すんません、前回の調べにミスがあった。舞原監督が分割画面の変身バンクを使ったのはAct.22のみ(うさぎとレイとまことの同時変身)と書いたけど、もう1回あるのが洩れてました(汗)。Act.39でルナとうさぎのダブル変身。手順そのものはオーソドックスだが、ただ変身バンクが、ケンコー監督の「クルクル」をちょっと真似したような「スライド」(名古屋支部命名)で、画面右側を上から下にうさぎの変身バンクが降りてきて、左側をルナの変身バンクが下から上へせり上がっていくという変な演出。
このAct.39って、そもそも話自体も変。もちろん、実写版ではあまり掘り下げられなかった「月野家の家族の絆」という主題が描かれている点では、注目すべきエピソードである。しかし、実は美奈子の社長とうさぎママは同級生だった、というイキナリな冒頭から、うさぎママが森林公園のフィールドアスレチックで主婦レポーターに挑戦、なぜかうさぎと進悟も同伴、という展開の強引さは相当なものだ。
どういうことかというと「美奈子の事務所の齋藤菅生社長は、その場の思いつきで素人を使って番組の企画を立てちゃうような、気まぐれな面もある人」……という話が、全体として次回への前フリとなっているのです。続くAct.40になると、社長はいきなりズブの素人の新人、マーズれい子を大々的にプッシュしてくる。
Act.40は、舞原監督が、何かから解き放たれたかのように大暴走している回である。見ようによっては、Act.39で普通っぽく分割画面の変身バンクなんて使ったのも、次回があるからと自分に言い聞かせて、おとなしく我慢していたのかも、と思えてくるくらいだ。
だってAct.40では、戦士たちがなぜかカメラ目線で妖魔と戦っているし、そもそもセーラー戦士(セーラームーン、マーキュリー、ジュピター、セーラールナの4人)が戦闘を開始してから敵を殲滅するまでの所要時間が40秒ちょっとしかない。もちろん台本に書かれているセーラー戦士たちの変身のかけ声も、変身バンクも完全に無視されている。そういう意味で前回指摘した「お仕着せの変身バンクを安易に使わない」舞原監督の特徴がよく出ている。
そこで今回は、たぶん舞原健三のエッセンスが最も分かりやすいかたちで凝縮されている名作、Act.40の台本全文を紹介することにしました。お読みいただくだけでなく、DVDビデオで入手可能な実際の完成作品と、ぜひ比較してみてください。とにかく台本がガンガン削除されている。アバン・タイトルでも、台本冒頭の「前回までのおはなし」は全部カット、続く美奈子とアルテミスの会話も途中がかなりバサッと省略されているし、主題歌の後のダーク・キングダムのシーンも、男同士の会話は一切無視……というふうに、前半でセリフがまったくカットされなかったシーンはほとんど無いと言っても良い。台本は全27シーンとわりと少なめなんだが。そしてそのぶん舞原監督は、後半の「新曲争奪! 愛野美奈子VS新人マーズれい子バトル大会」に情熱をつぎ込む(笑)。
まあそういう演出および編集的なことはアレとしても、もう二度と見られないかも知れない北川景子と小松彩夏のドリームマッチだけでもお楽しみいただけることと思います。さらに併せてM14さんのAct.40台本比較(ここ)を参照すれば、君もAct.40博士だ(なってどうする)。
なお名古屋支部がこれまで公表した実写版台本はAct.1、Act.8、Act.13、Act.48、Final Actの5本です。それぞれ、ひろみんみんむしさん、こっちよ!さん、そしてM14さんからコピー、PDFファイル、あるいは現物で頂戴したものです。今回のAct.40台本は、M14さんからいただきました。
毎度申しあげておりますように、これは実写版セーラームーンマニアのための研究資料として提供するものです。閲覧される皆様は、その点をよろしくご了承ください。
『美少女戦士セーラームーン』Act.40
原作:武内直子/脚本:小林靖子
1. 前回より(本編には無し)
エンディミオンと戦うセーラームーン。
うさぎのN「クイン・ベリルに掴まっていた衛が、私を襲ってきたの。最初はどうしてかわかんなかったけど、すごい大切な事教えてくれたんだ……」
懐中時計が割れる。
セーラームーンから光が放たれ、地面が揺れる
エンディミオン「落ち着け! 力を止めろ!お前が止めるんだ!うさぎ!」
へたりこんだセーラームーンを見つめるエンディミオン。
エンディミオン「……うさぎ、俺は、もしもの時には、本気でお前と戦う。俺達にはそれぐらいの覚悟が必要なんだ。星を、滅ぼさないために」
セーラームーンがエンディミオンを見る。
エンディミオン「お前が信じるのは俺じゃない、お前だ」
セーラームーン「……」
エンディミオン「いつかきっと、一緒にいられる日がくるから」
進悟と一緒にいるうさぎ
うさぎのM「私が、守らなきゃ……」
2. スタジオ・控え室
アルテミスと美奈子がいる。
美奈子「……アルテミス、私、決めた」
アルテミス「え?」
美奈子「もう、歌はやめる」
アルテミス「え……!」
決意の表情の美奈子。
アルテミス「また…冗談だろ」
美奈子「私に残った時間、どんどん少なくなってくる。もう余計な事に使ってる余裕ないよ」
アルテミス「ちょっと待ってくれ、本気なのか?美奈子、前にも言ったけど、セーラーヴィーナスじゃない、愛野美奈子としての時間は持ってほしいんだ」
美奈子「どうして」
アルテミス「どうしてって……」
美奈子「前世の使命を果たすために生まれてきたんだから、そのために生きなきゃ。セーラーヴィーナスじゃない私なんかいないんだよ」
アルテミス「僕はそう思わない」
美奈子は首を振る。
美奈子「アルテミスだって、ずっと気にしてたはずだよ。どうして、リーダーの私が、戦士の力に目覚めてないのかって」
アルテミス「それは……」
美奈子「病気のせいじゃないよ。きっと、歌のせい」
美奈子が窓辺に立つ。
美奈子「……社長に言わなきゃね。大騒ぎされちゃうけど」
アルテミス「美奈子」
美奈子「……」
3. クラウン・中
うさぎ、レイ、まこと、亜美と猫ルナが揃っている。
亜 美「そっか、地球が滅んでしまうかどうかじゃなくて、滅ぼさないようにするて事なんだ」
うさぎ「うん、私、幻の銀水晶の力、使わないように頑張ってみるよ。まだ知らないウチに使っちゃうんだけど」
レ イ「出来るわよ、きっと」
まこと「私達がフォローするし」
うさぎ「うん」
猫ルナ「うさぎちゃんの信じてた通り、地場衛は敵じゃなかったわけね」
まこと「結構いい事言うじゃん。見直した」
うさぎ「だから言ったでしょ」
得意げに言ったうさぎは、懐中時計を手にする。
一同が壊れた時計を見る
うさぎ「……」
亜 美「……早く、一緒にいられるようになるといいね」
うさぎ「うん……」
5. 同・エンディミオンの部屋(本編には無し)
窓外を見つめている衛。
衛 「うさぎ……」
6. 同・メタリアの間
ベリルが独りでいる。
ベリル「エンディミオンの心はまだ動かぬか……」
そこへジェダイトが惑いつつ入ってくる。
ジェダイト「……ベリル様、お呼びにより」
ベリル「おお、ジェダイト、よくぞ参った。お前のわらわへの忠誠、些細なことで揺らぐものではあるまい?」
╳ ╳ ╳
回想。
自らに剣を向けるジェダイト。
╳ ╳ ╳
ベリル「例え、マスター・エンディミオンを思い出そうとも、わらわを忘れられぬのであろう?」
ジェダイト「はい……、自分でも、不思議なほど……」
ベリル「(満足げに)エンディミオンの事、託せるのはお前だけだ」
ジェダイト「……」
7. 同・ゾイサイトの部屋(本編には無し)
クンツァイト「何をしている」
ゾイサイト「ネフライトが無事なら居場所を知りたいと、マスターが」
クンツァイト「ご苦労な事だ」
ゾイサイト「……意外だな」
クンツァイト「何がだ。マスターの甘い所は昔通りだ」
ゾイサイト「お前の事だ。マスターとの賭けを律義に守るつもりとは」
╳ ╳ ╳
回想。
衛 「もし俺がお前に勝ったら、しばらく俺に協力してもらう」
╳ ╳ ╳
クンツァイト「……奴が何をするのか興味がある。それだけだ」
ゾイサイト「……」
9. 同・個室
美奈子が一人で待っている。
入り口から、齋藤がそっと顔を覗かせて様子を窺う。
美奈子は気付いていない。
齋 藤「おはよ」
美奈子「あ、おはようございます」
美奈子の正面に齋藤が座る。
齋 藤「何よ、急に改まって話なんて、珍しいじゃない」
美奈子「実は――」
齋 藤「あー、わかったわかった。こないだのドラマの仕事、気に入らなかったんでしょ。役者はやりたくないかもしれないけど、ああいうのも必要なのよ」
美奈子「そうじゃなくて――」
齋 藤「わかってるわよ。次の新曲のレコーディング終わったら、ちょっと休み入れとくから」
美奈子「社長――」
齋 藤「だから、CMと写真集、やってちょうだい、いいわね」
美奈子「……わかった」
齋 藤「オッケー。じゃ何食べる?」
11. 同・レイの部屋(夕方)(冒頭以外、本編にはなし)
レイが本を読んでいる。
と、窓からアルテミスが顔を覗かせる。
アルテミス「セーラーマーズ」
レ イ「アルテミス!」
╳ ╳ ╳
レイとアルテミスが話している
レ イ「引退?」
アルテミス「残された時間を、前世の使命のために使うつもりなんだ」
レ イ「……」
アルテミス「美奈子に前世の使命を思い出させたのは僕だし、病気の事も知ってて、厳しい戦いをさせたのも僕だ。でも、勝手だけど歌はやめさせたくないんだ。彼女がどれほど歌が好きか、知ってるから」
レ イ「だったら戦士をやめるべきよ。だって――」
アルテミス「美奈子は前世にしか生きようとしていない」
レ イ「……」
レイの表情が厳しくなる。
レ イ「そんなに前世が大事なら、愛野美奈子なんかさっさとやめればいいわ」
アルテミス「マーズ」
レイが怒ったように立ち上がる。
12. スタジオ・全景(日替わり)(本編には無し)
13. 同・控え室
美奈子がメイクをしている。
ノックの音。
美奈子「どうぞ」
入ってくる齋藤。
美奈子「社長、今日は来ないって――」
齋 藤「撮影は中止よ中止」
美奈子「え?」
齋 藤「突然なんだけど、写真集、あんたのじゃなくて、他の子で行く事にしたから。入って」
言われて入って来るのはレイ。
思わず立ち上がる美奈子。
齋 藤「マーズれい子ちゃん。すっごい掘り出しものでしょー。原石よ原石」
美奈子は驚きでレイと齋藤を見るのみ。
齋 藤「もうウチの事務所のイチ押しに決定。全面的に売り出してくわよ。あ、昨日言ってたCMね、それも、れい子でいくから」
唖然とする美奈子。
レ イ「よろしく」
ぶっきらぼうに頭を下げるレイ。
14. 同・中(冒頭以外、本編にはなし)
撮影が行われている。
フラッシュの中、ポーズをとっているレイ。
美奈子が離れた所から見つめている
美奈子「どういう事?……」
後ろの方で小さく聞こえる物音に、美奈子が思い当たって溜息をつく。
美奈子「アルテミス、あなたでしょ」
アルテミスがこそこそ出てくる。
美奈子「マーズに何か言ったのね」
アルテミス「ごめん。君が歌をやめないように協力してもらおうと思ったんだが、やめたいならやめればいいって、急に事務所に乗り込んで」
美奈子「……?」
アルテミス「それでマーズを見た社長がいきなり盛り上がって、何がなんだかわからない内にこういう事に……」
ポーズを決めるレイに齋藤が声をかけている。
齋 藤「れい子最高! いいわよ、その表情。信じらんない」
美奈子「……社長は気まぐれだから」
齋 藤「美の天才ね! まぶしすぎ!」
美奈子はサッと背中を向ける。
美奈子「関係ない。私はどうせやめるんだし」
と歩き出そうとするが、
齋 藤「美奈子とは何か違うわ!」
思わず立ち止まり、再び撮影を見つめる。
その表情がムッと変わっている。
15. クラウン・受付
衛が入ってくる。
古 幡「衛! お前何だよ、最近全然連絡つかないじゃん」
衛 「悪い、色々忙しくて」
とさりげなく様子を窺っている所へ、奥からグラスをのせたトレーを持ったネフライトが出てくる。
衛 「……」
ネフライト「!」
古 幡「あ、彼ね、最近住み込みのバイトで入ったんだ」
屈辱感で衛をまともに見れないネフライト。
古 幡「ネフきっちゃんっつーの」
衛 「ネフきっちゃん?」
古 幡「名前覚えにくいからさ、俺がつけたアダナ」
ネフライトを見た衛が、思わず吹き出しそうになって横を向く。
ネフライトは衛の様子に、古幡へ迫る。
ネフライト「貴様、笑うような名前つけたのか」
古 幡「いや、そんなことないよ……。親しみやすいよ」
古幡を睨んだままのネフライト。
古 幡「あー、俺奥の掃除してくるから。後頼むね」
そそくさと奥へ行く。
ネフライトは衛を見ない。
衛 「無事だったんだな」
ネフライト「死んだ方がマシだった……」
衛 「バカ。良かったじゃないか」
ネフライトは弾かれたように衛に向き直る。
ネフライト「マスター、俺をダーク・キングダムに連れて行ってくれ! 頼む!」
衛 「行ってどうする」
ネフライト「この屈辱、クイン・ベリルに……。そのために俺は死なずにいる……!」
衛 「そんな事は忘れろ。お前は普通の人間になったんだ」
ネフライト「四天王としての誇りを捨てろと言うのか!」
衛 「その方がいい。何かあったら元基に相談しろ。あいつ、良い奴だから」
衛が出ていく。
ネフライトがカウンターにあったグラス類を払い落とす。
辛く、佇むネフライト。
16. スタジオ・中
「休憩です」の声に、レイが、見つめていた美奈子に歩み寄る。
美奈子「何なのこれ」
レ イ「別に」
美奈子「アルテミスが何か言ったせいなら――」
レ イ「帰れば?もうやめるんでしょ」
美奈子「!」
レイは齋藤の方に歩いて行く
齋 藤「よかったわよ、れい子! ブレイク間違いなし!」
レ イ「どうも」
睨む美奈子。
だがおもむろにツカツカと齋藤に歩み寄る。
美奈子「社長」
齋 藤「あら、まだいたの」
美奈子「写真集の中止、納得いかないんだけど」
齋 藤「そりゃーだってねぇ」
とレイを見る。
齋 藤「今度のあんたの新曲も、れい子にやらせようと思ってんのよ。CDデビューにちょうどいいから」
美奈子「新曲も?」
齋 藤「何よ、文句あるの? あんた最近、そんなに歌いたそうに見えなかったけど」
美奈子「……私が歌うわ。マーズよりいいものになるわよ、絶対」
齋 藤「出たわね、負けず嫌いが」
美奈子「……」
レ イ「そこまで言うなら、勝負して決めてもいいわよ」
美奈子「勝負?」
齋 藤「ちょっと、それいいじゃない! 新曲の争奪戦なんて面白いわー。番組になるわよ、どっかに持ち込みましょ」
美奈子「社長――」
レ イ「自信ないの?」
美奈子「冗談でしょ。私を何だと思っているわけ?」
ちょっとほくそえむようなレイ。
17. 月野家・居間
ソファのうさぎが携帯を手に立ち上がる。
うさぎ「え、美奈子ちゃんと!? 行く! すぐ行く! うん、みんな連れてく!」
うさぎが猫ルナを抱えて飛び出していく。
テーブルでは育子が鏡を覗いている。
育 子「何でレポーターの話ダメになっちゃったのかしらねぇ。いいと思うんだけど……。菅生ちゃんのビデオが失敗ね」
(*台本にはまったく書かれていないが、ここでテレビ画面のなかから脈絡もなく鈴村展弘の特別出演)
19. 同・スタジオ
齋藤がカメラの前に立つ。
齋 藤「特別企画、『新曲争奪! 愛野美奈子VS新人マーズれい子バトル大会』――!」
ファンファーレ。
齋 藤「新曲レコーディング権を掛けて、トップアイドルと新人が友人を引き連れてまさにガチンコ勝負! 今、その幕が上がります!」
登場するジャージ姿のうさぎ達戦士五人とルナ。
美奈子チーム(うさぎ、まこと)、レイチーム(亜美、ルナ)に別れている。
うさぎ「美奈子ちゃん、頑張ろうね」
嬉しそうに美奈子にひっつくようなうさぎ。
まこと「けど何でこうなってるわけ? マーズれい子って……」
亜 美「レイちゃんの事だから、何か考えがあると思うけど……」
美奈子とレイはボックスに入ってイスに座ると睨み合う。
美奈子「何考えてるの。プリンセスまで引っ張り出すなんて」
レ イ「私達普段はプリンセスなんて呼ばないし、お姫様扱いもしないのよ」
美奈子「……」
齋 藤「では両チームのリーダーがボックス席に入った所で、バトルスタート!」
╳ ╳ ╳
齋 藤「第一回戦ジャンプ対決! うさぎちゃん対ルナちゃん!」
ルナは涼しい顔で、壁の高い位置に印を付ける。
亜美が拍手。
が、ルナが得意げに振り返ると、うさぎはスタジオの深い位置から激走。
うさぎ「ハーッ!」
壁に激突するようにしてルナより高い位置に。
うさぎ「やったー!」
鼻を赤くして飛び上がるうさぎ。
齋 藤「美奈子チームの勝ちー!」
途端に、レイの頭上で風船が膨らむ。
齋 藤「チームが負けると、リーダーの頭の上の風船が段々危険な事になるから気を付けて! 続いて第二回戦、綱引きバトル!」
╳ ╳ ╳
うさぎ対まことの綱引き。(台から落ちると負け)
うさぎが懸命に引っ張る。
片手で軽く堪えるまことは、力の緩急でコロッとうさぎを台から落とす。
まことがガッツポーズ。
まこと「(笑顔で)悪いね、うさぎ」
うさぎ「美奈子ちゃんごめーん!」
美奈子の風船が膨らむ。
齋 藤「第三回戦ドンケツ」
╳ ╳ ╳
まこと対ルナのドンケツ。
パワーのまことを、ルナは踊るようにかわし、まことが勢い余って落ちる。
まこと「うわ!」
ルナがキメポーズ。
ル ナ「失礼」
美奈子の風船がまた膨らむ。
美奈子「……!」
齋 藤「次ー!」
╳ ╳ ╳
以下点描で。
亜美対うさぎの暗算対決。
厖大な計算式をうさぎが電卓を打っている間に、亜美はスラスラと答えを書く。
電卓を投げるうさぎ。
╳ ╳ ╳
膨らむレイの風船。
美奈子の風船。
╳ ╳ ╳
皿回し対決のまこと対ルナ。
ルナがくしゃみでいなくなり、皿が一斉に落ちる。
齋 藤「消えた?!」
うさぎ「(強引に)次ー!」
╳ ╳ ╳
着ぐるみ相撲のまことと亜美。
亜美は土俵をトコトコと走り回ってまことを翻弄。
うさぎ「まこちゃーん」
レ イ「亜美ちゃん、頑張って!」
声援を送るレイをチラッと見た美奈子が、バトルに目を戻すが、声援は出ない。
まことが自分の着ぐるみにつまずいて転倒。
うさぎ「あー!」
齋 藤「レイチームの勝ち!」
美奈子の風船がついに破裂し、美奈子が粉を被る。
美奈子「……」
レイは勝ち誇ったように見る。
レ イ「残念ね」
美奈子は粉を払って立ち上がる。
美奈子「まだよ!」
レイも立ち上がる。
齋 藤「最終バトル、リーダー対決! 風船割りー!」
╳ ╳ ╳
顔や腕などに紙風船をつけ、棒をもったレイと美奈子が真剣に対峙する。
見守るうさぎ達。
齋 藤「準備はいいわね? いくわよ、バトルスタート!」
美奈子とレイが打ち合い、それぞれかわす。
うさぎ「美奈子ちゃーん!」
まこと「ガードガード」
亜 美「レイちゃん、頑張って!」
その時、齋藤がうさぎ達にも紙風船を付けていく。
うさぎ達「?」
齋藤は棒を差し出し、
齋 藤「リーダー達を助けたら?」
それぞれ棒を手にしたうさぎ達が顔を見合わせる。
うさぎ「よーし!」
うさぎが、続いてまことと亜美も参戦していく。
齋藤「あーっと、乱入!乱入でーす」
きゃーきゃー声が飛ぶ。
夢中になっている美奈子
美奈子「うさぎ! 後ろ回って後ろ」
という美奈子の風船をまことが割ってしまう。
まこと「あ、間違えた。ごめん!」
美奈子「まこと!」
美奈子がまことを追いかける。
その様子をチラッと見るレイ。
その隙にうさぎがレイの紙風船を一つ割る。
うさぎ「いただき!」
レ イ「うさぎー!」
齋藤がマイクを置いて見つめている。
風船を割ったり割られたりで、笑う五人の中に美奈子がいる。
齋藤が合図すると、スタッフが出て行く。
齋 藤「美奈子……、歌をやめるなんて、許さないわよ」
片隅で見つめるアルテミスに猫ルナが歩み寄る。
アルテミス「……」
うさぎ達五人一緒の笑顔――
20. 道(夕方)
うさぎ、まこと、亜美、ルナが帰る。
うさぎ「あー面白かったー。美奈子ちゃんと一緒にいられたし」
まこと「うん、今までこんなのなかったし。仲間なのにさ」
亜美が振り返る。
亜 美「もしかして……レイちゃん、そのために……」
23. 道(夕方)(後半は本編になし)
ルナが「!」と見る。
ル ナ「妖魔の気配よ」
一 同「!」
うさぎ達の前に、泥妖魔達がわき出す。
うさぎ「また……、これっていつもの……」
一瞬ペンダントを握るうさぎに、まことが明るく。
まこと「ゲームの余韻残ってるんだ。一気にやっちゃお」
亜美とルナも頷く。
うさぎ「うん、ムーンプリズムパワーメイクアップ!」
亜 美「マーキュリーパワーメイクアップ!」
まこと「ジュピターパワーメイクアップ!」
ル ナ「ルーナプリズムパワーメイクアップ!」
四人が変身。
ル ナ「さっきのチームで戦いましょ!」
セーラームーンとジュピター、マーキュリーとセーラールナがコンビに。
24. レコーディングスタジオ・前(夕方)(本編には無し)
建物から出て来る美奈子がレイに気づく。
レ イ「……」
美奈子「……」
25. 道(夕方)(本編とは大幅に異なる)
コンビを組んで泥妖魔達と戦うセーラームーン達。
マーキュリーとジュピターはタンバリン。
セーラームーンとルナはスティックを使う。
攻撃を素早く避ける泥妖魔達。
セーラームーン「まこちゃん!」
マーキュリー「ルナ!」
それぞれのコンビが同時作戦を炸裂させる。
消滅する泥妖魔達――
26. レコーディングスタジオ・前(夕方)
レイと美奈子が向かい合っている。
美奈子「私に歌わせるためにあんな事したの?」
レ イ「そんな親切じゃないわ。あなたが前世しか見ないのが、何だか苛々するのよ」
美奈子「……私達には使命があるのよ」
レ イ「……最近、前世って言葉、嫌いになってきたわ」
美奈子「マーズ! 私達は前世から使命を受け継いで――」
レ イ「そんなんじゃなくて!」
美奈子「……」
レ イ「そういう事じゃなくて、あなたの今が問題なのよ。私なら、可能性がゼロじゃないなら……、手術するわ」
美奈子「……」
レ イ「……」
美奈子「あなたは……まだ使命の重さがわかってないのよ」
美奈子が立ち去っていく。
レ イ「……」
美奈子を見つめるレイ。