実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第890回】2023新春お年玉企画:Act.23 台本の巻


2023年 賀春



旧年中は御愛顧ありがとうございました。



本年もどうぞよろしくお願いします


 新年早々どうした、ということですが、要するに、お盆や正月休みに時々やっている実写版台本まるごと紹介という企画です。まあ、第何話を紹介するかっていうのはその時の運みたいなもので必然性はないが、今回はなんとあのAct.23である。
 この台本は昔むかしM14さんから譲り受けたものである。M14さんはけっこうAct.23への思い入れが強くて、ブログ「M14の追憶」を開設後まもない2005年の3月、実に13回にもわたってAct.23だけの回顧レビューを書かれている(その1)(その2)(その3)(その4)(その5)(その6)(その7)(その8)(その9)(その10)(その11)(その12)(その13)。で、その後ネットオークションでAct.23台本を落札され、これに基づいて2008年の6月から7月にかけて6回ほど検証を行っている(その1)(その2)(その3)(その4)(その5)(その6)。
 実際、Act.23は興味深い。ただ話が佳境に入って、人物関係が複雑なので、一見さんお断りの世界にもなっている。メインはうさぎとレイとの信頼関係の話なんだが、その周囲に、美奈子の病院通いを知って、何かしら疑いをいだくレイ、それをかわし、レイを挑発する美奈子の虚勢と、裏腹に、自分に万が一のことがあったとき、戦士のリーダーを託せるのはやっぱりマーズ、という内なる信頼の芽生え、一方ダーク・キングダムでは、ネフライトを自分専用のM男君として調教し始めるダーク・マーキュリー、進んでベリル様のM男化するジェダイト、そして留学直前でブルーになっている地場衛を前世の記憶にぐいぐい引っ張り込もうとするゾイサイトという、錯綜するキャラクターのタペストリを、小林靖子はあやとりするみたいに楽しんで編んでいる。さすが『岸辺露伴』第3シーズン7・8話も絶好調(だと思う。まだ観ていない)。そして北川景子のキャラクターソング「桜・吹雪」のお披露目回でもある。

 そんなややこしいエピソードを、ヘリコプターのローター音も騒々しくキューティー・ケンコー佐藤健光が監督しているというんだから、もうマニアにはたまんない。私も15年前、いや17年前か、字だらけのめちゃくちゃ長文のレビューを書きまくっています(ここ)。
 正月でのんびり読むには少々ハードな素材かも知れないが、できれば実写版ビデオを用意して、上に挙げた先行研究を参照しながら(笑)じっくり取り組んで欲しい資料である。たとえば赤字で「本編に無し」と注意書きしている箇所以外にも、今回はあちこちのシーンで、セリフのカットを含む本編との異同が多々あります。特に陽菜とまことは出番をかなり削られてしまったね。(まことは予告編では使われていたカットが本編では不使用でした。)

 なお当サイトでは過去に計14本の実写版台本を扱っています。(Act.ZEROAct.1Act.5Act.8Act.12Act.13Act.15Act.16Act. 28Act. 29Act.34Act.40Act.48Final Act)それぞれ、ひろみんみんむしさん、こっちよ!さん、M14さんといった方々から頂戴したものです。
 毎回言っていることですが、これは実写版セーラームーンマニアのための研究資料として提供するものです。閲覧されるみなさまは、その点をよろしくご了承のうえ、扱いにはくれぐれもご注意ください。



『美少女戦士セーラームーン』Act. 29
原作:武内直子/脚本:小林靖子

1. 前回より

  ダークマーキュリーとセーラームーン達の戦い。
うさぎのN「敵に捕まって心を変えられてしまった亜美ちゃんが、私達を襲ってきたの。でも、亜美ちゃんと戦うなんて絶対絶対出来ない!」
  変身を解くうさぎ。
うさぎ「亜美ちゃん、捕まっちゃったのに気づかなくてごめんね。一人にしてごめん……」
うさぎのN「そんな亜美ちゃんへの気持ちとか、悲しい気持ちとかで一杯になった時――」
  光を放つセーラームーン。

  一瞬、元の姿に戻りかけるダークマーキュリー。
  現われたクンツァイトがマーキュリーを連れて姿を消す。
セーラームーン「私、今……」
ヴィーナス「あなたの力よ。目覚め始めたんだわ」
セーラームーン「プリンセス……」
  亜美の手袋。
うさぎのN「その時、私も、レイちゃんも、まこちゃんも、なぜか信じられたんだよね。力を合わせればきっと亜美ちゃんを取り戻せるって——」
ヴィーナス「もう少しよ、自分達の力の全てを思い出して」
マーズ「自分たちの力……」

╳    ╳    ╳

ベリル「また、クイン・メタリアの力が大きくなった……。今度こそ、わらわが地上に君臨する! 必ず……」

╳    ╳    ╳

  ゾイサイトの石が光る。

╳    ╳    ╳
  聞こえてくるピアノの音に立ち止まる衛と陽菜。
陽 菜「やだ、誰かいるの?」
 衛 「ちょっとここで待ってろ」
  中に入った衛が部屋のドアを開ける。
 衛 「⁈」

  部屋の中央に、陽炎のように浮かんでいるのはグランドピアノを弾くゾイサイトである。
 衛 「お前は……」
ゾイサイト「マスター・エンディミオン……」
  衛が立ちつくし……

タイトル

監督:佐藤健光

2. 衛のマンション・部屋の中(夜)

  ゾイサイトを見詰める衛。

ゾイサイト「やはり間違いない……。マスター、あなただ」
 衛 「お前は、あの時……」

╳    ╳    ╳

  回想(12話)。

  タキシード仮面の前で消えるゾイサイト。
ゾイサイト「マスター……エンディミオン……」

╳    ╳    ╳

 衛 「……」
ゾイサイト「思い出してほしい。かつて、エンディミオンと呼ばれていた頃を」

 衛 「俺が……? お前は誰なんだ。俺の事を知っているのか」
ゾイサイト「遙か昔に……」
  ゾイサイトがピアノを弾き始める。
ゾイサイト「静かに心を合わせて――」
陽菜の声「衛、大丈夫?」
  ハッと振り返る衛
  ゾイサイトもピアノを止める。

陽菜の声「ねぇ、入るよ?」
 衛 「いや、ちょっと待て」
  衛が急いで廊下へ出ていくとドアを閉める。
ゾイサイト「……」

3. 同・玄関(夜)

  中へ入ろうとしている陽菜。
  奥から出てくる衛。
 衛 「陽菜——」

  慌てて棚に足などをぶつけつつも陽菜を止める衛。
陽 菜「大丈夫?」
 衛 「ああ……。ちょっと、外でコーヒーでも飲もう」
陽 菜「いいけど……、あの音何だったの」
 衛 「え? ああ、CD切り忘れてた。行こう」
陽 菜「あ、コーヒーなら私が淹れるよ」
  とまた上がりかけるが、
 衛 「いいから、外のコーヒーが飲みたいんだ」
  衛が陽菜を押し出すようにして出て行く。
  一瞬中を見る衛。
衛のM「何で今頃になって……」
  ドアを閉める。

4. 同・部屋の中(夜)(本編になし

  部屋の中にゾイサイトの姿はない。

5. ダーク・キングダム・全景

  ピアノの音が響いている。

6. 同・メタリアの間

  「!」と耳を澄ますベリル、クンツァイト、ジェダイト、ネフライト。
ネフライト「あのピアノは……!」

ベリル「ゾイサイトが復活したか……」
クンツァイト「ゾイサイトが……?」
  余り面白くなさそうなクンツァイト。
ベリル「クイン・メタリアの力が大きくなったせいであろう。また一歩復活が近づいたのだ。ジェダイト、よくエナジーを集めたな」
ジェダイト「は。ベリル様のため、さらにエナジーを!」

ベリル「(頷き)ネフライト、そろそろお前の存在価値を見せてもらいたいものだが」
ネフライト「! は……。幻の銀水晶、今しばらく時間を!」
ジェダイト「時間の問題ではないと思うがな」

  フッと笑うクンツァイト。
  ジェダイトを睨むクンツァイト。
ネフライトの声「ジェダイトめ——」

7. 同・通路

  ネフライトが来る。
ネフライト「クンツァイトにすり寄るとは……!」
  と、前方の岩壁に寄りかかっているマーキュリー。

マーキュリー「あなたもそうしたければ私が口を利いてあげましょうか」
ネフライト「黙れ! 誰がクンツァイトなどに!」

マーキュリー「じゃあせいぜい頑張る事ね。ただし、セーラー戦士には手を出さないで。私の獲物だから」
  マーキュリーの後ろ姿を睨むネフライト。
ネフライト「生意気な……! なぜこの私がセーラー戦士にまであのような口をきかれねばならんのだ!」
  激しく岩壁をたたき付けるネフライト。
  堂々と通路を去っていくマーキュリー。
ルナの声「亜美ちゃんを元に戻すのは、やっぱりみんなの力だと思うの」

8. クラウン・中(日替わり)

  うさぎ、まこと、レイ、ルナがいる。
ル ナ「セーラームーンが力を放った時、マーキュリーが元の姿に戻りかけたでしょ」

╳    ╳    ╳

  回想。
  ダークマーキュリーの姿が一瞬マーキュリーになる。
ル ナ「あの力をもっと強くすれば……」

レ イ「そのためには、私達もうさぎみたいに、自分達の力に目覚めないといけないわけね」
ル ナ「そうよ。戦士の力はもっと大きいはずなの」

  まこと、自分の手を見詰めたりしながら、
まこと「方法がわかればな」
レ イ「そうね……」
うさぎ「大丈夫、私だって出来たんだから、怜レイちゃんとまこちゃんならすぐだよ」
まこと「だといいけど」
  うさぎがマイクを手にする。
うさぎ「ほら、みんなで歌って元気だそうよ」
レ イ「だから、カラオケは嫌いって何度言えばわかるの」
  しゅんとなるうさぎ。
まこと「レイの歌、聞いてみたいけどね」
レ イ「歌知らないし」
  とりつくしまのないレイ。

9. 火川神社・境内(夕方)

  レイが帰ってくる。

╳    ╳    ╳

  回想。

ヴィーナス「自分たちの力の全てを思い出して」

╳    ╳    ╳

レイのM「どうやったら……」
  お参りし終わった母親1とナナが帰ろうとしている。
母親1「あ」
  会釈する母親1

レ イ「こんにちは。ナナちゃん退院したんだ」
母親1「おかげさまで」
レ イ「良かったね」
ナ ナ「あのね、愛野美奈子がお見舞いに来てくれたんだよ」
レ イ「え?」

10. 大学病院・全景(日替わり)

11. 同・プレイルーム

  入院中の子供達に囲まれて、サインをしている美奈子がいる。
  オープンになっている廊下へ来たレイが、それを見る。
  明るい笑顔の美奈子。

美奈子「はい、早く退院できるといいね」
  子供達は興奮気味で、看護師なども何人か見に来ている。
  しばし見つめているレイ。
  と、女の子がレイにも紙とペンを差し出してくる。
レ イ「え? 愛野美奈子はあっちよ」
  女の子の母親2も来て、
母親2「美奈子ちゃんと同じ事務所のタレントさんなんですってね。マーズ・レイ子さんでしょ?」
レ イ「はい?」

母親2「美奈子ちゃんが教えてくれたわよ」
レ イ「な……!」
  レイが見ても知らんぷりしている美奈子。
母親2「サイン、お願いします」
女の子「お願いします」
  真剣な女の子を断り切れないレイ。
レ イ「……はい」
  レイは横目で美奈子を睨みつつもサインを書く。
  吹き出しそうな顔を隠す美奈子。

12. 同・廊下

  子供達に手を振って別れる美奈子が、レイの元へ歩いてくる。
レ イ「どういう事、私がタレントだなんて」

美奈子「不意打ちしたバツよ。私の事は追わない約束でしょ」
レ イ「あなたがここに毎月来ているって聞いたから、何かあるのかと思って」
美奈子「健康診断のついでに、入院してる子供達励ましてるの」
レ イ「毎月?」
美奈子「体調管理のためよ。それより、セーラームーンが最初に目覚めるなんて意外だったわね。あなたが先だと思っていたのに」
レ イ「……リーダーになるはずだったのに、情けないって言いたいんでしょ」
美奈子「そうね。力が目覚めるには心の問題も大きいんだけど、リーダーとして何か欠けてるんじゃない?」
  悔しそうなレイ。
  そこへ歩み寄る看護師。

看護師「あのー、美奈子さんから聞いたんだけど、午後からマーズ・レイ子さんがミニライブして下さるんですって?」
レ イ「え……」
看護師「子供達大喜びです」
  子供が数人、遠くからレイを見詰めている。
  レイが看護師に会釈しつつ美奈子を脇へ引っ張る。

レ イ「ちょっとどういう事」
美奈子「だから、バツよ」
看護師「あのー、何か必要なものありますか?」
レ イ「いえ……あの、でも、私全然有名じゃないし……」
看護師「そんな事全然。楽しみが少ないんで、子供達元気出ると思います」
レ イ「……」
美奈子「リーダーの力でみんなを協力させれば?」
  レイが美奈子を睨む。
レ イ「こんな事で仲間を使わないわ」
美奈子「そう。じゃあ私は検診があるから。頑張って、マーズ・レイ子さん?」

  立ち去っていく美奈子を睨むレイ。

13. クラウン・中

  ドサッと歌本をテーブルに置くレイ。
レ イ「やるわよ。何よ、ライブぐらい……!」
  レイが意を決してステージに上って、マイクに手を伸ばす。
レ イ「あ、あ」
  音が小さい。

  カラオケ機の前にしゃがみ込んで、恐る恐るボタンを押したり、回してみたりする。
  突然鳴り出す大音量。
レ イ「きゃー!」
  と叫ぶ悲鳴もいきなりハウリングを起こし、耳を塞ぎながら慌ててボタンを押したり、最後には叩いたりするレイ。

14. 同・診察室

  診察台に横になって点滴を受けている美奈子がちょっと笑みを浮かべる。
美奈子「ちょっといじめすぎたかな」

  脇にいるアルテミス。
アルテミス「まったく君は……」
  カーテンの向こうでは、医者二人が画像データなどを見つつ、声を潜めて話している。
医者A「……やはり半年、でしょうか」
医者B「本人には?」
医者A「(頷き)はい……」
  美奈子は無言で横たわっている。
  アルテミスが点滴をする美奈子の腕をなめる。

15. 衛のマンション・玄関前


  帰って来る衛
  ドアを開けようとして一瞬躊躇する。

16. 同・部屋の中

  そっと扉が開き、衛が中を窺うように顔を覗かせる。
  中には誰もいない。
  ホッとして部屋に入ると、ソファに座る。

╳    ╳    ╳

  イメージ。
ゾイサイト「思い出してほしい。かつて、エンディミオンと呼ばれていた頃を」

╳    ╳    ╳

衛のM「確かに、あのゾイサイトという男を知っている気がする……。エンディミオンが俺のかつての名前……」
  振り切るように立ち上がる。
衛のM「けど、今更知ってどうなる……!」
  棚の上にあるパスポート類
 衛「もう、決めたんだ……」

17. ダーク・キングダム・一室

  ピアノの前のゾイサイト。
ゾイサイト「……」

18. 月野家・うさぎの部屋

  携帯が鳴りうさぎが出る。

うさぎ「あ、レイちゃん?」
レイの声「うさぎ……、その……元気?」
うさぎ「え? 元気だけど……。どうかしたの?」

19. クラウン・中

   憮然とカラオケ機の前に座り込んで携帯を握っているレイが、一瞬言いよどみ、頭を押さえる。

レ イ「……助けて、ほしいんだけど」

╳    ╳    ╳

  うさぎが雑誌やらCD、ルナを抱えて入ってくる。
うさぎ「レイちゃん、お待たせ! レイちゃんがライブやるなんて、もうびっくりしたよー」

ル ナ「今まで実力を隠してたのね」
レ イ「別に……やりたいわけじゃないわよ」
うさぎ「いいステージにしようね!」
レ イ「……」
  仏頂面のレイ。

╳    ╳    ╳

  歌入りの曲が流れ、レイが歌詞を睨んでブツブツつぶやいている。
  うさぎは雑誌をめくって、
うさぎ「あ、衣装これ良くない?」
レ イ「別に、何でも」
うさぎ「そう……」
  表情の硬いレイ

20. ダーク・キングダム・全景(本編になし

21. 同・通路

  ネフライトが石を置く
ネフライト「妖魔よ出でよ。我が力を与える」
  ネフライトが手から光をそそぎ、石が妖魔に変わる。
ネフライト「今度こそプリンセスを倒し、幻の銀水晶を……!」

22. 大学病院・診察室

  横になっている美奈子の点滴が交換される

23. クラウン・中

  ステージに立っているレイ。
  カラオケが終わる。
うさぎ「んー」
ル ナ「んー」
レ イ「だめなの?」
うさぎ「合ってるけど……レイちゃん、顔怖いよ」
レ イ「……」
ル ナ「楽しく歌った方が子供も喜ぶんじゃないかしら」
  レイはマイクを置き、席に戻る。
うさぎ「レイちゃん、そんなにライブやるのイヤ?」
レ イ「違う……。情けないのよ、自分が」

うさぎ「そんなの、まだ慣れてないからだよ」
レ イ「そうじゃなくて、こんな事でうさぎ達に助けてもらったりして」
うさぎ「……」
レ イ「これじゃ戦士の力が目覚めないのも当然だわ」
うさぎ「レイちゃん……」
ル ナ「あ、大変よ! そろそろ時間じゃない⁈」
うさぎ「ホントだ! レイちゃん急ご!」
  慌ててそこら辺のものをかき集めるうさぎ。
レ イ「……」

24. 大学病院・プレイルーム

  楽屋代わりに仕切られたスペースで、携帯でステージ衣装に変身するレイ。
  うさぎとルナが一緒にいる。
  会場には子供達や親、看護師が集まっている。
  曲のイントロが鳴り始め、子供達が拍手。

  出ようとするレイにうさぎが、
うさぎ「レイちゃん……、イヤかもしれないけれど、私は嬉しかったけどな。レイちゃんが助けてって電話くれた時」
レ イ「……?」
うさぎ「ちょっとはレイちゃんに信用されてるのかなーって」
レ イ「……信用?」
うさぎ「だって、信じてなきゃ頼れないじゃん」
  うさぎがレイの背中を押す。
うさぎ「頑張って!」

レ イ「……」
  レイがステージに進み、歌い始める
美奈子の声「リーダーとして何か欠けてるんんじゃない?」
レイのM「私に欠けていたもの……」
  歌うレイ。
  その時、舞台袖でルナがハッとなる。
ル ナ「妖魔だわ……」
うさぎ「え」
  レイも気づいてルナの方を見る。

うさぎの声「私が行くから。レイちゃんは後で」
  身振りと口パクで。
うさぎの声「一曲だけでも歌ってあげて」
レ イ「……」
  駆け出していくうさぎ。
  見詰めるレイ。
レイのM「仲間を……信じる……」
  レイが声を張り上げて歌う。

25. 同・病室

  美奈子の横でアルテミスがハッとなる。
アルテミス「美奈子……」
  途端にカーテンを破って妖魔が現れる。

美奈子「ヴィーナスパワーメイクアップ!」
  美奈子がヴィーナスに変身。
  窓から外へ走る。

26. 同・地下

  走り来たヴィーナスが追って来た妖魔を振り返る。
  ヴィーナスが光線を放つ。

  素早く避ける妖魔。
  そこへ駆けつけてくるうさぎとルナ。
ル ナ「プリンセス!」
  ハッと見るヴィーナス。
うさぎ「ムーンプリズムパワーメイクアップ!」
  うさぎが変身。

27. 同・プレイルーム

  レイが歌い続ける。

28. 同・地下

  妖魔をセーラームーン、ヴィーナスで前後を挟む。
  二人の同時攻撃。

セーラームーン「ムーントワイライトフラッシュ!」
ヴィーナス「ヴィーナスラブミーチェーン」
  妖魔が破裂するように消滅する。
  が、同時に白い粘液質の体液が飛び散り、二人を絡め取る。
ヴィーナス「え!」
セーラームーン「何これ」

  もがくがとれない。
アルテミス「プリンセス!」
ル ナ「セーラームーン!」
  そこへ現われるネフライト。
ネフライト「かかったな、セーラー戦士ども」
ヴィーナス「!」
ネフライト「貴様等のせいでどれほど私は——」

  ネフライトがヴィーナスに腕を伸ばす。
アルテミス「!」
  が、それを牽制するように放たれる炎。
ネフライト「!」
  現れるマーズ。
セーラームーン「レイちゃん」
マーズ「炎と情熱の戦士セーラーマーズ! 火星にかわっておしおきよ!」
ネフライト「まだいたのか……!」

  ネフライトがマーズと対峙する。
  身構えるマーズ。
  見詰めるセーラームーン達。
  ネフライトが手のひらに光球を出現させる。
  その時、マーズの周囲に炎が乱れ飛ぶ。
ル ナ「セーラーマーズ……」
  ネフライトが放つ光球。
マーズ「妖魔退散!」

  先ほどよりも激しい炎が渦を巻いてネフライトの光球を弾き、ネフライトを包み込む。
ネフライト「うあ!」
  ネフライトがもだえ、姿を消す。
  同時に自由になったセーラームーンが呆然と自分の手を見詰めるマーズに駆け寄る。
セーラームーン「レイちゃん、助けに来てくれると思ってた!」

ル ナ「マーズ、戦士の力が目覚めたのよ」
マーズ「戦士の力」
ヴィーナス「欠けていた何かが見つかったみたいね」
マーズ「……」
ヴィーナス「でもまだ全てじゃない。思い出さなきゃいけないことはたくさんあるわ」
アルテミス「君達ならきっと思い出せるよ」

  立ち去っていくヴィーナスとアルテミス
マーズ「プリンセス……」
セーラームーン「レイちゃん、やったね! 後はまこちゃんが揃えば、きっと亜美ちゃん戻ってくるよ」
レイ(*原文ママ)「ええ」
  頷くマーズ。
セーラームーン「じゃぁ、それを願ってカラオケやりますか」

マーズ「カラオケは嫌い」
セーラームーン「え! 歌ってたじゃん」
マーズ「あれは特別。二度とやらないわ」
セーラームーン「えー」
  歩き出すマーズ。
セーラームーン「レイちゃーん」
  追うセーラームーン。

29. ダーク・キングダム・通路

  ネフライトが戻ってくる。
  傷にうめき、膝をつく。
  と、その前に立って見下ろすダークマーキュリー。
ネフライト「見るな……!」

ダークマーキュリー「(フッと)みじめね」
  言い捨てて立ち去る。
ネフライト「く……」
  屈辱に顔を歪ませたネフライトが武器を取り出す。
  長く伸びる武器。

  立ち上がり、ダークマーキュリーの後ろへ迫る。
  気づかないダークマーキュリーの後ろで、ネフライトが武器を振り上げ——


つづく



改めまして今年もよろしく!