暑いですね。
こんな暑い日はホラー映画でも観て涼しく過ごしましょうか、なんて言いたかったけど、鶴田法男監督・小松彩夏主演の『トーク・トゥ・ザ・デッド』は、そう簡単には拝めないプレミア作品だ。名古屋に来るのは8月24日、駅西シネマスコーレで一週間のみの上映である。といって、いつでもどこでもやってる『謎解きはディナーのあとで』は「いつでもどこでも観られるや」と油断して、まだ観ていない。
今朝は沢井さんが『仮面ライダーウィザード』第47話に出たけど、沢井さんは妊婦の役なので、守られてばかりで変身もできない。そんな沢井さんを尻目に、美奈子の事務所の斎藤社長(池田成志)がこれ見よがしに変身して、しかも監督が舞原賢三って、これ実写版セーラームーン10周年企画なのかな。
10周年といえば、先週末の20周年記念イベントに関しては、コメント欄で議論(雑談か)しつくした感もあって、今はつけ加えることもない。あと、なかなかキュートな仕上がりだったカサリンチュの新曲「夏が終わる前に」のPVも……まあいいや、こう暑いと、何かを考察したり分析したりという気が起こらない。
とにかく暑いよね。
もういいや。今回はお盆シーズンの特別編だ。昨年の7月末、納涼企画としてAct.13の撮影台本紹介をやったのにちなんで、この夏は今週・来週と二週にわたり、Act.15とAct.16の台本を全文、ご紹介したいと思う。唐突な思いつきだがよろしく。
というわけで以下に紹介するのは、実写版セーラームーンの撮影台本、つまりスタッフやキャストが実際に使っていた台本だ。こういうものが一時期Yahoo!オークションなどを通じて外部に出回っていて、それをひろみんみんむしさんや、こっちよ!さんやM14さんといった方々が入手して、で、それをコピーしたりpdfファイルにしたりして、私にご恵送くださっていたのである(私は一銭も払っていない)。M14さんなんか、実物を10冊以上、まとめてドンと送ってくださった。そんなわけで現在私のもとには、飛び飛びながら17冊、いや18冊かな、ともかく全話の三分の一くらいの量の台本がたまっている。で、これを私ひとりのものにしておくのはもったいない、ということで、季節の変わり目に少しずつ紹介しているわけですね。
こうした経緯で、過去にAct.1、Act.8、Act.13、Act.40、Act.48、Final Actの6本の実写版台本を紹介させていただいた。今回のAct.15台本は、こっちよ!さんからのいただきものです。
Act.15は鈴村展弘監督。台本からの削除や変更はほとんどない。あらゆる技巧は、台本の意図をより効果的に映像化することに費やされている。しかもAct.13、Act.14の舞原監督のエモーションをしっかり引き継いでいる。妙な映像的な自己主張はまったく見られない。そういう、石田監督の弟子とは思えない(笑)鈴村監督の至芸を楽しむ回であります。
なお毎度申しあげておりますように、これは実写版セーラームーンマニアのための研究資料として提供するものです。閲覧される皆様は、その点をよろしくご了承ください。
『美少女戦士セーラームーン』Act.15
原作:武内直子/脚本:小林靖子
1. 前回より
妖魔化しそうになるうさぎ。
うさぎのN「新しい敵、クンツァイトに妖魔にされそうになって大ピンチだった私を、亜美ちゃん達が助けてくれました。大感謝!」
うさぎがセーラームーンに変身し、クンツァイトを追い払う
うさぎのN「でももう一人感謝しなくちゃいけないのはタキシード仮面。また危ない所を助けてくれたんだよね」
クンツァイトの剣を止めるタキシード仮面。
うさぎのN「これでみんなもタキシード仮面の事、見直してくれたんじゃ――」
2. クラウン・中
まこと「泥棒は泥棒!」
うさぎ達一同が集まっている。
亜 美「悪い人じゃないと思うんだけど……」
レ イ「何か不吉なものを感じるのは確かよ」
ル ナ「やっぱりタキシード仮面には近づかない方がいいわ」
まこと達が頷く。
うさぎのM「ダメか……」
ガクッと項垂れるうさぎ。
4. 同・自分の部屋(夜)
「おやすみなさい」と挨拶の声がして美奈子が入ってくる。
ふと窓から外を見下ろす美奈子。
美奈子「また妖魔がつきまとっている……」
アルテミス「プリンセスと幻の銀水晶は敵の狙いだからね」
美奈子「何とかしなきゃ。このまま追いつめられたら大変……」
美奈子がカーテンを閉める。
6. 同・居間(朝)
育子が朝食の準備をしている。
食べながらテレビを見ている進悟。
制服のうさぎが入ってくる。
うさぎ「おはよー」
育 子「はい、おはよー。今日はチーズ入りオムレツです」
進 悟「うさぎ、愛野美奈子の家に泥棒が入ったんだってさ」
うさぎ「うそ!」
進悟がテレビを指さす。
映っているレポーター。
レポーター「えー、それで被害状況なんですが、支度から盗まれたのは宝石類で、金額にしてどの程度かは発表されていませんが、事務所の関係者によりますと、愛野美奈子さんがとても大切にしていた物のようです。
うさぎ「えー、美奈子ちゃん、可哀想……」
進 悟「アイドルなのに警備薄いよな」
レポーター「最近、この手の宝石泥棒が頻発しており――」
7. 衛のマンション・中(朝)
テレビを見ている衛。
レポーター「警察でも捜査員を増やして追っている模様です。惜しまれるのは、以前はこういった事件に必ず現れていたセーラーVが、最近姿を見せない事で……」
衛がテレビを消す。
衛 「セーラーVか……」
回想。
アルテミスと共に立つセーラーヴィーナス。
セーラームーン「プリンセス……」
衛のM「俺の記憶に出てくるプリンセスと関係あるのか……。セーラームーン達に聞けば何か……。でも――」
回想。
海岸で肉まんを食べているうさぎと衛。
衛のM「あいつの事はこれ以上―」
電話が鳴りだし、受話器をとる衛。
衛 「もしもし――」
相手の声を聞いて、ハッとなる衛。
衛 「はい、どうも……。……わかってます。でも約束は卒業までですよね。それまでは……俺の勝手に――」
衛がハンカチを握りしめる。
9. 同・中
ベリルの前のネフライトとクンツァイト
ベリル「クンツァイト、セーラー戦士のエナジーを集めるのではなかったのか?」
ワザと穏和に尋ねるペリル。
が、クンツァイトも平然とベリルを観る。
クンツァイト「そう、なかなか元気のある小娘達でした。いずれまた狙ってみましょう」
ネフライト「何がいずれだ! あれだけ大口叩いておいて、よく手ぶらで戻れたものだな! お前など所詮復活し損なった失敗作。おとなしく元の巣に帰ってろ!」
クンツァイト「ネフライト、失敗作失敗作とうるさいが、つまり私を作られたベリル様がマヌケだと言っている訳だな?」
ネフライト「な……!」
ベリル「……」
ネフライト「(焦り)そうではない! 私はお前が――」
ベリル「もう良い!」
ネフライト「は……」
ベリル「クンツァイト、お前はエナジーを集め続けよ。わらわはいつまでもこのような所で燻っているつもりはない」
クンツァイト「お任せを」
一礼して下がるクンツァイトだが、ネフライトの横で一旦止まる。
クンツァイト「知っているか? プリンセスが大切な宝石を盗まれたとか」
ネフライト「何?! まさか幻の銀水晶……」
クンツァイト「可能性はあり、だな。コソ泥に先を越されるとは、お前もよくよくついていない」
ニッと笑って出て行くクンツァイト。
ネフライト「バカな……。妖魔をつけておいたのに……」
ベリル「ネフライト。クンツァイトを退けたくば、幻の銀水晶を早く手に入れよ。マヌケなわらわにかわってな」
ネフライト「! ベリル様……、申し訳ありません!」
頭を下げたネフライトが悔しそうに顔を歪ませる。
ネフライト「クンツァイトめが……!」
11. 同・玄関
登校して来るうさぎの後ろから来るなる。
な る「うさぎ、おはよ!」
うさぎ「おはよー! ねぇ聞いた? 美奈子の話」
な る「ああ、あれね」
うさぎ「ひどいよねー。売ってお金にしちゃうんだよ、きっと」
な る「うちのママが言ってたんだけど、宝石のオークションで、たまにそういう盗まれた物がこっそり出品されたりするんだって」
うさぎ「そんなのあるの? 信じらんない」
な る「でもオークションは面白いよ。すっごい宝石いっぱい集まるし。明日土曜だよね、丁度やってるけど、行く?」
うさぎ「え、入れるの?!」
な る「ママの名前でね」
うさぎ「さっすが有名デザイナー。カッコいい!」
上履きに履き替えていると、亜美も来る
うさぎ「あ、亜美ちゃん、おはよ!」
亜 美「おはよう」
なるがチラッと亜美を見る。
回想。
な る「うさぎ! いるんでしょ?!」
なるを追い返す亜美。
な る「ちょっと……」
亜 美「うさぎちゃん、寝てるの。嘘だと思うなら思ってくれてもいい。私の意地悪だと思ってくれてもいいから、だからお願い……!」
ちょっと目を伏せる亜美。
その亜美を一別したなるが、うさぎの腕をとって歩き出す。
な る「うさぎ、放課後久しぶりにカラオケ行かない?」
うさぎ「え、うん。じゃあ亜美ちゃんも一緒に行こ。今日、塾休みの日じゃなかったっけ」
と、後ろを向く亜美を振り返る。
亜 美「うん……。あ、でも私はいい」
うさぎ「え〜」
なるは知らんぷりしている。
亜 美「……」
12. クラウン・受付(夕方)
古幡が水槽の亀にメス亀の写真を見せている。
古 幡「お前、この子どう? そろそろ結婚考えない?」
いつの間にか入ってきている衛。
衛 「お前、亀より自分の心配しろ」
古 幡「俺はいいの」
衛 「いいって……あいつ、どうなってんだ」
古 幡「あいつ?」
衛 「……月野うさぎ」
古 幡「あ〜、お前が変な事言うから気になってたけどさー、やっぱ違うって。俺なんて眼中になしって感じ」
衛 「バカ。去年遊園地行った時に――」
古 幡「気が変わったんじゃない?お前こそ最近――」
そこへうさぎ、なる、香奈美、桃子達が話しながら入ってくる。
な る「そう言えばさ、前言ってたサーっと来てサーッといなくなっちゃう人、どうなった?」
うさぎ「え!」
桃 子「何それ」
な る「うさぎの――」
うさぎ「ちょっとやだ〜!」
ハッと見る衛にうさぎも気づく。
うさぎ「あ……」
古 幡「うさぎちゃん、こないだ大丈夫だった?」
衛 「(曖昧)あ……、うん。ありがと」
な る「何、どうかしたの?」
うさぎ「こないだ、中でちょっと眠り込んじゃって。風邪かな?」
古 幡「びっくりしたよ。丁度衛がいたからおぶってもらえたけど」
うさぎ「え! おぶって……?」
回想。
うさぎを背負って歩く衛。
うさぎ「うそ……」
衛 「……」
なる達が「へぇ」という感じで衛を見る。
香奈美「うさぎ、やるー」
うさぎ「やだ、違うって」
うさぎが衛にわずかに頭を下げる。
うさぎ「その、どうも……ありがと……」
衛 「別に」
なるが、「ふーん」としたり顔で見る。
13. 同・一室(本編には無し)
桃子と香奈美が一緒に歌っている
な る「さっき言ってた宝石のオークション、行くでしょ!?」
うさぎ「うん、行きたい!』
な る「まかせて!」
なるが、含みのある笑い。
14. 同・ルナ部屋
本を読んでいるレイ、マグカップを抱えているまこと、パソコンの前にルナがいる。
そこへ入ってくる亜美。
途端に笑い出すまこと。
まこと「当たり、やっぱり来た」
レイもちょっと笑っている。
亜 美「え?何?」
まこと「別に集合かかってないのに、みんな来るかどうかって話してたんだ」
亜 美「ああ……、何かクセになっちゃって」
まこと「同じ。家にいてもしょうがないし」
レ イ「うさぎは?」
亜美、一瞬あるが、
亜 美「クラスの友達と歌ってるみたい」
まこと「ふーん」
特別の反応はないレイとまことだが、レイは何となく亜美の雰囲気が気になって「?」と見る。
レ イ「何?どうかしたの?」
亜 美「ううん……ただ私達はここに来るのがクセになってるけど、うさぎちゃんは違うんだなって」
まこと「そりゃあ、ああいう性格だし」
亜 美「うん、そうだよね」
レ イ「?」
ルナはパソコン画面を見詰めている。
16. 同・受付(夜)
亀に二枚目の亀の写真を見せている古幡。
と、なるが覗き込んで、
な る「かわいい亀」
古 幡「わかる?」
な る「あの、ちょっと教えてもらいたい事になるんだけど」
古 幡「?」
18 同・ロビー
いかにも金持ちらしい男女が入っていく。
待ち合わせしているうさぎが見て、小さくため息。
うさぎ「さすが、宝石のオークション……」
そこへ走って来るなる。
な る「うさぎー! お待たせ」
うさぎ「ううん、まだ香奈美達も来てないし」
な る「ああ、香奈美も桃子も来ないから。私も帰るし」
うさぎ「え?」
な る「大丈夫。かわりの人が来ます」
入ってくる衛の姿が見える。
うさぎ「え……かわりってまさか……」
な る「何も言わなくてもいいから。はいこれ」
とメモを何枚か渡す。
な る「地場君の携帯と住所と、誕生日、それから血液型」
うさぎ「なるちゃん!」
な る「頑張れ。じゃね」
なるが走り去る。
うさぎ「もう、勘違いしてるよ〜」
そこへうさぎを見つけた衛が近づいてくる。
うさぎ「う〜」
衛 「おい、どういう事なんだ? 重要な話って」
うさぎ「え?」
衛 「お前の友達がそう言ってた」
うさぎ「間違い。全部なるちゃんが勝手にやった事だから。ごめん、そういう事で」
うさぎが慌てて出て行こうとする。
その時、エレベータから降りてきた上島とぶつかり、上島のカバンが開いてアクセサリーが落ちる。
うさぎ「ごめんなさい!」
うさぎが慌てて拾おうとして「?」となる。
が、上島がうさぎを突き飛ばすようにして素早く取り上げる。
上 島「気をつけろ」
後から来た中島、下村と共に足早に去る上島。
見詰めているうさぎ。
衛 「おい、大丈夫か」
うさぎ「あれ……美奈子ちゃんのイヤリング」
衛 「え?」
うさぎ「間違いないよ! テレビで見た事あるもん。なるちゃんが言っていたけど、オークションで売るつもりなんだよ」
上島を追おうとするうさぎを止める衛。
衛 「待てよ。どうするつもりだ」
うさぎ「だから宝石取り返して美奈子ちゃんに――」
衛 「バカか」
うさぎ「何でよ!」
衛 「こういうのは警察の仕事だ」
うさぎ「あ……」
19. 同・外
急いで出て来るうさぎと、その後をついて行く衛。
うさぎはちょうど来る警官を見つける。
うさぎ「おまわりさーん!」
警 官「愛野美奈子の宝石?」
うさぎ「そうなんです、オークションに出るんです! 早く捕まえてください!」
警 官「あのね。アクセサリーは良く似たようなのがあるんだよ。探偵ごっこはやめて、お母さんとこ戻りなさい」
うさぎ「ちょっと!」
警官は行ってしまう。
うさぎ「そんなぁ! ひどい! 絶対そうなのに!」
衛 「無理だな」
うさぎ「やっぱり自分で取り返す」
衛 「どうやって」
うさぎ「そりゃあセーラームーンに変身――」
衛 「!」
うさぎ「!」
お互い知らんぷりをしてごまかす妙な空気が流れる。
衛 「あ、鳥」
うさぎ「あ、草」
20. 同・地下駐車場
物陰に隠れているうさぎと衛。
うさぎ「別に手伝ってくれなくていいのに」
衛 「さっきの警官の態度、ちょっと頭にきたからな。俺達で取り返すのも面白いかもしれない」
という衛は本当に面白そうな表情をしている。
見詰めるうさぎは、またすぐ視線をそらし、
うさぎ「でも、ここで待ち伏せしてホントに来るの?」
衛 「さっきアイツらが降りてきたエレベーターは駐車場通りだ。つまり車で来てる」
うさぎ「でもオークションで売っちゃうかも」
衛 「さっき確かめて来た。今日の出品予定に入ってない。多分、今日は様子見だな」
うさぎ「へぇ……」
うさぎが感心したように衛を見る。
衛はさらに身を潜めようとして、うさぎの背中に触れるぐらいの近さで座る。
うさぎ「……」
緊張のうさぎ。
21. クラウン・中
また亜美、レイ、まことが集まっており、ルナはパソコンを見ている。
まこと「今日はうさぎは?」
亜 美「クラスの子と出掛けたみたい」
まこと「ふーん」
レイがやはり亜美を見る。
ル ナ「やっぱり気になるわね」
レ イ「え?」
まこと「何? うさぎ?」
ル ナ「ううん。最近、行方不明事件が連続しているの。もしかすると敵かも」
「!」と見る亜美達。
22. ホテル・地下駐車場
エレベーターから上島達が降りてくる。
物陰のうさぎと衛がハッとなる。
衛 「いいか、さっき打ち合わせた通りだからな」
うさぎ「うん」
衛、うさぎの肩を叩いて物陰を出る。
車に乗り込む上島達。
と、窓を叩く衛。
「?」と中本が窓を開ける。
中 本「何だ」
衛 「あの、オークションのことでちょっと」
と中を覗き込むようにしていた衛が、いきなり煙幕弾のような物を数個投げ込む。
上 島「うわ!」
走り去る衛。
煙の充満する車内から飛び出す上島達が咳き込む。
上 島「あの野郎!」
その隙にフルフェイスのメットを被ったうさぎが、車の中のカバンを奪って走る。
中 本「あー! 泥棒!」
うさぎ「は、そっちでしょ!」
上 島「追え!」
うさぎを追って走る上島達。
懸命に走るうさぎ。
が、転んでしまって上島達との距離が縮まる。
と、前方に走り込んでくる衛のバイク。
衛 「うさぎ! 乗れ!」
うさぎ「うさぎが間一髪バイクの後ろに乗り、走り去る衛のバイク。
咳き込みながら追っていた上島達がへたりこむ。
上 島「馬鹿野郎!」
23. 空き地
衛のバイクが止まり、ころげるように降りたうさぎがへたり込む。
衛も隣に座る。
うさぎ、メットをとり、
うさぎ「やったー!」
と笑う。
メットを脱いだ衛も笑っている。
衛 「久しぶりに面白かったな」
うさぎ「あー、美奈子ちゃん喜ぶだろうなー」
心底嬉しそうなうさぎを見詰める衛。
が、視線に気づいたうさぎに、すぐ目をそらす。
うさぎも視線そらす。
会話が続かない。
うさぎ「……」
衛の声「うさぎ! 乗れ!」
そっと衛を見るうさぎ。
うさぎ「……」
衛 「……」
25. 空き地
衛が立ち上がる。
衛 「帰るぞ」
うさぎ「うん」
その時、背後に現れる先ほどの警官。
警 官「そのカバン、渡してもらおう」
うさぎ「え」
衛 「あんた、さっきは――」
その途端、警官から抜け出る妖魔(赤)。
うさぎ「!」
衛が咄嗟にうさぎを庇う。
衛 「うさぎ!」
同時に放たれた妖魔(赤)の攻撃に衛が倒れる。
傷つき気を失う衛。
「!」と見たうさぎが、妖魔(赤)を振り返る。
妖魔(赤)はカバンを奪って逃げる。
うさぎ「どうして妖魔が……。 ムーンプリズムパワーメイクアップ!」
26. 某屋内
妖魔(赤)を追って駆け込んでくるセーラームーン。
セーラームーン「ムーンティアラブーメラン!」
ブーメランを振り向きざまに跳ね返す妖魔(赤)。
セーラームーン「きゃぁ!」
ひるんだ隙に妖魔が後方へ回り込むが、セーラームーンはジャンプして攻撃をかわす。
セーラームーン「ムーントワイライトフラッシュ!」
妖魔が消滅する。
落ちる宝石箱。
セーラームーンが拾って開けると、中には指輪やネックレスなどがある。
セーラームーン「幻の銀水晶じゃないよね……。何で狙ったんだろ……」
27. 地下通路
帽子を目深に被り、スーツケースを持った美奈子が足早に歩く。
コートの下に抱いているアルテミス。
アルテミス「窃盗団を利用して敵の目をそらす作戦、成功だね。これでしばらくは行方を知られずにすむ」
美奈子「でもセーラームーンが絡んで来たのは計算外。うまく切り抜けてくれたから良かったけど」
アルテミス「ああ。彼女に何かあったら我々が時間を稼いでいる事も全くムダになる。難しい所だな」
美奈子「でも、あの子強いよ。きっと大丈夫……」
アルテミス「ああ……」
美奈子が人混みの中に姿を消す。
28. 空き地
腕の傷を応急処置するうさぎに、目を開ける衛。
うさぎ「大丈夫?」
衛 「ああ」
腕に触れているうさぎから逃げるように立ち上がった衛が、バイクにまたがる。
衛 「……送ってく。それ、警察に届けるんだろ」
うさぎ「うん……:
カバンを抱えたうさぎがバイクの後ろに乗る。
一瞬躊躇しながらも衛に捕まり――
バイクが走り出す。
うさぎ「……」
衛 「……」
29. ビル街
まことが一つくしゃみをする。
まこと「う〜寒……。何もないよ。帰ろう」
亜 美「うん」
レイは亜美と並ぶ。
レ イ「亜美ちゃん、あんまりお節介な事したくないんだけど」
亜 美「?」
レ イ「うさぎの事で何かあった?」
亜 美「え……、ううん、別に」
レ イ「そう……」
だがその時、ハッと何かを感じるレイ。
レ イ「気を付けて!」
まことと亜美が「?!」となった瞬間、まことが地面に開いたあり地獄のような穴に落ちる。
まこと「うわ!」
亜 美「まこちゃん!」
まことが徐々に腰まで飲み込まれていく。
穴の底には妖魔(金)の姿。
レ イ「まこと!」
亜美とレイが懸命にまことの腕を引っ張る。
レ イ「変身よ――!」
亜美が頷き――