実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第244回】ちょうど十九の春でしたの巻(清浦夏実1stアルバム『十九色』)


   
   越智千恵子「旦那さん弁当」2010年2月24日刊
   出版社 SDP/ISBN 4903620727/定価1,050円

 

越智(旧姓:河辺)千恵子さんにおかれましてはお誕生日おめでとうございます。元気な赤ちゃんが生まれますよう、お祈りしております。でもこの本に付録として新曲CDやDVDがついていれば、もっと良かったと思う(趣旨が違うよ)。
しかしあれだね、杉本彩『男を虜にする料理』とか、この『旦那さん弁当』とかいうタイトルの本はあっても、『モテる男の勝負料理』とか『妻へのもてなし弁当』とか、そういう本は無いのかね。私が知らないだけかな。
……ん、なんかメロディーが聴こえてきたよ。空耳かな?

 お弁当を食べながら
 私はいつも思ってた
 作ってくれた優しい手のこと
 切っている混ぜている
 握ってるその手の先を
 私はずっと見つめてた
  (「お弁当を食べながら」作詞:岩崎俊一/作曲:菅野よう子/歌:清浦夏実)

キレイな歌声だなあ。誰が歌ってるんだろう。
という実にワザとらしい導入部を経て今回のテーマである。まだ2月が終わったばかりだがいきなり断言してしまおう。

私の「今年のベストワン」(何の?)はこれで決まりましたから。
清浦夏実ファーストアルバム「十九色(初回限定盤)(DVD付)」初回版 3,570円/通常版 3,045円
試聴はこちらから。

「十九色」と書いて「じゅうくいろ」と読ませる。ちなみにLeo16と書いて「れおじゅうろく」と読む。それはどうでもいいですね。我らが木村桃子、清浦夏実のファースト・アルバムである。
言うまでもないと思うがあのモモコだ。セーラーMだ。

あのモモコが、中身はあんまり変わってないみたいだがこんなに素敵なレディーになったよ。

というわけで、色々やりかけのコンテンツはあるが、今回は、以前、「悲しいほど青く」のレビューを書いた時お約束したように、清浦夏実デビューアルバム「十九色」発売記念総力特集です。まずは収録曲の一覧だ。

 

「十九色」 VTCL-60180(通常盤)/VTZL-19(限定盤)2010年02月21日発売

No. Title Words Music and Arrangement time
01 十九色 作詞:清浦夏実/作曲・編曲:窪田ミナ 3:03
02 旅の途中
(TVアニメ「狼と香辛料」OP曲)
作詞:小峰公子/作曲・編曲:吉良知彦 4:53
03 アノネデモネ 作詞:清浦夏実/作曲・編曲:菅野よう子 5:17
04 銀色の悲しみ 作詞:尾上文/作曲・編曲:神田朋樹 4:29
05 ネバーランド
(TVアニメ「ケロロ軍曹」挿入歌)
作詞・作曲:清浦夏実/編曲:島田昌典 5:03
06 虹色ポケット
(TVアニメ「ささめきこと」ED曲)
作詞・作曲:佐々倉有吾/編曲:山本隆二 4:06
07 悲しいほど青く
(TVアニメ「ささめきこと」OP曲)
<album version>
作詞:清浦夏実/作曲・編曲:窪田ミナ 4:40
08 パレット
(TVアニメ「リストランテ・パラディーゾ」挿入歌)
<full version>
作詞:清浦夏実/作曲:吉田旬吾
編曲:コーコーヤ
4:54
09 風さがし
 (TVアニメ「スケッチブック?full color’s?」OP曲)
<full-colored samba mix>
作詞:高月みたか/作曲・編曲:鈴木智文 4:01
10 僕らの合言葉
 (TVアニメ「ケロロ軍曹」ED曲)
作詞・作曲:つじあやの/編曲:山本隆二 3:59
11 七色 作詞・作曲:矢吹香那/編曲:島田昌典 5:27
12 Midnight Love Call
(石川セリ1977年のアルバム「気まぐれ」収録曲)
作詞:南佳孝・有川正沙子/作曲:南佳孝
編曲:笹子重治
4:41

 

では一曲ずつ聴いて行きましょう。

1. 十九色(作詞:清浦夏実/作曲・編曲:窪田ミナ)

 

アルバムタイトル曲だし、オープニングだし、わりと明るくキャッチーな曲で始まるかな、とも思っていると、とても静かな幕開けである。作曲の窪田ミナによるピアノに、あとは清浦夏実のフルートと歌だけ、というシンプルな構成のプロローグ的ナンバー。ピアノとフルートは一発録りだったという。雰囲気的には、同じ作曲家による前のシングル「悲しいほど青く」の一曲目「すぐそこにみえるもの」を連想させる。
歌と言っても、大部分がコーラスで、歌詞があるのは最後にほんの少しだけだ。

 夢うつろなこの世界を
 何色に染めようか

 ただひとつの光求め
 十九の空へと

この、さわやかで瑞々しいんだけど、どこか寂しげでもの静かな光景が、清浦夏実、1990年7月生まれの19歳の歌世界へのイントロダクションだ。十九とは、本人の弁によれば「中途半端な数だけど一番可能性がある数字」であり、「割り切れない数、十九を二十にするためにあとひとつ欲しくて、アルバムが完成することによってやっと大人になれた、そんな感じがしました」とのことである(タワーレコードインタビューより)。

2. 旅の途中(作詞:小峰公子/作曲・編曲:吉良知彦)



で、続く2曲目で、作品のスケールは一気に広がる。この曲は第2弾シングルとして、2008年2月6日にリリースされた。カップリング曲は同じ作詞作曲コンビによる「約束のうた」で、どちらもアニメ『狼と香辛料』のなかで使用されている(VTCL-35013)。
曲を提供した吉良知彦と小峰公子はZABADAKのソングライター・コンビである。ちょっとだけ解説しておくと、ZABADAKは1980年代半ばから活躍しているロック・ユニットで、デビュー当時はトリオだったけど、二人になり、現在では、正式メンバーは吉良知彦だけ(あとは流動的なサポートメンバー)という体制のはずだ。小峰公子は初期から歌詞を提供していて、最近では時おりメイン・ボーカルもとっていて、私生活でも吉良知彦のパートナーなのだが、正式なメンバーではないみたいです。出す音は、ブリティッシュ・ロックの美味しいところを、ハード・ロックからトラッド・フォーク、民族音楽的なものまでひっくるめて、独自のセンスで再構築したようなサウンドだが、最近はとくにプログレ的なスケール感のある曲が多い。また、高音の女性ボーカルがメインで(初期にはメンバーだった上野洋子、最近では小峰公子)吉良がバック・コーラスを担当する、というパターンの曲に定評がある。

このシングルで清浦夏実に提供された2曲は、まさしくそういうタイプの、つまりプログレッシブ・ロック的な構想をもつ、女性ボーカルがメインのナンバーで、吉良さんの真骨頂が発揮されたとも言える。良い歌です。ZABADAKが外部に提供した曲のなかでは、NHK教育テレビ「おかあさんといっしょ」の「にじ・そら・ほし・せかい」と並ぶ出来なのではないかと、個人的には思う。本人も気に入っているのか、ZABADAKの近作『平行世界』には「旅の途中」のセルフカバーが収録されている。
能書きが長くなりました。私個人の思い出を言えば、デビュー曲「風さがし」は、素朴な魅力にあふれていたけれども、少々シンプル過ぎて、彼女の歌手としての底力がどのくらいあるのか、それだけではちょっと計りかねる作品だった。しかしこの第2弾シングルで、かなり作り込まれたZABADAKの音世界にチャレンジして、きちんと存在感を発揮しているのを聴いて、 おっモモコやるなあ、と襟を正したものである。いまの彼女のファンの中にも、この曲がきっかけ、という人はけっこう多いのではないだろうか。アルバムの「顔」とも言える2曲目にこれをもってきたのは、そういう意味かな、とも思います。
申し訳ないことに私は、支倉凍砂の『狼と香辛料』も、アニメの方も未見なので(だって夜中の3時のオンエアだぜ)作品との関連についてはさっぱり分からない。そのあたりのことも含めて、シングル発売時の清浦夏実のインタビューがネットに残っているので、少し紹介しておきたい。

 初めて吉良知彦さんの手がけた楽曲を聴いたとき、「ドラマチックな、でも民族音楽っぽい要素を持った曲だな」と思いました。レコーディング段階では「狼と香辛料」に対する知識はそんなになかったので正直、「何処まで想いを汲み取って唄えるか」という心配はあったんですけど。楽曲を聴いてるうち、自然と頭の中に「果てしなく続く青空の下、バーッと遠くまで広がっていく麦畑の風景」が浮かんできました。そんな美しい田園風景の中を、主人公たちが旅を続けていく。「その姿を第三者的な視点で見つめながら語りかけるよう」な気持ちで、この『旅の途中』を唄いました。
 唄い終わったあとに原作本を読んだときにも、「あ? あの歌詞のこの部分に、このシーンの想いを書いてたんだ」と、物語の内容と感情が繋がったり。オープニングの映像と歌が重なりあったときも、お互いがピッタリ寄り添っていたから安心しました(笑)。
原作本の中には、つらい旅の風景も出てきますけど、小峰さんの歌詞には、「旅って、けっしてつらいものではなく、楽しい未来が待ってるものなんだよ」という想いが綴られていたんですね。わたしもその気持ちにすごく共感を覚えていたように「この旅の先には素敵なゴールが待ってるはず。だから、希望を持って前に進んでいこう」という想いを胸に歌いました。
 ちなみに好きな歌詞は、「高く空まで飛んで/三日月になる/ハッカ色の星はきっと/涙のかけら」という部分です。
(「ZAKZAK」2008年2月1日 清浦夏実インタビュー

ちょっと長くなっちゃったけど、この曲はちょっと特別だったから。
あとはそんなに長くないのでご安心ください。はい次。

3. アノネデモネ(作詞:清浦夏実/作曲・編曲:菅野よう子)


発売前から、このアルバムのセールスポイントのひとつとして「菅野よう子プロデュースによる新曲も収録」ということが喧伝されていた。

もっとも、二人の顔合わせはまったく初めてというわけではなくて、持ち帰り弁当のブランド「ほっともっと(Hotto Motto)」の2008年のCMソング「お弁当を食べながら」(作詞:岩崎俊一/作曲:菅野よう子/歌:清浦夏実)というのがある。今回の記事の冒頭に挙げた歌詞がこの曲のものだ。昨年リリースされたコンピレーション・アルバム『CMよう子2』(GTCA-27, 2009年4月発売)に収録されている。

で、今回は歌うだけではなく、作詞という面でも菅野よう子とコラボしたわけであるが、どういうプロセスで制作されたかというと、菅野よう子から「良い子ぶらない、わがままで小悪魔的な女の子、というコンセプトで、とにかく毎日何か書いて送ってこい」というような指令があって、清浦が歌詞の断章を菅野にメールで送信し、菅野がそれに対するリプライ(感想?添削?)を返してよこす、それを元に清浦はさらに作詞作業を進める、という、通信教育みたいなやりとりで徐々に出来上がっていったらしい。菅野よう子は、そうやって清浦に「ガブリエラ・ロビンの作詞術」を伝授したのかも知れない。いやそんな秘伝があるかどうか知らないが。
 菅野よう子プロデュースといえば、どうしても坂本真綾を連想する人は多いだろう。制作サイドの頭の中にも、きっと「坂本真綾みたいな」というイメージがあったに違いない。で、実際できあがったこの曲も、そういう印象が、確かになくもないが、まあいいじゃないですか(フォローになっていない)。いま言ったような細かいコミュニケーションの結果できあがったのは、技巧的なようでナチュラルなような、切ないような明るいような、ディティールに凝った世界で、やっぱりキヨウラの歌だ。そして全体的には、いかにも19歳の女の子らしいラブソング。「あなたのポケットの小銭が鳴ってる/となりがいい となりがいい」「あのね でもね ただね まだね/アイシテルって 言いたくない言いたくない/大好きな曲を聴いて 雨降りの中ドライブ 右側がくすぐったい」等身大の世界がリズミカルに転がり出す。可愛いらしいですね。

4. 銀色の悲しみ(作詞:尾上文 / 作曲・編曲:神田朋樹)



次は曲調が打って変わって、ぱっと聴いた感じはギター・リフを中心に組み立てられたシンプルでストレートなロック。実はけっこう作り込んであるけどね。
他の曲が、あきらかに清浦夏実が歌うという前提で書かれているのに対して、この曲だけはそういうオーダーメイド感が希薄だ。音程は他の曲より低めだし、出だしのボーカルは、昔のグラムロックみたいにダブルトラックだし、間奏部では囁くような語りが入るし、その意味でアルバム中でも異色作と言える。別にどうってことないギター・リフが、何度か聴くうちに妙に耳に残って離れなくなる。
曲を書いた神田朋樹さんという方を、私は寡聞にして存じ上げなかったのですが、クルーエル・レコードのプロデューサーで、カジヒデキとバンド組んでいたこともあったりして、コンポーザーとしてはショコラやカヒミ・カリィたちへの曲提供で有名なんだそうだ。と、そういう情報をネットで読んで私はハタと膝を叩いた。多分あれじゃない、カヒミ・カリィのささやくようなスタイルの歌を、清浦夏実にやらせてみたい、という誰かの思惑もどこかに絡んでいたんじゃないだろうか。そう思って聴くと、なるほどと思う部分もあるんだけど、違うかな。わけの分からない解説ですみません。

5. ネバーランド(作詞・作曲:清浦夏実/編曲:島田昌典)



スローテンポの落ち着いたナンバー。第3弾シングル「僕らの合言葉」(このアルバムの10曲目)のカップリング曲として、2008年7月にリリースされた。「僕らの合言葉」が『ケロロ軍曹』のエンディング・テーマソングであるところから、この曲も同番組で挿入歌として使われていたようだが、本来は『ケロロ軍曹』を意識した内容ではないみたいだ。
清浦夏実は、作詞家としては、すでに2007年10月のデビューシングル「風さがし」のカップリング曲「夏の記憶」(作詞:清浦夏実/作曲:前口渉/編曲:鈴木Daichi秀行)でデビューを果たしていたが、作曲まで手がけた作品がCD化されたのはこれが初めてであり、そしてこれまでで唯一でもある。
で、その出来は、というと、最初は「う〜ん、良いけど、キヨウラ君には、これからもっともっと才能を磨いて素晴らしい作品を書いてもらいたいから、厳しく70点」なんて採点していたんだけど(何様だよ)なんか聴きこんでいるうちに、1970年代風の大仰なアレンジが妙にツボに入って、ハマってしまった。
タイトルのネバーランドというのは、もちろん『ピーター・パン』に出て来る、子どもたちが永遠に成長しない国のことだ。みんな子どもだった頃に一度は出会っている、でもみんな、大人になるにつれて忘れてしまう国。この歌では、そんな大切な思い出をきちんと心に刻んで、忘れないまま成長していこう、という決意が語られている「大人になっていくことさえも/君とならば/こわくはない/さよならを告げる/時計が響いて/笑顔だけ抱きしめて/空を駆けていこう」。この歌詞のなかの「君」が、現実の恋人のことのようでもあり、ピーターパンのようでもあり、というところがミソ。
ともかく、最初に作詞作曲した曲として、本人にも格別な愛着があるだろうし、ライブなどで今後も歌われ続けるうち、また少しずつ違った表情をみせてくれるかもしれない、そんな作品です。

6. 虹色ポケット(作詞・作曲:佐々倉有吾/ 編曲:山本隆二)

よ♪(´▽`)/
と言って虹色ポケット思い出すあなたはなかなかの清浦中毒。


と本人がブログに書いていた。てことは、私は清浦中毒なのかな。
この曲はTVアニメ『ささめきこと』のテーマソングとして、次の「悲しいほど青く」および「すぐそこにみえるもの」と共に清浦夏実第4弾シングルとして2010年10月にリリースされた(VTCL-35076)。ジャケットが抜群に美しい。アニメの方は私は観ていない。とてもカタギの社会人に観られる時間帯のオンエアではないのだ。
そもそも彼女のシングル曲は、「僕らの合言葉」を除けば、どれも「地上波で、ウィーク・デイの夜中の2時台から3時台に、1クール放送されて終わるアニメ」の主題歌なんだけど、これってどういう視聴者層を想定しているのだろう。私は数年前、水曜日の午前2時とか3時とかに、この手のアニメの合間に名古屋限定で再放送された実写版セーラームーンを毎週観ていたが、いったい何のためにこんな時間にセーラームーンがオンエアされていたのか、最後まで理解できなかった。ただ神が私に与えた試練だと思って観続けたのである。私はそれだけの被害(?)で済んでいるが、こんな時間帯に放映するアニメを制作しているアニメーターの方々って、ちゃんと賃金をもらえているのだろうか。
関係ない話でした。最初の歌詞が「スローモーション 蘇る校舎の影/夕陽を浴びながら 私たちは笑っていた」っていう、もう思いっきり甘酸っぱい学園ソング。ライブとかでも盛り上がりそうな明るくて楽しい曲だけれども、別れと旅立ちのニュアンスもあって、これからの卒業式シーズンにぴったりだと思います。イントロの軽やかな笛の音をリコーダーだと思っていたらキヨウラ本人によるフルートだったよ。無知ですまん。

7. 悲しいほど青く<album version>(作詞:清浦夏実 /作曲・編曲:窪田ミナ)



同じくTVアニメ『ささめきこと』のOP(オープニング)テーマ。アルバムタイトルの1曲目「十九色」と同じく、窪田ミナとのコラボによる曲で、その静謐なたたずまいは、ちょっとアニメの主題歌とは思えないくらいだ。シングル盤に収録されたバージョンは、最初から杉野裕ストリングスによる弦楽奏が鳴っていたのに対して、このアルバムバージョンでは、歌い出しの部分は窪田ミナのピアノ一本で、徐々にストリングスが加わるリミックスになっている。基本的な曲調は変わらないが、このアルバム版の方が、出だしの部分で清浦夏実のネイキッド・ボイスが際だつ。

サード・シングル「僕らの合言葉」(2008年7月)から、この「悲しいほど青く/虹色ポケット」(2009年10月)までには1年以上のブランクがあり、この間、清浦さんは大学受験等もあって、歌手活動はいったん停止していたらしい。で、日大芸術学部映画学科なんていうところに入学したもんだから、同世代のアーティストのタマゴたちとの交流の中で、ちょっとした意識改革もあったんじゃないですかね。「悲しいほど青く/虹色ポケット」では、曲を書いてもらって歌う、というよりも、楽曲提供者とのコラボでCDを制作する、というプロデュース志向が強まって、結果、シングルというよりミニアルバムに近い仕上がりになっていた。今回のファースト・アルバムはその流れの延長線上にあると思う。そういう意味でこの曲は、アルバム「十九色」の先行シングルみたいなニュアンスも持っている。

8. パレット(作詞:清浦夏実/作曲:吉田旬吾/編曲:コーコーヤ)



浜田均のビブラフォンと、コーコーヤを率いる笹子重治のギターが絡んで、ジャズです。ジャズってます。こんなのもアニソンなのである。日本のアニメ文化は奥が深い。

この曲はもともとはTVアニメ『リストランテ・パラディーゾ』の第3話で挿入歌として流れたものである。老紳士ばかりが従業員をやっているローマのレストランを舞台にした漫画が原作だそうで、日本の漫画文化は奥が深い。ともかくこの曲はその後、同番組のオリジナルサントラ盤(TVアニメーション「リストランテ・パラディーゾ」O.S.T.『musica paradiso』2009年6月発売)に収録されたが、それは2分19秒のショートバージョン「パレット〜プチショート〜」で、フルバージョンはまだ世に出ていなかったということだ。つまり今回のは「初CD化」である。
清浦夏実は間奏部分のフルートでも参加している。ブログでは「中学の部活程度にしかやってなかった女がプロの方に混ざって演奏するなんて…」と恐縮して書かれていたけど、まあ確かにミュージシャンは粒ぞろいです。浜田均、コーコーヤ(笹子重治・江藤有希・黒川紗恵子)に加え、ベースがコモブチキイチロウでパーカッションが福和誠司と、ブラジリアンというかラテン系の顔ぶれである。このメンツに触発されたのか、次にくる「風さがし」がサンバのアレンジになったのはご愛嬌だね。

9. 風さがし<full-colored samba mix>(作詞:高月みたか/作曲・編曲:鈴木智文)



オリジナル版はTVアニメ『スケッチブック 〜full color's〜』のテーマソングとしてリリースされた。記念すべき清浦夏実のデビュー・シングルである(VTCL-35002, 2007年10月24日発売)。このアルバムに収録されたのは新たにミックスされたサンバ・アレンジ・バージョン。ボーカルは新録音ではないようだ。
THE BOOMに「風になりたい」という名曲があるが、この「風さがし」のサンバ版もなかなか素敵で、ひょっとするとタイトルに「風」がつく曲はサンバと相性がいいのかも知れない(口からでまかせ)。
私個人は、さっき2曲目「旅の途中」の解説の中でチラっと触れたように、最初に「おっ、モモコが歌手デビューか」という興味からこの曲を聴いた時、その独自のボーカル・スタイルには魅力を感じたものの、「ちょっとこの曲、シンプル過ぎない?」と思ったんだよね。そういう意味では、今回のアレンジバージョンの方が気に入っている。まあこれは個人の好みの範囲だろう。
それと、確か私、リリース当時はシングルのカップリング曲である「夏の記憶」の方をむしろ好んで聴いていたような記憶があるが、今回は収録されていない。スピード感のある軽快なナンバーなので、興味をお持ちの向きはぜひデビューシングルの方もお買い求めください。

10. 僕らの合言葉 (作詞・作曲:つじあやの/編曲:山本隆二)



この曲は3rdシングルとして、 先に紹介した5曲目「ネバーラーンド」とのカップリングでリリースされた(VTCL-35032, 2008年07月23日発売)。
言わずと知れたTVアニメ『ケロロ軍曹』の第13代目エンディングテーマである。第13代目ってのもすごいな。ちなみに清浦奎吾は第23代目の内閣総理大臣だ(それがどうした)。清浦さんが『ケロロ軍曹』のテーマソングの歌手に起用された理由は、やっぱりヒロインの「夏美」と名前が一字違いで同じ読みだったから…かどうか、私は知らない。なんか今日のブログ、久々の長丁場になって、書いている私も、そろそろ頭が混乱している。
さきほども述べた通り、清浦夏実は様々なTVアニメソングを歌っているが、陽の明るいうちに放送されたアニメ、というか、深夜番組でないのは、後にも先にもこれしかない。そういう意味では、彼女の歌の中でも一番知名度があると思う。セールス的には最新シングル「悲しいほど青く/虹色ポケット」がオリコンの週間チャートで最高位98位を記録していて(100位以内に入ったのか、すごいな)この「僕らの合言葉」は、それには及ばず150位くらいなんだけど、それでもやっぱり、「あ、この曲、聴いたことがある」という感じで、いちばん多くの方々の耳に触れているのはこれじゃないかな。正式に『ケロロ軍曹』のエンディングだったのは、2008年の7月から12月までの半年に過ぎないが、あれから1年経った今でも、この曲のインストゥルメンタル版がアニメ本編に使われたりしている。きっとファンにも印象深いのだろう。
それにコンビネーションもうまくハマっている。つじあやののウクレレサウンドがもつ親しみやすさや癒しの力が、清浦夏実の声との相性のよさで2倍にも3倍にも増幅されて、私みたいなクタビレ気味の親父も、つい手拍子したくなるような幸せな気分になれる。メジャーな「元気の出る歌」として完成されていると思う。大好きです。
はい次。

11. 七色(作詞・作曲:矢吹香那/編曲:島田昌典)



これはこのアルバムで初披露された歌。いきなりメロトロンの音が流れるのでびっくりする。
メロトロンはみんな知っているかな。私も詳しくないんだが、テープ式エレクトーンとでも言いますかね、鍵盤楽器なんだけど、鍵盤を押すとそのキーに対応した音声テープが流れる。そのテープに、たとえばバイオリンの音を入れておけば、鍵盤を弾いてバイオリンの音を出せるわけだね。再生機なんだか楽器なんだか分からない。だいたいそんなもんだと思うが、間違ってたらごめん。
まだシンセサイザーが浸透する以前のロックの名曲、超大御所クラスでいえばビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」とか、レッド・ツェッペリンの「レイン・ソング」とか、キング・クリムゾンの「エピタフ」なんかに使われているので、古いロックファンは、その独特の音色だけで「ああ」なんて感慨に耽ってしまう。いまだにメロトロンの伴奏なんてあるのだなあ。弾いているのは作曲者でもある島田昌典だ。その他、ドラムの河村智康、ベースの美久月千晴といったメンバーが、5曲目の「ネバーランド」と共通しているせいか、全体的な音の感触は「ネバーランド」によく似た感じがする。あの曲がそうであったように、1970年ごろの洋楽のテイストです。
私としては、これがアルバムラストナンバーで、次はボーナストラックだと考えている。

12. Midnight Love Call(作詞:南佳孝・有川正沙子/作曲:南佳孝/編曲:笹子重治)


最後に名曲のカバーを入れてきたわけであるが、参ったね。石川セリ。誰だこれを清浦夏実に教えたのは。

矢野誠のプロデュースで石川セリが1977年に制作した3rdアルバム『気まぐれ』は、彼女の代表作と言って良いと思うが、とにかく作家陣が豪華。最初の「Moonlight Surfer」は頭脳警察のパンタこと中村治雄の曲だし、「昨日はもう」は詞が石川セリで曲が矢野顕子、「すれ違いHighway」は来生たかお、「ダンスはうまく踊れない」と「Flight」は後に夫になる井上陽水の曲で、 「るれーぶえらび」は長谷川きよしと、もう大変なものである。
「Midnight Love Call」は南佳孝の曲で、矢野顕子や陽水が先にあげた曲を自分でも録音しているように、南佳孝もこの曲を1980年の自作アルバム『Montage』のなかでセルフ・カバーしている。そっちはレゲエのリズムを取り入れたアレンジになっているが、もともとの石川セリのバージョンはボサノバで、今回の清浦夏実のカバーは、特に何かを付け加えるようなことはせず、石川セリのオリジナルに比較的忠実なアレンジになっている。
しかしこれ、確かに名曲は名曲で、石川セリのベストアルバムのたぐいには必ず入っているのだが、しかし何だな。まだ少女の面影を残した19歳の清浦夏実に、こんな、あからさまに男を誘っている歌を歌わせるのは、父さんちょっと心配だ。

こんな夜中に電話して ごめんなさい
ただなんとなく声がききたくて
仕事のお邪魔になると思ったけど
やっぱり私かけてしまった
外は冷たい雨が降る
私 雨は嫌い ひとりでいるのが
とてもいたたまれなくなるから

駄目だ、夜の夜中に、男にそんな電話をしては。しかも、続く2番の歌詞の冒頭は「少しお酒を飲んでみたの/気持ちが落ち着くように」である。お前はまだ19歳ではないか。
しかも清浦さん、この曲だけは、オリジナルの石川セリに引っ張られたのか、それとも、アルバムの完成を機に、本人も言うようにちょっぴり大人になったのか、ちょっとこれまでとは違う雰囲気で歌っているのだ。なんか妙に艶やかなんですけどね。

13. DVD


というわけで全12曲。さらに初回限定版には正味18分ほどのDVDがついている。

(初回限定盤DVD)
「“723の日”SPECIAL STUDIO LIVE 2008」
1. 風さがし 2. 旅の途中 3. ネバーランド 4. 僕らの合言葉
Vocal, Flute&Piano:清浦夏実/Guitar:鈴木智文/Percussion:杉本清隆

『ケロロ軍曹』のテーマ曲「僕らの合言葉」のシングルが発売されたのは、アニメの中のヒロインの「夏美」と清浦夏実にひっかけて、2008年7月23日(7月23日=723の日=ナツミの日)だったんだけど、それを記念して行われたスタジオライブの模様である。かつてネットで限定配信されたことがあり、その動画はあちこちに転がったりもしているのだが、こうやってディスクで手に入れられるのはありがたいことです。

「風さがし」でフルートを吹き、ピアノ弾き語りで「ネバーランド」を熱唱し、みんなの手拍子で楽しそうに「僕らの合言葉」を歌う清浦さん。個人的には、あの分厚いサウンドの世界をギターとパーカッションの伴奏だけで再構築してみせた「旅の途中」が興味深かった。




いや今日の記事は久しぶりに思わぬ長さになってしまってすまない。あともう少し、これで終わるから。

初のワンマンライブ「清浦夏実 DEBUT LIVE〜十九色〜」
 2010年4月4日(日)下北沢ガーデン (世田谷区北沢2-4-5 mosia B1F)
 17:30 会場/18:00 開演 ¥3,500 1ドリンク別
 一般発売日 : 3/14(日) AM10:00〜
 先行予約はここ

現在、4月4日に東京へ行くべく画策中であるが、例によって無理かも知れない。でもまだあきらめずに頑張っています。でもギリギリで行ける算段がついたとしても、もう手遅れだったりして(会場は、座席が230席で、スタンディングがおよそ500程度のキャパだそうだ。どうかな→結局行った)。
さらに握手会なるものもあるという。こちらはもうすぐだ。

アルバム「十九色」発売を記念して、ポスターお渡し&握手会が決定しました!
ご予約、またはご購入いただいた方に、先着で整理券を配布いたします。
詳細は下記店舗にてお問い合わせください。

 3月6日(土)
  12:30〜 アニメイト日本橋店
  17:00〜 ゲーマーズなんば店

 3月7日(日)
  14:30〜 アニメイト名古屋店
  16:00〜 ゲーマーズ名古屋店

次の日曜日に名古屋である。まあライブでもなんでもなくてただの握手会だが、私は午後2時半のアニメイト名古屋店の方を偵察に行こうと思う。ポスターとか握手とかにはあまり興味がないし、アルバムももう購入しているので遠巻きに観るだけのつもりだが、状況次第では参加して、多少なりともイベントが盛り上がるようサポートしたい。名古屋支部のみなさんも、よろしかったぜひご参加の上もり立ててください。
……って、こんなに長くちゃ、もう誰も読んでないかもね。ではまた。





十九色(初回限定盤)(DVD付)

十九色(初回限定盤)(DVD付)

 

試聴はこちらから。