実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第195回】弓原七海ファーストアルバム『Seventh Sea』リリースパーティーの巻

1. 弓原さんと私


先週の日曜日といえば3月22日、3月22日といえば、ぽんたさんの誕生日であった。おくればせながらおめでとうございます。
いや今日はその話ではなかった。3月22日に名古屋の金山で弓原七海のライブがあったんですよ。
この前、彼女を観たのは去年のゴールデンウィーク、中日劇場「ウルトラマンプレミアステージ2」の第1部だったから、ほぼ1年ぶりか。ウルトラマンショーは息子とよく観に行くが、弓原七海はこれまで見た「歌のお姉さん」の中でも破格の待遇を受けていた。バルキー星人が七海ファンだとか、客席に「七海ちゃんがんばれ」の横断幕が貼られるとか、そこまでゲスト扱いされる「お姉さん」なんて、これまでいただろうか。そういうことを昨年5月9日のブログにちょっと書いた。
それから昨年2月の、栄のオアシス21で催された「ふれあいフェスタ2008」のミニステージも見ている。これは愛知県警のイベントのワンコーナーで、曲数も少なかったし(「キラリ☆セーラードリーム」「あなたの声」「double rainbow」の3曲だけ)トークはおろか曲紹介もわずかだったけれど、そのぶん、弓原七海の歌だけをナマで聴かせる無添加100%のステージという感じで、私はわりと好きだった。というようなことも昨年2月26日のブログに書いた。
その前の年はダーツバー「P.A.+P.A. HIBIKI=EN」(響宴)で二度、ライブを見た。そのことも2007年6月17日のブログに書いた。
つまり私は、七海さんが名古屋によく来てくれるので、年に1、2回は聴きに行っているファンである。ていうか、その程度のファンです。なにしろ七海さんには、私なんかお話にならないような強力な支持者の方々がいる。彼らは弓原七海が行くところ全国どこへでも影のようについて行き、弓原七海が舞台に立つときは、必ずデジカメを構えて最前列に並ぶ。そういう方々を差しおいて、私みたいなナマケモノが偉そうにレビューなんか書いていいのか、とも思う。第一、私は今回、遅刻しちゃって半分しか見ていないのだ。しかしそれでも書かずにはいられないほど、いいライブだったんですよねこれが。

2. 線路の下のライブハウス



今回のステージは「弓原七海 ファーストアルバムリリースパーティー」と名づけられていた。この3月4日、弓原七海名義になって最初のアルバム「Seventh Sea」がようやくリリースされた。そのことをファンの皆さんとお祝いする会、という意味であろう。七海さん自身、曲の合間のおしゃべりでも終始「ライブ」ではなく「パーティー」と言っていた。
会場は金山のライブハウス「CLUB SARU」、名古屋駅から電車+徒歩で20分もあれば間に合うロケーション。ところが私ってば、名古屋駅で(ライブとは別の用事で)待ち合わせしていた人がなかなか来なかったのと、JRのダイヤが乱れたのとで大幅に遅刻、金山駅に着いたときには、開演時間の7時を30分近く回ってしまっていた。
ということは「キラリ☆セーラードリーム」が聴けないということである。今回のステージがどういう構成かは知らないが「キラリ☆」はいつだってオープニングあたりで歌われるからだ。というわけで私、のっけからテンション下がった状態で、トボトボJRの線路をたどりながら、店に向かった。
いや本当にね、この「CLUB SARU」というお店は、駅から線路に沿って歩いて行けばすぐに見つかるので、方向音痴の私としてはたいへんありがたかった。がしかし、モロに線路の高架線の真下にある店なのだ。だから演奏中も数分おきに天井の上を列車が通って、その都度ドンガラドンガラ音がする。弓原七海は「私なんか、この前まで暮らしていた家が線路のすぐ脇で、もっともっとうるさかったから全然平気です」とか、フォローなのか何なのかよく分からないことを語っていたが、とにかくうるさい。何でこんな場所の建物をライブハウスにするかなあ、とも思ったが、考えてみれば、だからこそこっちもガンガン音楽を鳴らして騒音をかき消してやれ、ということなのかも知れない。
いや余談だった。そんな線路の下のライブハウスに、私は30分以上遅刻してたどり着いたのである。会場はスタンディングのフロア。ドリンクチケットでビールをもらって、ステージの方を見ると、いるいる、最前列にはあの「いつもの方々」の見覚えあるシルエット。目の前を横切っていく白メガネの社長。が、舞台上に七海さんの姿はなく、知らない女性が歌っていた。ゲストミュージシャンの人かな?ってことは、弓原七海ステージはまだこれからか。やった!間に合った。
と思ったけど甘かった。後で聞いた話も含めてまとめると、この日のステージは(1)まず最初にメイド居酒屋のコスプレ(?)をした「小枝」によるアニソンコーナーがあり「キミノハートニコイシテル」「Romantic Chaser」「キラリ☆セーラードリーム」の3曲を歌唱、(2)次にゲストアーティストme_hoのライブ、(3)最後に生バンド演奏で、新生弓原七海がニューアルバムの曲を披露、という3部構成だったのだ。で私は、その第2部のme_hoライブが後半にさしかかったところで、店にたどりついたのである。
me_hoさんは、2005年、あの元イエローキャブの野田社長の会社から本名の「尾関美穂」でデビュー、昭和歌謡を歌う平成の歌姫として、太田裕美や尾崎紀世彦をカバーしていた方だ。でも結局一年ぐらいで事務所を移籍して、それを機に名前もme_hoと改めた。そして昨年2月に再出発第1弾シングル「Lovers' tone」(テレビアニメ『素敵探偵☆ラビリンス』エンディングテーマ)をリリースして、現在も活躍中。みんな若いのにそれぞれ苦労しているね。岐阜県出身で、子供の頃からジャパン・アーチスト・オフィス(JAO)音楽学院の岐阜校に通っていたというから、ほとんど地元の子である。実際「今日は地元でライブ出来て嬉しいです」なんてことを何度か口にしていたし、ご家族も聴きに来られていたようだ。
私がビールをちびちび飲んでいる間に、me_hoさんは、ちょっと屈折した内容のラブソングとか(すごい言い方)、2曲ほどを歌ってステージを終えた。そして入れ替わりにバンドのメンバーが舞台に上がってくる。そうか今日はバックバンドつきなんだ。やったね。
楽器のチェックなどで、ちょっとだけ間が空いたので、最前列中央にいた万丈さんにご挨拶をしてきた。実は今回、万丈さんから「七海ちゃんは諸般の事情で、今回のアルバム発表を機に、しばらく小枝時代の曲を封印するかも知れないので、絶対に来るように」という脅迫メール指令が飛んでいたのである。そういうご厚意にもかかわらず第1部に遅れて「キラリ☆」も聞き損ねてしまってすみません。
それでも第3部のニューアルバム曲お披露目ライブには間に合ったので、私としては「ま、いいか」と納得していたのだ。でもカシオペアさんがやって来て「メイド服の七海ちゃんがキラリを歌うとこ、観られなかったんですか。残念でしたね〜」とさんざん同情してくださるので、こっちもだんだん悔しい気持ちになってしまったよ。

3. Band on the Run(Photo by まもるさん)


そうこうしているうちに、弓原七海さんが「さっきのコスプレは別の人ですから」と言いながら登場、キーボードに着席して、いよいよメインのスタート。1曲目は「アシアト」。アルバムではラストナンバーになる曲だ。以下、短いトークを挟みながら、次のようなセットリストで一気に進む。

1. アシアト
2. オレンジタウン
 (トーク)
3. うさぎ
4. 運命の人
 (トーク)
5. 花に水やるラブソング
6. 手のひら
(あなたの声PV上映)
7. あなたの声(ソロ弾き語り)



写真はまもるさんのブログからお借りした。後ろから見ていると、まもるさんはスタンディングのフロアを自分の庭みたいにあっちへこっちへ移動しながらバンバン撮影していて、あれじゃどう見てもファンではなく取材の人だよ。
それはともかく、ご覧くださいよ。ルックスも、いかにもバンドっぽいでしょう。音の方も、CDではバラード、テクノ風、エスノ風と色とりどりだったのが、ここでは全曲かっちりとしたバンドサウンドにまとめられていて、後半に行けば行くほどノリが良くなるロックンロール。いや私は興奮しました。本人は前からやってみたかったのかも知れないが、私は、こんなふうに「七海withフレンズ」みたいな感じでバックバンドを従え、ヴォーカリストをやっている七海さんってあまりイメージしたことがなかった。またこれがみごとに決まってるんだ。
演奏も良かった。メンバーは、弓原七海自身の紹介によると「Bass:カズ、Drums:アツシ、Guitar:ヨシキ」、そしてもちろんVo&Keyが弓原七海。アルバムのプロデューサーでギターでバンマスのヨシキ(村田美樹)以外は、CDのレコーディングメンバーとしてのクレジットもないみたいなので、詳細は不明だが、アンサンブルのとれた実にタイトな演奏だった。ガンガラガンガラ電車が天井の上を行き来していたけれど、途中からそんなことはすっかり忘れてしまったくらい、私は夢中で聴いていた。
あっという間に6曲を終えたところで、いったんメンバーは全員引っ込む。普通の「ライブ」のパターンだと、ここでアンコールの拍手が起こって再登場、「あなたの声」で締めるところだ。でも、これはライブじゃなくて「ファーストアルバムリリースパーティー」なんですね。なので、ステージに人がいなくなると、アンコールの拍手を待つこともなく、舞台奥のスクリーンと会場内のモニタに「あなたの声」のPVが上映される。

このPVは、会場で500円(!)でDVD販売されていたのでもちろん買ったけど、この曲が、思春期の十代に寄り添う「青春の歌」だってことがよく分かる。ビジュアル的にも、夕陽が差し込む高校の廊下で、制服姿で歌う姿とかがあったりしてさ。まあ実際には、青春をとうに過ぎた我々おじさんたちもステージに群がっているんだが。そして、このPVが終わると七海さんが一人で静かに舞台へ再登場、弾き語りで「あなたの声」を聴かせてくれて、これで全曲終了であった。
なるほどね。これは確かに新生弓原七海の力強い第一歩だ。だから事情はどうあれ、今回をもってひとまず「キラリ☆セーラードリーム」や「キミノハートニコイシテル」といった小枝時代のキャリアを封印しても、それはそれでひとつのケジメなんじゃないか。ぜんぶ聴き終わったときには、私はそんな気分になっていて、万丈さんにもそう言った。そしたら万丈さんはちょっと違うご意見でした。つまり「キラリ☆」は知名度が高い。「弓原七海」と聞いて「?」という人も、これを聴けば「ああ、知っている」という反応に変わる。特に高校の文化祭なんかに呼ばれて歌う時は、この曲が「つかみ」になる。そういう名刺がわりの一曲として「キラリ☆」を残しておきたい。万丈さんのご見解はだいたいそんなところであったと思う。やはり関係者は発想が違うね。
ライブの後は、当然というかその場で即売会があって、私はアルバムとDVDを買った。買うと七海さんがサインして握手をしてくれる。最前列にいたいつもの方々も、たぶんすでに買っていらっしゃるんだろうけど、みんな買ってサインをもらったり写真を撮ったりしてプレゼントを渡して、正しいファンの流儀というのを見せつけられた。私は悪いファンでした。CDにサインしてもらったら、七海さんが「DVDにもしましょうか」と言ってくれたのに、断ってしまったよ。あとで万丈さんから「そういうのは記念なんだから」とたしなめられてしまいました。

4. Seventh Sea

 

Seventh Sea

Seventh Sea

 

というわけで『Seventh Sea』である。私は「七海」っていう名前を「七つの海」(Seven Seas)という意味で理解していたけど、このタイトルだと「七番目の海」(Seventh Sea)だね。第七の海が、いったいどの海を指すのかはよく分からない。現実世界の海ではないのかも知れない。
ともかく、そのお名前にちなんで、当然ながら収録曲は全7曲。ミニアルバムと言った方がいいかも知れない。17歳のアニソン歌手だった小枝が、5曲入りのミニアルバム『WING』をリリースしたのが2003年の春、「キラリ☆セーラードリーム」よりも前のことで、私など、まだその存在も知らなかった。それから6年の歳月を経てリリースされた、これが新たな「ファーストアルバム」だ。

1 運命の人(作詞・作曲:弓原七海/編曲:村田美樹)4:30  
2 オレンジタウン(作詞:サトウタカシ/作曲:半田淳/編曲:村田美樹)4:59
3 あなたの声(作詞・作曲:弓原七海/編曲:村田美樹)4:10
4 うさぎ(作詞・作曲:弓原七海/編曲:十年浪漫)5:02
5 花に水やるラブソング(作詞:戸沢暢美/作曲:林田健司/編曲:永田範正)4:35
6  手のひら(作詞・作曲・編曲:永田範正)4:29
7  アシアト(作詞:弓原七海/作曲:永田範正/編曲:永田範正)5:03

レーベルはBOOSTER RECORDS。山口信行って人が、福生の自宅をスタジオに改造して始めた会社である。私の記憶では、一昨年の響宴のライブのころ、七海さんはすでに、横田基地のアメリカンハウスの、ちょっと録音スタジオとは思えないようなところで作業しているとか、そんな話をしていた。サウンドプロデュースは、ライブのバックバンドのバンマスでもあったヨシキさんこと村田美樹。すでに昨年のシングル「Double Rainbow」「あなたの声」で一緒に仕事をしているし(浅井竜介とのユニット「RYCE」名義)、七海ライブでのコラボは過去にもあった。そして収録曲には、「あなたの声」とか「うさぎ」とか、だいぶ前からライブのレパートリーだった曲もある。つまり、曲数は決して多くないが、準備作業も含めると、かなり時間をかけて熟成されたアルバムなのだ。
1曲目の「運命の人」は、弓原七海の自作曲を村田美樹がアレンジした、いかにもアメリカンハウスで録りましたという感じのタイトなバンドサウンド。今回のステージの印象に近いノリなので、家に帰って最初に聴いたときは、全曲こういうライブ感覚で一気にいくのかなと思ってしまった。でも違いました。
2曲目「オレンジタウン」。タイトルは「夕陽に染まる街」という意味であろうか。コンクリートジャングルなどという言葉はもう死語かもしれないが、昼のきらびやかさとは裏腹に、夜の闇ではエゴと裏切りが横行する都会の生活を、弱肉強食の非情なジャングル・ライフに見立てたハードな曲で、今回のアルバムでピアノを担当しているスナオこと半田淳の曲。ドラムの増田“ガッツ”修(ベンベナッツ)が叩きだすアフロ・ビートが印象的だ。
3曲目「あなたの声」は、ファンにはおなじみの曲だ。今回PVが作られたのはさっき書いた通り。たぶん「キラリ☆セーラードリーム」に代わる、弓原七海の代表曲として、ライブではこれからも、弾き語りで歌われる機会が多いのだろうが、ここではバンドサウンドにアレンジされている。以前、名古屋ローカルで放送されたアコースティック・ピアノ・バージョンはここで視聴できます。
4曲目も、ライブではけっこう以前からやっていた「うさぎ」。インド神話なんかでは、人の魂は死ぬと火葬の煙と一緒に空に上り、月の裏側にたどり着くという。だいたい、西洋でも東洋でも、古い神話や宗教のなかで、月の裏側は死者の行く場所ということになっている。この世界から消えてしまって、たぶんいまは月の裏側にいる人への想いを、かつて一緒に夜空を見上げてうさぎを探した思い出とともに歌ったバラード。編曲の「十年浪漫」という人(?)はこのアルバムのキーボード担当としてクレジットされているが、誰なんでしょう?
5曲目「花に水やるラブソング」。林田健司のカバー。アルバムにカバー曲をひとつ収録しようということで、いろいろと吟味したあげくの選曲らしい。でも林田健司って言っても私、SMAPがカバーした「青い稲妻」のオリジナルを歌っている人、くらいの知識しかなくて、この歌の原曲も聴いたことがないので比較のしようがない。すみません。電子音ピコピコの、ライトでメロウなテクノポップ(へんな表現)に乗せて、弓原七海は持ち前の美声で「歌う」のではなく、隣の人にそっと「ささやく」ような独特の唱法を披露している。通勤電車の中でイヤフォンで聴いていると、直接歌いかけられているような気分になって、ちょっとぞくぞくします。
この曲からラストナンバーまでの後半3曲のアレンジは、インディーズ・エスノユニットSHINDOのメンバーで、このアルバムでもベースにギターにと大活躍の永田範正が担当している。

6曲目「手のひら」。これは説明はいいや。ライブの最後の方で演奏するために作られたような、軽快な元気の出るロックンロール。実際ステージでもカッチョよかったです。カッチョよかったので、まもるさんの撮影された写真を貼っておきますね。
7曲目「アシアト」。私は最初タイトルを「アシスト」と読み間違えて、社長のメガネのことでも歌った歌かと思ったんだが「アシアト」であった。これから未来へ向かって歩いて行くあなたの一歩一歩が、かけがえのないアシアトになるという、青春の応援歌。こういう歌を聴いていると、「うさぎ」のような異色作もあるが、弓原七海はやはり、本質的には青春の歌を歌う人なのかな、という気もしてくる。が、それは単に「あなたの声」のPVがストレートに青春ものだったから、そういう印象になっているだけかもしれない。
以上7曲。バラエティに富んでいて、弓原七海もスタッフも「どうだ!」とけっこう自信をもっているんじゃないかと思う。私が薦めても大して効果はないと思うが、内容は全面的に保証しますんで、まあみなさん、騙されたと思って聴いてみてくださいよ。Amazonでもitunesでも入手可能です。
じゃまた来週。


【追記】ライブは素晴らしかったが、反面トークの方にはまったく進歩が見られなかった。たとえば「(1)私はマンガをあまり読まない。→(2)でも『NANA』は好きだ。→(3)先日『NANA』をまとめ読みしていたら、話がつながらなくなった。→(4)なぜかと思ったら、途中で1巻とばして読んでいた」って、こういうオチも何もない、マクドで女子高生がしゃべっているような話をトークとして聞かせるには、プロのお笑い芸人なみの話術が要るのではないか。だが弓原七海は何の工夫もなくそのまんま話して、客を置き去りにして曲に入っていくのだ。私はほとんど目が点になってしまったが、こういうのって、ファンの皆さんにとっては「音楽はどんどん進歩しても、トークは以前のままなのが七海ちゃんらしくていい」というふうに、彼女の魅力の一部になっているんだろうか。なっているんだろうなきっと。


*写真の使用をご快諾くださったまもるさんに感謝します。