さあ今回の台本はAct16だ。いきなり書き出しが「ホテルのうさぎと衛」だぞ。
大きな変更点として山本ひこえもんの登場があることは前回書いたが、あと主要なポイントは、この台本のもとのオーナーであるM14さんが7年前にブログにまとめている(ここ)。でもよーく読んでいくと、それ以外にも、細かいやり取りやセリフの端々に台本と完成作品との異同があって、興味は尽きない。今回はぜひ、ビデオで実際の作品を観ながら比較されることをお薦めする。それだけの分析に耐えうる名作である。
毎度ですが、これは実写版セーラームーンマニアのための研究資料として提供するものです。閲覧される皆様は、その点をよろしくご了承ください。
『美少女戦士セーラームーン』Act.16
原作:武内直子/脚本:小林靖子
1. 前回より
ホテルのうさぎと衛。
うさぎのN「なるちゃんの勘違いで、地場衛とまた二人きりに成っちゃったんだけど、泥棒と追いかけっこしたり、妖魔が出たりで大変」
カバンを持って逃げるうさぎと衛。
衛 「うさぎ! 逃げろ!」
走る衛のバイク。
うさぎのNでも、何だか地場衛って……ちょっと……いい、かも?」
慌てて首を振る、N枠内のうさぎ。
うさぎのN「違う違う、私の好きなのはタキシード仮面なんだから」
うさぎのN「ところで、亜美ちゃん達がいないんだけど、何してるんだろ」
N枠消えて――
2. 広 場(一部前回より)
穴に落ち込むまことを必死に助けようとするレイと亜美。
レ イ「変身よ……!」
亜美が頷く。
レ イ「マーズパワー!」
二 人「メイクアップ!」
レイと亜美が変身。
同時にまことを穴から引っ張り出す事に成功する。
消滅する穴。
マーズ「妖魔の気配も消えたわ……」
まこと「行方不明事件の真相がわかったな……」
頷くマーキュリー達――
4. 同・中(夜)
うさぎ「えー!妖魔と戦ったの?!」
レ イ「そうよ。逃がしちゃったけど、行方不明になった人があの妖魔にさらわれたのは間違いないわね」
ル ナ「多分エナジーを集めるためよ。どこに集められてるのか探してみるわ」
頷くレイと亜美。
まこと「で、そんな事になってんのにうさぎはどこ行ってたんだ?」
うさぎ「え……(Mで)うわ、地場衛と二人だったなんて言えない……」
まこと「ん?」
うさぎ「あーその、なるちゃん達と一緒でさ」
亜美がうさぎを見る。
うさぎ「でも、こっちにも妖魔が出てきちゃってさ。何とか倒したけど」
まこと「ホントに?何だそっちも大変だったんだ」
と言った途端に、まことがくしゃみをする。
レ イ「風邪?」
まこと「らしい。妖魔にあんな穴に引きずりこまれたせいだ」
亜美はうさぎにさりげなく尋ねる。
亜 美「大阪さん達は妖魔に襲われなかったの?」
うさぎ「え、なるちゃん?、ああ……、うん、大丈夫だった」
亜 美「そう……良かった……」
沈んだ調子だが、しみじみとした感じに聞こえ、うさぎが真顔になる。
うさぎ「亜美ちゃん、なるちゃん達の事まで心配してくれるんだね。何か嬉しいな」
小さく微笑する亜美。
レイが見詰める。
6. 月野家・うさぎの部屋の中(夜)
ベッドで目を開けているうさぎ。
うさぎのM「ケガ、大丈夫かな……」
が、すぐにハッとなる。
うさぎのM「やだ、何でアイツの事ばっかり。タキシード仮面の事考えよっと」
目を閉じるが、
衛の声「うさぎ! 乗れ!」
衛の声「うさぎ!」
ぎゅっと目を閉じて布団に潜りこむうさぎ。
7. 衛のマンション・中(夜)(本編には無し)
うさぎのハンカチを手にしている衛。
が、思い切るように乱暴に引き出しに入れる。
衛のM「俺に、あいつを思う資格なんかない」
引き出しを閉めた衛が大きく息をつく。
8. 学校・近く(日替わり)
溜息で登校するうさぎ。
うさぎのM「何か、夢までみちゃったよ……。でも、ケガ、痛そうだったな――って、何で考えちゃうかなぁ」
慌てて首を振り、足を速めるうさぎ。
うさぎのM「きっと私のせいでケガしたからだよね。礼儀として心配するでしょ、普通。うん」
その少し後ろから亜美が来る。
うさぎを見つけて、駆け寄ろうとするが、それより先になるがうさぎに飛びついている。
な る「なーに考えてんの」
うさぎ「なるちゃん」
な る「ね、どうだった。彼とのデート」
うさぎ「だから違うって!私が好きなのはアイツじゃないの」
な る「またまたぁ。今だって彼の事考えてたでしょ」
うさぎ「! それは……」
な る「やっぱり。最初に見てビビって来たんだよねー」
うさぎ「もうやめてよ〜」
と、賑やかに歩くうさぎが亜美を見つける。
うさぎ「あ、亜美ちゃーん。一緒に行こ」
な る「……」
回想。
な る「うさぎ!いるんでしょ?!」
なるを追い返す亜美。
亜 美「うさぎちゃん、寝てるの。嘘だと思うなら思ってくれていい。私の意地悪だと思ってくれてもいいから、だからお願い……!」
うさぎが亜実の腕をとる。
うさぎ「なるちゃん、亜美ちゃんホント優しいんだよ。なるちゃん達の事心配してくれて」
亜 美「……」
な る「何で心配されなきゃいけないの?」
明らかに亜美に好意的ではない。
うさぎ「あ、それはー、あー、色々、ね?」
亜美は仕方なく微笑するしかない。
なるは、軽く睨むような視線で亜美を見る。
9. 同・教室の中
桜田が英語の会話を板書している。
桜 田「はい、じゃあこの会話を、二人一組になってやってみて。席移動していいから、楽しく会話するように」
ガタガタと生徒達が移動してペアになる。
亜美がうさぎを振り返る。
が、先に声を掛けていたなる。
な る「うさぎ、やろ」
うさぎ「うん」
亜 美「……」
だが、うさぎがすぐに一人の亜美に気づいて、
うさぎ「(軽く)あ、亜美ちゃん、一緒に三人でやろうよ」
亜美、一瞬あるが、
亜 美「ううん、あれ二人でやる会話だし。私、誰か余った人と組むから」
な る「……」
うさぎ「でもさ――」
その時、なるが正面から亜美に言う。
な る「正直に言えば?うさぎと組みたいって」
亜 美「でも、大阪さんが先だから――」
な る「そういう自分を犠牲にしたような言い方、ずるいと思うんだけど。こっちが悪いみたいじゃない」
亜 美「そんな……」
うさぎ「ちょっとなるちゃん、亜美ちゃんはそんなんじゃないって。ホントに優しすぎるんだよ」
な る「何よ。うさぎもさ、最近亜美ちゃんばっかだよね」
うさぎ「いや、それは…―」
いつの間にか後ろに立っている桜田。
桜 田「こーら、何やってんの。こんな事でもめないの。先生が相手を決めてあげます」
桜田が三人をバラバラに他の生徒と組ませる。
桜 田「はい、一言でも文句言ったら小テスト〜」
渋々、他の生徒と始めるなる。
うさぎは亜美を気がかりそうに見る。
うさぎ「(小声で)なるちゃん、悪気はないから」
また小さな微笑の亜美。
10. ダーク・キングダム・中
ベリルの前のネフライトとクンツァイト。
クンツァイト「ネフライト、プリンセスの行方を見失うとは、居眠りでもしていたのか?」
悔しそうにクンツァイトを睨むネフライトだが、
ネフライト「ベリル様! 申し訳ありません! 必ずプリンセスを見つけ出し、幻の銀水晶を――」
クンツァイト「いつまで口約束を唱えているつもりだ。私がお前でも出来る仕事を与えてやろう。例えば私のエナジーファームとか」
ネフライト「黙れ! 誰がお前などに――」
食ってかかるネフライトを手で制するベリル。
ベリル「クンツァイト、エナジーファームとは何だ?」
クンツァイト「その名の通り、牧場です。ただし、飼っているのは集めてきた人間――」
12. 高層マンション・中
床から吐き出されるように現れる女性。
その前に立つ妖魔(金)が目を光らせる。
途端に表情を失う女性。
同じような人々が行き交っている。
クンツァイトの声「人間どもには普通に生活をさせ、定期的にエナジーを吸い取ります」
屋上に立つ妖魔(金)が、排気口に手を置く。
エナジーが人々から排気ダクトへと吸い込まれる。
屋上の排気口から空高く飛ぶエナジー
14. 同・中
クンツァイト「大いなる悪の復活が始まるのも時間の問題でしょう。ネフライトにはそこで下働きなど――」
ネフライト「クンツァイト! それ以上行ってみろ……!」
クンツァイト「やるか?」
ベリル「待たぬか!」
ネフライト「しかし!」
ベリル「クンツァイト、お前の作戦は買おう。だが、ネフライトはお前の部下ではない、わらわにかしづく者だ。それはお前も同じ!」
クンツァイト「……」
ベリル「身の程をわきまえよ!」
クンツァイトがわざと丁寧に一礼する。
にらみ付けるベリル。
15. 道
沈みがちに歩いてくる亜美。
と、前方を歩くなるが見える。
ハッと見た亜美は、道を替えようとするが、なるのすぐ下の地面に突然穴が開くのを見る。
亜 美「?!」
なるが穴に落ち込む。
な る「きゃぁ?!」
もがくなるがどんどん落ちていく。
亜 美「大阪さん!」
亜美が走る。
既に腕だけしか見えていない。
亜美がその腕を掴もうと手を伸ばすが、一瞬の差で届かず、なるは消える。
亜 美「大阪さん……!」
16. 高層マンション・中(本編には無し)
床から悲鳴を上げるなるが吐き出される。
な る「何なの……!」
が、その前に降り立つ妖魔(金)。
「!」と見たなるが、妖魔(金)の目の光に無表情になる。
17. 月野家・うさぎの部屋の中(本編には無し)
携帯で話しているうさぎ。
うさぎ「うそ! なるちゃんが?!」
18. 道
立ちつくしている亜美。
駆けつけて来るうさぎとレイ。
うさぎ「亜美ちゃん!」
振り返る亜美。
レ イ「ここから妖魔が?」
亜 美「(頷き)地面に穴が開いて、引き込まれちゃったの」
うさぎ「なるちゃん……」
うさぎがしゃがんで地面に手を突くが、何もない。
亜美は苦しいような表情で地面を見詰めている。
そんな亜美を見るレイ。
そこへ携帯が鳴って、三人が出る。
ルナの声「みんな、人を集めてる場所がわかったわ! すぐに来て」
うさぎ達「!」
20. 同・エントランス内
人気はない。
駆け込んで来るうさぎ、亜美、レイ。
ルナが待っている。
うさぎ「ルナ!」
レイがハッと何もない空間を見詰める。
レ イ「これは……!」
ル ナ「わかる?」
レ イ「結界が張られている」
うさぎ「けっかい?」
レ イ「邪魔者を寄せ付けないバリアみたいなものよ」
その時、エントランスの向こうを歩くなるが見える。
うさぎ「なるちゃん!」
亜美もハッと見て、うさぎと一緒に駆け出す。
レ イ「危ない!」
亜美は咄嗟に立ち止まるが、うさぎは透明な壁にしたたか頭をぶつける。
うさぎ「いったーい!」
亜美がそっと透明な壁に触れる。
亜 美「これが、結界……」
ル ナ「この向こうに捕まった人達がいるわ。みんなエナジーを少しずつ奪われてるの」
うさぎ「え……」
レ イ「そうか、人間を飼ってるんだわ……」
バリアの向こうの人達は一様にフラフラしている。
亜 美「そんな……ひどい……」
ル ナ「みんなの力を合わせれば壁は破れるかも。やってみて」
うさぎ「わかった。ムーンプリズムパワー」
三 人「メイクアーップ!」
三人が変身する。
レ イ「じゃあ、いくわよ。1、2、3!」
三人が一斉にエネルギーを放つ。
だが壁がそれを三人に跳ね返す。
セーラームーン達「きゃぁ!」
マーキュリー「もう一回!、1、2、3!」
しかし結果は同じ。
マーキュリー「もう一度!」
率先してエネルギーを放つマーキュリー。
しかし、またも跳ね返され、マーキュリーが傷つく。
セーラームーン「亜美ちゃん!」
マーキュリー「大丈夫……」
マーキュリーは必死に攻撃を続ける。
マーズ「亜美ちゃん……」
だがさらに大きな衝撃に倒れ伏すマーキュリー。
マーキュリー「う……」
セーラームーン「亜美ちゃん、ちょっとストップ!」
マーズ「どうしたの、そんなむきになって」
マーキュリー「大阪さん、助けなきゃ……」
セーラームーン「亜美ちゃん……」
打たれたように亜美を見るセーラームーン。
セーラームーン「亜美ちゃんってスゴイね」
マーキュリー「?」
セーラームーン「あんなケンカした後なのに、こんなに一生懸命でさ……。私なら、どうかな……」
マーキュリー「……」
セーラームーン「ね、ちょっと待ってて」
セーラームーンがその場を離れる。
マーズ「うさぎ?!」
マーキュリーは俯いている。
マーズ「大丈夫?」
マーキュリー「……私、優しくなんかない」
マーズ「え?」
マーキュリー「大阪さんを助けたいのは、自分のせいかもしれなくて、怖いからだよ……」
マーズ「そんな、亜美ちゃんのせいなわけじゃない」
マーキュリーが首を振る。
マーキュリー「私……大阪さんにすごい嫉妬してた」
マーズ「……」
マーキュリー「うさぎちゃんは私だけの友達じゃないし、大阪さん達とだって一緒にいたいのは当然だって、頭ではわかってるんだけど、うさぎちゃんと楽しそうに話しているの見るだけで、大阪さんの事嫌いになりそうで……」
イメージ。
飲み込まれていくなるに走って行く亜美。
マーキュリーの声「あの時、大阪さんを助けられなかったのは、私の中に、そういう気持ちがあったから……」
マーズ「(否定するように)亜美ちゃん」
マーキュリー「もしかしたら、いなくなればって思ったかも……。私、自分がこんな嫌な人間だって知らなかった」
走るセーラームーン。
マーキュリーの声「それなのにうさぎちゃんは私の事優しいって思ってくれて……」
うさぎの声「亜美ちゃんはそんなんじゃないって。ホントに優しすぎるんだよ」
マーキュリー「うさぎちゃんも騙してるんだよ……。最低……」
膝に顔を埋めるマーキュリー。
見詰めたマーズが、やがて、
マーズ「何よ、そんな事ぐらい、何でもないじゃない」
マーキュリー「え……?」
マーズ「裏表のない人間なんていないわよ。誰だって、いろんな自分がいるわ。私だって……」
マーキュリー「レイちゃんも?」
マーズ「いいじゃない、嫉妬ぐらい。亜美ちゃんは満点を狙いすぎよ」
マーキュリー「……」
マーズが真剣に亜美を見詰める。
マーズ「でも、大阪さんを助けられなかったのは、そのせいじゃないわ。亜美ちゃんなら絶対にない。私が保証する。だから自分を嫌いにだけはなっちゃダメ。いいわね?」
マーキュリー「レイちゃん……」
そこへ、セーラームーンがジュピターの手を引っ張ってくる。
セーラームーン「まこちゃん頑張って、ここだから!」
ジュピター「大丈夫。風邪ぐらい平気だよ。最初っから呼んでくれれば良かったんだ」
セーラームーン「ごめんね」
振り向いたマーズの表情が和らぐ。
マーズ「うさぎの理想なんか裏切っちゃえばいいのよ」
セーラームーン「え?何?」
マーキュリーにも、やっと小さな笑みが浮かぶ。
マーキュリー「ううん」
マーズ「見て。少しヒビが入ってるわ」
僅かに走っているヒビ。
セーラームーン「ホントだ! じゃあとどめの一発! 1、2、3!」
四人が放つエネルギー。
ついに壁が弾ける。
セーラームーン「やった!」
中へ入っていくセーラームーン達。
だがその時、またも人々のエナジーが奪われる。
倒れ伏す人々。
セーラームーン達が「!」と見る。
倒れた人達の中になるもいる。
セーラームーン「なるちゃん!」
マーキュリー「妖魔を探さなきゃ!」
マーズ「待って! 来るわ!」
突然、排気口を突き破って現れる妖魔。
セーラームーン「きゃぁ!」
セーラームーンとマーズが転がって避ける。
が、いつの間にか背後に回り込んでいるマーキュリー。
マーキュリー「こっちよ!」
妖魔(金)が振り向いた時には遅い。
マーキュリー「マーキュリーアクアミスト」
マーキュリーの攻撃に妖魔が消滅。
マーズ「やったわね」
笑顔のマーキュリー。
だが、人々は倒れたまま。
ル ナ「セーラームーン、この人達にパワーを!」
頷いたセーラームーンがスティックをかざす。
柔らかい光が放たれ、人々に降りそそぐ。
顔を上げる人達。
なるも起き上がって周囲を見る。
な る「ん?何でこんなとこに……」
セーラームーン達の姿はない。
22. 同・調理実習室
うさぎ達生徒が、それぞれエプロンなどをつけている。
菊 池「はい、じゃあこれからクッキー作りますから、適当に二人組になってくださーい」
うさぎ「え、また?」
不安顔になるうさぎ。
うさぎのM「どうしよう……。なるちゃんと亜美ちゃんが……」
と振り返るが、そこにはペアになった亜美となるがいる。
うさぎ「あれ?!」
なるはそっぽ向きながら亜美に、
な る「何これ? 優等生のやり方?」
亜 美「ケンカはしたくないけど、でも、うさぎちゃんと組むのは譲りたくないし……。そんなに優しくないの、私。だから」
と、なるを見る。
な る「へぇ……」
亜実の言葉にちょっと見直したような表情のなる。
な る「ま、それなら私も同じかな。じゃ、やりますか」
亜 美「うん」
そんな二人を見ているうさぎ。
うさぎ「亜美ちゃん……ってじゃあ私一人?!」
菊 池「月野さん、先生と組みましょう」
うさぎ「え……」
その時、窓の外で空が一瞬スパークするが、誰も気づかない。
クッキーを小分けにして入れた袋を前に、全員がそれぞれカードを書いてくる。
『ママへ』と書く亜美。
うさぎも何か書き込んでいる。
と、なるが覗き込もうとする。
な る「うさぎは彼だよねー」
うさぎ「やだ、違うよ」
咄嗟に隠すが、カードには『地場衛』とある。
うさぎのM「お礼だもんね。この間のただのお礼――」
窓の外はまた不穏に光っている――
24. 同・中
ベリルとネフライトが周囲を見る。
ベリル「これは……」
余裕のクンツァイト。
クンツァイト「おわかりにならないか? 復活の兆しですよ。大いなる悪、クイン・メタリアの!」
大きく建物が揺れ、エネルギーが弾ける。
ネフライト「ベリル様!」
ベリルを庇うように立つネフライト。
ベリル「クイン……メタリア……!」
低いうなり声が続き――
26. 衛のマンション・前(夕方)
スパークする空の下、うさぎがクッキーの袋を手に、前回貰った住所のメモを見ながらやって来る。
うさぎ「ここか」
と、マンションを見上げる。
うさぎ「すご……お坊ちゃまなのかな」
袋を握りしめて、緊張するうさぎ。
うさぎのM「何でドキドキしてんのよ。こんなの意味はないんだから。私が好きなのはタキシード仮面……」
その時、マンションから出てくるのは衛。
うさぎ「あ」
だが、後から追いかけて来て衛と腕を組むのは日下陽菜。
うさぎ「え……」
衛もハッと見る。
陽菜は何の屈託もなく「?」とうさぎを見て、表情のこわばった衛を見る。
陽 菜「? どうかしたの、衛」
衛 「いや……」
うさぎのM「そっか、彼女いたんだ……。別に……関係ないけど……」
が、ぼんやりと立っているうさぎ。
衛もうさぎを見詰めて――