実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第942回】20年目のサプライズ の巻(スノーラビッツ256個の小豆編):CBC『セーラー戦士 20年目の同窓会』(3)


 『正直不動産』の第2シーズンが始まり、『土スタ』の特集で泉里香が大々的にフィーチャーされ、と話題に事欠かないが、そちらのほうは『M14の追憶』で随時ピックアップされているのでご参照くだされ。うちは粛々と地上波版『セーラー戦士 20年目の同窓会』(2023年12月25日、CBC)のレビューを続けたい。



 前回は、オーディションの一芸披露で何をやったかという話がメインで、泉里香は自分が何をやったのか言わなかったが、コメント欄でご指摘いただいた通り、北川景子同様、『宇宙船』2004年1月号のインタビュー記事にしっかり掲載されていた。


 4ヶ月のモデルの仕事を経て、迎えた『セーラームーン』のオーディション。
 「特技で『さざ波』をやりました」
 さ、さざ波!? どんなワザなんですか、それは(笑)!
 「ザルの中に256個の小豆を入れて、海の音を出すんです。小豆とザルのセットを持って行って」
 に、256個(笑)。実はこれ、事務所さんの「表現力レッスン」の中に取り入れられているものだそうで、じゃあレッスンの中でも、よほど得意だったようですね。
 「……下手です、ぶっちゃけ(笑)。それに緊張して手が震えて波の音じゃなかったです」



 ほかの候補者がダンスや歌を披露する特技審査の中、一人さざ波をするいたいけな彼女に、審査する側はいじわるをたくさん言ったそうだ。例えば「それは須磨の海の音かな。次は若狭湾やってみて」「今度はカリブ海で」等々。(何て人たちだ!)
 「全然対応できてなかったです(笑)」
 そうは言ってもそんないじわるな大人たちに動じず、彼女なりにその課題をこなしたところが印象に深かったと丸山(真哉)プロデューサーは補足する。
 「ど、動じてました。オーディションも生まれて初めてだったんです」


 ということで、結局、沢井美優だけが何をやったのか分からない。念のため『宇宙船』2003年11月号のインタビュー記事を確認してみたが、やっぱり分からなかった。



 彼女が主演を射止めた、一番の決め手となったのは何だったのだろうか。東映の丸山プロデューサーに聞いてみた。
 「オーディションの最後に、何かいいのこしたことがある人はいってください、といったら、彼女が『はい! 私、セーラームーンになりたいです!』って挙手したんですよ。『そこまで言うんだから、やってもらおうじゃないか!』と(笑)」(丸山P)



 これはオーディションの通例のような質問であり、長時間の緊張を強いられている候補者が、発言をすること事体珍しいことらしい。
 「最後にっていわれたから、絶対いっておかなきゃなあ、と思ったんですよ(笑)。……そっか、それで私が選ばれたんだぁ」
 そう照れながらいう彼女は無邪気で屈託がない。きっと彼女のやる気が、絶妙のタイミングで無意識の自己アピールをし、それが彼女自身の最大の良さとして受け入れられたのだ。


 でも北川さんは「沢井は一芸披露で『演技』をアピールしたのではないか」と思った。最初から違いを肌で感じていたのだろう。沢井美優は中学まではバスケ優先で、特に演技のレッスンを受けてきたわけではなかったが、すでに『キッズウォー5』(2003)にも出演していて、ほかの戦士とは明らかにレベルが違っていた。



北 川「あの、オーディション終ったその日だっけ、めっちゃ怒られたの憶えていない?」
安座間「記者発表の後」



北 川「記者発表だっけ、めっちゃ怒られたよね?」
 泉 「めっちゃ怖かった」



沢 井「その記憶がぜんぜんなくてさあ」



北 川「いや沢井さん怒られてないもん」



小 松「四人怒られたんだよね」
北 川「すっごい怖かった」
沢 井「そんなことある?」



北 川「うん。後で沢井さんをちゃんと見習えって言われた」
沢 井「ええ~っ。そんなこと言われんの? 」
北 川「うん」
沢 井「怖い怖い怖い」



 泉 「私めっちゃ怒られた。めっちゃ怖かった」
安座間「もうやっていけないって思った」
 泉 「思った〜!」



安座間「終ったぁぁぁぁ、って」
北 川「なんか演技したんだよね。ワンシーンやって」
安座間「一話をやったんだよね」


 メイキング番組「メイクアップ! 美少女戦士セーラームーン ~少女がセーラー戦士に変わるまで~」(2003年9月27日、CBC)を観ると、このとき田崎監督が抜き打ちテストで戦士たちに演じるよう指示したのは、実際には第1話ではなく第2話(Act.2)のワンシーンであることがわかる。台本(ここ)で言えば「シーン9:学校・廊下」である。廊下に張り出されるテスト結果。その前にいるうさぎとなる。




 うさぎ(沢井美優)は相変わらず成績が悪くて「またママに怒られる」とへこむ。その傍らで、「それよりまた1番だよほら、うちのクラスの天才」と大阪なる(小松彩夏)が感心する。




 そこへ香奈美(北川景子)と桃子(安座間美優)が寄ってきて「水野さん」の話題を始める。そんな会話が耳に入っているのかいないのか、少し離れたところでぽつんとたたずむ亜美(浜千咲)。




 まったく関係ないのだが、本編で桃子を演じた清浦夏実が、『十九色』(2010年最優秀アルバム賞:当社調べ)以来となるソロアルバムを出すので、昨年クラウドファウンディングをやった。しかし私はそのことをつい最近まで知らず、気づいた時にはとっくに締め切りを過ぎていた。とても残念である。



 私はSNSをやらないし、清浦さんのブログはTWEEDEESの有料ファンクラブ限定のようだし、どうもこういう大事な情報がまったく入ってこないので困る。まあファンクラブに入ればいいじゃん、って話なんだが。すみません。
 清浦さんがボーカルで参加したサリー久保田グループ「マリのピンクのラヴソング」(2022年)も、ここでは紹介しそびれたまま、旧譜になっちまっていたな。曲もだがジャケットも良かった。



 余談であった。話を戻す。このとき五人の芝居をチェックした田崎竜太の講評と、それに対するうさぎ役、沢井美優のレスポンスは以下の通りである。



田 崎「はい。ええと、みんなそれぞれ課題があるよね。けっこう今は完成度、低いです」



田 崎「うさぎはうさぎで、まあ基本的なことはできるようだが、その上で積み上げるものがまだ全然ない。基本ができればOKかっていうと、そうではない。もっと上を狙いたいところですね」



沢 井「はい」



田 崎「それはまあ、みんなも同じなんですが、それぞれその……シーンの意味合い、そのシーンの意味合い、というものを考えて台本を読んできて欲しい。台本の読みがまだまだ浅いよね。『このシーンは何を伝えて、どういうふうに持っていけば良いシーンになのか』っていう」



田 崎「『とりあえず台本通り言ってみました、動いてみました』それじゃ駄目」
五 人「はい」
田 崎「もうちょっとその、シーンを撮るまでに、自分のなかに作り上げてきて欲しい」
五 人「はい」



田 崎「そこから現場が始まるので」


╳    ╳    ╳



沢 井「始まる前までにしっかり台本を何度も読み、できるだけ近いものを、ちゃんと自分で作っていって」



沢 井「もしそれが監督の理想じゃなくても、現場で監督が言われた通りに、ちゃんとすぐ身体が追いつけばいいなあって思ってます」



沢 井「がんばります!ありがとうございました」


 決して沢井さんだけが特別に褒められているわけでもないが、一番しっかりして見えることも確かだ。芝居の経験値の高さに加え、生来のポジティブ体育会系な性格、加えて主演=座長としての自覚のなせるわざだろう。北川さんが「後で沢井さんをちゃんと見習えって言われた」と言っていたのは、たぶんそういうところだ。



北 川「特に私たち二人は、なんか『やる気あるの?』みたいな感じになっちゃって。あるんだよね」



小 松「あるんだよ。あるけど、緊張……あがるの、意外と、二人」
北 川「この二人が声がちっちゃくてめっちゃ怒られてた」
 


安座間「私と景子がすごい怒られている気がする」



北 川「泣いたよね、泣いてたよね」



安座間「うん、よく泣いてた。アハハ」



小 松「泣いていたイメージある、安座間」
沢 井「あはは、可愛い。アクションで泣いていたの憶えている」



安座間「私が大きいから、換えの人がいなくって、私だけ1人で、本人でやんなきゃいけなくって」


 日本のアクション俳優って、男は谷垣健治(163cm)、坂口拓(176cm)、マーク武蔵(178cm)、仲村浩二(180cm)などなどサイズも幅があるが、女性はわりと小柄だね。山本千尋は身長155cm、武田梨奈は157cm、清野菜名は160cmだ。伊澤彩織は資料がないけど、高石あかり(160cm)とほぼ同じに見える。


伊澤彩織・高石あかり『ベイビーわるきゅーれ』(2021)


 泉里香も、現在は公称166cmだが、ハマチ時代は沢井美優と同じくらいに見える。安座間美優は当時から169cm。『宇宙船』2004年3月号にそう書いてあった。それでアクションシーンも吹き替えなしで、ひとりだけ本人がやっていたんですね。



 そういえばビデオ作品『美少女戦士セーラームーン Act.ZERO セーラーV誕生!』の中に「スペシャル企画! うさぎ&衛のロケ地めぐり」という特典映像が入っていた。タイトル通り、沢井美優と渋江譲二がバスで本編シリーズ思い出のロケ地を再訪して回るのだが、途中で田崎竜太監督が加わっている。その中の会話。


沢 井「(田崎監督は)おそろしい方でした(笑)」
渋 江「最初はね、そういうふうになっちゃうよ」
沢 井「でも、そこまで怒られましたっけ?わたし的には、なんかお父さん的」



田 崎「鈴村(展弘)君が、初めてセーラームーンをやるというのでNo.8(東映撮影所第8スタジオ)に見学と挨拶に来たとき、(仮面)ライダーで一緒だった田崎が『オラァ!安座間あぁ』とか声を荒げていてビックリした、というのを聞いたことはありますね」
沢 井「だから、みゅうちゃんと景ちゃんはすっごい怖がってました」



渋 江「「景ちゃん、そうだ、そんなこと言ってたよ。中打ち(中打ち上げ)で『久しぶりに田崎さん来るんだって』って言ったら、『えっ、ウソ、わたし怒られる!』って(笑)」


 やはり当時から、怖いは怖いかったけど、沢井美優には、そこまで怒られた記憶がなくて、「なんかお父さん的」な印象が残っている。かたや安座間と北川はトラウマ的に怖がっていたわけで、こういう印象は20年経っても変わらないものですね。
 ということで、あまり進まなかったけど今回はここまで。ごきげんよう、また次回。


『宇宙船』2003年11月号