実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第549回】新春企画 これがAct.ZERO台本だ!の巻

 

 

賀 春

 

 今やっているAct.13のレビューが終わるとAct.14、新年のご挨拶回になるわけだが、はたしてそういうふうにうまく行くか分からないので、今年は久しぶりにAct.14の画像でオーソドックスに新年をコトホギます。

 

 

 あとNakoさん、またお誕生日が来てしまいましたね。Nakoさんも昨年、大台にのってしまわれたそうですが、今年は北川景子さんが大台ですからだいじょうぶ。(何がだいじょうぶなんだか。)ま、ともかく、おめでとうございます。

 

 

 私はあいかわらず、ダラダラ酒を呑みながら紅白歌合戦を見ているうちに寝ちゃった。紅白歌合戦では、「アニメ紅白歌合戦」のコーナーの、AKB48のみなさまによる「ムーンライト伝説」が良かった。『セーラームーンCrystal』アニメ製作決定時のももクロのコスプレが、あまりにもナニだっただけに、なんというかAKB48の底力のようなものを感じました。でもそれ以外は、全体的になんか地味で、話題もない。こういうときは、手間はかかるが頭を使わないで済む年越し特別企画、実写版セーラームーン台本紹介である。
 昨年、小松彩夏支援活動に力を入れてきたことの締めくくりとして(もちろんこれからもこまっちゃんを応援しますけど)、今回は読む側も頭を使わないですむビデオオリジナルの特別篇、Act.ZEROの台本全編をお届けしたいと思います。

 

 

 このAct.ZERO「セーラーV誕生!」は、実写版本編の放送終了後、およそ半年過ぎた2005年の3月にリリースされたオリジナルビデオで、実写版関連では最後の映像作品となる。内容は文字通りの「エピソード・ゼロ」で、実写版Act.1が始まる直前の物語。もともとセーラームーンの物語がセーラーVを前提として始まっているので、セーラーVの誕生秘話は本編を理解するためにも必要なお話、ともいえる。
 まあさっきも言ったように、特別に頭を使う難しい作品ではない。大人のファン向けの楽屋落ちや本編への仕掛けもいろいろあるが、基本は、本来の視聴者である小さいお友達向けの、明るくシンプルな特撮ドラマ。お屠蘇気分でリクツ抜きに楽しんでもらえればいいです。

 

 

 あるいは、ちょっとマニアックに、これを機会にAct.ZEROの冒頭シーンとAct.36の回想シーンそれぞれの「美奈子とアルテミスの出会い」の違いを確認するとか。

 

 

 私が特に好きなのはシーン20である。舞台劇のような展開で、ロケ地がAct.26に出てきた月の宮殿のバルコニー(YCC ヨコハマ創造都市センター:旧第一銀行横浜 支店)だ。それに「タキシード仮面はAct.35で、美奈子がセーラーVであることをずっと前から知っていたと言っているが、それはいつ、だれに教えられたのか」という謎が解明される。いろいろと楽しい。
 まあそういった気になる点は、次回の冒頭で検討してみることにして、とりあえず今回はテキストをご紹介しよう。
 ちなみに当サイトでは過去に計11本の実写版台本を紹介しています。(Act.1Act.5Act.8Act.12Act.13Act.15Act.16Act. 28Act.40Act.48Final Act
 毎回言っていることですが、これは実写版セーラームーンマニアのための研究資料として提供するものです。閲覧されるみなさまは、その点をよろしくご了承のうえ、扱いにはくれぐれもご注意ください。

 

 

『美少女戦士セーラームーン』Act. ZERO
原作:武内直子/脚本:小林靖子

 

1. 街(夜)

 


  クリスマスの曲が流れる。
  ツリーが飾られ、サンタがビラを配っている。



司 会「それでは今週のCDアルバム売り上げランキング第一位! デビュー以来誰もその勢いを止める事が出来ない奇跡の歌姫、待望のファースト・アルバム、『イミテーション』愛の美奈子!」
  モニターにジャケットが映る。
  クリスマスソングが響き――

2. 病院・屋上(夜)


  満月の下、小さく口ずさまれるクリスマスソング。



  歌っているのは、一人たたずんでいる美奈子。



  満月を見上げる
美奈子「……」

3. 街(夜)

 


 声 「強盗だ!」
  驚きで振り返る人々。
  コンビニから飛び出した強盗が、乱暴に駆け抜ける。
  突き飛ばされた通行人が悲鳴を上げる。
  追いかけるコンビニ店員だが、強盗は見えなくなる。

4. 病院・屋上(夜)



  空を見上げていた美奈子が「?」となる。
  月に小さな黒い展が現れている。
  さらに見つめていると、点は段々大きくなり、次の瞬間には美奈子の顔の上に覆い被さる。
アルテミス「こんばんは」
美奈子「キャア!」
  美奈子に払いのけられて、着地するアルテミス。
アルテミス「ごめん、驚かないで。僕はアルテミス」
美奈子「……?」

アルテミス「君を探していたんだ」
美奈子「何、これ……ぬいぐるみがしゃべってる……」
アルテミス「まぁ信じられないとは思うけど、オモチャじゃない」
美奈子「ロボット?」
アルテミス「でもない」
  美奈子はしゃがみこんでアルテミスを見る。
美奈子「こんにちは、おはよー、キューちゃん」
アルテミス「……僕が九官鳥に見えるのか?」

  その時、けたたましいパトカーのサイレンが聞こえてくる。
美奈子「⁈」
  アルテミスが柵の間から下を覗く。
  走るパトカーと、逃げる強盗が見える。
アルテミス「ちょうどいい。言葉で説明するよりやってもらった方が早い」
  と取り出した携帯を美奈子に向けてボタンを押す。
美奈子「え?」
  と言った瞬間には、美奈子はセーラーVの姿に。




セーラーV「え⁈ うそ……! 何これ!」
アルテミス「いいから僕の言う通りにしてくれ」

5. 街(夜)


  クリスマス風景は続いている。

6. 路地(夜)



  逃げ込んでくる強盗
強 盗「何とか逃げ切ったか――」
  と息をつく。
  だがその時――
セーラーVの声「クリスマスに強盗なんて、サンタクロースの罰が当るわよ」
  ギクッと振り返った塀の上からセーラーVが飛び、強盗の退路をふさぐ。
強 盗「誰だ、お前!」
セーラーV「正義の戦士! セーラー服美人戦士、セーラーV参上!」


強 盗「はぁ? 何だそりゃ! とにかくどけ!」
  強盗がナイフを取り出す。
セーラーV「!」
アルテミス「武器を使え! ポケットにある!」
  セーラーVは、三日月カッターを取り出すと投げる。
  だが、カッターは明後日の方向に飛んでいく。
強 盗「?」
セーラーV「あれ……?」
強 盗「ふざけてんじゃねぇぞ!」


  強盗が飛びかかろうとする。
  が、次の瞬間、切断された大きな枝が強盗を直撃。
  気絶する強盗。
セーラーV「うそ……」
  アルテミスがホッと息をついて出てくる。
アルテミス「最初にしては上出来だ。アイドルは度胸もいいな」
  セーラーVは改めて自分の姿を見る。
セーラーV「すごい、私にこんな力があるなんて」
アルテミス「君は今日から戦士だ」


セーラーV「戦士……。そっか……」
  夜空を見上げるセーラーV
セーラーV「……アルテミスだっけ。ありがとう。これって最高のクリスマスプレゼントかも」
  と、ジャンプして塀の上に立つ。
  が、バランスを崩して向こう側へ転げ落ちる。
セーラーV「きゃあ!」
アルテミス「(ため息)本当の使命は、もう少したってからだな」
  アルテミスも後を追ってジャンプ。
  輝く満月

7. メインタイトル

 

 

8. 月野家・全景

 


  セミの声と夏の太陽。

9. 同・居間



  育子が朝食の準備をしている。
  テレビを見ながら食べている進悟。
育 子「うさぎー! 早く起きなさい! 遅れるわよ!」
  うさぎが入ってくる。
うさぎ「もう起きてる」
育 子「あら珍しい。今日なんかあるの?」
うさぎ「別に、私だって起きる時は起きるの。子供じゃないんだから」
進 悟「愛野美奈子の新曲発売日」
育 子「あー、楽しみで目が覚めちゃったんだ。お子ちゃまねえ」
  進悟をにらんで座るうさぎ。



  テレビではニュースが流れている。
キャスター「またセーラーV関連です。昨夜未明、××区十番町の宝石店に男が侵入しようとしましたが、駆けつけたセーラーVによって未遂に終わりました。犯人は逃走しました」
うさぎ「またセーラーV出たんだ。カッコいいよねー。私もやってみたいな、変身して悪と戦うの」
進 悟「ホント、お子ちゃまだな」
  うさぎが進悟の頭をこづく。
育 子「また十番町だなんて、やーね。この近所ばっかりじゃない、宝石泥棒」
キャスター「十番町では、度重なる犯行といまだ犯人を逮捕出来ずにいる警察に不満の声が高まっている模様です」
育 子「ホントよー、角の交番なんて目と鼻の先で泥棒に入られちゃってるんだから。非難囂々」

10. 派出所・前

 

  「石や物を投げないでください」と張り紙がある。

11. 商店街


  登校するうさぎ。
  別の道からなるが駆けて来る。


な る「うさぎ、おはよ!」
うさぎ「あれ、なるちゃん。何でこっち?」
な る「ちょっとね、角の交番に寄ってこうと思って」
うさぎ「交番? 何かあったの?」
な る「ほら、ウチのママ、宝石の店もやってるでしょ? 今十番町で泥棒に入られていない店、そこだけなんだよね。だからちょっと心配でさ。昨日からママ仕事でいないし」
うさぎ「そっかぁ。でも、あの交番評判悪いみたいなんだけど」
な る「うそ」

12. 交番・中



  うさぎとなるが遠慮がちに覗く。
  が、途端にガシャンという物音にビクッとなる。
  そこでは、血相変えて飛び出そうとする赤井を、黒井が懸命に止めている。
赤 井「おのれー! なぜ我々が一般市民にあんな侮辱を受けなければならないんだ!」
黒 井「赤井、落ち着け!」
赤 井「税金泥棒とまで言われて黙っていられるか!」
黒 井「警察官が一般市民に手を出したら終わりだぞ!」
赤 井「離せ!」
  その時、ガタッと音がして、奥から白井がよろめき出る。
白 井「よせ……」


  そして白井に追いすがる花子。
花 子「白井さん、ムリしないで! 身体が弱いのに!」
黒 井「ただの貧血だ」
白 井「赤井、思い出せ……、我ら十番派出所四天王は、常に、市民と共に……あることを……」
  ガクッとなる白井。
花 子「白井さん! 白井さーん!」
  赤井は机に拳をぶつける。
  その方を叩く黒井は、薬を赤井に渡す。


黒 井「いつものやつだ。これ飲んで落ち着け」
  『アミタン2000』とある薬をバリバリ噛む赤井。
黒 井「ったく……。ほら、カマ子、泣くな」
花 子「花子ですー! それってセクハラですー!」
  頭を抱える黒井は、その参上を呆然と見ているうさぎとなるに気づく。
黒 井「(ニッコリ)何か用かな?」
うさぎ「い、いえ……」
黒 井「遠慮しないで。我々は四天王と呼ばれてるお巡りさんだよ」
な る「結構です。うさぎ、行こ!」
  二人が逃げるように走り去る。


花 子「あんな子達にまで嫌われてる……」
黒 井「……これも、あの宝石泥棒が好き勝手に荒らし回るせいだ。こうなったら絶対に……」
花 子「逮捕しましょう!」
黒 井「復讐だ……」
一 同「え⁈」
黒 井「私は全てに対して復讐する!」
赤 井「……この人が一番怖いな……」
花 子「うん……」


 

13. 通学路



 うさぎ、なる、香奈美、桃子が歩いている
香奈美「あー、あの派出所ね。ダメだよ、あそこは」
桃 子「ね。四人しかいないのに四天王とか言ってんだもん」
な る「でもさー、警察がダメだったらどうすればいいわけ? セーラーVに頼めれば一番いいけど」
うさぎ「それだよ!」
な る「え?」
うさぎ「私達でやろうよ。セーラーVになって、なるちゃんち警備するの」
な る「それはぁ……」


 首傾けるなる達だが、
な る「やる! 面白そう」
うさぎ「でしょ⁈」
香奈美「実は私、あの衣装着てみたかったんだよねー。私だったらセーラーKかな」
桃 子「じゃ私セーラーM」
うさぎ「私、セーラーラビット」
  そんな様子を、少し離れて登校していた亜美が見る。
亜 美「……」






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  イメージ。
  セーラーVの格好をした亜美。
亜 美「セーラーA」


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  亜美に小さく笑みが浮かぶ。
  が、何気なく振り返るうさぎに、慌てて笑みをひっこめる。


 

14. クラウン・全景

 

 

15. 同・受けつけ

 


  古幡が亀吉を水槽に入れる。
古 幡「今日からここがお前のウチだからな。結構いいだろ。いつかは嫁さんも見つけてやるからな」
  古幡の携帯が鳴る。
古 幡「もしもし、陽菜ちゃん?」

16. 路上

 


  携帯で話している陽菜
陽 菜「ごめんねー、さっき電話出れなくて。何?」

17. クラウン・受付

 


古 幡「うん、たいしたことないんだけどさ、最近衛どうかした?いや、携帯つながんない事多いし、何か付き合い悪くなったっつーか」

18. 路上

 


陽 菜「んー、今ちょっと忙しいだけだと思う。衛、今度引っ越すから。(笑って)ケンカじゃないよ。ちょっとね、やりたい事あるみたいだから――」

19. 衛のマンション・中

 

  引っ越しの荷物が散らばっている。
  ソファにかけられているタキシード、マント、仮面。
  その仮面を手に取るのは衛。
 衛 「……」

20. 路上 ジュエリーショップ・前(夕方)



  タキシード仮面が物陰から店を窺う。
  店の前にはガードマンが立っている。
  紙袋を抱えてやって来るうさぎ、なる、香奈美、桃子。
な る「ここだよ、入って」
香奈美「すごいね。これは泥棒に狙われそうな感じ」
うさぎ「うー、何かドキドキしてきた」
桃 子「私も」
  四人が中へ入っていく。
  その後ろの不動産屋で、まことが店員と話している。


まこと「どうしてもダメですか」
店 員「いくら保証人がいても中学生の一人暮らしは難しいね」
まこと「そうですか……」
  歩き出すまことが、近くの縁石を蹴る。
まこと「ッツー……」
  片足で飛びながら、二人の男、木田、林とすれ違う。
  二人はショップの様子を窺っている。
木 田「よし、店の様子は掴めたな」


 林 「ボスに報告だ」
  二人がその場を離れていく。
  それを、近くの建物の屋根から見おろしているセーラーVとアルテミス。
セーラーV「あいつらだね。やっぱり狙って来た」
アルテミス「奴らが襲ってない宝石店はここが最後だからな」
セーラーV「今度こそ捕まえてやる。アジトまで後つけて、ボスも一緒に――」
うさぎの声「あ――! 愛野美奈子――!」
  動転して、両手であれこれ顔を隠すセーラーV。


セーラーV「な、何でバレたの? やだ、マズイ!」
  セーラーVが慌てて逃げる。
アルテミス「美奈子、アジトは⁈ ちょっと!」
  アルテミスが後を追う。
  タキシード仮面がそれを見る。
タキシード仮面「セーラーVは愛野美奈子だったのか」
  タキシード仮面がマントを翻して立ち去る。
  店から飛びだして来るうさぎ。
うさぎ「美奈子の新曲買ってくるから! すぐ戻るから!」
  うさぎが猛スピードで走り去る。


 

21. 倉庫・全景(夜)

 

 

22. 同・中(夜)



  キューティ・ケンコーのアジト。
  入ってくる木田と林。
木 田「まだ来てないみたいだな、ボス達」
 林 「もうそろそろじゃないか?」
  と言っている所へ、突然ヘリの音が響き出す。
木 田「! この音は……!」
 林 「ボスだ! 並べ並べ!」
  どんどん大きくなるヘリの音の中、並ぶ二人。
  扉が開き、入ってくるキューティ・ケンコー。
  後ろには、ヘリの音をまき散らすデッキを持った森。



木田・林「我らがキューティー・ケンコーに光あれ!」
  ビシッと手を挙げる木田と林。
ケンコー「オッケィ!」
  森が音を止める。
木田・林「ご苦労様っす!」
  イスを用意する森。
ケンコー「で、どうなの?、木田ちゃん、今夜の進入態勢は」
木 田「はい、ばっちりです」
ケンコー「オッケー。時間はムダにしたくないわ。行きましょ」
  立ち上がるケンコー。
ケンコー「本番大勢!」

23. ジュエリーショップ・前(夜)


  電気が消え、ガードマンが立っている。



  そこへ、キラキラした粒子が飛んでくる。
  表情がぼんやりしてくるガードマン。

24. CDショップ(夜)


  うさぎが袋を持って出てくる。 
うさぎ「あー良かった、見つかって。やっぱ発売日に買わなきゃね」



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25. ジュエリーショップ・全景(夜)

 

 

26. 同・金庫室(夜)



  暗い中、入ってくる木田、林、森。
  懐中電灯で中を見回す。
  が、突然スポットライトが一点を照らす。
三 人「⁈」
  その光の中に立つのは、セーラーVもどきの格好をしたなる、桃子、香奈美
な る「待ちなさい! 宝石を渡すわけにはいかないわ!」
 林 「何だ? お前達は」
香奈美「見てわかるでしょ、セーラーVの仲間よ」
な る「セーラーN」


香奈美「セーラーK」
桃 子「セーラーM」
な る「おとなしく帰らないとセーラーVを呼ぶわよ!」
  三人がポーズ
  顔見合わせる木田達。
ケンコーの声「上等じゃないの」
  パッと投げられた蜘蛛の糸になる達が捕まる。
なる達「きゃあ!」
  ゆっくりと現れるケンコー。


ケンコー「私達もセーラーVには恨みがあるのよ。仲間ならキッチリ仕返しさせてもらうわよ〜」
  迫るケンコーに、なる達が悲鳴を上げる。
  その時、突然ケンコー達に消火器の粉がまかれる。
ケンコー「⁈」
 森 「うわっ」
  むせるケンコー達
  入口で消火器を構えているのはうさぎ。
うさぎ「みんな!」
な る「うさぎ!」


ケンコー「何よ、あんたもセーラーVの仲間ってわけ?」
うさぎ「うさぎの戦士、セーラーラビット!」
  一応ポーズのうさぎ。
な る「うさぎの戦士……?」
香奈美「まんまじゃん……」
うさぎ「えい!」
  うさぎは空になった消火器をケンコーに投げる。
ケンコー「(平気で)痛いじゃない」
うさぎ「!」
  ケンコーの手がうさぎに伸び――


╳    ╳    ╳


  ケンコーに捕まっているうさぎ。
  隅に固まって座らされているなる、香奈美、桃子。
  木田達が宝石を次々と袋に入れる。
  うさぎはもがくが、ケンコーはびくともしない。
ケンコー「おかしいわね、この店ならもっと上等の物があるはずよ。どこにあるの? お嬢ちゃん?」
  睨まれたなるが黒いケースを指さす。
ケンコー「ああ、これ」
  ケンコーが手にとると、ケースには小さい鍵がついている。
  気づいたうさぎが素早く鍵を奪う。
ケンコー「何すんの! 返しなさい!」
  だがうさぎは鍵を飲み込んでしまう。


ケンコー「あ! このバカ!」
な る「うさぎ……」
ケンコー「吐け! こら!」
  が、うさぎは頑として口を開けない。
 森 「ボス、そろそろ引き上げないと」
ケンコー「もー、仕方ないわね。アジトで腹かっさばいてやるわ」
うさぎ「!」
ケンコー「撤収大勢!」
  ボンッと煙が上がり、ケンコー達は立ち去っている。
な る「うさぎ!」
  取り残されたなる達。

27. 倉庫・全景(夜)

 


 

28. 同・中(夜)



  テーブルに置かれた黒いケース。
  林達が人体切断マジックの箱にうさぎを入れている。
ケンコー「まったく手間かけさせちゃって」
  うさぎはジタバタするが、頭と手だけ出して、箱に収められてしまう。
うさぎ「これってまさか――」
ケンコー「そのまさかよ」
  切断用の刃をギラリと取り出すケンコー。
うさぎ「!」

29. 交番・中(夜)

 


  飛び込んでくるなる、香奈美、桃子。
な る「大変なんです」



  「何」と一斉に振り返る四天王。
  ひるむなる達。

30. 倉庫・中(夜)



  ケンコーが刃を手に箱の前に立つ。
ケンコー「普通はタネも仕掛けもあるんだけど、今回はナシ。行くわよ」
  ケンコーが刃をゆっくり箱に差し込んでいく。
うさぎ「うそでしょ……、やだー!」
  うさぎが叫んだ瞬間、三日月カッターが刃を弾く。
ケンコー「誰⁈」
  振り向いた入口で、戻ってきたカッターをキャッチするのはセーラーV。
セーラーV「正義の戦士! セーラー福美人戦士、セーラーV参上」


  うさぎの顔がパッと明るくなる。
うさぎ「セーラーV」
ケンコー「どうしてここが……!」
セーラーV「一足先に、宝石のケースに発信器を付けておいたのよ」
  黒いケースに付けられた発信器。
 林 「そんなバカな……。いつそんなマネを!」
セーラーV「正義の戦士に不可能はないわ」
  脇にいるアルテミスがつぶやく


アルテミス「って、僕が付けたんじゃないか」
セーラーV「キューティー・ケンコー、今度こそ刑務所に入ってもらうわ」
ケンコー「生意気な……! 戦闘態勢」
  森達がトランプ、ステッキ、マジック用の剣などで一斉に襲いかかる。
  セーラーVはそれらを全てかわし、森達の獲物を次々と叩き落としていく。
うさぎ「すごい……! セーラーV、頑張って!」
  そして、目の前に跳ばされて来た森の頭を、近くの棒で一撃。
うさぎ「やった」


  そんなうさぎをアルテミスが見る。
アルテミス「あの子は……まさか……」
  セーラーVに一撃を食らって倒れる林、木田。
  だがその時、ケンコーの放った花火が、紙吹雪を散らしながら、セーラーVの周囲で炸裂。
セーラーV「!」
  腕を押さえるセーラーV。
うさぎ「! セーラーV」
  ケンコーが投げナイフを手にする。


ケンコー「ここまでなのはあんたの方みたいね」
  後じさるセーラーV。
アルテミス「セーラーV!」
  そこへ扉をぶち破って飛び込んでくる派出所四天王達。
ケンコー「⁈」
  転がって拳銃をケンコー達に向ける。
黒 井「動くな!」
花 子「すごい! 白井さん、ホントにアジトですよ!」


赤 井「どうやってわかった」
白 井「心を、とばせ……」
黒 井「良くやった!」
ケンコー「く……」
  その隙に、セーラーVがケンコーのナイフを蹴り上げる。
黒 井「逮捕だ、逮捕!」
  赤井達が森達に飛びかかっていく。
ケンコー「やめて! さわんないでー!」


うさぎ「良かったぁ」
  その騒ぎの中、件の黒いケースを持ち去る影がある。
  セーラーVの視線が走る。
  ケンコー達は次々に手錠をかけられていく。
ケンコー「(ガックリと)年貢の収め時態勢……」
  ふと、うさぎはセーラーVがいない事に気づく。
うさぎ「あれ……? セーラーV……」



31. 同・外(夜)



  黒いケースを持って走るタキシード仮面。
  しかし、その足下に三日月カッターが刺さって立ち止まる。
  振り返ったそこにいるセーラーV。
タキシード仮面「……」
セーラーV「あなた、何者?」
タキシード仮面「……タキシード仮面」
セーラーV「タキシード仮面……。そのケース、返してもらうわ」
  セーラーVが走る。
  タキシード仮面も走り、二人が交差する。
  その瞬間、光が走る。
タキシード仮面「!」
セーラーV「!」


╳    ╳    ╳


フラッシュ。


前世の映像(セレニティ)をごく短く。



╳    ╳    ╳

  強い衝撃を受けて、膝をつくセーラーV。
  黒いケースが落ちる。


タキシード仮面「今のは……」
  後じさったタキシード仮面が走り去る。



  まだ動けないでいるセーラーVにアルテミスが歩み寄る。
アルテミス「どうかしたのか……?」
セーラーV「アルテミス……、私……思い出したわ……」
アルテミス「え……?」
  セーラーVが立ち上がる。



セーラーV「プリンセス……、私の使命……、私の、本当の名前……」
アルテミス「美奈子……」
  振り返るセーラーVの表情は一変している。
セーラーV「……」
アルテミス「そうか……。僕も見つけた」

32. 道(夜)


  歩くうさぎの前方から来るなる、香奈美、桃子。



な る「うさぎ!」
うさぎ「なるちゃん! 香奈美、桃子!」
  駆け寄るうさぎの笑顔。
アルテミスの声「あの子が、セーラームーンだ……」

33. 屋上(夜)

 


  アルテミスが月を見上げる。
アルテミス「ルナ……、見つかったよ」

34. 宇宙空間

 


  丸くなったルナが地球へと落ちていく。

35. 火川神社・境内(夜)

 


  月を見上げていたレイが、ふと体を抱きしめる。
レ イ「何か……起こりそうな気がする……」


 

36. 月野家・うさぎの部屋(夜)

 


  うさぎが窓から月を見る。
うさぎ「あー、今日は面白かった!」

37. 塾前(夜)

 


  亜美が月を見上げる

38. 道(夜)

 


  同じくまことも。

39. 宇宙空間

 


  ルナが大気圏に突入して赤くなる。



ル ナ「……アチッ」

40. 月野家・うさぎの部屋(夜)

 


うさぎ「あ、流れ星」
  一筋、尾を引いて流れる光。



うさぎ「これからもいい事ありますように……」



Act.1へ






以上、みなさま
本年もよろしくお願いします