実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第193回】DVD第2巻:Act. 5の巻(その11)


いまだに新作の詳細が発表されず、憶測ばかりが飛び交う北川さんの話。私は、森田芳光監督が『椿三十郎』に続く時代劇を準備中、という説をひそかに主張しているのだが、特に根拠もないのでまったく受け入れられない。
さて今週末は、プライベートの方で、子どものピアノの発表会だとか卒園の準備だとか、義理の親が孫の顔を観に来るので、家を片づけたり接待したりしなくちゃとか、細かい用事がいろいろある。こういう時ってブログを書く時間があまりないので、さっさと本文に行きます。今回から再びDVDのAct.5レビュー。いい加減で終わないとね。

1. 実写版ならではのレイちゃんが始動する


というわけで、3回に渡って河辺千恵子祭りを行ったが、今回の話は、なるちゃんの退場から始まる。
パジャマパーティーで頑張りすぎた亜美が倒れ、楽しい夜になるはずだったパーティーは中断。大阪なるは納得いかない表情で、うさぎのママに付き添われて帰宅する。部屋に残ったのは、寝込んだままの亜美と、看病するうさぎの二人だ。うさぎに『本当の友達になれる本』のことを知られてしまって、恥ずかしさに消え入りそうな亜美。

うさぎ「なんで?こんなことしなくたって友達じゃん。もうやめようよ、倒れるようなこと、良くないって」
亜 美「でも、でも月野さんだって、名前で呼ばないと友達じゃないみたいって……変わったら喜んでくれたじゃない」
うさぎ「そうだけど……嘘だったんなら嬉しくないよ。そういうの、一番友達っぽくないと思う……お水取ってくる」

気まずい沈黙。このときのBGMは、リストで言うとM4B「恋心(B)」だ。CD未収録だけれど、曲自体はサントラCD『DJMoon1』のトラック8「心細い一人のお留守番」の1曲目と同じ曲で、そこからフルートの音を抜いたピアノだけのバージョン。Act.2、屋上でひとりぼっちの亜美、プリンがふたつ、というシチュエーションで流れるのと同じ曲です。こういうシーンにはよく似合う。プリンといえば、Act.14でうさぎは亜美のプリンを改めて食べ、その後クンツァイトの術のせいで倒れてしまい、亜美の家のベッドに寝こんで亜美の看病を受ける。これはちょうどAct.5のこのシーンをひっくり返したシチュエーションだね。
で、場面が変わってたぶん翌日の放課後、クラウンで制服姿のうさぎとレイ。

うさぎ「あーあ、落ち込むなあ」
レ イ「私はおかしいと思ってた」
うさぎ「私はホントに、亜美ちゃんが、なるちゃんたちとも仲良くなれると思った」
レ イ「うさぎはさ、ホント、名前の通り、駆け足だね、なんでも」
うさぎ「えっ」
レ イ「そんな急には変わらないって」


アニメ版の火野レイは、すぐにうさぎと低レベルのケンカを始めるお馬鹿キャラだったし、原作漫画のレイは、アンニュイでクールな、少々とっつきにくい私立名門のお嬢様だった。で、実写版のレイはどうかというと、Act.3ではわりと原作に近い感じで登場する。続くAct.4でチラリと見せる家族(父親)との確執も、原作を引き継ぐ設定だ。それがこのAct.5で、うさぎを温かく見守る保護者というか、担任の先生みたいな感じになっている。まあ、そもそもセーラー戦士全員が、うさぎの保護者と言えなくもないのだが、ともかくこの場面は、実写版ならではの火野レイのキャラクターが活かされた、良いシーンですね。「私はおかしいと思ってた」という、たしなめるようなセリフも、「うさぎはさ、ホント、名前の通り、駆け足だね、なんでも」という優しいフォローも、正直たいして上手い演技でもないんだが、レイの素直な気持ちとして、観る者の心にすんなり入ってくる。北川景子の、年齢よりもちょっと大人びて、少々自己完結気味のキャラクターとピッタリはまっているからこそだと思いますね。
こういう「うさぎの保護者・指導者」としてのレイの特性は、Act.8(うさぎに「宿題は自分でちゃんとやりなさい」と指導してまことと対立)やAct.10(家出したうさぎの身元を引き取り、かぐや姫少女のエリカと共に、いつも家族がいることの幸せを暗に教え諭す)で遺憾なく発揮されたあげく、Act.23で大どんでん返しを迎える。Act.23では、これまでうさぎを見守り、教え導いていたレイが、マーズれい子として病院ミニライブを行うハメになったとき、逆にうさぎから、仲間を信頼することの大切さを教えられるのである。

2. 特撮ヒーローものとしての本編は最後にマキで詰め込まれる



と、そこへルナから電話だ「みんな、幻の銀水晶かも知れない宝石があるの。大至急来て!」ルナが目をつけたのは、その名もPGS文化スクールというカルチャースクールの講師の先生だ。「ここの講師がつけているペンダントトップの水晶が怪しいの。彼女とうまく接触して、確かめてみて」という指令である。
カルチャーの先生がなぜ幻の銀水晶なのか。「陶芸教室の先生」→「美術品の値うちが分かる目利き」→「幻の銀水晶のペンダントを入手」みたいな意味だと気づくまで、だいぶかかったよ。少なくとも放送を観た時点では理解していなかったはずだ。
でもこれって、必ずしも、気づかなかった私がバカというだけの話ではないと思う。そうだよね(無理に同意を求める)。つまり今回は「ゲスト被害者」ものののプロットであり、その意味で、なるのママ、大阪まゆみ(渡辺典子)がジュエリー関係の仕事をしていたために妖魔に狙われたAct.1や、桜木財閥のお嬢様、桜木由加(みさきゆう)が「幻の青水晶」の所有者だっためにサボテン妖魔に襲われたAct.4と同じような話なのだ。
でもアニメ版に較べて、実写版セーラームーンはそもそもゲスト被害者に冷たい。アニメ版では、ゲスト被害者は各エピソードの実質的な主人公だった。たとえば実写版のAct.7がアニメだったら「高井君はなぜカメ愛好家になったのか?」が話のテーマになったはずだ。でも実写版では、妖魔に襲われる被害者たちがどんな人なのかは、ほとんど分からない。Act.1のなるママはともかく、以降は、Act.2のアルトゼミナール講師、Act.3の巫女の少女達、Act.4の桜木財閥のお嬢様、Act.6の今井タケル、Act.7の高井君、Act.9の鑑定士の青井先生、誰に関しても説明らしい説明はほとんどない。Act.10のように、エリカちゃんが「かぐや姫」にあこがれる理由がきちんと語られると、かえって珍しく感じてしまうほどだ。そして第2クール以降は、そもそもゲスト被害者自体が影を潜めてしまう。
私は想像するのだが、たぶん最初のころの脚本会議では、それなりにアニメ版のファンのことを念頭において、毎回、ゲスト被害者を中心にした物語が考案されたのではないだろうか。しかしどのエピソードも、検討を重ねて実際の台本に至るころには、ゲスト被害者の描写はどんどん簡略化されて、ほとんど意味をなさないほど希薄な存在になっていた。それでもう2クール以降は、プロット出しの段階で、ゲスト被害者パターンは潔く諦められるようになった、と、そういうことではないのかな。

だってこのAct.5なんておっかしいよね。「PGS文化スクールの講師が幻の水晶らしき宝石を持っている。調査せよ」という、通常の特撮ヒーローものだったら冒頭に出てくるはずのミッションがルナの口から語られるのは、放送時のビデオで確認すると、すでに7時48分になってからだ。この後、ポヨン妖魔が被害者を襲うのが7時50分で、亜美が変身したところで1分弱のCMが入り、7時54分には、セーラームーンとマーズの合わせ技で妖魔が殲滅される。つまり「ミッション→敵出現→変身→戦闘→勝利」という、変身特撮ヒーローものとしては本筋にあたる部分が、番組の終盤でいきなり始まり、正味5分たらずで片付いているのだ。たぶん元々は、このプロットをベースに、そこにサブストーリーとして亜美ちゃんのエピソードを絡めたような脚本が想定されていたのだろう。だけど検討を重ねているうちに、妖魔とのバトルはどんどん後ろに押しやられて、ラスト数分にパパパッと圧縮されてしまったのである(以上はすべて憶測)。おかげで今回の被害者、PGS文化スクール講師は、役名もなければ、セリフだって、ポヨン妖魔に襲われるときの「ひゃああああ」という情けない悲鳴しかなかった。Act.1の渡辺典子、Act.2の春木みさよに次ぐ、数少ない大人の女性の被害者なのに。

それにしても、今回、妖魔の被害者となるこの女性が着ていらっしゃったスーツ、なんか前半で亜美の妄想に現れるうさぎが着ていたスーツと妙に似ているような気がするんだが、気のせいか。ボタンは明らかに違うしね。

3. セーラー服はカバンがないとただのコスプレに見える


ルナの指示にしたがって、PGS文化スクール陶芸展の会場に駆けつけ、取りあえず受付を済ませて名札を貰ったレイとうさぎ。同じくルナから連絡を受けているはずの亜美の姿は見えない。レイとうさぎだけの制服姿のツーショットというのも、考えてみれば珍しいかもね。

うさぎ「亜美ちゃん、来ないのかな」
レ イ「さあ、とにかく二手に分かれましょう」


うさぎの心配は分かるけど、今はくよくよしていてもしょうがない。それに、戦士としての使命がある。クールなレイのクールな提案だが、それ以上にレイらしいのが、直後の行動だ。「二手に分かれましょう」と言う場合、私だったら、いきなりこんな風に回れ右はしないなあ。同じ方向に向かって歩きながら、相手が右ならこっちが左、というように、枝分かれ的に離れていくと思うのだが、レイはそういう中途半端なことはしない。「二手に分かれましょう」と言って、うさぎがうなずくなり、くるりと180度反対方向に向かって足早に歩き出すのである。このへん、舞原賢三監督は、すでにレイちゃんのキャラクターもしっかりつかんでいるよなあ、と感心するのだが、そんな二人を2階から見下ろすネフライトとポヨン妖魔にはまったく感心できない。ネフライト、前回Act.4で池袋西口に現れたときには、ちゃんと今風の若者に扮していたのだが、今回は四天王としての正式コスチュームのままで、しかもこれまた派手なポヨン妖魔まで連れている。すぐに警備員に通報されても一向におかしくない目立ちようである。
ということはともかく、レイと手分けして、会場のどこかにいるはずのPGS文化スクール講師を捜していたうさぎは、会場外の廊下で、偶然だれかの落としたネームプレートを拾う。

うさぎ「ちじょう・えい……?」
 衛 (姿を現し)「ちば・まもるだ」
うさぎ「あ!」
 衛 「ったく、どこにでも現れる奴だな」
うさぎ「そっちこそ」
 衛 「普通これぐらい読めるだろう。ちゃんとこの間の塾、行ってんのか?」
うさぎ「ほっといてよ。お礼ぐらい言いなさいよ」
 衛 「拾ってくれてどうも(名札を確かめた上で、わざと)月野こぶた」
うさぎ「うさぎです。うさぎうさぎうさぎ」
   (無視して立ち去る地場衛)
うさぎ「うう、地場衛。嫌な奴の名前おぼえちゃった」

たぶんこの第5話で、ようやく二人は互いの名前を知るわけだが、考えてみれば、前回Act.4のラストで、衛は「C'est la vie」を歌うセーラームーンにちょっと心魅かれ、一方このAct.5で「月野うさぎ」の名を知り、さらに次の次のAct.7では、その月野うさぎこそセーラームーンである事実を目撃してしまうのだから、後に生涯の伴侶となる女性との重要な出会いが、この時期にばたばたと集中していることになるね。

二人の名札は、どっちも本人の手書きだと思うので、画像をのっけておきます。
一方そのころ、会場入り口にはようやく亜美が駆けつける。本当にダッシュで走って来るのだ。だけどそこで立ちすくんでしまい、中に入るのをためらっている。

昨晩のパジャマパーティーのことがあって、ルナからテレティアで指令を受けた後も、すぐに出て来る気になれなかった亜美。それでも「幻の銀水晶」が敵の手に渡ってはいけない、と思いなおし、ダッシュで駆けつけてきたんだけど、いざここまで来てみると、やっぱり昨晩のことが脳裡によみがえって、気後れする。そんなシチュエーションである。そこへ女性の悲鳴が聞こえてきて、声の方を見やると、会場の外で、問題のPGS文化スクール講師らしき人物が妖魔に襲われている。思い悩んでいた亜美は意を決して変身、という展開だ。
それはいいのだが、しかしなんとなく気になるのが、カバンを提げていない手ぶらの亜美。
授業が終わって帰宅したところへルナから連絡があったので、制服を着替えもせず、またカバンも持たずに急いで駆けつけたのだ、だから手ぶらで当然だ、と言われれば、それはそうだろうと思う。思うがしかし、何となく、亜美がいつものように手首にカバンをぶら下げていないと、異和感が残ると思いませんか?やっぱりこれアイドルのコスプレだよなあ、というような。
しかしそんな私の勝手な意見をよそに、亜美はセーラーマーキュリーにメイクアップで、ドラマはいよいよラスト、Cパートに突入する。というわけで今日は淡々とここまでです。