実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第194回】DVD第2巻:Act. 5の巻(その12)

1. 相変わらず余談が長くてすみません(北川関係小ネタまとめ)



ハァ〜イ、アイスだってサバもぐよ!
冗談はさておき、前回コメント欄にも書いたけどしつこく言う。北川ファンはブログに時々つけられる英語タイトルにも注意しなくちゃいかんぞ。
先月の初め、『週刊文春』に「ハンカチ王子、玉木宏……『男スゴロク』北川景子の本命は誰?」という記事が出たところ、その翌日にアップされた北川ブログの記事はこう題されていた「so many LIES, but i don't care what they say」(ウソばっかし、でも私、あの人たちが何を言っても気にしませんから)。そして先週ネット上に「玉木宏&北川景子熱愛説浮上」というニュースが出回ったら、すかさず北川ブログにも新エントリー。タイトルは「Say what you like, but i could really say that’s NOT truth」(何でもお好きなようにおっしゃって。でもはっきり言っておきますけど、それは真実じゃない)だった。もちろんどちらの記事も、本文で直接「そのこと」に触れているわけではない。タイトルで暗示しているだけだ。
ゴシップが出ると、すぐさまそれに対する自分の率直なレスを、ブログの英題に託して送り返す。これが、北川景子が所属事務所の検閲の目をくぐり抜けてファンとコミュニケーションするために考案した方法である。なんか誠実な人ですよね。


北川さん関係では、他にも『モップガール』の原作本が文庫になったとか(小学館文庫より3月6日発売)、『ハンサム★スーツ』がドラマになるとか(3月31日午後10:00よりフジテレビ系)、熱心なファンなら、まあとりあえずその辺も一応押さえておきましょう的話題がいくつかある。
『ハンサム★スーツ』スペシャルドラマの件は最初、ひろみんみんむしさんのブログ(ここ)で読んだが、そこでも予想されていたとおり、北川景子は出ない。今回の主人公は秋山竜次(ロバート)で、母親(室井滋)と喫茶店を営んでいる。ところが最近、近所にCafe吉祥寺がオープン。というのはウソだが、イケメンを揃えたライバル店が出現して、客を取られて閉店寸前のピンチ。しかし秋山は偶然、着れば谷原章介になれるハンサムスーツを手に入れる……とか、だいたいそういう話らしい。映画と同じキャストは谷原章介と、谷原がダークマーキュリー化したみたいな役で特別出演する塚地武雅(ドランクドラゴン)の二人だけで、あとは相武紗季、加藤ローサ、高橋ひとみ、田中圭といった名前が続く。う〜ん、相武紗季がドラマ版ハンサムスーツのヒロインか、それならバーターで同じ事務所の……いや、やめよう。まあとにかくそういうことだ。


ついでに余談をもうひとつ。うちの妻が熱心に観ていた(って唐突に言われてもみなさん困るだろうが)大野智(嵐)主演の金曜ナイトドラマ『歌のおにいさん』が先日終了して、まずまずの評判だったらしい。それでふと「それって北川さんのモップガールや安座間さんのサラ金と較べてどうなのかな?」と思って、例によって視聴率を調べてみたわけね。こうなる。

2007年01月クール『特命係長・只野仁』    最高17.0% 最低12.7% 平均14.3%
2007年04月クール『帰ってきた時効警察』   最高13.5% 最低10.9% 平均12.0%
2007年07月クール『スシ王子!』       最高08.8% 最低05.7% 平均07.5%
2007年10月クール『モップガール』      最高11.8% 最低09.2% 平均10.2%
2008年01月クール『未来講師めぐる』     最高10.6% 最低07.2% 平均09.1%
2008年04月クール『キミ犯人じゃないよね?』 最高10.4% 最低07.7% 平均08.9%
2008年07月クール『打撃天使ルリ』      最高10.0% 最低05.3% 平均07.2%
2008年10月クール『サラリーマン金太郎』   最高13.8% 最低09.5% 平均11.8%
2009年01月クール『歌のおにいさん』     最高11.8% 最低10.2% 平均10.8%

以上が、この2年ほどの金曜ナイトドラマの視聴率一覧である。特命係長とサラリーマン金太郎の高視聴率ぶりとか、スシ王子ってジャニーズ投入でこれかよ等々、いろいろ突っ込みどころのある表だと思うが、私としては、この時間帯のドラマもやはり、女優よりイケメン男優をメインにした作品の方が多いし、視聴率も総じて高いという事実が「なるほどねえ」という感じで興味深かった。9作品中ヒロインものは3本のみ。『モップガール』(平均視聴率10.2%)『未来講師めぐる』(平均9.1%)『打撃天使ルリ』(平均07.2%)である。まあ後は言わずもがなですがね、ナイトドラマで平均視聴率2ケタ台を叩き出しイケメンと張り合った女優は、菊川怜でも、あの深田恭子ですらなかった。我らがアニキ北川景子だったのだ。バンザーイ。
……いいかげん本題に入らないとね。

2. 水星力量 変身!


Act.5レビューの続きでした。
PGS文化スクールの陶芸展に潜入したレイとうさぎ。うさぎは地場衛とまたまた巡り会い、相変わらずの言い争い。一方、遅れてやって来た亜美は、陶芸展の入り口で妖魔(ポヨン)と出くわして変身だ「マーキュリー・パワー・メイクアップ!」。
マーキュリーの変身シーンって、コンパクトな中に必要なものがそろっている。この変身バンクに関しては、これまでも何度か引用させていただいたように、『M14の追憶』2005年1月19日の考察(ここ)がたいへん役にたつ。これによると、マーキュリーの変身所要時間は26秒である。セーラームーン29秒、マーズ29秒、ジュピター27秒と比較してみると、さほどの差はないが、でもちょっとだけ短い。さらに、例外的に長いヴィーナス32秒と較べると、かなり短いと言わざるを得ない。
しかし、これもM14さんが明らかにされているように、変身時間は確かに短くても、マーキュリーの髪が青くなって、手袋やブーツを装着して……という変身のプロセスはきちんと描かれていて、その点では最も変身時間が長いヴィーナスと較べても、特に省略はない。ヴィーナスの変身が長いのは、たんに毛染めに時間がかかっているせいだ。
これはアニメ版と対照的だ。以前も述べたように、アニメ版のセーラームーンの変身バンクは、第一シリーズ(無印)で言えば40秒程度、あとの戦士たちはほぼ20秒に統一されている。主役とそれ以外で、はっきり差がつけられている。(【第84回】の「3. ようやく本題のわりに大したことない考察」)
時間的な長さの問題だけではない。アニメ版で、手袋やブーツといったコスチュームのパーツをひとつひとつ身につけて、次第にメイクアップしていく過程がきちんと描かれるのは、セーラームーンだけである。マーキュリー以下の4戦士は、裸みたいになってクルクル回転して(亜美の場合そこが新体操のリボン演技風)ピカッと光ると、次の瞬間にはもうセーラー戦士になっているのだ。非常におおざっぱな感じがする。

    
    
    
    
    
    
    
    


さっき実写版マーキュリーの変身シーンを、短いけれどコンパクトな中に必要なものがそろっている、と書いたのはそういう意味です。だから実写版では亜美が単独で変身しても十分見ごたえがある。これがアニメだと、「うさぎちゃんと同じくらい、亜美の変身もくわしくやってくれればよかったのに」という残念な感想がちらりと頭をよぎってしまうのだ。
ただ実写版の場合、それぞれの戦士の変身シーンが完成されすぎていて、複数の戦士が同時変身するときにこれを分割画面にすると、ちょっとゴチャゴチャするというか、うるさく感じてしまうという別の問題があるにはある。

3. 触手(「セーラー」との組み合わせでブログアクセス数が倍増する魔法の言葉)


変身が終わり「おしおきよ」の名乗りをあげたマーキュリーが、駆けだした妖魔(ポヨン)を追うところで、いよいよ最後のCパートに突入である。森というか、雑木林みたいな場所での妖魔との戦い、アクションだ。Act.4まで、観るのがかなり辛かったアクションのシークエンスだが、このAct.5あたりから、試行錯誤の結果が良い方に向かい始めていると思う。初期の、バレエ風というか新体操風というかフィギュアスケート風というか、いわゆるクルクルひらひら路線からの脱却ですね。
実写版セーラームーンは、アクションシーンを確立するまでに、だいぶ時間がかかっている。これも何度も引いている『M14の追憶』の「進化する戦闘シーン」(前編中編後編)は、Act.1からAct.4までを、アクション場面の「氷河期」、Act.7(納豆妖魔との戦い)以降を「黎明期」と区分して、Act.23(マーズれい子病院コンサート編)でようやく「完成期」に入る、と見なしている。妥当な見解ですね。だからこのAct.5は、氷河期から黎明期への転換期だ。
まあ時間がかかったのも仕方がないとは思う。「美少女が主演の、女の子向け本格実写特撮ヒーローもの(しかも変身後も戦士は顔出しのまま)」という先例のない作品だったために、スタッフもあれこれ考えたに違いない。ポワトリンとかトトメスとかのオチャラケ路線に逃げずに、真っ向からシリアスにこういうドラマに挑む場合、敵との戦いをどう描くべきなのか、まだ誰にも分からなかったのだ。

しかも、戦いのスタイルは、敵の造型に大きく左右される。そういう意味で、最初の2話の、クルクル自転してぴょ〜んと跳ねたりするアクションは、渡辺典子やハニワ犬といった妖魔がCGだったことと大いに関係があると思う。だからもし以降のエピソードの妖魔も、基本的にああいうペラペラした質感のCGで描かれ続けていれば、あの本気で戦うつもりかどうかも分からない新体操風のアクションだって、画面にうまくマッチして発展していったかも知れない。でも予算や時間の都合があってそれは無理だった。
また、続くAct.3とAct.4では、着ぐるみ妖魔と美少女たちをフルコンタクトで戦わせずに、戦士をピンチに陥らせる方法として「触手」が採用される。このように、妖魔の側の造型と攻撃パターンをどうするかにも、最初の頃は迷いがあって、それがなおさら、美少女戦士たちの戦闘スタイルの確立を遅らせたのだと思う。

それでも、Act.3では(スタントの人を利用して)セーラームーンの側転による移動から妖魔へのスライディングキック、回転蹴り、といった、キック主体の攻撃パターンが試されているし、Act.4では、マーズによるサボテン妖魔への体当たり、三人の至近距離からのクルクル攻撃という接近戦もあって、このあたりでスタッフはそろそろ「やっぱり、基本はセーラー戦士たち本人をしっかり鍛えてアクションさせる正攻法で、足りない部分はスタントと編集のテクニックでつなぐしかないな」と腹を決めつつあったんじゃないかなと思う。そして、そういう現場の空気をいちはやく理解して努力する北川景子は、Act.4の撮影で肩を脱臼した。
ただ、Act.3とAct.4のアクションシーンにおけるそういう努力は、演出のテンポがちょっとアレだったためにアレな結果になってしまった。それに対して、舞原賢三監督のこのAct.5は、アクション演出でも、かなり工夫をこらした跡が感じられますね。と言ってもその努力は、監督オリジナルの要素を加えることではなく、むしろ、脚本をいかに忠実にビジュアル化するか、という点に絞られているように思う。
またまた引き合いに出すが、以前M14さんのブログで実写版台本を見て驚いたのは、小林靖子先生が思ったよりも細かくアクションの展開を描き込んでいることだった(特にAct.35。ここをご参照ください)。戦士のキャラクターや属性に準じて、それぞれにふさわしい戦い方が指定されているのである。そして実写版マーキュリーの攻撃特性は「身軽さ」「素早さ」であり、アクションシーンもそのことを踏まえて組み立てられている。それが顕著に分かるのはAct.16だ(くわしくはここを見てね)。

セーラームーンとマーズが転がって避ける。
が、いつの間にか背後に回り込んでいるマーキュリー。
「こっちよ!」妖魔(金)が振り向いた時にはもう遅い。

このAct.5も、基本的には同じ展開である。マーキュリーは妖魔を追いかけながら素早くジャンプ、宙返りしながら敵の頭上を飛び越え、先回りして「逃げても無駄よ」と人差し指を立てて相手を翻弄する。パワーよりも敏捷さ、ワザの切れ味を身上とするマーキュリーの戦闘スタイルにのっとっているのだ。だから「逃げても無駄よ」というセリフを含めて、この部分はけっこう台本に忠実な映像化ではないかと推測するわけです。

4. いよいよ終盤へ


しかし戦況が進むうち、ポヨンポヨンとランダムに飛び回る風船妖魔は、先が読めないその動きで、次第にマーキュリーを追い詰めていく。これではいけない、と意を決したマーキュリーは、目を閉じ、森の中を流れる水脈と自分の意識を同化させ、その自然な流れを乱す気配を察知して、ポヨン妖魔の所在をつきとめる。こういうふうに、敵の気配に意識を研ぎ澄ますマーキュリーのイメージショット、というアクセントをつけたことも、アクションシーンに良いメリハリを与えている。
それにしても、ここで亜美がつかむ戦いの極意って、宮本武蔵の『五輪書』に出てくる「水を本として心を水になすなり」を出典としているのではないだろうか、ということは以前も書いた(ここ)。いや冗談じゃなくて。だってAct.29では、亜美たちはクラウンで、箸で紙吹雪をつまむ特訓をしているが、これって宮本武蔵が箸で蝿をつまんだという故事にちなんでいませんか。そして亜美の戦士の力がめざめるのはこの回なのだ。
ということはともかく、ポヨン妖魔の出没パターンをつかみ、アドバンテージをつかんだかに見えたマーキュリーだったが、たまたまポヨンの攻撃が当たった木が倒れてきて、足を挟まれ身動きが取れなくなる。そこへ迫りくるポヨン妖魔。

あっ間違えた。これは本多猪四郎監督の東宝映画『大怪獣バラン』(1958年)で、ヒロインの園田あゆみが倒れてきた木に足をはさまれ、逃げられなくなったところへ大怪獣バランが迫ってくるという場面でした(わざとらしい)。

亜美ちゃんピンチ!テレティアを出してうさぎに救援を頼もうとするんだけど、ふと昨晩の気まずいやりとりを思い出して、電話をかけられなくなってしまう。こんな時だっていうのに、昨日の「そういうの、一番友達っぽくないと思う」という一言がよほどこたえたんだろうね。可哀想に。でもどうする?というところで、残りは次回。
次回あたりでなんとかAct.5レビューを終えたいものです。


【追記】美奈子の変身所要時間は、一昨年夏の誕生日記念イベント「小松彩夏学校」で出された問題によると「38秒」ということになっている(『ぽんたのエスティマ日記』のここを参照。「小松彩夏テスト」の7問目)。38秒というのは「ヴィーナス・パワー」のかけ声から計った場合で、ブレスレット点滅から計測すると32秒だそうです(『M14の追憶』のここを参照)。