実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第150回】名古屋の連休は熱かったの巻


 

ブルース・リー未完の作品『死亡遊戯』より、最後の強敵ジャバール。身長220センチ、股下は何センチか分からないが、ともかく人間離れしたプロポーションである。
安座間美優が目の前に現れた瞬間、このシーンを思い出してしまった自分を深く反省したいと思う。
さて今回はゴールデンウイークの二大イベントレポート。オマケつき。

1. 5月3日(土)午前11時「ウルトラマンプレミアステージ2」昼の部(中日劇場)


昨年に引き続き、今年も「ウルトラマンプレミアステージ」が中日劇場にやって来た。昨年のカーテンコールで森次晃嗣が「また来年もこの舞台でお会いしましょう」と挨拶していたのは、ただのリップサービスではなかった。公演回数は、5月2日から5月6日までの5日間、1日2回の計10回公演と、昨年とまったく同じである。
そして問題の第1部「ウルトラエンターティメントショー」。昨年の第1部は歌って踊れるマジシャン、ユリシス(槙田沙織)・ジュジュ(吉田純子)・エリー(犬山絵梨奈)の3人組、TOYBOX(トイボックス)の「ウルトラマンマジカルコンサート」だったが、今年はなんと弓原七海が出演することになった。当然、七海党の方々は、A席5,000円、B席3,000円なんて値段をものともせず、この連休の間、何度も中日劇場に足を運ばれたのである。入場者にもれなくプレゼントされる大怪獣バトルのバルタン星人カードも、相当たまったことであろう。
それにしても、全国各地に散らばっているはずの七海党の方々がふつうに毎日やって来るって、どういうことなのか。そう思ってmixiの日記を探訪してみたら、やっぱり連休中、ずっとホテルをとって名古屋に連泊されている方がいた。中日劇場の大舞台で弓原七海が歌う、というだけでそこまでして通いつめる価値はあるということか。いや、別に中日劇場じゃなくても、この人たちはどんな場所でも集まるんだった。
一方、名古屋支部には、ウルトラマンのステージを観て、夜には星を観に出かけて、それでまた弓原七海を応援しに中日劇場に来て、安座間美優を観て、また中日劇場に行くとか、そういう人もいた。何だかみんなすごいよね。
そんなファンの期待も高まる中、第1部がいよいよスタート。緞帳が上がると、まずはエイリアンズバンドによる歌と演奏だ。バンドメンバーは、弓原七海(ボーカル)、稲垣智保(エレクトーン)、アズミ(近藤彩水)&幽霊怪人ゴース星人(バックコーラス)、誘拐宇宙人レイビーク星人(ギター)、念力種族ゼネキンダール人(ベース)というバラエティに富んだ6人。司会は小笠原未奈だ。でも私は弓原七海と一部の宇宙人しか知らない。
つかみの1曲目はウルトラマンメビウスのテーマ。う〜ん。低いね。ここ10年来、ウルトラマンシリーズのテーマ曲のほとんどは、円谷ミュージック所属の「Project DMM」が歌っていて、ステージもかなりの回数をこなしている。力強い男声コーラスの3人組ボーカルユニットで、彼らの歌う楽曲は、当然ながら弓原七海のいつもの歌よりうんとキーが低い。
たぶん、よく知っているメビウスのテーマを、見知らぬ女の人が低音で歌っていることに、異和感を感じたお友だちも多かったことと思う。だから私は、最初の1曲が終わったところで、MCの小笠原さんが七海さんのことを紹介するとか、本人によるちょっと詳しい自己紹介があるとか、きっとそういう流れで「このお姉さん誰?」的な客席の空気とのギャップを埋めるんだ、とばかり思っていたのである。
ところがそこへいきなり、バルキー星人が姿をあらわす。えーとバルキー星人というのは、ウルトラマンタロウの最終回に出てきた敵だが、ちょっとウルトラ一族っぽいシルエットでもある。それもそのはずで、タロウの次回作、ウルトラマンレオのボツになった初期デザインから造形された宇宙人だ。
そしてこのバルキー星人が、実は七海ちゃんのファンだというのだ。あこがれのアイドルを目の前にして「七海ちゃ〜ん」とデレデレする。これまでずっと宇宙の彼方でネトラジを受信していたとしか思えないそのミーハー乗りに、中日劇場1400席を埋めていた地球人の、ごく一部の方々は「そう、その気持ち分かるよ」と深くうなずいたのだが、それ以外の家族連れの方々は「よく分からないけど、バルキー星人がこんなにあこがれているからには、七海ちゃんって有名な歌手らしい」と、ずるずる引きずられるように納得したのだ。こうして、会場の同意をなかば強引に取りつけた宇宙海人バルキー星人は、なかなかいい仕事をしたと思う。いずれにせよ、私はウルトラマンのステージで、こんなふうにゲスト歌手の名前をきわだたせたるような演出はあまり見たことがない。むしろ普段は「今回ウルトラソングを歌うお姉さん」ぐらいの匿名的存在にとどめておくものなのだが。
そればかりではない。舞い上がったバルキー星人は、ものすごい音痴のくせに、自分も歌いたいと言い出して、七海バンドと対抗のど自慢合戦をすることになる。その時、客席に応援団が現れて「弓原七海、がんばれ!」みたいな横断幕をかかげるのである。まさかこれ、七海党の方々の協力ではないよね。繰り返すが、こういうふうに「ウルトラソングのお姉さん」の名前をはっきりアピールするなんて、この手のショーとしては異例である。やはり幸運の女神は、いや名古屋駅のナナちゃんは、弓原七海に微笑んでいる。歌の方も、その後は昭和ウルトラマンのテーマになってきて、そうなると、もともと児童合唱団が吹き込んでいた曲だから、七海さんのキーにも合う。
さてこれから後は、実はバルキー星人、やはり侵略者だけあって、実は裏でそれなりに悪だくみを考えていたりもする、というようなお話になっていって、その合間に、ウルトラマンライブでは恒例のウェーブやら、客席へのバルーン投げやら、座席番号による抽選会といったアトラクションがはさまれる。だいたいそんな40分だった。なにしろ息子が私にいろいろ話しかけたりもしていたので、第1部については少々あやふやな部分も多い。リピーターの方々、間違っていたらご指摘ください。

2. ベリーナイスなサポート


第1部に関してはそんなところだ。第2部のドラマの方は、前回とは少々おもむきが違った。昨年のプレミアステージは、この日記にも感想を書いたとおり、テレビシリーズ『ウルトラマンメビウス』のストレートな続編、もしくは後日談になっている点が最大の特徴であった。だからこそ、テレビのクルーGUYSのメンバーがそのままのキャストで出演することに大きな意味があった。でも今回のお話は、惑星フロスに潜む強大な力フロスエナジーを守護するヴィオラ姫(小田あさ美)をヒロインに、その力を狙うエイリアンや怪獣たちと、ウルトラ戦士の攻防を軸にしたオリジナルストーリーで、感じとしては通常やっている「ウルトラマンファンタジックライブ」などのショーに近い。つまり、あえて本物の春野ムサシ(杉浦太陽)や高山我夢(吉岡毅志)やハヤタ(黒部進)やダン(森次晃嗣)やコノミ隊員(平田弥里)が出てこなければならない物語上の必然性は、さほど感じられない。そういう意味で今回は、いつも子どもを連れて行っているアトラクションショーの豪華版という印象であった。
でも、もちろんテレビのキャストを生で見られるのはとても嬉しい。それにキャストたち自身がみんな、舞台でナマ変身できるのを楽しんでいる感じが伝わって、見ているこちらまで楽しい。コノミ隊員だって変身しちゃうんだからたまんない。
そしていつもどおり、怪獣バトルは、照明も音響もスーツアクターのアクションも、もはやこれ以上はないくらい完成の域に達していた。長年の積み重ねとはこういうことを言うのだろ。うちの子どもなんか大喜びである。しかしそれでも、花火やレーザー光線など、けっこう新しい技術の導入も試みている。このまま努力を続けていけば、将来は、たとえばセブンがアイスラッガーを投げるシーンを本当に舞台で再現する、なんてことも可能になるかも知れない。
まあ細かいことを言えば、宇宙の剣豪ザムシャーの扱いはこれでよかったのだろうか、とか、そういう個人的な感想はもう少しあるのだが、いいや。あとひとつ、ウルトラマンゼアスとウルトラマンナイスについては、ぜひ触れておきたい。
ウルトラマンゼアスは1996年に出光石油のキャラクターとして、ウルトラマンナイスは1999年に、バンダイのCMキャラとして誕生した。どちらも企業とのタイアップで生み出された異色のウルトラマンである。同期のウルトラマンティガやウルトラマンダイナやウルトラマンガイアをキャリア組とすれば、主演のテレビシリーズを持たない彼らはノンキャリアである。名前だって、ゼアスって出光のハイオクガソリンのブランド名だし、ナイスも必殺技がベリーナイス光線というふざけた名前だ(でもそれを言えばウルトラマンタロウだって相当ふざけた名前だと思うが)。
そういう出自もあって、この2人の待遇はもとより決して良くない。ナイスなんか、通常のウルトラマンショーでは、MCのお姉さんと前座をやったり、ショーの前説で「携帯電話はマナーモードにして下さいね」とか、そういう客への注意をしているときもある。このプレミアステージでは、いちおうバラエティの第1部ではなく、ドラマの第2部に出てはいるが、お笑い要員である。ゼアスとナイスでコンビを組んで幕間に登場して息抜きの漫才をやる。それも、藤崎マーケットとか小島よしおとかのお馴染みのネタを節操もなくパクって客を失笑させるのだ。元々がコメディ系のキャラとはいえ、バブル崩壊後の厳しい時期に、円谷プロにスポンサーを引っ張ってきた功労者に対して、この扱いはいかがなものか。私は常々そう思っていたわけだ。
しかしながら今回は黒部進と森次晃嗣のサポートがあった。この二人は昨年の舞台ではいちおうシリアスに徹していたが、カーテンコールでは盛んにおちゃらけて、すでに舞台で客を笑わせたい意欲まんまんであった。今回は満を侍して、変身シーンでカレースプーンならぬシャモジをかざしてボケるわ、「宇宙のイケメンウルトラセブン」を連発するわ、実にくっだらないパロディを楽しげにやっていた。両御大が、レベルの低さは似たり寄ったりのギャグをかまして歩み寄ってくれたおかげで、まあ何というか、ゼアスとナイスのこれまでのウルトラマン人生も報われたと思う。ありがとうハヤタ。ありがとうダン。来年もぜひ来てください。コノミちゃんもね。
第1部と第2部の間の休憩時間に、グッズコーナーの一角で弓原七海のロゴ入りスポーツタオルとCDを販売しているのを見つけたので、公演終了後、翌日お会いする予定のM14さんへの名古屋みやげにと、スポーツタオルを購入した。休憩時間中も公演終了後も、七海党の方々がそのあたりに必ずいるので、何をしているのかと思ったら、どうやら七海グッズの売り上げをチェックしていたらしい。タオルを買ったことを、カシオペアさんの日記に書かれてしまいました。
というわけで大家さんへの手みやげも準備した翌日5月4日、ついに安座間美優が名古屋にやってきた。

3. 5月4日(日)午後3時「安座間美優カワイイトークLIVE」(名古屋セントラルパーク)


中日劇場からたいして遠くない栄のテレビ塔の地下街に、若い女性向きのショッピングエリア、名古屋セントラルパークがある。その一角のパークスクエアというイベントスペースが、安座間美優トークライブの会場である。12時から整理券が発行されるということだったが、100席用意された椅子席はガールズオンリーなので(ただし男女ペアなら入場可であったらしい)、私は開始15分前の午後2時45分ころに会場に到着した。いるいる。ガールズ席から隔離された後ろの立ち見スペースの最前列に、カシオペアさんと、まもるさんと、StreamKatoさん。この方々は3月の京都の安座間美優イベントにも参加された偉い人たち。こんにちわ。
あともう一人は知らない人。ひょっとしてM14さんかな。いやいや、だってこの人、持ち物といえば小さなバッグだけで、ほとんど手ぶらに近い普段着である。その左にいるカシオペアさんは、しっかりカメラを手にしているし(後から双眼鏡も装着)、右側のStreamKatoさんは何やら重たげな荷物をもっている。私だって一応、念のためにデジカメを入れたリュックを肩にかけてきた。地元のメンバーがこれほど重装備なのに、わざわざ新幹線に乗って来た私のアルファブロガーが、こんな散歩のついでに立ち寄ったような軽装で良いわけがないではないか。じゃseigneurさんか。いやフランス人には見えないし、たぶん私のまだ知らない名古屋支部の方なのだろう。
ほどなく新たに1人の若者がおずおずと近寄ってきて、この人がikidomari改めイキドマリ・フラッシ改めikidomariさんだった。わざわざ遠方からおつかれさま、と声をかけたら、散歩のついでの軽装の、絶対フランス人じゃない人が、あれ、ひょっとしてLeoさん?とこちらに言う。まさかのM14さんだったよ。でもたしか、家族の方には出張と称して来られたはずである。この格好で出張なんて、ご家族も見て見ぬふりをするのに、さぞや苦労されたことだろう。
さてそうこうするうちに定刻の午後3時になったが、イベントは始まらない。後で判明したところでは、安座間さんはこのセントラルパークにあるナントカという店で、今日の衣裳を選んでいて、それで遅れたみたいだ。要するにタイアップで、ショーの最後にそのお店から「今日、美優ちゃんが着た服と同じ服を1名様にプレゼント」というサプライズ企画なのである。そんな事情は後から分かったのだが、私はもともと気が長いし、だいいち相手は安座間美優である。3時間くらいは待たされるに決まっていると思っていたので、むしろ、わずか15分くらいの遅れでイベントが始まったことに驚いてしまった。
で、トークの内容だが、これは『M14の追憶』に詳しくレポートされていて、別に付け加えることはないので省略。私がどこで苦笑したかまで書かれているので、本当に書くことはない。
と言いつつ、ひとつだけ。最初に登場してスツールに腰かけるまでのしばらくの間、安座間さんは、もう一人のゲストであるイケメンのヘアメイクの千葉大輔さんと、MCの村上実沙子さんに両脇から挟まれる形で立っていたのだが、その間、千葉さんを見るときも、村上さんの問いに答えるときも、身体ごとターンして相手の方を向くのだ。とにかくあっちへくるり、こっちへくるりと、すごくよく動いている感じがした。座ってからはさすがに顔だけ相手に向けるようになったが、立っている間は常に、身体ごと向きを変えて、真っ直ぐ相手をみつめようとするのだ。ひょっとしてモデルの動きってそういうものなのかも知れないが、私はそこに安座間美優を感じた。

4. 名古屋会議と勝手な予告編


正味30分のイベントで、トークライブ終了が3時45分、そして4時からは中日劇場で『ウルトラマンプレミアステージ2』の本日2回目の公演、急げば第1部開演に間に合う距離である。あわただしく立ち去る七海党に別れを告げ、我々、つまり残されたikidomariさんとM14さんとStreamKatoさんと私は(以上、遠いところから来た順)地下街から地上に出て、近くの無料休憩所に移動した。私はStreamKatoさんから、チラシや情報誌の詰め合わせをお土産にいただき、M14さんには、前日買った七海タオルを渡すことができた。ご家族が使われないならご自分でお使いください。ikidomariさんには何も用意してなくてすみません。遠方から来られたのに。
それから小一時間ほど、元セーラー戦士たちの現状と今後に関する緊急会議のようなものが開かれることとなった。Ayaka502コマブロの記述から、いま小松彩夏がやっている仕事の内容を正しく推理するにはどうすれば良いか、ということが主な議題だったと思う。でもM14さんのブログにはただの反省会と書いてある。客観的に言えばどっちでもいいようなもんだからどっちでもいい。
話の合間に、StreamKatoさんはドラえもんの四次元ポケットみたいに次々にグッズを出す。でもこれは比喩的な表現で、物理的には三次元リュックなのでとても重そうだ。いろいろ見せていただいたが、やはり衝撃的だったのはこの本のサインだった。

『杉本彩の男を虜にする料理』ワニブックス、2008年4月刊。これにはまいった。しかし、これもさっきの大家さんの日記に紹介されているので、詳細はそちらに譲りたい。
ほかにこの会合で強く印象に残ったことと言えば、M14さんから教えていただいた、ある情報だ。非常に興味深い話だったので、その後、みんなで栄の交差点の巨大北川景子看板を視察に行って、お開きとなって、地下鉄で自宅まで帰るあいだ、私はずっとそのことをあれこれ考えていた。しかし残念ながら、まだそれを書くわけにはいかない。近々『M14の追憶』のネタとなるはずだからである。でもやっぱり我慢できないので、ちょっとだけ関連することを書いておこうと思う。いわば予告編である。以下の文章を読んで、私が何を問題にしているか分かっちゃった人も、まだコメント欄には書き込まないで下さいね。


2003年9月、つまり実写版の放送にあわせて、講談社から、武内直子の原作漫画『美少女戦士セーラームーン』の新装版が刊行開始された。この新装版コミックは、たんに10年前の旧版(KCなかよしコミックス)をパッケージとサイズだけ変えて再版したものではない。デジタル技術を利用して原稿に修正を加えたり、セリフを変えたり、細かいところに改訂の手を加えた、映画で言えば「特別編」である。
たとえば第1話で、セーラームーンが初めて変身してティアラを投げつけるときのかけ声は、コミック旧版では「ムーン・フリスビー!」となっている。でもフリスビーってモロに商品名なのでちょっとまずいと思ったのだろう、アニメ版では「ムーン・ティアラ・アクション」に変えられていた。では2003年のコミック新装版ではどうなっているか。「ムーン・ティアラ・ブーメラン」だ。
ということは、この新装版の原作漫画は、全編にわたって実写版と技の名前の統一をはかっているのか、というと、微妙にそうでもない。説明がむずかしいので、さらにいくつか具体例を挙げよう。アニメの初期マーキュリーといえば「シャボン・スプレー」だ。しかしこんな名前の技は原作にはまったく出てこない。そもそも原作漫画の旧版では、最初のうちマーキュリーは技の名前を言っていない。ところが新装版第1巻では、最初にマーキュリーが技を出すコマにセリフのフキダシが書き足されていて、「マーキュリー・アクア・ミスト」と言っている。
それでは実写版はどうかといえば、ご存じのとおりAct.2のラストでマーキュリーが出す技は「マーキュリー・アクア・ビーム」である。実写版で「マーキュリー・アクア・ミスト」が出てくるのは、えーと何話だったかな。というか実写版の亜美には「マーキュリー・アクア・サイクロン」とか、同系統の名称の技がいろいろとある。
セーラージュピターの例も見てみよう。アニメで最初にジュピターが出したのは「シュープリーム・サンダー」である。実写版もそれを踏襲している。一方、原作では、まことが最初に変身して出す技は「フラワー・ハリケーン」だ。これは旧版も新装版も変わらない。この技はアニメではまったく使われなかったが、実写版ではAct.8で初お目見えした。
原作のジュピターは、最初の戦いで、このフラワー・ハリケーンの後に、カミナリを呼び出して敵の頭上に落とす。旧版ではその技にきちんとした名前がつけられていないが、2003年の新装版ではここでもフキダシを書き足して「ジュピター・サンダーボルト」と言わせている。「ジュピター・サンダーボルト」って、実写版のAct.48で出てくる最後の技ではなかったかな。
こういう事実が意味するものは何か。私にも明確な法則性というものは見いだせないが、ともかく思いつくままに列挙してみる。まず原作者サイドのスタンスとしては、(1)アニメのオリジナル技、つまりセーラームーンの「ムーン・ティアラ・アクション」やマーキュリーの「シャボン・スプレー」を、武内直子は2003年の新装改訂版を出すにあたっても、ガンとしてこばんでいる。(2)しかし実写版に対しては好意的で、Act.1にあわせて「ムーン・フリスビー」を「ムーン・ティアラ・ブーメラン」に変えるなど、歩み寄りの姿勢を見せている。(3)新装版が新たに「マーキュリー・アクア・ミスト」や「ジュピター・サンダーボルト」といった名称を考案したのは、実写版での使用を前提としたものだろう。
一方、実写版スタッフはこれにどう対応しているか。まず(1)アニメでは決して使われなかったジュピターの「フラワー・ハリケーン」を使用するなど、原作者への配慮があることは明らかだ。しかし(2)ジュピター登場回では「シュープリーム・サンダー」をやらせるなど、しばしばアニメ版のイメージにも準拠している。また(3)原作第1巻の改訂版が「マーキュリー・アクア・ミスト」を提案したにもかかわらず、実写版Act.2の段階ではそれが「マーキュリー・アクア・ビーム」と微妙に変えられていたり、同じく原作新装版の第1巻に出てくる「ジュピター・サンダーボルト」の登場が、実写版ではぎりぎり最終回の間際までずれこんでいる事実は、やはり原作者の意向と、特撮番組としてのビジュアルを考えた実写版スタッフとの考えに若干の乖離があり、背後でいろいろと複雑なすりあわせ作業があった可能性を予想させる。
ただ、こういう情報から考える限り、マーキュリーの「シャボン・スプレー」のような、原作にないアニメオリジナルの技を使うという方向は、実写版ではおそらく初めから断念されていたのではないだろうか。私はそう予想していたのである。


で、この件に関して、かーなーり興味深い資料が、近々『M14の追憶』で公表していただけそうで、非常に待ち遠しい今日この頃です。
という、例によってまとまりのない結びとなったが、とにかく楽しいゴールデンウィークでした。おしまい。また来週。