に野田を突き飛ばして外へ。
野 田「待て……」
妖魔(人型)が完全に野田から抜けだす。
36. 同・中層階の回廊
走っていたうさぎとルナが、聞こえて来る悲鳴にハッと上を見る。
妖魔と亜美の姿が見える。
ル ナ「妖魔!」
うさぎ「亜美ちゃん!」
うさぎが変身アイテムを取り出す。
うさぎ「ムーンプリズムパワーメイクアップ!」
セーラームーンに変身。
妖魔は亜美を捕らえ、回廊の柵に押し付けている。
セーラームーン「ムーンティアラブーメラン!」
セーラームーンの放った光が吹き抜けの滝の水音を破裂させると、水が妖魔に使って放水される。
押し倒される妖魔。
だが、その刹那、妖魔は亜美を吹き抜けに突き落としている。
亜 美「きゃー!」
間一髪、セーラームーンが亜美の手を掴むが、自分も落ちそうになり、かろうじて片手で支える。
セーラームーン「亜美ちゃん、大丈夫……⁈」
亜 美「もしかして、月野さん……⁈」
頷くセーラームーン。
驚く亜美が、最上階から柵を伝って降りてくる犬妖魔の姿を見る
亜 美「危ない! 上!」
セーラームーンが何とか払いのけるが、さらに妖魔が迫ってくる。
セーラームーン「う~」
亜 美「(ハッと)そうだ、月野さん、私を戦士にして!」
セーラームーン「え」
亜 美「そうすれば——」
セーラームーン「ダメだよ!」
亜 美「……!」
セーラームーン「イヤなのに変身しちゃダメだよ」
亜 美「月野さん……」
セーラームーン「大丈夫。何とかするから。この~!」
懸命に亜美を引き上げようとするセーラームーン。
犬妖魔も再びセーラームーンを狙う。
亜 美「月野さん!」
セーラームーン「もう少し……」
亜 美「イヤじゃないから! 私、月野さんと一緒に戦いたい!」
セーラームーン「! 亜美ちゃん……」
頷く亜美。
そこへ来るルナ。
ル ナ「亜美ちゃん、受けとって!」
ルナが変身ブレスを亜美に投げる。
キャッチする亜美。
亜 美「マーキュリーパワーメイクアップ」
亜美の手がセーラームーンから離れ、発光。
妖魔達が目をくらませる。
吹き抜けを落ちながら亜美が変身——
37. 同・一回フロア
落ちる水しぶきと共にセーラーマーキュリーが誕生。
マーキュリー「水と知性の戦士セーラーマーキュリー! 水星にかわっておしおきよ!」
セーラームーンもフロアに降りる。
セーラームーン「亜美ちゃん!」
セーラームーンに頷くマーキュリー。
その二人を目がけて、妖魔と犬妖魔が滑るように降りてくる。
ル ナ「あぶない!」
セーラームーンとマーキュリーが素早く避ける。
フロアに激突する妖魔達。
セーラームーン「亜美ちゃん、二人でやろ!」
マーキュリー「うん!」
セーラームーン「ムーントワイライトフラッシュ」
マーキュリー「マーキュリーアクアミスト!」
二人の光が妖魔二匹に炸裂し、妖魔達は蒸発。
駆け寄るセーラームーンとマーキュリー。
セーラームーン「やったね!」
マーキュリー「うん」
セーラームーン「でも……ホントに良かったの?」
マーキュリー「うん。戦士だからとか、そういうのじゃなくて、何かわからないけど……、ただ一緒に戦いたいって、そう思ったから」
セーラームーン「あ、それ私も同じ。戦士だからとかじゃなくって、亜美ちゃんだから仲良く成合って思ったんだよね」
マーキュリー「……ありがとう」
微かに笑うマーキュリー。
笑顔のセーラームーン。
最上階から見下ろすタキシード仮面。
タキシード仮面「セーラームーンに、セーラーマーキュリーか……」