実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第250回】清浦夏実ファーストライブ「十九色」@下北沢ガーデンの巻


イレギュラーな更新になるが、やはりこういう内容の記事は、記憶が鮮明なうちに書いておくべきだ。午後8時ごろにライブが終了し、12時近くに名古屋の自宅に帰り着いてから徹夜、翌日も遅い帰宅のあとで、頑張って書きました。

前口上


セカンドシングル『旅の途中/約束のうた』(2008年2月6日発売)がリリースされた直後、清浦夏実は自分のブログにこんなことを書いている。


歌のはなし。
私は今までシングルを2枚出しました。
どちらもアニメの主題歌として作られた曲たちです。
その効果もあってたくさんの人に買っていただけました。
ふはははは。
まさかみんなこんな女が歌ってるとは思っても見なかったでしょう!
自分のイメージ自分でくずしてますがな!

いや、ホントありがたい話です。
でもキヨはふと思ってしまいました。
結局アニメを抜きにしたら、私の歌になんて力はないんじゃないか。と。
がびーん。(´▽`)
我ながら怖いことを考える。
私は自分だけの力を試してみたい。のかな?
そんなん言うなら自分のやりたいこと見せてみせろや!!
と言われても
今の私にはきっと何も出来ない。
がびーん。(´▽`)

文句ばかりは言えて、自分からは何も出来ないなんて、
やるせないぜ。
(「清浦夏実ののらりくらり日記(旧)」2008年2月11日「葛藤キヨ。」写真も同ブログより)

おちゃらけた口ぶりのなかから「私って結局ラッキーなだけ?」という17歳のラッキーガールの悩める想いが、わりと生々しく伝わってくる。でも誰だって17歳のころは、成長する自意識と、そのくせ何もできない現実の自分の間で七転八倒するものだ。要するに思春期ってやつだ。
もし、こういう悩みをかかえた十代に何かアドバイスしろと言われても、私にはせいぜい「人生を投げずに、前向きに一歩一歩、進んでください」くらいしか言えないな。ともかく大切なのは、考えるよりも生きること、自分に何が出来るか思い悩むよりは、目の前にある出来ること、しなくちゃいけないことをひとつずつやっていくことだと思います。
そしてそれから2年の歳月が過ぎた。2010年4月4日。ファースト・ワンマン・ライブの演目が終了して、アンコールもやって、歌える曲はぜんぶ歌ったのに、それでもファンの拍手は鳴りやまず、清浦夏実は再度(三度か)ステージに姿を現した。
泣きそうなのをこらえているんだろうか、いつにも増してすごく変な顔だったけど(すまぬ)、でもその笑顔は、くよくよ葛藤していた17歳の自分を、確実に乗り越えた晴れがましさに満ちていた。それはつまり清浦夏実が、あれからの日々を一歩一歩、投げずに誠実に生きてきたということなのだろう。

会場



清浦夏実といえば雨女。先日の3月9日、西麻布のa-lifeで、mimika・とっと・清浦夏実の3人でアコースティック・ライブをやったときには、とうとう雪まで降らせたという伝説まであるので、私はぜったい傘を持ってでかける心づもりでいた。でも昼過ぎに家を出たとき、名古屋の空はきれいに快晴だったので忘れてしまった。
ところが新幹線が東京に着き、新宿で乗り換えて…と、会場に近づくにつれて空がどんより曇りだし、下北沢駅を降りた時には、時折ちらっと冷たいものを顔に感じるくらいの状態までなっていたのだから恐れ入る。
ガーデン(shimokitazawa GARDEN)というライブハウスは、下北沢駅南口から商店街を歩いて行ってほんの2、3分のところにある。コンビニが入ったビルの地下1階だ。オープンは2009年の6月。まだ新しいですね。
ちょっと早めについたら、地下2階の駐車場に通されてしまった。そこがいつも待機場所になっているらしい。やがてスタッフがチケットの整理番号順に客入れを始める。

中へ入ると、不思議な間取りですね。まあライブハウスなんて、どこもそれぞれユニークな構造をしているものではありますが。
どういう空間かを言葉で説明するのはちょっと難しいので、おおざっぱな図を描いてみた(↓)。
ステージが広く、客席(スタンディングのアリーナ)は奥行きがなくて、みんなしてその広いステージにべったり群がるような感じでライブを楽しむ。だからアーチストたちとの一体感は十分に味わえる。でも今回みたいに後ろまで目一杯お客を入れると、後ろの方の人は二本の柱が邪魔になってちょっと見えにくいかもな。スタンディングフロアのキャパは500人ということだが、この夜はかなり埋まっていた。
対して、多少の余裕が見られたのは両サイドにひな壇式に段差をつけてくみ上げられたバルコニー。こちらは左右ともに、詰めれば100人ぐらいは入りそうだったが、わりと余裕をもってシートが並べられていた。ステージと一体化したフロアを離れて見下ろすかたちになるので、一緒に盛り上がりたい方は寂しいかも知れないが、オペラグラスで鑑賞するには適している(それは言い過ぎ)。もっとも、今回はこのエリアは左右どちらも「関係者席」にされていて、我々一般ファンは入れなかった。

私の整理番号は、そんなに早い方ではなくて185番だった。入り口でドリンクチケットを買って中に入った時には、中央正面のフロアはもう半分以上は埋まっていた。しかも、奥のドリンクバーへ向かおうとすると、すでにドリンクバーで買った飲み物を手に、鑑賞する場所を確保しようと戻って来る人の流れと正面からぶつかり合って難儀しました。ここの動線はどういう想定になっておるのか。ドリンクバーが反対側にあれば良いのにな、と思った。
まあしかしライブハウスなんてそんなもんだ。ようやくチケットとビールを引き換えて、ステージ正面をうかがったときには、かなりぶ厚い人垣が出来ていて、とてもじっくり鑑賞できそうにない。仕方がないので、どんどん奥の方へ行った。そうしたら、ステージの真横に、実に良い感じにスッポリ場所がとれてしまった。舞台後方のドラムスは首を伸ばさないと見えないが、わりと至近距離でずーっと清浦さんの横顔とかナマ足とかを(おいおい)鑑賞できるポジション。
前には若い女の子が三人ばかり並んでいて、ライブの途中で清浦さんが「このあいだの地方イベントで会った人で、今日来てくれた人は?」と客席にふったら、私の真ん前の子が「ハーイ」とか可愛く手を振っていた。ひょっとすると名古屋から参加した同士かも知れない。むこうは同士と言われても迷惑だろうが。
その子が開演前までケータイで、メールだか最近はやりのツイッターだか知らないが、ずーっとやっていたのが印象的だった。東京って、こんなに密閉された地下のスペースでも、携帯が使えるんだね。
開演時間の午後6時ジャストになったあたりで、会場に流れるBGMのボリュームがちょっと上がり、曲が石川セリの「Midnight Love Call」になる。アルバム『十九色』の最後にカバー・バージョンが入っている曲だ。当然ライブで演ると思っていたけれど、その前にオリジナルをさらっと聴かせるなんて、なかなかやってくれるじゃん、と期待も高まったところで、照明が落ちて、いよいよ始まりだ。

1. 十九色(カラオケ)

 

静まった会場に、アルバム『十九色』トップのタイトル曲が流れる。清浦夏実のフルートと窪田ミナのピアノをBGMに(ライブじゃなくてカラオケですよ)、暗い舞台の上では七人のバンドメンバーが順々に各々の位置につく。そして最後に清浦夏実が登場。この「十九色」はインストゥルメンタル・ナンバーと思わせて、最後にちょっとだけ歌が入るので、そこのところは清浦さんがカラオケをバックにナマで歌う。いよいよライブの始まりだ。

 夢うつろなこの世界を
 何色に染めようか
 ただひとつの光求め
 十九の空へと

ちょっと声が硬いかな。でもいいですね。

清浦さんはスレンダーな長身を、レース飾りが可愛らしい白のマイクロワンピースに包み、ショートパンツからすらりと美しいおみ足を伸ばしている。
しかしあれだな「十九色ライブだから何色の衣装にしよう」なんてあれこれ考えながら「白」を選んだわけだ。いや生成りかな。いずれにしても、まだ色がついていないし、「何色に染めようか」という意味だろう。そして、これから清浦夏実が何色に輝くかはしらないが、あらゆる色が、すでにここにもう可能性として含まれているのかもしれない。
お足もとは二段フリンジのブーツ。とにかく雨女なので、ブログにも「ワンマンにむけて長靴買おうかな…」なんて書いていたもんね。だからブーツ(笑)。

2. 旅の途中



一曲目が「十九色」で、2曲目が「旅の途中」…という、アルバムそのままの展開は、けっこう予想していた方も多かったと思う。そもそもアルバムの曲順が、ライブでのオープニングを想定したものだったんじゃないだろうか。
これは私ひとりの印象かもしれないが、さっきの「十九色」や、この「旅の途中」のイントロあたりまでは、緊張していたのか、ちょっと声が硬かったような気がする。しかしこのナンバーの中盤から次第に落ち着いて、声にも艶が増していった。バックバンドのしっかりと安定感のある演奏にサポートされて、だんだん身も心もほぐれ、温まってきたのかもね。今回のバンドメンバー、後で紹介があるけど、はっきり言って、新人歌手のファーストライブにしては分不相応なほど贅沢な顔ぶれだ。でも、みんなで清浦夏実の門出を成功させようと、保護者みたいに力をあわせている様子が観客にも伝わって微笑ましい。やっぱりラッキーガールだよな、この子は。
それにしても「旅の途中」つくづく名曲である。私のポジションからはフロント最前列のお客さんたちも良く見えるのだが、みんな聴きいっている。
終わったところで、ご挨拶。フロアにぎっしり集まったお客の数の多さには、本当に驚いているようだった。感謝のことばに応えて「ドレスかわいい」「ネイルすてき」「足きれい」なんていう女の子たちの声援が飛ぶ。
ここは、MCと呼ぶほど時間も取らず、本当の挨拶だけに終わって、次はいよいよフルートを手に取る清浦夏実。

3. 虹色ポケット(桃子のフルート入り)



静かな曲とヘビーな曲と、2曲続いた後は、(ちょっと切ないけれど)軽やかでポップな4枚目シングル曲で、会場を明るく盛り上げた♪よ♪
ライブ前に「世にも珍しいフルート吹き語り」なんて変なことを言っていたが、確かにそうとしか名づけようのない光景だった。前奏を吹いてから、マイクスタンドのあたりにフルートをセットしてワンコーラス歌い、間奏のところでまたスラリと抜き出して吹くのである。その仕草が、なんだかフルートというより剣を抜いて構えるようにも見えて、まるで居合い斬りの達人だ。
ちなみに清浦さんのフルートは「中学生の時に生まれて初めて自分で稼いだお金で買ったもの」だそうです。ということはつまり、セーラームーンの桃子役のギャラで買ったということになりますよね。だからこのフルートは「モモコのフルート」と命名したらいいと思う(思うってアンタ……)。

4. 夏の記憶

 

「虹色ポケット」で空気が高揚すると、次はスピード感のあるセカンドシングルのカップリング曲でそのまま疾走だ。この曲あたりから、ステージ端っこの私の目の前にいたノーナ・リーブスの奥田健介のリード・ギターがロックし始めて、以下、ライブ後半の曲にいたるまで、華麗に突っ走っていた。今回のバンド構成のなかでは、このオッケンさんのギターが演奏に一番の華を添えていたと思う。やっぱりカッチョいいです。

5. 約束のうた



「旅の途中」のカップリング曲で、同じくZABADAKの提供によるナンバー。イントロのフレーズなんか、こちらの方がよりZABADAKらしい感じもするが、アルバム『十九色』には収録されなかった。だから今回のライブでもやってくれるかな、どうかなと思っていたので、とても嬉しかったです。こういう、骨格のしっかりしたスケールの大きな曲を、技量の確かなミュージシャンたちの演奏で聴くのは、実に心地よいもんです。
聴きながら、そういえば名古屋の握手会の時、吉良知彦さんが岐阜県の出身であることや、ZABADAKが郡上八幡のお寺で定期的にライブをやっていたことなどをお話しして、「清浦さんもぜひ岐阜に来て吉良さんと歌ってください」なんて言おうと思ってたんだけど、すっかり忘れていたなぁ、なんて今さらながらに思い出した。遅いよ。

MCその1(真逆の女)



曲が終わって小休止。MCは、芸能界入りのきっかけから、アルバムデビューまでの道のりについての話だった。
小学六年生のとき、原宿を歩いていて突然オスカーのマネージャーにスカウトされたこと。中学の部活と同じような感覚で芸能界の仕事を始めたこと。以前インタビューに対して、演技の楽しさを自覚するようになったのは『三年B組金八先生』からだ、と言っていたところから考えて、実写版セーラームーンの頃はまだ「部活感覚」でやっていたみたいだ。
そして、もともとモデルとしての所属だったのに、なぜかデモテープを録音することになって、なぜかレコーディング・ディレクターの耳にとまり、あれよあれよといううちに、歌手としてのデビューが決まった。どうしてそうなったのか、本人もまだ十分に分かっていない部分もあるようだ。

芸能界のことなどよく知らないが、これはかなり特殊なケースなのではなかろうか。「歌手」と「女優」というのは芸能人にとってすら、けっこうハードルの高い夢だろう。雑誌モデルやグラビアアイドルやバラドルの人で、本当は歌手志望、女優志望という人は少なくない。そのためにみんな子供のころからアクターズスクールに通ったり、オーディションを受けたり、路上ライブで自作を弾き語りするのだ。
でも彼女にはそういうたぐいの過去が一切ない。かなり唐突に歌手としてデビューすることが決まり、それから作詞や作曲の仕方を泥縄式におぼえて、そうやって初めて書いた曲が即レコーディングされ、しかもアニメのタイアップ曲としてメジャーな形でリリースされるという、ちょっとありえないような展開である「だから私、ほかのふつうの歌手の方々のたどった道とは、真逆なんですよね」。
そう、本人のおっしゃるとおり真逆の女である。だいたい、レオス・カラックスの映画に出演してから大学の映画学科に入学して女優の勉強をしているんだぜ、この子は。
なんてラッキーな子だろう、と嫉妬する人もいるかもしれない。しかしそのラッキーガールは、女優として歌手として、とんとん拍子にデビューして、幸運すぎる真逆の道のりをあゆんでしまったがゆえに、自分の歌を受け入れてくれた世間を、彼女自身は素直に受け入れられない、という少々ややこしいコンプレックスを抱えることになる。それは、冒頭に書いた通りだ。
でもようやく「十九色」というアルバムを出して、2年間とらわれてきたそういう悩み苦しみから、一歩先に進めました、というような報告があって、再び歌に戻る。素直で真面目な子ですね。

6. Midnight Love Call



さあ、じゃ次は何かな、と思っていたら「こんな日にぴったりの歌です」というMC。さっきも書いたように、清浦夏実といえば鉄板の雨女、でも天の神様も、記念すべきファースト・ライブに雨を降らせるのはさすがに忍びないと思ったのか、開場時の空は今にも泣き出しそうな曇り空。このあたりが妥協点という感じである。こんな日にぴったりの歌といえば、あれか。
照明が真っ赤に変わって、アダルトな雰囲気の中、出ました石川セリのカバー。これがセクシー、いやセクスィーだ。いやもう清浦夏実に大人のセクスゥィーを感じる日が来るなんて、トシはとってみるもんじゃ。
真面目な話、私は今までこの曲を、アルバム最後のしゃれたエピローグというか、スペシャルボーナストラックみたいな気持ちで、さらりと聞いていた。でもライブで聴いて、これはもっと、正座して聴かなくちゃいけない曲だと思い直した。それでライブの後、帰りの新幹線で正座して(ウソ)ipodで聴き直して改めて感動した。
これを彼女に歌わせることを思いついたディレクターは偉大だよ。フライングドッグの福田正夫って、ひょっとしたら天才かも知れない(笑)。この仕事だけでも尊敬します。

7. パレット(必殺桃子のフルート入り)



「ミッドナイトラブコール」でぐっとオトナの気分になったところで、やはりアダルトなジャズにつなぐ。CDでは浜田均のビブラフォーンだったイントロを、今夜は清浦夏実がフルートで吹く。カッコいい。真横から見ていると、ステージの清浦夏実はいつも、左足を前に出して軽い前傾姿勢をとり、前をみつめている。ちょっと挑みかかるような体勢。そこから足もとにセットされた「桃子のフルート」をさっと抜いて構える。なんか「必殺仕事人」みたいで、フルートから仕込み針が飛んでくるような気がする、というのは冗談だが、つまりフルートを構えると、大人っぽさよりも精悍な感じが先にたつ。
「パレット」はけっこう難しそうなのに、歌をこなしつつ同時にフルートで針も吹くのだから(吹いていない)大変だ。でも清浦夏実は、なんだか一曲終えるごとにどんどん元気を増しているように見える。私らぐらいの歳になると、最初のうちはごまかせても、後半になるほど力つきて化けの皮がはがれるのだけれど(何の話だよ)、彼女の場合、このあたりからさらに動きにも歌声にもパワーが増していくのだった。若いって素晴らしい。

8. 悲しいほど青く



このCDのジャケット、前にブログで誉めたけど、裏も大好きなのでしつこく画像を紹介する。
去年の秋にPVまで作って売り出した曲だから、ぜったい演奏するはずだが、でもストリングスが印象的な、落ち着いた雰囲気の歌だ。今回のバンド編成でどうアレンジするのかな、などと、最初から興味津々だったナンバー。
ピアノをバックに静かに歌い出すイントロは、アルバムバージョンのパターン。アルバムバージョンでは、清浦夏実が歌詞の最初の一節を歌い終えたところで、トライアングルか何かが「チーン」と鳴って、それを合図に弦楽器が流れ出す。私はここのところがすごく好きなのだが、今回はパーカッションのウインドベルの音を合図に、フルバンドの演奏が始まって、特に、力強く刻まれるドラムスのリズムが、ちょっと前衛的な原曲の印象を、ポップなスロー・バラード風に一変させた。これはこれでライブ向けに仕上がっていると思ったが、大胆なアレンジであることは間違いない。曲が終わったとたん、清浦さんは「今日は入り口に、この曲を作曲してくださった窪田ミナさんからも花束をいただいてるんですが、窪田さん、これ聴いて怒らないかな?」なんて言っていました。すごい方々に曲を書いてもらっているので、やはりオリジナルのイメージを損なわないかって、どこかで気にしているんだろうね。

MCその2(地方イベントのこと〜菅野よう子さん)



一休み。3月に初めて地方イベントを周ったときの話。それまで自分の声がこんなに遠くまで届いているなんて実感がなかったんだけど、色々な人から声をかけてもらって嬉しかったという話。ここで、その時のファンで「今日来てくれた人」と客席に声をかけたら、私のまん前の女の子が「ハーイ」と手を挙げた話は最初に書いたか。それからいよいよ菅野よう子の話題へ。「アノネデモネ」の詞を書くのに一ヶ月半、レコーディングに4日かかったとか、そういう話。
先々月のアルバムレビューのなかで、私は「清浦夏実はこの歌で、菅野よう子から作詞のテクニックでも伝授されたのかな」なんて書いたけど、この話の様子だと、菅野よう子はむしろ、きわめて興味深い観察の対象だったようだ。「すっごく面白い人」だそうだが、なんかよく分からなかった(笑)。それだけでもわかる人にはわかるようなキャラクターなのかな。とりあえず「アイスクリームとか、よく食う人」であることは理解できた。
そういや、こっちよ!さんからのお話では、田中公平の音楽生活30周年記念ステージにサプライズゲストとして菅野さんが出演して、ピアノを弾かれたらしい。関係ない話でした。
と、ここまで話が進めば、もちろん次は「アノネデモネ」だよな、と思っていたら、「菅野さんとの出会いの曲です」という紹介とともに、食い物つながりでお弁当ソングがきた。

9. お弁当を食べながら



ピアノ一本をバックに歌い上げる。いい曲ですねえ。
本当は一曲ぐらいピアノ弾き語りを期待していたんです。3月9日の西麻布「a-life」のライブでは、オープニングが「すぐそこにみえるもの」のピアノ弾き語りだったんだけど、途中で手が止まっちゃってアカペラ状態になって、終わってから「失敗しちゃった」なんて言っていたそうですが、そういうハプニングも期待していたんだよ、実は(笑)。でも今回はピアノ弾き語りはなし。
その代わり、っていうのも変だが、バックのピアノが「LaLa空中散歩」の末永華子だったりするんだよ。そういえばアルバム『東京タワー』は北川勝利プロデュースだったもんな。とにかく今回のバンドは、さりげなく豪華である。
というわけで、次こそは当然「アノネデモネ」だね、と思っていると、その前に「ここでバンド紹介です」ひっぱるなあ。

サポートメンバー


さっきから何度も書いているように、豪華なんだよこれが。

アコースティック・ギター:<バンマス>北川勝利(ROUND TABLE)
エレクトリック・ギター:奥田健介(NONA REEVES)
ベース:高井亮士(元 i-dep)
(↑今回のメンバーのなかでルックスも仕草も音もいちばん癒し系↑)
ドラムス:宮田繁男(元 ORIGINAL LOVE)
パーカッション:杉本清隆(ORANGENOISE SHORTCUT)
シンセサイザー:長谷泰宏(ユメトコスメ)
ピアノ&コーラス:末永華子
(↑この北川勝利とのツーショットは末永さんのブログに載っていたもので深い意味はない↑)

ボーカル&フルート:清浦夏実


バンド紹介であるからして、清浦夏実の紹介にしたがって、メンバーが一人一人、自分の担当楽器でソロブレイクをとるのだが、ひととおり紹介が終わったところで、バンマスの北川勝利から「ボーカル、清浦夏実」と逆指名があり、ソロの代わりになるような芸を強要される。最初はちょっとしたムーンウォークを披露したんだったかな。でも北川バンマスは二度、三度と清浦夏実を指名し、さらなる芸を要求。清浦さんもモンキーダンスとかで頑張って応えたが、だんだんグダグダになって「もうかんべんしてください」と土下座をして終了。
そんなドSな北川さんだが、一方では客席を煽って「We Love Natsumi」コールを起こし、清浦さんをおおいに照れさせるなど、ステージ、客席を含め、上手に会場の雰囲気をリードしていた。良いバンマスというのはこういうことができる人なのですね。
ということで、会場は高揚した気分のまま、ようやくアルバムのリード曲に突入。

10. アノネデモネ


もうさんざん待たされて、出てきました。これ言うことないです。清浦さんもぴょんぴょん飛び跳ねちゃっているし。
ここで「ゲストを紹介します」というイントロデュースとともに、清浦ファンにはおなじみのギタリスト、ポータブルロックの鈴木智文が登場。以下、全公演終了までつきあうことになる。

当然、曲はデビューシングルだ。

11. 風さがし



「風さがし」については以前、いい曲なんだけど、デビュー作にはシンプルすぎてインパクトに欠けるよ、と書いたことがある。でも制作側は、もともと、そんな一時的に注目を集めることとか考えずに、もっと長い目でこれをデビュー曲に選んだみたいだ。シンプルで無色透明だからこそ、清浦夏実の成長とともに、曲も進化していける、みたいな。
アルバムのサンバ・バージョン、DVDのアコースティック・ライブ・バージョンも良かったが、今回は、手振りを交えて客と掛合いするコーラスのパートを加えて、会場をどんどん盛り上げていった。まさかこんなふうに、ライブをクライマックスに引っ張る役目をこの曲に振るとは思いもよらなかった。このあたりで我々ファンの熱気もレッドゾーンに入り、次の曲へと傾れ込んでいく。

12. 銀色の悲しみ

 

これもちょっと意外な曲順。こんなに後じゃなくて、もうちょっと前半に出て来ると思っていた。アルバムでは効果音のかかっていたセリフの部分もきっちりしゃべり、夏実さんはタンバリンを叩いてステージ上を弾みまくった。
そしていよいよ「次がラストナンバーです」というアナウンスが入る。

13. 七色

 

まあ、最後はやっぱりこれだな。残念ながらメロトロンはありませんが、長谷泰宏のシンセが響く。
アルバムでも「Midnight Love Call」はボーナストラックみたいな感じだったし、実質的なラスト・ナンバーは「七色」だった。今回の「十九色」ライブ本編の締めくくりとして、これ以上の曲はない。
歌い終わり、まだ演奏が続く中、お辞儀をして去っていく清浦夏実。やがて楽曲が終わり、バンドのメンバーもいったん、袖に姿を消す。でも「すぐそこに見えるもの」は除くとして、あと「あれ」と「あれ」を歌ってないことは、もうミエミエ。当然アンコールである。

14. ネバーランド(アンコール)

 

予定どおりのアンコールではあるが、ワンマンライブが初めてなだけに「初アンコールでーす」と嬉しそうに清浦夏実が飛び出してきて、予想どおり「ネバーランド」だ。
弾き語りかな、とも思った。この曲の弾き語りなら今までもやっているし、ミスする可能性は少ないし(笑)。でも今回はせっかくフルバンド揃っているので、バンドバージョンだ。ところが珍しいことに、バンマスの北川さんが出だしを失敗する大ちょんぼ。仕切り直しでもう一回、というハプニングはありました。しかし盛り上がった流れはとどまらず、いよいよ最後の最後。もちろん歌はこれだ。

15. 僕らの合言葉(アンコール)


3月9日の西麻布a-lifeのライブの後のブログで、清浦さんは「『僕らの合言葉』は、今までで一番楽しかったです!!!!」と書いていた。だからその日参加できなかった私なんか、もうこの曲がきたら、絶対それ以上の手拍子を贈ってやろうと、対抗心むきだしで待ち構えていたのである(何を真剣になっているんだか)。もちろん思いっきり手を叩いたよ。
最後にふさわしい、最高に元気の出る曲ですね。



終わった。さあ、これでぜんぶ終了だ。盛大な拍手とともに、メンバーが再び舞台を去って行く。
しんがりの北川勝利が、なんかちょっと軽く客席に目配せして、手拍子を促すような仕草をしてみせた。
それで「ひょっとしたら」という空気が生まれたのかな。ともかく、ここまでは、アンコールといえどプログラムの範囲内である。これで終わったら予定調和だ。これだけじゃ帰れねえぜ、みたいな感じが客席に広がり、拍手はいつまでも鳴りやまない。もちろん歌える歌を歌い尽くしたことは知っているが、それでもなおもう一曲、という、これが本当のアンコールだ。

16. アノネデモネ(さらにアンコール)


拍手に促されてとりあえず出てきたものの、どの曲をやるかの打ち合わせもできていない感じのメンバー。清浦さんなんか、客席に「何がいい?」なんて訊ねている。いやこっちだって、どの曲が聞きたいとか、そんなこと考えずにただアンコールしていただけなんだよね。私の隣にいた人なんか、どさくさにまぎれて「もう一巡ぜんぶ!」とか叫んでいた。
ほどなく、バンマス北川のリクエストで「アノネデモネ」に決定である。
この歌の録音について、清浦夏実はインタビューで「ジャクソンファイブ時代のマイケルジャクソンみたいな感じで歌いました」と言っている。実際、最後の方で、思いっきりファンキーなファルセットボイスが飛び出す。で、そこの部分の声が、さっき10曲目に歌ったときよりも、もっときれいに出ているように感じた。こういうところが若さなんだなあ。素晴らしい。

と、こんな感じで、今やれることはやり尽くした、もうボリュームたっぷりの全15曲プラスワン。私のブログも熱気に当てられてちょっと書き過ぎたので、さっさと終わりにしたい。


最後の方のMCで、また新しい歌を歌って、今度はツアーなんかもしたい、と言って会場を湧かせていた清浦さんは、不意に、たぶんみんなにとっても印象的な一言を放った。

「十代に悔いはありません」

彼女は7月4日生まれだから、20歳の誕生日まで、あとちょうど3ヶ月残っている、十代を総括するには早いんじゃない、と思われる方がいるかもしれない。
でも彼女は大学一年生で、今は学業優先モードなんだよ。このライブが4月4日に行われたのも、春休みの間に練習をして、新学期が始まる前に本番、というスケジュールなんだと思う。だから、次に大掛かりなイベントがあるのは、前期試験の片がついた後、二十歳を過ぎてからになるはずだ。
そういう意味でこのライブは、歌手・清浦夏実の個人的な成人式みたいなものだったのかも知れない。おめでとうキヨ。よかったね。



【公演データ】「清浦夏実 DEBUT LIVE 〜十九色〜」/日時:2010年4月4日(日)18:00〜/場所:shimokitazawa GARDEN/主催:フライングドッグ・キョードー東京/共催:オスカープロモーション/協力:ファミリーマート/後援:music.jp/出演:清浦夏美(Vocal, Flute)/北川勝利(Acostic Guiter)/奥田健介(Electric Guiter)/高井亮士(Bass)/杉本清隆(Percussion)/末永華子(Piano, Chorus)/宮田繁男(Drums)/長谷泰宏(Synthesizer)/ゲスト:鈴木智文(Guiter)


十九色(初回限定盤)(DVD付)

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