実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第357回】DVD第3巻:Act.9の巻(プロローグ)

1. ピカピカぴかりんじゃんけんポン♪


前回のコメント欄で少し話題になったが、新しく始まった『スマイルプリキュア』が、あまりにもセーラームーンだ。5人組というのは、かつて『Yes プリキュア5』もあったけど、今回は第1話の導入部までそっくり。うさぎ(じゃないけど)が遅刻しそうになって、ルナ(じゃないけど)が頭上から落ちてきて。




がしかし、武内直子の原作漫画では、うさぎとルナとの出会いは「登校の途中で、遅刻しそうで必死に駆けていたので、うっかり踏んづけてしまう」である。



アニメ版は「登校の途中で、ルナをいじめている小学生たちに出会って、浦島太郎みたいにルナを助けてやる」というふうになっている。



つまり今回の『スマイルプリキュア』は、「ルナが空から落ちてくる」ところが実写版セーラームーンそのまんまなのである。この程度なら偶然の一致かも知れないけど、本当に実写版セーラームーンを参考にした可能性だってある。実写版セーラームーンのキャラクター設定だって、東映アニメの『おジャ魔女どれみ』を参考にしているんじゃないか、という部分があるし(亜美=はづき、美奈子=おんぷ)、その逆があってもおかしくないと、個人的には思う。

そういえば昨年の暮れ頃、一部で「プリキュアは今シーズンでいったん終了。で来年早々、生誕20周年を記念して久しぶりにセーラームーンのリメイク」という噂が囁かれたこともある。うがった見方をすれば(例によってここから先はすべて私の妄想です。要注意)実は最初の時点では、本当にセーラームーンのリメイク企画として進められていたのだが、それだと原作者の武内先生に何かとお伺いをたてなくちゃならないし、やっぱりぜんぶ東映が版権をもっているプリキュアの方が、気を遣わないで自由にやりやすいや、っていうんで、途中でセーラームーンを「5人のプリキュア」という設定に変更しちゃった、とかね。いやいや、私の根拠のない妄想です。



前回のコメント欄のyamaboshiさんによると、すでに「大きいお友達」の世界では黄色のブリキュアが大変な話題になっているそうだ。試しに「キュアピース/黄瀬やよい」というキーワードで検索をかけてみたら、なるほど出るわ出るわ、最近の二次元オタクの方々はこういうルックスにハマるのか、はたまた「泣き虫だけど芯が強い」「アニメや漫画が大好きなフ女子(とは言っていないが)」というキャラ設定に萌えるのか、変身バンクでグーかチョキかパーをランダムに出すので、視聴者が(『サザエさん』のエンディングみたいに)テレビを観ながらじゃんけんゲームをできるというアトラクティブ性がツボなのか、とにかくネット上では、かなりの方々がこの黄色いプリキュアにやられちゃってる。昔で言うと亜美/セーラーマーキュリーなみの人気である。
ま、おじさんには分からないが、最近はこういう娘がオタクのハートをゲットするんだね。

2. 1万人のアイドル


というわけで、今回からDVD第3巻レビューに入る。最初はAct.9。鈴村展弘監督が初めてセーラームーンのメガホンを取ったエピソードである。



鈴村展弘は『仮面ライダークウガ』で名を挙げた人だ。『クウガ』は、高寺成紀(現:高寺重徳)プロデューサーが脚本を細部までじっくり練り、ロケハンに時間をかけ、セットにも凝り、さらには、ハイビジョンや同時録音など、東映特撮では初めての技術を導入し……等々、作品の質を上げるためになにかと頑張っちゃったせいで、スケジュールも予算も大変なことになったという作品だ。それで「高寺プロデューサーは、プロデューサーではなく芸術家タイプだ」という伝説ができた。でも長い目で見れば、初期段階で設備投資して、ハイビジョン撮影でのスタッフ体制の確立みたいな、将来的には不可避の課題を早目にクリアしたからこそ、その後の平成仮面ライダーシリーズの末永い繁栄があるのだと思う。つまり、長いスパンでは相当な収入を見込めるシリーズの土台作りを、最初の1年でガッチリやりきった名プロデューサー、というのが私の評価です。



でもまあ、初めてづくして制作現場が色々大変だったことは事実らしくて、鈴村監督はそういう状況下、メイン監督だった石田巨匠の補佐を務めたり、スケジュールが押して穴が空きそうになった回を、たった一日で総集編を仕上げて未然に防いだりと大活躍した。仕事師である。その仕事師ぶりにますます磨きがかかって、劇場版『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』では監督補を務めるようになる。


……って「監督補」って「助監督」とどう違うのよ、ということであるが、劇場版では撮影チームがA班とB班に別れて行われたりすることがあるけれど、その調整役が「監督補」だという。東映公式ページにそう書いてあった。

第7、8話や劇場版の撮影時期には「1チーム2班体制」になっていますが、この状況で両班を束ねた鈴村氏の働きぶりを“監督補”とクレジットしてみました。
それぞれの現場では、別途チーフ助監督を立てているので、助監督の筆頭としてクレジットするのはヘンなのです。現場では「スーパーチーフ助監督」と呼んでましたが。
劇場版もTVも、ただでさえ難度の高い内容なのに、同じキャスト・スタッフで2班並行撮影なんて離れ技を可能にしたのは、鈴村氏の采配によるものです。パズルのようなスケジュールを交通整理し、劇場&TV両班の撮影をとどこおりなく進行させていったわけですが、それは、彼が単に「パズルの名人である」ということではありません。けっしてよい状況とはいえないにもかかわらず、結果的に、全パートがそれぞれ最大限の力を発揮することができたのは、鈴村氏と各パートとの信頼関係が大きいのです。
   (『仮面ライダー555』東映公式ページより)


と、そういう能力を買われて鈴村さんは『仮面ライダー555』の途中から正式に監督に昇格する。そうして撮った第1作『仮面ライダー555』第31話がオンエアされたのが2003年夏、そして実写版セーラームーンがスタートしてローテーション監督に加わる……と、ここから先、2003年夏から2005年春にかけて、鈴村展弘は監督として、驚異的なペースでバリバリと仕事をこなしていく。1970年生まれだというから、この頃ちょうど30代の前半、男としてはいちばん元気のいい時期ともいえるが、それにしてもすごいっすよ(カッコ内はオンエア日)。

鈴村展弘監督作品(2003年〜2005年)
 『仮面ライダー555』第31話(2003年8月31日) 第32話(2003年9月7日)
 『仮面ライダー555』第37話(2003年10月12日) 第38話(2003年10月19日)
 『美少女戦士セーラームーン』Act.09(2003年11月29日) Act.10(2003年12月06日)
 『美少女戦士セーラームーン』Act.15(2004年1月17日) Act.16(2004年1月24日)
 『仮面ライダー剣』第3話(2004年2月8日) 第4話(2004年2月15日)
 『仮面ライダー剣』第11話(2004年4月4日) 第12話(2004年4月11日)
 『美少女戦士セーラームーン』Act.35(2004年6月12日) Act.36(2004年6月19日)
 『美少女戦士セーラームーン』Act.43(2004年8月7日) Act.44(2004年8月14日)
 『美少女戦士セーラームーン』Act.47(2004年9月4日) Act.48(2004年9月18日)
 『特捜戦隊デカレンジャー』第34話(2004年10月10日) 第35話(2004年10月17日)
 『仮面ライダー剣』第41話(2004年11月21日) 第42話(2004年11月28日)
 『特捜戦隊デカレンジャー』第44話(2004年12月19日) 第45話(2004年12月26日)
 『Sh15uya』Face.03(2005年1月24日) Face.04(2005年1月31日)
 『Sh15uya』Face.08(2005年2月28日) Face.09(2005年3月7日)
 『魔法戦隊マジレンジャー』第15話(2005年5月22日) 第16話(2005年5月29日)


22ヶ月で30本。なにしろ2003年から2005年といえば、普段は仮面ライダーとスーパー戦隊の2シリーズだけなはずの東映特撮が、実写版セーラームーンとか『Sh15uya』といった実験的な作品を制作していた年である。監督の手が不足して、たたきあげ助監督のキャリアで信頼もあり、修羅場に強い鈴村さんに、何かと仕事が回されたってこともあると思う。ともかく、監督デビューの年に、こういう稀有な巡り合わせになったっていうことが、鈴村監督の作家性にどういう影響を与えたか、今後、当ブログでも考察していきたいテーマである。
で、2005年の春は一段落して、2ヶ月ほど休んだ鈴村監督は夏に再起、その年の年末まで頑張り続けたのでありました。


 『魔法戦隊マジレンジャー』第23話(2005年8月7日) 第24話(2005年8月14日)
 『魔法戦隊マジレンジャー』第29話(2005年9月18日) 第30話(2005年9月25日)
 『魔法戦隊マジレンジャー』第35話(2005年10月30日) 第36話(2005年11月6日)
 『仮面ライダー響鬼』四十四之巻(2005年12月18日) 四十五之巻(2005年12月25日)


こういうの見ていると、私もこんなブログを書いてないで、もっと仕事をちゃんとやらなきゃな、と思ってしまいますね。
冗談はさておき(冗談かよ)セーラームーンに関して言うと、前半の仕事もなかなか堅実だけれど、Act.16の後いったん『仮面ライダー剣』の方に行って、再びセーラームーンに戻ってきてからの鈴村監督の六本は格別だ。物語そのものが、すでにラストに向けて怒濤のラッシュを始めていたということもあるが、そのエモーションを忠実に映像に表現してくれていて、どの回も悲劇的情緒に溢れ、いつも観ていて涙腺がゆるんでしまう(でも「齢のせい」ということもちょっとはある)。


Act.35
Act.36
Act.43
Act.44
Act.47
Act.48


という、鈴村展弘伝説の始まりが、このAct.9なのである。


あと鈴村監督に関しては「司会業」というもうひとつの顔もある。これも『仮面ライダー555』劇場版のクライマックスシーン、さいたまスーパーアリーナ決戦のロケで、視聴者から募った1万人のエキストラを流麗な話術でおおいに湧かせ、見事にさばいた、という「1万人エキストラのアイドル」伝説から来ている。一、二年前にも、高寺プロデューサーのトークショーや、大葉健二さんの『宇宙刑事ギャバン』DVD発売記念イベントの司会とかやっていた、という話があった。



でもまあ、今日は疲れてきた。そういう話はまた、実写版セーラームーンのドラマ本編で司会のスズヤンが出てきた時にでもしよう。
……と思ったけど、スズヤン出てくるのってAct.40なんだよね。今のペースでいったら、あと10年や20年では、とてもAct.40のレビューまで辿りつきそうもないし、どうしようか。




3. アバン・タイトル


本編に入りましょうか。まずはアバン。今回のアバンのナレーション担当はルナ。Act.5の亜美以外はずっとうさぎがナレーターだったけど、今回はルナ(アバンのナレーター一覧はここ)。だんだん衛への恋心が本気になっていくうさぎに、カツを入れるためにあえてナレーターを買って出た(推定)。


  


ル ナ「四天王の一人、ジェダイトっていう敵が、直接セーラームーンを狙ってきたの」


  


ジュピター「待て!」


  


ジェダイト「お前達も地獄へ――」


  


ジェダイト「う……! うあぁ!」


  


ゾイサイト「慣れない者が最初から飛ばしすぎたか」
ル ナ「敵が強くなっている。でもプリンセスと、幻の銀水晶だけは、絶対敵の手に渡せないわ」


  


ルナ「うさぎちゃん、タキシード仮面にぽーっとしている場合じゃないわよ。


  


Act.9は(まこと以外)みんなそれぞれ思い悩む回だね。自分の過去を知る手がかりがつかめず、焦る地場衛が、ついにタキシード仮面の名で、自分の狙いが「幻の銀水晶」であることをマスコミに公表する、という発端があって、(A)世間に「幻の銀水晶」ブームが起こり「成田物産の社長」という人がレイに宝石の鑑定を依頼して来る。レイは嫌な気分、その気持ちを察して代わりに巫女を演じる亜美。(B)宝石を狙って現れたタキシード仮面のニセ者(弓削智久)を本物と間違え、ピンチに陥るうさぎと、それを助けてやるタキシード仮面、という、大きくふたつの話が盛られている。
で、個人的には(A)の亜美とレイのお話が私は好きである。Act.4の仮装バーティー以来、ひさびさに亜美と本格的に絡んだことで、レイの演技がどれだけ進歩しているか分かるしさ。Act.8のように安座間さん相手だと、北川さんの芝居の進捗状況がよくわからないのです。



こういう感じが、個人的にはとても良いですね。
まあしかしともかく、これから本編を見て参りましょう。では今回はこのくらいで。