実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第135回】Special Actの巻(6)

原田実の日本霊能史講座―と学会レポート

原田実の日本霊能史講座―と学会レポート

中日劇場『ウルトラマンプレミアステージ2』の概要が明らかになった。昨年と同様ゴールデン・ウイーク、2008年5月2日(金)〜6日(火)の5日間、昼の部(11時から)と夜の部(4時から)の計10回公演である。昨年はGUYSのリュウ、ジョージ、コノミがメインだったが、今回の主演は『ウルトラマンコスモス』ムサシこと杉浦太陽(辻希美の子供の父親)と『ウルトラマンガイア』高山我夢こと吉岡毅志(2月2日付けのブログにはちょっと泣けたぞ)。そして前年に引き続き『ウルトラマンメビウス』のコノミこと平田弥里(くどいようだがメガネはない方が可愛いと思う)、『ウルトラセブン』のモロボシ・ダンこと森次晃嗣(普段はオネエ言葉が得意)、『ウルトラマン』のハヤタ・シンこと黒部進(40年経ってもセリフ回しが一本調子とか、そういうことは言わないように)が参加する。それにグラビア系の小田あさ美という方が出るが、私はよく知らない。脚本は小林雄次、演出は北浦嗣巳。くわしいことはこっちで。それでは本題です。

1. いきなり脱線


で、どこまでいったんだっけ。

「前回までのあらすじ」(何やってんだ私は?)
あの戦いから4年。衛との結婚を間近に控え、幸せいっぱい夢いっぱいのうさぎ。結婚式の趣向をあれこれ考える毎日である。だが一方の衛は、うさぎのはしゃぎっぷりに少々げんなり。つい「ぜんぶお前の好きにしていいよ」なんて投げやりな返事をしてうさぎを怒らせ、とうとうケンカになってしまう。ことの次第を聞いたまことと元基は、何とか二人を元のさやに収めようと画策するが、そんな努力もむなしく、うさぎはついに、婚約指輪を外して衛に突き返す。
「結婚やめる!」

しかしあれだね、うさぎと衛は結婚式の話はしているけど、その先のこと、つまり引っ越しとか家具を買うとかいうことはあまり相談していない。そこから考えて、二人は新居をかまえるのではなくて、少なくとも当座はどちらかの家に同居する予定なのだろう。で、月野家に衛がムコ入りして「月野衛」になる、もしくは磯野家に住むフグ田マスオ・サザエ夫妻のように、「地場衛・うさぎ夫妻」として月野家に住む、という可能性もなくはない。しかしラストのうさぎのパパ(田崎竜太)の男泣きは、私にはやはり、娘を嫁にやる父親の涙に見える。だからうさぎは月野家を出るのだと思う。そして結婚後は衛のところに同居するのだ。
で、衛の家ってどんなのかというと、Act.16のラストでうさぎが見上げたあのマンションは、ロンドンに行くとき引き払っちゃったはずである。Act.32で帰国後、Act.36でベリルの要求を呑んでダーク・キングダムに転居するまでの間、どこに居たのかは分からない。だからよく分からないが、でもやっぱりマンション住まいっぽい気がするが、どうかな。
それから結婚後の生計。冒頭でうさぎがオムレツを作る様子は、花嫁修業に専念しているようにしか見えない。つまりうさぎは専業主婦で、衛が稼ぐのだ。このお話の「あれから4年後」という設定は、第一に「うさぎが高校を卒業するまで結婚を待った」ということだろうが、「衛が大学を卒業して社会に出るのを待った」という意味もあると思う。
がしかし、衛がどんな職業に就いたのかは想像できない。そもそも大学で何を専攻していたのかも分からない。衛って本当に生活感がないから困る。だからStreamKatoさんがコメント欄に書いていた、「タキシード仮面時代に、銀水晶と間違えて盗んだ宝石の貯えがまだあって、それを少しずつ横流しして生計を立てている」という説が、妙に信憑性を帯びてくるのだ。それだったらまあ、あくせく働かなくても、当座はスイートな新婚生活を楽しめるしね。
なお、新婚旅行がバイクのツーリングというこのカップルは、かなり貧乏なのではないかという仮説もあるが、どうかな。私は思うのだが、うさぎちゃんの性格を考えると、本当はハネムーンは海外に行きたかったんじゃないだろうか。でもそれはかなわぬ夢だ。衛はAct.32でロンドンから帰って来たとき、おそらく正規の帰国手続きを踏んでいない。彼のパスポートは出国審査で引っかかるのである。それってけっこう日陰者の人生ではないか。
馬鹿なこと考えてないでお話に入ろう。

2. クイーン・セレニティ、突然の登場

うさぎ「結婚やめる!」

うさぎがパシッとテーブルに叩きつけた指輪が、夜空に浮かぶ月のイメージにオーバーラップして、場面はその夜、窓から差し込む月明かりに照らされたうさぎの部屋に移る。婚約破棄という一大事の後なのに、たいして悩んだふうもなく、すやすや眠るうさぎと、その脳天気ぶりに気をもむルナ。こんな二人(一人と一匹)の姿も、Act.1以来、テレビシリーズではおなじみだね。ただちょっと違うのは、ルナが月に向かって語りかけるところだ「聞こえますか?クイーン、セレニティ」。
するとその声に応えて、月の宮殿(ムーン・キャッスル)からスーッと一筋の光線が地球に届き、うさぎの部屋の、ルナの目の前に差し込んでくる。そこに現れたのが、うさぎとそっくりの、ティアラを頭に掲げた女王の立体映像だ。月の女王、前世のうさぎの母親、クイーン・セレニティである。演じているのはもちろん沢井美優だが、声は沢海陽子の吹き替え。ご存じのように沢海陽子さんはAct.5でも声の出演をされている。亜美が買ったベストセラー本『本当の友達になれる本』(J.P トンプソン著、山田さなえ訳)の朗読を担当していた方だ。
このクイーンとは何者か。実写版テレビシリーズ本編にはまったく説明がないので、原作で情報を補完しなければならない。すでに【第59回】の「2. 原作のおはなし」で詳しく紹介したが、この機会に復習しておこう。これは超古代の月の宮殿の廃墟で、かろうじて今も稼働しているサブコンピューターが作り出した映像である。
原作第10話「MOON 月」。前世の月でいったい何が起こったのか。すべての真相を知るために、5人の戦士はルナの導きで、プラネット・パワーを結集し、月へと飛ぶ。そして、かつてシルバー・ミレニアムが栄えていた廃墟に降り立つと、そこには石の剣が刺さっていた。剣を引き抜くと、突然その場に、小さなクイーン・セレニティの立体映像が現れて語り出す。

クイーン「それは伝説のプリンセスを守る聖剣。ジュピター、マーズ、マーキュリー、そしてヴィーナス、あなたがたのものです。ルナ、よくみんなをつれてきてくれました。わたしは地球でよぶところの、月の女神セレーネの化身、シルバー・ミレニアムの前女王クイーン・セレニティ」
セーラームーン「お母さま?」
クイーン「かわいいセレニティ。あなたね。見えるわその姿が」
マーキュリー「双方向で話が?」
クイーン「もう肉体は滅んでしまったけれど、ムーンキャッスルのメインコンピューターが作動しなくなったとき、サブコンピューターが作動し、こうしてわたしの意志のみ、のこすことができた。この映像はコンピューターがつくりだしたものです。ルナとアルテミスをコールドスリープにより再生させ、ずっとコンタクトをとってあなたたちを見守り、このときをむかえるのをまっていました」

ここに出てくる「伝説の聖剣」と「クイーン・セレニティのコンピューター映像」というふたつの要素が、この『Special Act』にはそっくりそのまま取り入れられている。私は以前の記事で「『Special Act』は、もともとは2004年夏あたりに、劇場版として公開する予定のプロットが元になっているんじゃないか」と書いたことがあったけど、そう考える最大の理由がこれです(これしか理由がない、とも言えるが)。つまり原作で、戦士たちが月に飛んだときに出会うふたつのビッグイベント、クイーン・セレニティと伝説の聖剣が、ここで何の前振りもなく投入されているのだ。
テレビシリーズは、月の宮殿や、そこで起こった前世の悲劇について語ることを、とにかく避けていた。トータルな説明として出てくるのは、せいぜいAct.37で、美奈子(病み上がり)がレイ(ナコナコ)にざっくり話して聞かせるくらいだった。なのに、いきなりビデオオリジナルの『Special Act』では、それを前提とする描写が出てくるのだ。なぜなんだ、と考えて「実はこれは、劇場版の企画のなれの果てではないか」なんて思いついたわけですね。だから私の考える「劇場版」のプロットというのは、こういう感じだ。


ダーク・キングダムが強力な巨大妖魔を放ち、東京をパニックに陥れる。もちろんセーラー戦士たちは戦いを挑むが、歯が立たない。「こうなったら月に行くしかないわ」ルナの提案で、5人は月に飛んで、月の宮殿で新たな力を得ようとする。そしてムーン・キャッスルの廃墟でクイーン・セレニティに出会い、前世の月で起こった悲劇の話を聞く(回想シーンあり。レギュラーは二役で出演)。話し終わったクイーンから新たなパワーと、伝説の聖剣をさずかると、戦士たちはそのまま地球にテレポートして、力を合わせて妖魔を倒す。やれやれ、大団円。しかしそのなごやかムードに、ラストで一気に緊張が走る。

美奈子「みんな、これで分かったでしょ、私たちは前世の使命を果たすために生まれてきたの」
レ イ「ちょっと待ってよ。私はそう思わない。私たちは前世を捨てるために生まれてきたの」

ばちばちばち、激しいにらみ合いでおしまいになって、エンドタイトルとNG集。
「この続きは土曜の朝、TBS系でお楽しみください」


すみません、個人的な妄想にみなさんをお付き合いさせてしまって。しかしそういう話が外伝的にあったと仮定すれば、『Special Act』でのクイーン・セレニティの唐突な登場も、それなりに納得がいくと思うのである。

3. ぼくの地球を守って(通称「ぼくたま」)


原作の話が出てきたついでだ。前々から、機会があったらきちんと検証したいと思っていたが、何となくタイミングを逃し続けている『ぼくの地球を守って』と前世問題に、ここでちょっとだけ触れておきます。
セーラームーンの原点ともいえるオリジナル読み切り短編漫画『コードネームはセーラーV』(『るんるん』1991年夏休み号)は、中学1年生の女の子、愛野美奈子が、「三日月パワー、トランスフォーム!」のかけ声とともにセーラー服美人戦士セーラーVに変身して、人間の言葉をしゃべる不思議な白猫アルテミスをパートナーに、悪い奴をやっつける(得意技はキック)というお話である。つまりこの段階では、まだ太陽系の惑星を守護星にもつ5人の戦士たちとか、あるいは月のプリンセスがどうしたとか、前世がこうしたとかいうバックグラウンドは、いっさい語られない。そういう設定が出てくるのは、この読み切り短編の好評ぶりに目をつけた東映がアニメ化を企画し、武内先生と話し合いを重ね、新たに『美少女戦士セーラームーン』の構想を立ててゆく過程においてである。
つまり「セーラー戦士たちは超古代の月の世界から転生した戦士たちである」というアイデアは、『セーラV』から『セーラームーン』へと物語全体がスケール・アップされる段階で、初めて出てきた。で、その際、アイデアのヒントになったというか、『セーラームーン』が参考にしたと思われる作品が存在する。『花とゆめ』に連載された日渡早紀の漫画『ぼくの地球を守って』(1987年〜1994年)である。
『ぼくの地球を守って』の主人公は、男女おりまぜた数人の高校生である。彼らは、ひょんなきっかけから、お互いが夜な夜な同じ奇妙な夢を見ていることを知る。夢の舞台になるのはいつも、月のクレーターに建てられた小さな、しかし高度に科学の発達した基地だ。窓からはいつも、青く美しい地球が見えている。そこに何名かの異星人の男女が住んでいる。それが彼らなのだ。彼らの役割は、地球の表面で生じては消えていく様々な出来事を観察し、地球を見守り続けることのようだ。
やがて主人公グループは、その夢が自分たちの前世の記憶であることを自覚する。つまり自分たちは、かつて遠い昔、月の基地から地球と人類の進化を密かに観察していた異星人だったのであり、死後、その魂が地球人に転生したのが今の姿だ、と確信するようになるのだ。そして「ムーン・ノート」と称する、前世の出来事を記録するノートをつけながら、オカルト雑誌『BOO』を通じて、新たな転生仲間を探し求める。そうやって出会ったひとりの「前世における知り合い」から、月の基地はまだ残っていて、コンピューターも作動していることを知らされる。
ものすごくおおざっぱな内容紹介だが、だいたいそういう話だ。セーラームーンから「セーラー服美少女戦士にメイク・アップ」とか妖魔とか、そういう変身ヒーローものの要素を取り除いて物語の骨組みだけを較べてみると、やはり影響関係は明らかだと思う。まあこれはセーラームーン原作の熱心なファンにとってはある程度よく知られた事実である。
ただ、最も大きく異なる点は、『ぼくの地球を守って』は、人気が高まっていった結果、とんでもない騒動に巻き込まれていったのだけれど、セーラームーンはそうならなかった、ということだろう。当時はちょっとしたオカルトブームで、『ぼくの地球を守って』を読んだ少女たちのなかにも「自分も前世は異世界の戦士だった」と思いこむ人々が出てきた。そして作中の高校生たちと同様、オカルト雑誌の読者欄に「前世の仲間さがし」の投稿をしたり、あるいは作者あてに「先生と私は前世の知り合い」とか「私のことを漫画化しましたね」とかいうヤバい内容のファンレターを送りつけるようになった。
さらには1989年8月、徳島で「集団自殺ごっこ」事件が起こる。女子中学生3人が鎮痛解熱剤を飲んで病院に運ばれたのだが、彼女たちは本当に死ぬ気だったのではない。仮死状態で自分たちの「前世」をはっきり見たいと思っただけなのだそうだ。この事件と『ぼくの地球を守って』との因果関係は必ずしも明確ではないが、色々と噂されたものである。作者の日渡早紀が『花とゆめ』の連載ページの欄外で、この作品はまったくの虚構である、という屈辱の「フィクション宣言」を行わざるをえなかったのは、同じ年の同じころであったと記憶している。
1992年に始まった『美少女戦士セーラームーン』では、そういう騒動はいっさい起きなかった。というかセーラームーンはある意味で、そういう「前世ブーム」の息の根を止めた作品なのではないかと思う。なぜそうなのか。私にもいろいろ考えるところはあるし、まだ分からない点もある。が、この問題にはものすごく興味というか関心を持っているので、また改めて考えてみたいと思う。とりあえず参考になるのは、このブログの最後の方で引用されている、次のような記述かと思う。

原田:で、最終的にその手の願望を吸収し一掃したのが、セーラームーンだったのではないかと思うんです。
杉並:といいますと?
原田:『セーラームーン』では、前世での同士が集まって戦うわけですが、アニメでは主人公たちの日常の描写が多いんです。前世で結ばれた戦士が集まって、ふだんは何をしているかというと、喫茶店でだべったり、男の子を追いかけたりなんですね。それを見てしまうと、なんだ、前世での同士が集まっても、やることは同じかということに気がつかざるをえなくなる。
杉並:『ムー』に投稿していたような前世での同士探しをしていた人たちは、ある種の自分探しの最中で、明確な方向性をもたずに、前世の同士とめぐりあえれば今までの自分とは違う真の自分がめざめる、なにか今まで考えたこともないようなすごいことが始まる、そういう期待があった。
原田:ところが、いざ、その状況をシミュレートしたアニメが実際に作られて、それを見てみると、前世の同士と一緒にやること、できることは、今の自分がやっていること、あるいは自分が嫌っている「ふつうの」女の子と同じだ、と思い知らされてしまった。だから、前世で結ばれた戦士ものというジャンルを、ある意味、終わらせたのが『セーラームーン』と言えると思うんです、完成形であり、最終形態であるがゆえに もう先はない。あるとすればその模倣しかない、という。少なくとも前世願望をフィクションの中に閉じ込める役割を果たしてしまった。現実で前世の同士を探すことが、すごくむなしくなるような話なわけですから。
(『原田実の日本霊能史講座―と学会レポート』p.500-501)

まあひとつには、こういう見方もあるということだ。この解釈が妥当であるかどうかはともかく、セーラームーンが「最終的にその手の願望を吸収し一掃した」「前世願望をフィクションの中に閉じ込める役割を果たした」つまり前世ブームにとどめを刺した、というのは、とても重要な指摘だと思う。私は、この問題に加えて、実写版の世界、とりわけ小林靖子の前世に対する基本姿勢ということを考えてみたいわけだ。今回のこの項はその予告編のつもりで書いていたんだが、何だか長くなってきたな。

4. 本題に戻ります、ってもう遅いよ


えーとどこまで行ったんでしたか。そうだ月の宮殿、ムーン・キャッスルだ。この「超古代に栄えた月の宮殿のコンピューターが、現在も活動中」というところで、同じような設定の『ぼくの地球を守って』のことを思い出したんだった。
というわけで、原作に準じまして、この月から届いたクイーン・セレニティの映像は、月の宮殿のコンピューターというか人工知能にコピーされたクイーンの人格が語っているもの、と理解しておきましょう。『スター・ウォーズ』1作目(「エピソードIV」1977年)でR2-D2に記録されたレイア姫の映像みたいに、ルナの前に現れたクイーン・セレニティの立体映像は、さっきも書いたようにAct.5の沢海陽子の声でしゃべり出す。

クイーン「ルナ、プリンセスのお目付け、ご苦労さま。何かあったようですね」
ル  ナ「クイーン、大変なんです。プリンセスが、エンディミオンとの結婚を止める、なんて…せっかく前世の運命を乗り越えて結ばれたのに、うさぎちゃんたらもう……」
クイーン「見守りましょう。こういうことは、なるようになります」
ル  ナ「そ、そんなあ」
クイーン「二人の幸せを、前世からずっと待っていたんですもの。今さらあせってはいけません」
ル  ナ「はあぁ」
クイーン「それよりもルナ、本当に大変なことがおこるかも知れませんよ。邪悪な力を感じます。何かが目覚めようとしているような」
ル  ナ「えっ、そんなぁ。幻の銀水晶が砕けてしまったいま、うさぎちゃんたちは変身できないのに」
クイーン「くれぐれも気をつけなさい」
ル  ナ「はい」

こんな相談相手がいるのなら、なぜルナは4年前のあの戦いで一度も月に呼び出しをかけず、今ごろ交信しているのか、という疑問は当然あるよね。あの時は地球が滅びるか滅びないかという一大事で、しかも滅びてしまったのである。今回のは、プリンセスだエンディミオンだと言っても、しょせんはただの痴話ゲンカだ。ルナ、基本的にことの重要性が分かっていないんじゃないか?
ただ原作によれば、セーラームーンとエンディミオンが「幻の銀水晶」の最後のパワーを解放してこの世界を救ったとき、廃墟となっていた月の宮殿もまた復活した、ということになっている。だからまあ好意的に、実写版の世界でもそれと同じことが起こったと理解しておこう。Final Actの最後で、うさぎと衛によって世界がリセットされたとき、オマケとして月の宮殿も再生して、長〜いことフリーズしていたそこのコンピューターも再起動して、人工知能としてのクイーン・セレニティの人格も復活したのである。だから4年前の戦いの日々では、ルナは連絡がとりたくてもとれなかったのだ。まあ私自身はさっきも書いたように、実は戦士たちは、ダーク・キングダムとの戦いでも一度クイーン・セレニティの力を借りていて、そのことを描いた外伝(劇場版)の企画のなれの果てが、この『Special Act』だと勝手に思ってるんですけどね。
でも「大変なんです」なんてルナの訴えにも、クイーンは一向に動じない。「今さらあせってはいけません」だ。クイーンは正しいね。うさぎは、婚約指輪は衛に突っ返したけど、それよりもずっと以前、4年前に衛に買って貰って、それからいつも肌身離さず持っていただろうムーンフェイズの時計は、首から下げたままだった。そして二人の絆をほんとうに物語るのは、指輪ではなくこの時計なのである。
それから、ルナのセリフから、リセットされたこの世界では、もう戦士たちはセーラー戦士に変身できないことが明らかにされる。「幻の銀水晶が砕けてしまったいま、うさぎちゃんたちは変身できない」。ということは、それぞれ変身アイテムとか持ってはいたけれど、戦士たちのメイク・アップのパワーというかエネルギーの根源は、やはり銀水晶にあったらしいのだ。って、みなさんひょっとしたら「当たり前だろ」って思っているかも知れませんね。
まあともかく、ここらあたりまでの展開で、我々はだいたいの話の流れをつかむ。つまりこのお話は、ウェディング・ベル直前の一波乱を描いた、よくある一幕ものだ。こういう展開だと、次は衛の前に別な女が登場して、意地っ張りのうさぎをやきもきさせることになるわけだ。その女は誰だ?ひょっとして陽菜とばったり再会するのか?
ということで、黒木ミオ最降臨という運びになるわけだが、すいません字数的にそろそろ終わらなきゃ。
今週は、何とかレイちゃん登場シーンまで進みたかったのだが、無駄口たたいて話が進みませんでした。トホホ。(つづく)