実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第543回】DVD第4巻:Act.13の巻(1)


1. 別れぬ理由


 しばらく前に「最近おちまさとも越智千恵子も、ブログで別々に娘との仲良しぶりをアピールしていて、なんだか親権争いをしている離婚協議中の夫婦みたいだ」と半分冗談で書いたら、ほんとうに離婚してしまった。その報告ブログのなかに「娘は父親の強い希望により、父おちまさとさんが育てる事となりました」というくだりがあった。特に子供と母親の相性が悪いとか、ネグレクトしているということもなさそうなのに、しかも娘なのに、父親が引き取るとは珍しい。
 おちまさとは厚生労働省の「イクメンプロジェクト推進メンバー」の中心人物で、2011年から開催されている「イクメン・オブ・ザ・イヤー」の実行委員長を務めていて、東京スカイツリーのプレイランド(ボールプール)のプロデュースをしていて、最近では『ウルトラマンX』の歌詞を書いたりしている。要するに、最近の彼のウリは「子供の(あるいは育児の)目線で発想するイクメンプロデューサー」なのである。その路線を維持するためには、ここで娘を手放すわけにはいかないということか。
 いやそれは私の下司の勘ぐりかもしれない。でも、いくら自分がひきとっても、娘が就学前のうちに、親の都合で離婚してしまった段階で、イクメン失格だ。だからイクメンプロジェクトやイクメン・オブ・ザ・イヤー実行委員長のたぐいは早々に辞退するのが良識ある態度だと思います。(もしそのようにされた場合は、この件については私の邪推だったということで、改めてお詫びします。)
 


 もちろん私にも娘がいるから、離れたくない気持ちは理解できる。河辺千恵子のファンだし、元ダンナのこともあまり悪くは書きたくない(いやホント)。しかし、すったもんだの末に一緒になったくせに、こんなタイミングでこんな結果になって、「イクメン」とか言っていられない状況だと思うんだけど。
 私も娘(来年には成人式)の幼い頃はけっこうまじめに子育てをしていたつもりだ。だから男の育児休暇の必要性とか、日本の男性用トイレにはまだまだオムツ替えシートが少ないとか、そういう「男の育児」の観点からいろんなプランニングをする人は必要だと思う。でも、ここのお宅の場合はそもそも、これまでの行状が行状だけに、なんか「子育てしてみて、また小銭の稼げそうな市場を嗅ぎつけたな」という感じだったんだよね。その矢先にこういう話だ。

2.『掟上今日子の備忘録』


 つまんない話題でいろいろ書きすぎてしまった。楽しい話題にしようか。
 前回コメント欄でも盛り上がったように、今シーズンは『掟上今日子の備忘録』(日本テレビ系)がおもしろい。といって実は今シーズンも私、たいしてドラマを観ていなくて、比較のしようもないのだが。



 メイン監督は『ST 赤と白の捜査ファイル』で岡田将生の魅力を引き出した佐藤東弥のようだが、ここでも岡田君を上手に使っている。私の中で彼のキャラクターは黄川田将也とかぶるので、セーラームーン的にはライバルなのだが(ちょっと歳が離れ過ぎか)あっぱれだ。そして新垣結衣。この新垣結衣の役どころが、ちょうど10年前の彼女の女優デビュー作『Sh15uya』(シブヤフィフティーン)とダブって、なんとなく感慨ぶかい。




 『Sh15uya』については、このブログで折りに触れ取り上げているのでご記憶の方もおられるかな。実写版セーラームーンの翌年(2005年)に、それまでアニメ専門の脚本家だった米村正二が初めて手がけた全12話の実写もの(特撮ドラマ)である。テレビ朝日の深夜帯で放送した。プロデューサーが白倉伸一郎、監督が田崎竜太と鈴村展弘、助監督が加藤弘之と大峯靖弘、主題歌が小枝と、セーラームーンのスタッフとかぶるところも多いし、セーラームーンが麻布十番を舞台とした14歳の少女たちのお話であるのに対して、シブヤフィフティーンは渋谷駅界隈を舞台とした15歳の少年少女たちの物語と、ゆるい連続性みたいなものも感じられた。
 物語は、だいたい『マトリックス』(1997年)の設定で展開するソフトな『バトル・ロワイアル』(2000年)と思ってもらえばいい。渋谷によく似たSHIBUYAというヴァーチャルシティ。この世界ではいくつかの若者のチームが勢力争いをしている。泉里香が出ていた『仮面ライダー鎧武』みたいな感じね。







  当然、抗争のようなこともあるのだが、ある一線は越えないよう、何者かによって管理されていて、もし暴力が一線を越えてしまった、あるいは「壊れて」しまった場合、「ピース」(マーク武蔵)という処刑人が現れ、その子をいったん殺してしまう。





 でもしばらくすると、その子は街に戻ってくる。ただし以前とはまったく異なる人格になっていて、記憶も消えている。周囲の少年たちも、その子についての記憶が更新されていて、これが「リセット」だ。






 これとは別に「リストア大会」というのもあり、一夜にして街中の少年たちの記憶と人格がまるごと初期化されている場合もある。
 要するにこの世界の人物たちは、常に定期的に記憶をリセットされるのだ。でも一人だけリセットをまぬがれ、記憶を持続しつづけている異分子がいる。長身の美少女、エマ(新垣結衣)だ。



 エマは「マージ」という変身能力をもっている。誰かをリセットするためにピースが現れると彼女はマージして、ピースを妨害するのだ。









 というふうに『Sh15uya』は、登場人物の誰もが定期的に「リセット」されて、それ以前の記憶を失ってしまうなか、ただひとり記憶を保持し続ける少女エマと、そのエマと特別な関係を結んでいく少年の物語である。



 それから10年後に制作されたのが、このたびの『掟上今日子の備忘録』である。ヒロインの掟上今日子(新垣結衣)は、いつごろからか明かされないが、ある時期から、眠るたびに記憶がリセットされて、昨日一日あったことをきれいさっぱり忘れているという特異体質になった。







寝室の天井に「お前は今日から掟上今日子。探偵として生きていく」という誰が書いたか分からないメッセージがあって、朝起きるとそれがまず目に入る。で、その日一日で事件を解決して、翌日になると事件に関するあらゆる記憶を失ってしまう忘却探偵として活躍している。当然だがそれ以外の登場人物は、ふつうの人々なので記憶を保って生きている。つまり新垣結衣のキャラクターが『Sh15uya』を完全にひっくりかえしたような設定になっている。



 『Sh15buya』のエマの特異性は、新垣結衣が竹田団吾の造形したバトルスーツを着ることで示されていたけれど、『掟上今日子の備忘録』の掟上さんは、特撮番組のキャラクターみたいな白髪で、自分が特殊な存在であることを示している。
 こういうふうに、もちろん意図的ではないでしょうが、『掟上今日子の備忘録』は10年前の新垣結衣の女優デビュー作『Sh15uya』と合わせ鏡みたいに対照的なところがあって、私なんかそういう意味でも好きだし、そもそも脚本が良くできている。探偵役の主人公の記憶が毎回リセットされる、という設定を逆手にとって、一話完結の読み切り短編ミステリ形式なのに、扱われる事件の間につながりがあり、岡田将生と新垣結衣の関係もだんだん(記憶がないはずなのに)深まったりするあたりもすごく面白いと思う。
 だが視聴率はどんどん落ちているらしい。なぜだろう。『Sh15uya』との関係なんて知らなくても、脚本はうまいし、新垣結衣も、『リーガル・ハイ』のときの、堺雅人に釣り込まれたような芝居ではなく(あれもあれでいいけれど)、淡々と飄々と忘却探偵を演じて、実に彼女らしいたたずまいである。いいのになぁ。

3. ひさびさの本編、いやアバン


 さて気がつけば11月も下旬に入った。どうも今年2015年は、小松彩夏『ネオン蝶』四部作と『探偵の探偵』のレビューに大半の時間を割いて、このブログのメインコンテンツである実写版DVDレビューが、ものすごく進まない年になってしまいそうだ。でもまあ、越智千恵子も河辺千恵子に戻ったことだし(?)再開だ。
 今年の春にAct.12とDVD第3巻の特典映像を終わったので、いよいよDVD Vol.4 です。本編の三分の二、ようやくここまで来た。いよいよDVD第4巻レビューの開始である。




 まずはAct.13。オリジナルのオンエアは2003年12月27日土曜日。つまり2003年最後の放送となった回である。テーマは衛とうさぎの鴨川バイクツーリング。



 アバン・タイトルの語り手はなし。だいぶ前に考察したとおり(ここ)、最初のワンクールぐらいは、アバンのナレーターがいないということ自体が珍しくて、Act.1(セーラームーン登場)、Act.6(ジュピター登場)に続いて3回目である。しかも今あげた2回のエピソードは、どちらも「カーテンなし」の回だ。



 実写版セーラームーンのオープニングでは、Act.8以降は冒頭にカーテンが左右にぱっと開いて、登場人物が「前回のあらすじ」を語るというパターンが定番となる(全49話のうち29回。小林靖子の脚本には指定がないので、これは演出サイドのアイデアだと思う)。カーテンの色は、お正月のAct.14が緑だった以外は必ず赤。そしてカーテンが開くとそこはクラウンの秘密基地、もしくは画面の隅にくりぬかれたワイプの中がクラウンで、そこでナレーター役が前回のあらすじを語る(このパターンが確立していないAct.9とAct.10の2話のみ、うさぎの部屋で「前回のあらすじ」が語られるパターンもあったが、それ以降は、ナレーターの居場所はクラウンということに決まったようだ)。



 ナレーターは大抵うさぎかルナ。まれに美奈子だったり(Act.12)亜美だったり(Act.20)まことだったり(Act.31)する。逆にカーテンなしでいきなり前回のハイライトから入る場合は、ナレーションも入っていないことのほうが、どちらかといえば多い。



 以上のように整理すると、このAct.13のアバン・タイトル冒頭がどれほど特殊な例であるかがわかる。まず、この回はオープニングで赤いカーテンが開くのに語り手がいない。カーテンが開くのにナレーターがいない例は、全編を通して、このAct.13とAct.29のみである。ただしAct.29は、カーテンが開くとそこはクラウンで、くす玉が割れて、みんながクラッカーを鳴らす。ダーキュリー篇が終わって、亜美ちゃんお帰りパーティーが始まるところ。




 しかしAct.13は、語り手もいないし、カーテンが開いた場所もクラウンではない。異例中の異例である。そして始まるのは、前回のラスト、セーラーVがついにプリンセスの名乗りを上げてヴィーナスになる、という場面だ。「プリンセス」の登場を華々しく印象づけるためだろうか。
 ちなみに、Act.13の撮影台本は3年前に紹介したので(ここ)さっそくアバンから比較してみよう。



明るい決意の表情で振り返る美奈子。



美奈子「敵はプリンセスをさがしてるんでしょ。行かなきゃ」



╳    ╳    ╳




ネフライト「言え! プリンセスはどこだ!」



セーラーVの声「ここにいるわ!」











セーラーVがセーラーヴィーナスへ。



ヴィーナスの放つ激しい光がゾイサイトを包む。



ゾイサイト「うあぁ!」



タキシード仮面「!」
消えかかるゾイサイト。
だがその手を懸命にタキシード仮面に伸ばす。



ゾイサイト「……マスター、エンディミオン……」



タキシード仮面「?!」



ゾイサイトが消滅。
アルテミスと共に立つセーラーヴィーナス。



ル ナ「プリンセス……。やっと姿を見せてくれたのね……」



頷くヴィーナス。



セーラームーンたちが見詰めて――



 と、これが台本のアバンね。では完成作品のほうはどうなっているか。






アルテミス「月の王国、シルバーミレニアムのプリンセスにして、幻の銀水晶の継承者、セーラーヴィーナス様だぞ」




ル ナ「プリンセス……やっと姿を見せてくれたのね」




セーラームーン「……プリンセス……」



 まあ、どうこう言うような違いじゃないです。というわけでタイトル。
 本編のバイクのシーンに歌まで入ったり、鴨川シーンで舞原監督の熱が入りすぎたりして尺が長くなったんで、アバンはバッサリ切った、ぐらいのところだろうと思う。
 だいぶ予定を遅れてしまったので、今回はここまで。ほとんど進まなくて済まない。