実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第431回】夏の撮影台本まつり:Act.15の巻

 

 

暑いですね。
こんな暑い日はホラー映画でも観て涼しく過ごしましょうか、なんて言いたかったけど、鶴田法男監督・小松彩夏主演の『トーク・トゥ・ザ・デッド』は、そう簡単には拝めないプレミア作品だ。名古屋に来るのは8月24日、駅西シネマスコーレで一週間のみの上映である。といって、いつでもどこでもやってる『謎解きはディナーのあとで』は「いつでもどこでも観られるや」と油断して、まだ観ていない。
今朝は沢井さんが『仮面ライダーウィザード』第47話に出たけど、沢井さんは妊婦の役なので、守られてばかりで変身もできない。そんな沢井さんを尻目に、美奈子の事務所の斎藤社長(池田成志)がこれ見よがしに変身して、しかも監督が舞原賢三って、これ実写版セーラームーン10周年企画なのかな。

 

 

10周年といえば、先週末の20周年記念イベントに関しては、コメント欄で議論(雑談か)しつくした感もあって、今はつけ加えることもない。あと、なかなかキュートな仕上がりだったカサリンチュの新曲「夏が終わる前に」のPVも……まあいいや、こう暑いと、何かを考察したり分析したりという気が起こらない。

 

 

とにかく暑いよね。
もういいや。今回はお盆シーズンの特別編だ。昨年の7月末、納涼企画としてAct.13の撮影台本紹介をやったのにちなんで、この夏は今週・来週と二週にわたり、Act.15とAct.16の台本を全文、ご紹介したいと思う。唐突な思いつきだがよろしく。

 

というわけで以下に紹介するのは、実写版セーラームーンの撮影台本、つまりスタッフやキャストが実際に使っていた台本だ。こういうものが一時期Yahoo!オークションなどを通じて外部に出回っていて、それをひろみんみんむしさんや、こっちよ!さんやM14さんといった方々が入手して、で、それをコピーしたりpdfファイルにしたりして、私にご恵送くださっていたのである(私は一銭も払っていない)。M14さんなんか、実物を10冊以上、まとめてドンと送ってくださった。そんなわけで現在私のもとには、飛び飛びながら17冊、いや18冊かな、ともかく全話の三分の一くらいの量の台本がたまっている。で、これを私ひとりのものにしておくのはもったいない、ということで、季節の変わり目に少しずつ紹介しているわけですね。
こうした経緯で、過去にAct.1Act.8Act.13Act.40Act.48Final Actの6本の実写版台本を紹介させていただいた。今回のAct.15台本は、こっちよ!さんからのいただきものです。

 

Act.15は鈴村展弘監督。台本からの削除や変更はほとんどない。あらゆる技巧は、台本の意図をより効果的に映像化することに費やされている。しかもAct.13、Act.14の舞原監督のエモーションをしっかり引き継いでいる。妙な映像的な自己主張はまったく見られない。そういう、石田監督の弟子とは思えない(笑)鈴村監督の至芸を楽しむ回であります。

 

なお毎度申しあげておりますように、これは実写版セーラームーンマニアのための研究資料として提供するものです。閲覧される皆様は、その点をよろしくご了承ください。

 

  

 

『美少女戦士セーラームーン』Act.15
  原作:武内直子/脚本:小林靖子

 

 

1. 前回より


  妖魔化しそうになるうさぎ。
うさぎのN「新しい敵、クンツァイトに妖魔にされそうになって大ピンチだった私を、亜美ちゃん達が助けてくれました。大感謝!」
  うさぎがセーラームーンに変身し、クンツァイトを追い払う
うさぎのN「でももう一人感謝しなくちゃいけないのはタキシード仮面。また危ない所を助けてくれたんだよね」
  クンツァイトの剣を止めるタキシード仮面。
うさぎのN「これでみんなもタキシード仮面の事、見直してくれたんじゃ――」


 

2. クラウン・中



まこと「泥棒は泥棒!」
  うさぎ達一同が集まっている。
亜 美「悪い人じゃないと思うんだけど……」
レ イ「何か不吉なものを感じるのは確かよ」
ル ナ「やっぱりタキシード仮面には近づかない方がいいわ」
  まこと達が頷く。
うさぎのM「ダメか……」
  ガクッと項垂れるうさぎ。

3. 美奈子の家・全景(夜)

 

 

4. 同・自分の部屋(夜)



  「おやすみなさい」と挨拶の声がして美奈子が入ってくる。
  ふと窓から外を見下ろす美奈子。
美奈子「また妖魔がつきまとっている……」
アルテミス「プリンセスと幻の銀水晶は敵の狙いだからね」
美奈子「何とかしなきゃ。このまま追いつめられたら大変……」
  美奈子がカーテンを閉める。

タイトル

 

 

5. 月野家・全景(朝)

 

 

6. 同・居間(朝)



  育子が朝食の準備をしている。
  食べながらテレビを見ている進悟。
  制服のうさぎが入ってくる。
うさぎ「おはよー」
育 子「はい、おはよー。今日はチーズ入りオムレツです」
進 悟「うさぎ、愛野美奈子の家に泥棒が入ったんだってさ」
うさぎ「うそ!」
  進悟がテレビを指さす。

  映っているレポーター。
レポーター「えー、それで被害状況なんですが、支度から盗まれたのは宝石類で、金額にしてどの程度かは発表されていませんが、事務所の関係者によりますと、愛野美奈子さんがとても大切にしていた物のようです。
うさぎ「えー、美奈子ちゃん、可哀想……」
進 悟「アイドルなのに警備薄いよな」
レポーター「最近、この手の宝石泥棒が頻発しており――」

7. 衛のマンション・中(朝)

 


  テレビを見ている衛。
レポーター「警察でも捜査員を増やして追っている模様です。惜しまれるのは、以前はこういった事件に必ず現れていたセーラーVが、最近姿を見せない事で……」
  衛がテレビを消す。
 衛 「セーラーVか……」


╳    ╳    ╳


  回想。
  アルテミスと共に立つセーラーヴィーナス。
セーラームーン「プリンセス……」
衛のM「俺の記憶に出てくるプリンセスと関係あるのか……。セーラームーン達に聞けば何か……。でも――」


╳    ╳    ╳


  回想。
  海岸で肉まんを食べているうさぎと衛。


╳    ╳    ╳

衛のM「あいつの事はこれ以上―」
  電話が鳴りだし、受話器をとる衛。
 衛 「もしもし――」
  相手の声を聞いて、ハッとなる衛。
 衛 「はい、どうも……。……わかってます。でも約束は卒業までですよね。それまでは……俺の勝手に――」
  衛がハンカチを握りしめる。


 

8. ダーク・キングダム・全景

 

 

9. 同・中

 


  ベリルの前のネフライトとクンツァイト
ベリル「クンツァイト、セーラー戦士のエナジーを集めるのではなかったのか?」
  ワザと穏和に尋ねるペリル。
  が、クンツァイトも平然とベリルを観る。
クンツァイト「そう、なかなか元気のある小娘達でした。いずれまた狙ってみましょう」
ネフライト「何がいずれだ! あれだけ大口叩いておいて、よく手ぶらで戻れたものだな! お前など所詮復活し損なった失敗作。おとなしく元の巣に帰ってろ!」
クンツァイト「ネフライト、失敗作失敗作とうるさいが、つまり私を作られたベリル様がマヌケだと言っている訳だな?」
ネフライト「な……!」
ベリル「……」
ネフライト「(焦り)そうではない! 私はお前が――」

ベリル「もう良い!」
ネフライト「は……」
ベリル「クンツァイト、お前はエナジーを集め続けよ。わらわはいつまでもこのような所で燻っているつもりはない」
クンツァイト「お任せを」
  一礼して下がるクンツァイトだが、ネフライトの横で一旦止まる。
クンツァイト「知っているか? プリンセスが大切な宝石を盗まれたとか」
ネフライト「何?! まさか幻の銀水晶……」
クンツァイト「可能性はあり、だな。コソ泥に先を越されるとは、お前もよくよくついていない」
  ニッと笑って出て行くクンツァイト。
ネフライト「バカな……。妖魔をつけておいたのに……」
ベリル「ネフライト。クンツァイトを退けたくば、幻の銀水晶を早く手に入れよ。マヌケなわらわにかわってな」
ネフライト「! ベリル様……、申し訳ありません!」
  頭を下げたネフライトが悔しそうに顔を歪ませる。
ネフライト「クンツァイトめが……!」

10. 学校・全景

 

 

11. 同・玄関



  登校して来るうさぎの後ろから来るなる。
な る「うさぎ、おはよ!」
うさぎ「おはよー! ねぇ聞いた? 美奈子の話」
な る「ああ、あれね」
うさぎ「ひどいよねー。売ってお金にしちゃうんだよ、きっと」
な る「うちのママが言ってたんだけど、宝石のオークションで、たまにそういう盗まれた物がこっそり出品されたりするんだって」
うさぎ「そんなのあるの? 信じらんない」

な る「でもオークションは面白いよ。すっごい宝石いっぱい集まるし。明日土曜だよね、丁度やってるけど、行く?」
うさぎ「え、入れるの?!」
な る「ママの名前でね」
うさぎ「さっすが有名デザイナー。カッコいい!」
  上履きに履き替えていると、亜美も来る
うさぎ「あ、亜美ちゃん、おはよ!」
亜 美「おはよう」
  なるがチラッと亜美を見る。


╳    ╳    ╳

  回想。
な る「うさぎ! いるんでしょ?!」
  なるを追い返す亜美。
な る「ちょっと……」



亜 美「うさぎちゃん、寝てるの。嘘だと思うなら思ってくれてもいい。私の意地悪だと思ってくれてもいいから、だからお願い……!」


╳    ╳    ╳



  ちょっと目を伏せる亜美。



  その亜美を一別したなるが、うさぎの腕をとって歩き出す。
な る「うさぎ、放課後久しぶりにカラオケ行かない?」
うさぎ「え、うん。じゃあ亜美ちゃんも一緒に行こ。今日、塾休みの日じゃなかったっけ」
  と、後ろを向く亜美を振り返る。
亜 美「うん……。あ、でも私はいい」
うさぎ「え〜」
  なるは知らんぷりしている。

 


亜 美「……」


 

12. クラウン・受付(夕方)



  古幡が水槽の亀にメス亀の写真を見せている。
古 幡「お前、この子どう? そろそろ結婚考えない?」
  いつの間にか入ってきている衛。
 衛 「お前、亀より自分の心配しろ」
古 幡「俺はいいの」
 衛 「いいって……あいつ、どうなってんだ」
古 幡「あいつ?」
 衛 「……月野うさぎ」

古 幡「あ〜、お前が変な事言うから気になってたけどさー、やっぱ違うって。俺なんて眼中になしって感じ」
 衛 「バカ。去年遊園地行った時に――」
古 幡「気が変わったんじゃない?お前こそ最近――」
  そこへうさぎ、なる、香奈美、桃子達が話しながら入ってくる。
な る「そう言えばさ、前言ってたサーっと来てサーッといなくなっちゃう人、どうなった?」
うさぎ「え!」
桃 子「何それ」
な る「うさぎの――」
うさぎ「ちょっとやだ〜!」

  ハッと見る衛にうさぎも気づく。
うさぎ「あ……」
古 幡「うさぎちゃん、こないだ大丈夫だった?」
 衛 「(曖昧)あ……、うん。ありがと」
な る「何、どうかしたの?」
うさぎ「こないだ、中でちょっと眠り込んじゃって。風邪かな?」
古 幡「びっくりしたよ。丁度衛がいたからおぶってもらえたけど」
うさぎ「え! おぶって……?」


╳    ╳    ╳


  回想。
  うさぎを背負って歩く衛。


╳    ╳    ╳

うさぎ「うそ……」
 衛 「……」

  なる達が「へぇ」という感じで衛を見る。
香奈美「うさぎ、やるー」
うさぎ「やだ、違うって」
  うさぎが衛にわずかに頭を下げる。
うさぎ「その、どうも……ありがと……」
 衛 「別に」
  なるが、「ふーん」としたり顔で見る。

13. 同・一室(本編には無し


  桃子と香奈美が一緒に歌っている
な る「さっき言ってた宝石のオークション、行くでしょ!?」
うさぎ「うん、行きたい!』
な る「まかせて!」
  なるが、含みのある笑い。

14. 同・ルナ部屋



  本を読んでいるレイ、マグカップを抱えているまこと、パソコンの前にルナがいる。
  そこへ入ってくる亜美。
  途端に笑い出すまこと。
まこと「当たり、やっぱり来た」
  レイもちょっと笑っている。
亜 美「え?何?」
まこと「別に集合かかってないのに、みんな来るかどうかって話してたんだ」
亜 美「ああ……、何かクセになっちゃって」
まこと「同じ。家にいてもしょうがないし」
レ イ「うさぎは?」
  亜美、一瞬あるが、

亜 美「クラスの友達と歌ってるみたい」
まこと「ふーん」
  特別の反応はないレイとまことだが、レイは何となく亜美の雰囲気が気になって「?」と見る。
レ イ「何?どうかしたの?」
亜 美「ううん……ただ私達はここに来るのがクセになってるけど、うさぎちゃんは違うんだなって」
まこと「そりゃあ、ああいう性格だし」
亜 美「うん、そうだよね」
レ イ「?」
  ルナはパソコン画面を見詰めている。

15, 同・一室

 

  歌ううさぎを盛り上げる桃子と香奈美。

16. 同・受付(夜)



  亀に二枚目の亀の写真を見せている古幡。
  と、なるが覗き込んで、
な る「かわいい亀」
古 幡「わかる?」
な る「あの、ちょっと教えてもらいたい事になるんだけど」
古 幡「?」

17. ホテル・全景(翌日)

 

 

18 同・ロビー

 


  いかにも金持ちらしい男女が入っていく。
  待ち合わせしているうさぎが見て、小さくため息。
うさぎ「さすが、宝石のオークション……」
  そこへ走って来るなる。
な る「うさぎー! お待たせ」
うさぎ「ううん、まだ香奈美達も来てないし」
な る「ああ、香奈美も桃子も来ないから。私も帰るし」
うさぎ「え?」
な る「大丈夫。かわりの人が来ます」
   入ってくる衛の姿が見える。

うさぎ「え……かわりってまさか……」
な る「何も言わなくてもいいから。はいこれ」
  とメモを何枚か渡す。
な る「地場君の携帯と住所と、誕生日、それから血液型」
うさぎ「なるちゃん!」
な る「頑張れ。じゃね」
  なるが走り去る。
うさぎ「もう、勘違いしてるよ〜」
  そこへうさぎを見つけた衛が近づいてくる。

うさぎ「う〜」
 衛 「おい、どういう事なんだ? 重要な話って」
うさぎ「え?」
 衛 「お前の友達がそう言ってた」
うさぎ「間違い。全部なるちゃんが勝手にやった事だから。ごめん、そういう事で」
  うさぎが慌てて出て行こうとする。
  その時、エレベータから降りてきた上島とぶつかり、上島のカバンが開いてアクセサリーが落ちる。

うさぎ「ごめんなさい!」
  うさぎが慌てて拾おうとして「?」となる。
  が、上島がうさぎを突き飛ばすようにして素早く取り上げる。
上 島「気をつけろ」
  後から来た中島、下村と共に足早に去る上島。
  見詰めているうさぎ。
 衛 「おい、大丈夫か」
うさぎ「あれ……美奈子ちゃんのイヤリング」
 衛 「え?」
うさぎ「間違いないよ! テレビで見た事あるもん。なるちゃんが言っていたけど、オークションで売るつもりなんだよ」
 
 上島を追おうとするうさぎを止める衛。
 衛 「待てよ。どうするつもりだ」
うさぎ「だから宝石取り返して美奈子ちゃんに――」
 衛 「バカか」
うさぎ「何でよ!」
 衛 「こういうのは警察の仕事だ」
うさぎ「あ……」

19. 同・外


  急いで出て来るうさぎと、その後をついて行く衛。
  うさぎはちょうど来る警官を見つける。
うさぎ「おまわりさーん!」


╳    ╳    ╳

 
警 官「愛野美奈子の宝石?」
うさぎ「そうなんです、オークションに出るんです! 早く捕まえてください!」
警 官「あのね。アクセサリーは良く似たようなのがあるんだよ。探偵ごっこはやめて、お母さんとこ戻りなさい」
うさぎ「ちょっと!」
  警官は行ってしまう。
うさぎ「そんなぁ! ひどい! 絶対そうなのに!」
 衛 「無理だな」
うさぎ「やっぱり自分で取り返す」

 衛 「どうやって」
うさぎ「そりゃあセーラームーンに変身――」
 衛 「!」
うさぎ「!」
  お互い知らんぷりをしてごまかす妙な空気が流れる。
 衛 「あ、鳥」
うさぎ「あ、草」

20. 同・地下駐車場


  物陰に隠れているうさぎと衛。
うさぎ「別に手伝ってくれなくていいのに」
 衛 「さっきの警官の態度、ちょっと頭にきたからな。俺達で取り返すのも面白いかもしれない」
  という衛は本当に面白そうな表情をしている。
  見詰めるうさぎは、またすぐ視線をそらし、
 
うさぎ「でも、ここで待ち伏せしてホントに来るの?」
 衛 「さっきアイツらが降りてきたエレベーターは駐車場通りだ。つまり車で来てる」
うさぎ「でもオークションで売っちゃうかも」
 衛 「さっき確かめて来た。今日の出品予定に入ってない。多分、今日は様子見だな」
うさぎ「へぇ……」
  うさぎが感心したように衛を見る。
  衛はさらに身を潜めようとして、うさぎの背中に触れるぐらいの近さで座る。
うさぎ「……」
  緊張のうさぎ。

21. クラウン・中


 
  また亜美、レイ、まことが集まっており、ルナはパソコンを見ている。
まこと「今日はうさぎは?」
亜 美「クラスの子と出掛けたみたい」
まこと「ふーん」
  レイがやはり亜美を見る。
ル ナ「やっぱり気になるわね」
レ イ「え?」
まこと「何? うさぎ?」
ル ナ「ううん。最近、行方不明事件が連続しているの。もしかすると敵かも」
  「!」と見る亜美達。

22. ホテル・地下駐車場


  エレベーターから上島達が降りてくる。
  物陰のうさぎと衛がハッとなる。
 衛 「いいか、さっき打ち合わせた通りだからな」
うさぎ「うん」
  衛、うさぎの肩を叩いて物陰を出る。


╳    ╳    ╳

  車に乗り込む上島達。
  と、窓を叩く衛。
 
  「?」と中本が窓を開ける。
中 本「何だ」
 衛 「あの、オークションのことでちょっと」
  と中を覗き込むようにしていた衛が、いきなり煙幕弾のような物を数個投げ込む。
上 島「うわ!」
  走り去る衛。
  煙の充満する車内から飛び出す上島達が咳き込む。
上 島「あの野郎!」
  その隙にフルフェイスのメットを被ったうさぎが、車の中のカバンを奪って走る。
 
中 本「あー! 泥棒!」
うさぎ「は、そっちでしょ!」
上 島「追え!」
  うさぎを追って走る上島達。
  懸命に走るうさぎ。
  が、転んでしまって上島達との距離が縮まる。
  と、前方に走り込んでくる衛のバイク。
 衛 「うさぎ! 乗れ!」
うさぎ「うさぎが間一髪バイクの後ろに乗り、走り去る衛のバイク。
  咳き込みながら追っていた上島達がへたりこむ。
上 島「馬鹿野郎!」

23. 空き地


 
  衛のバイクが止まり、ころげるように降りたうさぎがへたり込む。
  衛も隣に座る。
  うさぎ、メットをとり、
うさぎ「やったー!」
  と笑う。
  メットを脱いだ衛も笑っている。
 衛 「久しぶりに面白かったな」
うさぎ「あー、美奈子ちゃん喜ぶだろうなー」
 
  心底嬉しそうなうさぎを見詰める衛。
  が、視線に気づいたうさぎに、すぐ目をそらす。
  うさぎも視線そらす。
  会話が続かない。
うさぎ「……」
衛の声「うさぎ! 乗れ!」
  そっと衛を見るうさぎ。
うさぎ「……」
 衛 「……」

24, ビル街

 


  亜美、レイ、まことが来ている。
まこと「この周辺か。行方不明になる人が多いのって」
亜 美「レイちゃん、何か感じる?」
レ イ「ん……、特には……」
  周囲を見回す三人。

25. 空き地


 
  衛が立ち上がる。
 衛 「帰るぞ」
うさぎ「うん」
  その時、背後に現れる先ほどの警官。
警 官「そのカバン、渡してもらおう」
うさぎ「え」
 衛 「あんた、さっきは――」
  その途端、警官から抜け出る妖魔(赤)。
 
うさぎ「!」
  衛が咄嗟にうさぎを庇う。
 衛 「うさぎ!」
  同時に放たれた妖魔(赤)の攻撃に衛が倒れる。
  傷つき気を失う衛。
  「!」と見たうさぎが、妖魔(赤)を振り返る。
  妖魔(赤)はカバンを奪って逃げる。
うさぎ「どうして妖魔が……。 ムーンプリズムパワーメイクアップ!」

26. 某屋内

 


  妖魔(赤)を追って駆け込んでくるセーラームーン。
セーラームーン「ムーンティアラブーメラン!」
  ブーメランを振り向きざまに跳ね返す妖魔(赤)。
セーラームーン「きゃぁ!」
  ひるんだ隙に妖魔が後方へ回り込むが、セーラームーンはジャンプして攻撃をかわす。
セーラームーン「ムーントワイライトフラッシュ!」
  妖魔が消滅する。
  落ちる宝石箱。
  セーラームーンが拾って開けると、中には指輪やネックレスなどがある。
セーラームーン「幻の銀水晶じゃないよね……。何で狙ったんだろ……」

27. 地下通路


 
  帽子を目深に被り、スーツケースを持った美奈子が足早に歩く。
  コートの下に抱いているアルテミス。
アルテミス「窃盗団を利用して敵の目をそらす作戦、成功だね。これでしばらくは行方を知られずにすむ」
美奈子「でもセーラームーンが絡んで来たのは計算外。うまく切り抜けてくれたから良かったけど」
アルテミス「ああ。彼女に何かあったら我々が時間を稼いでいる事も全くムダになる。難しい所だな」
美奈子「でも、あの子強いよ。きっと大丈夫……」
アルテミス「ああ……」
  美奈子が人混みの中に姿を消す。

28. 空き地


  腕の傷を応急処置するうさぎに、目を開ける衛。
 
うさぎ「大丈夫?」
 衛 「ああ」
  腕に触れているうさぎから逃げるように立ち上がった衛が、バイクにまたがる。
 衛 「……送ってく。それ、警察に届けるんだろ」
うさぎ「うん……:
  カバンを抱えたうさぎがバイクの後ろに乗る。
  一瞬躊躇しながらも衛に捕まり――
  バイクが走り出す。
うさぎ「……」
 衛 「……」

29. ビル街


 
  まことが一つくしゃみをする。
まこと「う〜寒……。何もないよ。帰ろう」
亜 美「うん」
  レイは亜美と並ぶ。
レ イ「亜美ちゃん、あんまりお節介な事したくないんだけど」
亜 美「?」
レ イ「うさぎの事で何かあった?」
 
亜 美「え……、ううん、別に」
レ イ「そう……」
  だがその時、ハッと何かを感じるレイ。
レ イ「気を付けて!」
  まことと亜美が「?!」となった瞬間、まことが地面に開いたあり地獄のような穴に落ちる。
まこと「うわ!」
亜 美「まこちゃん!」
  
  まことが徐々に腰まで飲み込まれていく。
  穴の底には妖魔(金)の姿。
レ イ「まこと!」
  亜美とレイが懸命にまことの腕を引っ張る。
レ イ「変身よ――!」
  亜美が頷き――




つづく。