未だにTTFC(東映特撮ファンクラブ)に入っていない私。沢井美優ファンとして失格ではないかと思うが、がんばります。
さて、気がつけば、2021年の名古屋支部はまったく活動がなかった。そもそも当ブログは実写版セーラームーンを追求するために開設されたのであるが、最後にDVDレビューをしたのは2020年の11月で、Act.17まで終えたところである。それもこれも、戦士の皆様がみな現役でおられることの賜物であり、決して悪いことではないが、ひさしぶりに初心に返って、今回と次回はAct.29とAct.30の台本紹介をしようかなと思う。
ダークサイドに堕ちていた亜美がAct.28でこっちに還ってきてから、ただちにAct.29で黒木ミオを投入するというアイディアが、どこから出てきたものかは分からない。小林靖子が言い出したのではないような気もする。ただ前作『未来戦隊タイムレンジャー』の場合、ちょっと物語内の立ち位置は違うが、主人公のライバル滝沢(笠原紳司)は第28話で登場して、第29話で変身アイテムを手に入れてタイムファイヤーになった。
だからこのあたりで、後半の物語に変化を加える意味で新キャラを投入しよう、でも今から外部戦士を入れると話に収拾がつかなくなるし、実写版オリジナルのキャラクターで行こう、みたいな話し合いがあったのかなあ、とも思う。まったく見当違いかもしれないが。
あと「黒木ミオ」というネーミングね。当時はミュージカルのセーラームーン役が黒木マリナで、しかも実写版が始まってからは、ミュージカルの劇場に「テレビのセーラームーンのキャストは出演しません」という貼り紙が出たりして、そこへ「黒木ミオ」登場という流れはけっこう挑発的だった(と感じたのは私だけか?)。たぶんスタッフは意識してなかったろうけどね。
そんなわけで、オリジナルキャラクター黒木ミオの評価については、私はこれまで留保してきた。そのうち後半を観直しながらきちんと評価したいと思っていたけど、このペースじゃ生きている間にそこまでたどり着けるかも危うくなってきた。なので、久しぶりに台本紹介、Act.29だ。
今回テキストの文字起こしをやりながら思ったのは、事情はどうあれ、黒木ミオ登場によって、Act.29とAct.30はひさびさに学園ドラマっぽいテイスト満載のエピソードとなって、それはそれで楽しい回であった、ということである。できればみなさん、ビデオと比較しながらお読みいただきたい。春菜先生(大寶智子)の音頭で、香奈美(平井愛子)や桃子(清浦夏実)やなるちゃん(河辺千恵子)までもが黒木ミオ(有紗=ダーブロウ有紗)を囲んで記念写真を撮るなか、ひとりだけまじっている男子が山本ひこえもんだったり、ロンドン留学中の地場衛のタイトル表示が英語、というかローマ字で「Mamoru Chiba」になっていたり、ルナ(小池里奈)と元基(黄川田将也=黄川田雅哉)のアドリブの掛け合いがあったり、台本にはぜんぜん書いてない面白要素がいろいろ突っ込まれている。理科の加藤先生(当時は助監督だった加藤弘之)も出演しています。
でもそのぶん、脚本の大事な要素がちょっと堕ちていたりもする。監督は佐藤健光。ふふふ。いかにもケンコーな画面がちらほらあって、そのあたりを笑えるか怒るかが、評価の分かれ目だと思うね。ではご熟読ください。
あ、それとAct.11で、スガオ社長から「マツオ」と呼ばれていた美奈子のマネージャーさんだけど、今回も同じ役者さん(細川智三)なのに、台本上の役名が照井になっているのは謎である。もっとも、セリフのなかや本編では(クレジットも含めて)名字は出ていないので、矛盾は生じていない。
もうひとつ、シーン21に出てくる妖魔が「妖魔(J-3)」て書いてあるんだけど、この(J-3)が意味不明である。まあそんなところかな。
なお当サイトでは過去に計13本の実写版台本を扱っています。(Act.ZERO、Act.1、Act.5、Act.8、Act.12、Act.13、Act.15、Act.16、Act. 28、Act.34、Act.40、Act.48、Final Act)それぞれ、ひろみんみんむしさん、こっちよ!さん、M14さんといった方々から頂戴したものです。
毎回言っていることですが、これは実写版セーラームーンマニアのための研究資料として提供するものです。閲覧されるみなさまは、その点をよろしくご了承のうえ、扱いにはくれぐれもご注意ください。
1. 前回より(本編になし)
滝の前のうさぎと亜美、滝の向こうに見えるまこととレイ。
まこと「亜美ちゃん!」
レ イ「亜美ちゃん! うさぎ!?」
レイ、まこととうさぎが手を伸ばす。
亜 美「みんな……!」
そして亜美も手を伸ばし、そこに戻るブレスレット。
四人の戦士が揃う。
セーラームーン「愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーン! 月にかわって!」
四 人「おしおきよ!」
うさぎのN「やっとです! やっとやっとやっっっと! 敵に操られていた亜美ちゃんが戻ってきてくれました!」
セーラームーン達が力を合わせる。
セーラームーン「ムーンライトアトラクティブアタック!」
妖魔が消滅し――
2. クラウン・中
クラッカーが連続して鳴らされる。
うさぎ・レイ・まこと「亜美ちゃん、おかえりー!」
亜美が笑顔で返礼のクラッカーを鳴らす。
亜 美「ありがとう!」
猫ルナに紙吹雪が舞い落ちる。
猫ルナ「ホントに久しぶりね、みんなが揃うの」
笑顔の四人。
その後ろのボードには、亜美が編んだ手袋が貼ってある。
カラオケのリモコンを手にするうさぎ。
うさぎ「じゃあお祝いに一曲! 当然、愛野美奈子だよね!」
イントロが流れ出す。
うさぎがマイクを亜美に渡し、一緒にステージに引っぱり上げる。
歌い始めるうさぎと亜美。
レイ、まことも笑顔で見る。
美奈子の曲は続き――
3. 走る車(夕方)
ステレオから美奈子の曲が流れている。
マネージャーの照井が運転し、後部座席には美奈子。
美奈子のM「マーキュリーが戻ったし、マーズ達も完全じゃないけど目覚めてる。後はプリンセスの記憶ね」
照 井「美奈子ちゃん」
呼びかけられて、美奈子が我に返る。
照 井「あのさ、ちょっと言いにくいんだけど……」
美奈子「何?」
照 井「こないだ話したCMの話、あれ、ダメになっちゃった」
美奈子「そうなの? 何かトラブル?」
照 井「いやー、他の子にとられちゃったんだよね。ほら、最近、急に出てきて勢いづいてる、例の……」
美奈子「ああ、あの子……。一度、スタジオですれ違った事ある……」
6. スタジオ内(夕方)
カメラマンを前に次々とポーズをキメていくのは黒木ミオ。
美奈子の声「まさかと思うけど……」
カメラに向かって笑顔を見せていたミオが、背中を向けた一瞬、ニッという笑みを浮かべ――
7. 月野家・居間(夜)
夕飯のテーブルでテレビを見ているうさぎと育子、慎吾。
急に進悟が画面に乗り出す。
進悟「あ、黒木ミオ」
うさぎ「え?」
画面に映し出されるミオ
声 「突然現われた大型新人、黒木ミオ。彼女の6本目となる新しいCMが発表された」
健康飲料のCMが流れる。
アップになったミオが投げキス。
ミ オ「カラダ、潤う、××××(商品名)」
進 悟「かわいいよなー」
うさぎ「そう? 愛野美奈子ほどじゃないでしょ」
進 悟「いや、勝ってるね」
うさぎ「(ムッ)そんな事ないって」
育 子「進悟、もうちょっと見る目養わないと、大人になって泣くわよ。この場合は美奈子の方が正解、間違いなし」
うさぎ「うんうん」
進 悟「けど、CMの数、愛野美奈子抜くかもしれないって」
うさぎ「ホントに? うそ~、信じらんない。美奈子ちゃんが一番なのに。もう、こんなの見たくない」
うさぎがチャンネルを替える。
進 悟「あ、何すんだよ」
と、画面にロンドンの風景が映る。
声 「今日はここ、ロンドンの魅力を余すところなくお伝えします」
ちょっと見詰めるうさぎ。
うさぎのM「ロンドン、か……。あそこにいるんだよね……」
画面に映るロンドンの町並み。
8. ロンドン・衛の下宿
ベッドで目を覚ました衛がカーテンを開ける。
テロップ『ロンドン』。
ドアをノックの音がする。
声 「(英語)衛、朝飯食いに行かないか」
衛 「(英語)ああ、今行く」
シャツを羽織り、出て行こうとするが、一隅の鏡にゾイサイトの姿がある事に気づく。
衛 「(溜息)またお前か」
ゾイサイト「いつまで前世を拒み続けるつもりです。あなたの進むべき道は決まっているのに」
衛 「……全て前世に決められているなら、今の俺は何だ」
ゾイサイト「あなたは、あなただ」
振り切るように出ていく衛。
9. 同・廊下(本編になし)
ゾイサイトの声「プリンセスとマスターは前世から結ばれている……」
クンツァイトの声「お前は我らを裏切り、そしてこの星は滅んだ……」
10. ダーク・キングダム・一室
ピアノの前のゾイサイト。
ゾイサイト「マスター……」
壁際にいるクンツァイト。
クンツァイト「前世を知れば、己の罪に怖れおののく事になるだろう。何も知らないまま死なせてやったらどうだ」
ゾイサイト「……お前は本当にマスターの命を奪えるのか? 四天王一、忠誠心に篤いと言われたお前が」
ゾイサイトを見詰めるクンツァイト。
フラッシュ
倒れたゾイサイト達の中で叫ぶクンツァイト。
クンツァイト「それも忠誠の一つ……、かもな」
ゾイサイト「……」
11. 同・メタリアの間
クイン・メタリアの光を見詰めるベリル。
ベリル「見える……。わらわが地上に君臨するこの星の未来が……。エンディミオン、今度こそ――」
そこへ来るジェダイトが一礼する。
振り返るベリル。
ベリル「ジェダイト、例のモノは?」
ジェダイト「は、ベリル様にお貸し頂いた力で、予想以上の出来です。必ず、幻の銀水晶を手に入れるのでしょう」
ベリル「楽しみだな……。わらわの力が加わっているとあればなお……」
12. 通学路(朝)
黒木ミオのポスター。
なる、香奈美、桃子と一緒に登校するうさぎ。
な る「あー、黒木ミオねー。何か急に出てきたよね」
うさぎ「美奈子ちゃんよりCM増えてるんだって。許せないよ、美奈子ちゃんの方が全然いいのに」
な る「まぁねー、私も美奈子の方が好きだな」
桃 子「うん。かな」
香奈美「どっちかって言えばね」
うさぎ「だよねー! やっぱ美奈子ちゃんの歌いいもん! 私、もっと応援して、黒木ミオなんか――」
といううさぎの表情が――
13. 学校・教室の中
「!」と驚愕に変わる。
なる達他の生徒も同様の表情。
亜美も少なからず驚いて教壇の方を見ている。
教壇には桜田、そして隣りにいるのはミオ。
桜 田「転校生を紹介します、って言っても、もうみんな知ってるみたいね。有名人だけど、今日からはみんなと同じ一組の生徒です。クラスメートとして仲良くするように」
ミ オ「黒木ミオです。よろしくお願いします」
まだポカンとしている生徒達。
だが、ついに桃子が思わず叫ぶ。
桃 子「うそー!」
堰を切ったように生徒達が騒ぎ出し――
休憩時間。
生徒達に囲まれているミオ。
桃 子「同級生になれるなんてウソみたい!」
香奈美「私、実はすごいファンでー!」
少し離れて亜美と見ているうさぎが呆れた表情。
が、女生徒達は「私も、私も」と口を揃える。
ミ オ「ありがとう」
ニコニコしているミオ。
桃 子「あの、サインもらっていいかな」
ミ オ「どうぞ」
生徒達が歓声を上げてノートなどを差し出す。
亜 美「すごい人気だね」
うさぎ「うん……」
桜田までカメラを構えている。
桜 田「はーい、じゃ写真写真。入りたい人入ってー」
加わろうとするなるの腕を引っ張るうさぎ。
うさぎ「何よ、なるちゃん、愛野美奈子の方がいいって言ってたくせに」
な る「いやー、やっぱ、遠くのスターより近くのアイドルっていうかさ。ちょっとどいて」
なるがミオと一緒に写真を撮る。
うさぎ「もー、美奈子のライバルなのに」
亜 美「でも、クラスメートだし」
うさぎ「だけどさー」
サインをするミオはチラリとうさぎと亜美を見る。
14. 同・体育館
バレーボールの授業。
うさぎのいるAチームとなるのいるBチームが対戦。
Aには桃子、Bにはミオと香奈美が入っており、亜美は副審をしている。
なかなか上手いなるのサーブを、明後日の方へレシーブするうさぎがありつつも、それなりにボールがBチームに返る。
トスを上げるなる。
な る「はい、香奈美!」
香奈美が打とうとするが、軽く押しのけるようにしてジャンプするのはミオ。
ミオの強烈なアタック。
うさぎがまともに食らってひっくり返る。
ミ オ「あ、ごめんなさい」
転がるボール。
呆然と見る一同。
次の瞬間、Aチームの人間までも一緒になって拍手。
な る「スゴイ……! 黒木さんバレー部だったの?」
ミ オ「ううん、まぐれ。横取りしてごめんね」
香奈美「全然!」
桃 子「カッコいい!」
ムーッと起き上がるうさぎ。
亜 美「うさぎちゃん、大丈夫?」
うさぎ「平気平気。美奈子ちゃんのライバルになんか負けられないんだから」
構えるうさぎに、ミオのサーブ。
が、ボールは手前でグッと落ちて、うさぎはベチャッとはいつくばる。
以下ランダムに、
ミオのアタックや、回転レシーブ。
うさぎの転倒や、顔面レシーブ。
見守る亜美があり――
な る「あと一点!」
またミオにトスが上がる。
ブロックしようとするうさぎ。
うさぎ「たー!」
しかし、ミオはフェイントでボールを緩くコートへ。
うさぎ「あ!」
着地したうさぎの足を、ミオが素早く蹴っている。
うさぎ「イッ……!」
亜 美「!」
審判が笛を鳴らし、Bチームが勝利。
生徒達がみなミオに拍手する。
足をさすっているうさぎ。
ミ オ「ごめんなさい、当たっちゃった?」
うさぎ、虚勢で
うさぎ「ううん、全然」
なる達がミオを取り囲む。
な る「黒木さん、上手すぎ!」
ミ オ「そんな、ホントにまぐれだから」
うさぎチームの桃子達までミオの方へ行っている。
うさぎ「悔しい~」
足踏みするうさぎ。
亜美は笑顔のミオを見詰める。
亜 美「……」
チャイムが鳴り――
15. クラウン・近く(本編になし)
亜美とまことが一緒に帰っている。
まこと「へぇ、うさぎがそんなに敵対心持つなんて珍しいね」
亜 美「あっちこっちイタイから、家で湿布してから来るって」
まこと「そんなに? 黒木ミオも大変だな、ライバルにされちゃって」
亜 美「うん……。でもちょっと……」
まこと「?」
イメージ。
うさぎへのミオのアタック。
足を踏むミオ。
まこと「わざとうさぎを? それは考えすぎじゃない?」
亜 美「うん。そうだよね……」
二人はクラウンの階段を降りていく。
16. 同・受付
入ってくる亜美とまこと。
と、カウンターでは古幡がルナと話している。
古 幡「だからね、ちっちゃい子だけだと入れないんだよ。パパかママが一緒じゃないと――、あ、まこちゃん」
まこと「ルナ!」
ル ナ「ちょうど良かった」
古 幡「あれ、知り合い?」
まこと「うん、まぁ」
亜 美「どうしたの?」
ルナは年間パスを持っている。
ル ナ「私も一度使ってみたかったんだけど、この亀吉さんがダメだって」
古 幡「亀吉はこっち。俺は古幡元基」
まこと「とにかく使ってみたいわけ? じゃ、はい」
まこと、ルナの手をとってパスを見せる。
まこと「(古幡に)ごめんね」
古 幡「ううん、全然」
まこと「行こ」
奥へ行くまこと達。
古 幡「子供好きなんだぁ。優しいなぁ」
18. 控え室
照井と一緒にいる制服の美奈子。
美奈子「え、十番中学? 黒木ミオが?」
照 井「うん、何か転向したらしいよ。忙しいんだから、まともに通えないと思うけど。じゃ、着替えたらスタジオで」
照井が出ていく。
カバンから顔を出すアルテミス。
アルテミス「美奈子、確信があるわけじゃないんだろ?」
美奈子「うん、でも十番中学に転校するなんて……」
19. 公園
ブランコに座っているミオ。
うさぎが脇に立っている。
うさぎ「あのー、何か、用事?」
ミ オ「月野さん、私の事、嫌い?」
うさぎ「え……!」
ミ オ「私を見る目が怖いから」
うさぎが思わず目をこする。
ミ オ「やっぱり、嫌いなんだ……」
俯いたミオが、やがて涙をパタパタ膝にこぼす。
うさぎ「ちょっと待って、別に嫌いとか、そういうんじゃ……」
ミ オ「じゃあ、友達になってくれる?」
うさぎ「え……」
ミ オ「イヤなんだ……」
また落ちる涙にうさぎが慌てる。
うさぎ「ううん、ごめん。私、愛野美奈子のファンだから、つい対抗しちゃって……。でも、クラスメートだもんね、やっぱり友達だよ」
ミオがパッと笑顔を向ける。
ミ オ「ホント⁈ じゃあうさぎちゃんって呼んでいい? 私の事はミオって呼んで」
うさぎ「う、うん……」
ミ オ「やった! これで友達だね」
ミオが大きくブランコをこぐ。
とまどいで見るうさぎ。
うさぎのM「美奈子ちゃん、ごめん。私、ライバルと友達になっちゃう……」
前後に揺れるブランコの上で、ミオの唇が一瞬歪む。
20. クラウン・中
入ってくる学校帰りのレイ。
が、中を見て驚く。
レ イ「何してるの⁈」
亜美とまことが、送風機で空中に舞う薄い紙片を指先で捕えようと飛んだり跳ねたりしているのだ。
まこと「何か、戦士の特訓だって」
レ イ「特訓?」
テーブルで悠然とマニキュアを塗っているルナ。
ル ナ「まこちゃんと亜美ちゃんの戦士の力を目覚めさせるためよ。集中力を高めるの」
疑いの視線で舞う紙片を見るレイ。
ル ナ「前世でやった事があるはずよ」
レ イ「そう?」
亜 美「私、知っているような気が……」
ル ナ「亜美ちゃんも前世の記憶が戻りかけてるのね。戦士の力ももう目覚めてるはずよ。亜美ちゃんはそれだけの戦いをしてきてるんだから。きっかけが掴めてないだけ」
まこと「でも、こんなのでホントに……」
ル ナ「信じなさい」
強風にすると、さらに紙片が舞う。
レイの方にも飛ぶが、レイはサッと指で挟む。
亜 美「すごい……」
ル ナ「さすがね」
そこへアルテミスが入ってくる。
アルテミス「みんな、ヴィーナスからの伝言だ」
ル ナ「アルテミス」
まこと「イヤな予感って、黒木ミオが?」
アルテミス「美奈子が気にしてるんだ。一度スレ違った時に、感じたって――」
亜 美「美奈子って?」
レ イ「ああ、亜美ちゃんにも言っておくわ。ヴィーナスの正体は愛野美奈子なの」
亜 美「!」
まこと「ただうさぎはあんな風だからさ、まだ教えてないんだ」
亜 美「そう……」
アルテミス「とにかく、プリンセスと同じ学校というのが気になる。気を付けておいてくれ」
頷く一同。
21. 広場
うさぎとミオがソフトクリームなどを食べている。
ミオはサングラスに帽子だが、それでも時々振り返る人はいる。
しかし、ミオは気にせず
ミ オ「あー、何か嬉しい。私、仕事のせいで友達少なくて……。こんな風に遊んだ事ないの」
うさぎ「そうなんだ……」
うさぎはミオを見詰める。
うさぎのM「私ってば、勝手にライバルとかに」
ミ オ「ねえ、うさぎちゃん、好きな人いる?」
うさぎ「え?」
いきなりの質問に面食らう。
ミ オ「いるんでしょ? 友達なんだから話してよ」
うさぎ「う、うん……」
ミ オ「どんな人?」
うさぎ「どんなって……、とっつきにくいけど、頼りになって、ちょっと寂しそうな顔するんだけど、笑った顔は優しいかな。でも、すぐバカとか言うの。それと……、多分、ずっと昔から知ってる……」
突然、ミオがソフトのコーンを握りつぶす。
一瞬こわばっている表情。
クリームまみれになる手。
うさぎ「やだ、大丈夫⁈ どうしたの」
ミ オ「ああ、何か急に。何でだろ」
うさぎ「洗わなきゃ」
手荒い場で手を洗うミオ。
そこへ、悲鳴が聞こえてくる。
うさぎが「⁈」と見る向こうに妖魔(J-3)
うさぎ「!」
ミ オ「きゃー!」
妖魔は、細い矢を飛ばして攻撃してくる。
うさぎ「ミオちゃん、逃げて」
ミ オ「いやー」
ミオはうさぎにしがみついたまま離れない。
うさぎ「ミオちゃん!」
うさぎはミオを離そうとするが、ミオは離れない。
動きが鈍り、攻撃を受けてしまう二人。
ミ オ「う……」
うさぎ「ミオちゃん、大丈夫⁈」
迫る妖魔に、ミオを連れて逃げるうさぎ。
うさぎのM「早くミオちゃんをどこかに……」
だが、妖魔はうさぎ達の行く手に先回りしてくる。
うさぎ「!」
妖魔が攻撃しようとするのを素早くかいくぐるうさぎ。
うさぎ「ミオちゃん、こっち!」
うさぎがミオを連れて走りながら携帯を取り出す。
うさぎ「もしもし! ルナ!」
うさぎとミオが走る。
妖魔は自分の攻撃で舞い上がった粉塵にうさぎ達を見失う。
23. 広場
周囲を手当たり次第攻撃する妖魔。
と、目の前の妖魔に炎、水流、雷が走る。
駆けつけているマーズ、ジュピター、マーキュリー。
しかし、妖魔はマントで攻撃を跳ね返す。
三人のタンバリン攻撃も同様。
マーズ「ダメだわ、あのマント。何とかしないと――」
妖魔が放った細い糸がマーズ達を縛る。
ジュピター「この……!」
もがくがとれない。
そこへ駆けつけて来るうさぎ。
うさぎ「みんな! ムーンプリズムパワーメイクアップ!」
うさぎがセーラームーンに変身。
セーラームーン「ムーンティアラブーメラン!」
妖魔の糸が断ち切られる。
マーキュリー「うさぎちゃん、あの妖魔のマント、みんなの力を合わせないとダメみたい!」
セーラームーン「わかった」
セーラームーンがスティックを取り出す。
マーズ達はタンバリンを持つ。
が、力を合わせようとした時、妖魔の攻撃がマーキュリーのタンバリンを弾き飛ばす。
マーキュリー「!」
セーラームーン達「!」
宙を飛んだタンバリンを妖魔が掴もうとする。
マーキュリー「ダメ!」
咄嗟に伸ばした手から激しい飛沫が迸り、タンバリンをまた空中高く上げる。
マーキュリー「⁈」
そしてタンバリンを虫取り網でキャッチするのはセーラールナ。
セーラールナ「マーキュリー、それよ! 今の呼吸を忘れないで!」
虫取り網がロッドに戻り、タンバリンをマーキュリーに投げ返す。
マーキュリー「今のが……」
マーズ「うさぎ、もう一度よ!」
セーラームーン「うん!」
一同が再び力を合わせる。
セーラームーン「ムーンライトアトラクティブアタック!」
強い光が妖魔に走る。
妖魔のマントが燃えていく。
もがき逃げて行く妖魔。
24. 物陰
うさぎがミオのケガにハンカチを巻いてやる。
ミ オ「ありがとう……」
うさぎ「病院には行った方がいいよ」
後方から見ているレイ、まこと、亜美。
まこと「ヴィーナスの思いすごしだな。別に怪しいとこはない」
レ イ「そうね……。何も感じない」
亜 美「うん……」
ミオに笑顔を見せるうさぎ。