実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第54回】前世のお話はどうなっているのかの巻


 突然ですが、以下に出すのは、実写版が正面切って語らなかった「前世の話」が、アニメや原作漫画ではどうなっているのか、という比較検討のための資料です。いま観ている再放送がもうちょっと先に進んでからと思って準備していたものですが、某所で(笑)「最終回問題」もからんでコメント欄の議論が盛り上がっている状況もかんがみ、またちょうど私が午後仕事がなかったということもありまして、整理して公表することにいたしました。まずアニメの該当回、次に原作漫画の該当回という順で、内容紹介をしました。私自身の考察や分析はまた後日、ということにしたいと思います。アニメ版をご存じない方、原作漫画をご存じない方のご参考になれば幸いです。

1. アニメのおはなし


えーとまずはアニメ無印第44話「うさぎの覚醒!超過去のメッセージ」です(1993年2月13日初放送 演出:吉沢孝男/脚本:富田祐弘/作画監督:香川久/美術:大河内稔)。うさぎたちが前世を知る話と、ルナとアルテミスがダーク・キングダムの本拠地を見つける話が交互に語られていますが、後者は省略しますね。
 物語は、夜の麻布十番を疾走するルナが、ぐっすり眠っているうさぎの部屋に飛び込むところから始まる。「うさぎちゃん、起きて、大変よ!セーラーヴィーナスがね、アルテミスと一緒に、ダーク・キングダムのアジトに続く入り口を見つけたのよ!」「なんですって!」美奈子が見つけたアジトの入り口というのは、なぜか「カフェ&クレープ」という看板が出ている喫茶店の奥にある扉。なんでだろう。ていうかみんな夜中に平気で他人の店に勝手に入り込んで。亜美ちゃんまで。
 ともかく、その扉の向こうには洞窟が続いていて、洞窟を抜けると、北極のDポイント、たぶんスーパーマンのアジトも近所にあるダーク・キングダムの本拠地に辿り着くのである。太陽黒点が異常な活動を始めて、メタリアの力はますます強大になっている。一刻の猶予もならない、というわけで、セーラー戦士たち、ルナ、アルテミスはさっそく乗り込む。途中、ルナとアルテミスは、猫しか通れない小さな横穴を見つけて「行ってみよう」と別行動をとる。残る5人の戦士はそのまま洞窟を進む。
 彼女たちの前に立ちふさがったのはクンツァイト。声は先日惜しくも亡くなられた曽我部さんだ。「皆さんをダーク・キングダムにご案内をしたいが、接待の準備が整っていない。そこでもっと、楽しいところへご案内しましょう」クンツァイトはセーラー戦士たちを「多次元混乱世界」へ吹き飛ばそうというのだ。「恐竜の棲むアフリカの原始時代かも知れぬ、激しい戦争が起きた時代のヨーロッパかも知れぬ」
「そ、そんなめちゃくちゃな世界にとばされちゃうなんて、いやだ〜」と叫ぶセーラームーンだが、クンツァイトはすぐさま波動を放つ。とっさにセーラームーンの前に立ってかばおうとするジュピターとヴィーナス、でも結局みんな、時空を越えたどことも分からない世界に吹っ飛ばされる。セーラームーンの手を放れ、宙に舞うムーンスティック。
 クンツァイトは「銀水晶をいただく!」とムーンスティックをつかもうとする。だがスティックは、不思議な輝きとともに、時空の彼方に飛んでいったセーラー戦士たちの後を追って消えてしまう「しまった!」
 あやうくばらばらな時代と世界に飛ばされそうになった5人だが、銀水晶に導かれ、気がつけば全員そろって不気味に静まりかえった廃墟の跡に立っていた。古代遺跡のような瓦礫の山、そして夜空の向こうには地球が見える。
 「ここは、どこなの?」とつぶやくセーラームーンの目の前に、光かがやく女神の姿が降臨してくる「むかし栄華をきわめた神の国、シルバーミレニアムの廃墟よ」その顔はうさぎによく似ているが、ちょっと大人びている。
「あなたは?」「遠き昔、遙かな過去からメッセージを送る、月の女神セレーネの化身、シルバーミレニアムの女王、クイーン・セレニティ。あなたの母です」
 「え、あなたが私のママ?どういうことなの」「コールドスリープで眠っていたルナとアルテミスを再生させ、コンタクトをとって、あなたたちを見守っていました」こうしていよいよ、クイーン・セレニティの口から、前世に起こった出来事の全貌が語られるのである。

「私たちは月に生まれた長寿の生命体。月に伝わる聖なる石、幻の銀水晶を守り、地球がより良く進化していくのを、見守り助けることが、私たちの使命。思い出すのです、セレニティ。あなたが月のプリンセスとして暮らしていた、あの時のことを。セレニティ、あなたは青く美しい地球の、緑の木々や風にあこがれ、よく眺めていましたね。そして、恋を見つけました」

 かつて栄華をきわめたシルバーミレニアムでは、優雅な舞踏会が繰り広げられている。だがプリンセスはバルコニーで一人、夜空を見つめている。誰かを待っているのか。と、そんな彼女にささやきかける人影が。

エンディミオン「プリンセス・セレニティ」
  プリンセス「プリンス・エンディミオン」
エンディミオン「舞踏会に遅れてすみません」
  プリンセス「お待ちしておりました」
エンディミオン「大変な事件が起きたのです」
  プリンセス「えっ?」
エンディミオン「私たち地球の多くの者たちは、ベリルに洗脳されました」
  プリンセス「ベリル?」
エンディミオン「ベリルはメタリアという悪のエナジーに取り憑かれたのです。そして寿命の長いあなた方に憧れる人間の心につけ込んで、月を襲おうとしている」

 その時、人の気配を察した護衛の兵士たちが「そこにいるのは誰だ!」と近づいてきた。とっさに姿を消すエンディミオン。
 エンディミオンの言葉に表情を曇らせながら、プリンセスは舞踏会場に戻る。と、そこに差し伸べられた手が。「プリンセス、お相手を」「エンディミオン様!」素早い。エンディミオンは仮面をしている。他の人たちもしているので、要するに仮面舞踏会のようであるが、つまりこれがタキシード仮面のコスチュームのルーツである。

エンディミオン「私たち地球人と、あなたたちとの間には、これから熾烈な戦争が繰り広げられるに違いありません。敵となる私の正体が、いま分かるのはまずい。このままでお許しください」
  プリンセス「あなたが、敵に!」
エンディミオン「メタリアは人間ではない。悪意のエナジーのかたまりです。ベリルは魔導士だ。メタリアのパワーを利用して、月と地球を征服しようと考えている。このままでは、月は滅ぼされる。一刻も早く、膨大な悪のエナジーを秘めたメタリアを消滅させ、ベリルの野望を砕かなければならない。協力して欲しいのです。セレニティ。私の話を信じてくれますか」
  プリンセス「はい」
  (キスする二人。これから待ち受ける運命を思うプリンセスの瞳には涙がにじんでいる)

 その時、舞踏会場へ息せき切ってルナとアルテミスが駆けつけてくる「大変です!大変です!」「地球の人間たちが襲ってきました!」
 メタリアに導かれて来襲し、さっきまで優雅に踊っていたシルバーミレニアムの人々を惨殺する地球の兵士たち。立ち向かうマーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナス。だが彼女たちの必殺技も、メタリアには一向に通じない。
 沢山の兵士を率いて四天王が登場、崩れ落ちる宮殿を見て哄笑するクンツァイト。そして瓦礫の山に立ちはだかるベリル。「今日からは私が地球と月を支配するのだ。私に逆らう者は許さぬ。我らが愛するメタリア様。今こそ我らがダーク・キングダムの誕生です!」
 プリンセスは、あっという間に崩壊していくシルバーミレニアムを前に、茫然と立ちつくしている。そこへベリルが姿を現す。「お前がプリンセス・セレニティか。その可愛い顔をこうしてやる!」と長ーい爪で襲いかかるベリル。しかし間一髪で投げ込まれた薔薇の花がプリンセスを救う。タキシード仮面が薔薇の花一輪と共に登場するのは、アニメファンにはお馴染みだ。

エンディミオン「ベリル、プリンセスに指一本でも触れたら私が許さぬ」
  ベ リ ル「エンディミオン!なぜ月の王女をかばう。お前は地球の王子。私と結婚すれば、月と地球に君臨する王になれるのだぞ」
エンディミオン「ベリル。お前は悪のエナジーを秘めたメタリアに惑わされている。正気を取り戻せ。邪悪な心を捨てるのだ」
    (一瞬、苦悶する表情のベリル。エンディミオンへの愛情が見て取れる)
  ベ リ ル「えい黙れ黙れ、お前も殺してやる!」

 プリンセスをかばい、強力なパワーを受けて吹き飛ばされるエンディミオン。危機を顧みず飛び出すプリンセス「エンディミオン様!」「セレニティ、来るな!」手と手を取り合ったその瞬間、クイン・メタリアの攻撃が二人を直撃する。動かなくなる二人。「はははははは。死んだ。月の王女が死んだ」と高らかに笑うベリル。
 ついに意を決し、禁断の武器、ムーンスティックに手をかけるクイーン・セレニティ。ルナがそれを引き留めようとする「クイーン・セレニティ様、銀水晶を使えば、あなた様のお命が…」
 「わたくしの命など、月と地球の平和には代えられません。ムーンヒーリングエスカレーション!」断末魔の叫びをあげながら燃え尽きるメタリア、ベリル、四天王。
 すべてが終わった。静寂が戻り、破壊されつくしたムーンキャッスルでぐったり横たわるセレニティの側に、ルナとアルテミスが寄り添っている。二匹に最後のメッセージを伝えるクイーンセレニティ。

「ルナ、アルテミス、この銀水晶は、良き心のエナジーで使えば平和のために役立ちます。でも、悪しき心のエナジーで使うと、恐ろしい兵器になってしまうのです。この銀水晶で、メタリアを封印することができました。でも、いつまた甦るともかぎりません。そして、このムーンスティックは王国の血の流れをひく者しか扱えません。もしも将来、再びメタリアが甦ることがあれば、これをプリンセス・セレニティに託し、平和な世界を守るのです。プリンセス・セレニティ、そしてすべてのセーラー戦士たちよ。あなたたちの愛を、未来の地球で成就できますように……未来の地球で……幸せに……暮らしてください」

 セーラー戦士、エンディミオン、プリンセス、そして多くの死んでいった者たちの魂が、球体に包まれて地球に向かって行く。それを見送りながら息絶えるクイーン・セレニティ。その手から落ちたムーンスティックが輝くと、ルナとアルテミスはコールドスリープのカプセルに封印される。
 次の瞬間、セーラームーンと戦士たちは、再び時空のトンネルを通り抜けて洞窟に戻っていた。

   ムーン「わたしたち」
 ジュピター「過去の世界を」
 ヴィーナス「旅していたの」
   マーズ「これで分かったわ。私たちがどうしてセーラー戦士なのか」
マーキュリー「ええ」
   ムーン「お母様……」

 で後は、戦士たちが返ってきたことに驚愕するクンツァイトとのバトルである。「ええい、化粧の香りもしない小娘どもがしゃらくさい!」というクンツァイトに「あなたって、想像以上に陰湿ね」と突っ込むマーキュリー。クンツァイトが光線を飛ばして戦士たちのコスチュームを切り裂くと(って言っても、ここはそんなにエロじゃないですからね。念のため)セーラームーンは「たとえ、もっと素敵なお洋服を、オートクチュールで買って返してくれたって、女の子の服を切り刻むなんて許せない!月に代わってお仕置きよ!ムーンヒーリングエスカレーション」で、一気に殲滅。「オレはダーク・キングダムの四天王クンツァイトだぁぁl!」と叫びながら消滅するクンツァイト。そしていよいよ、北極Dポイントのダーク・キングダムのアジトで、ベリル、そしてメタリアと最終決戦だ!というところまでが、この 第44話のあらすじでございます。長かったかな。

2. 原作のおはなし


 次は原作漫画です。原作の方では前世についての話が連載第9回から第11回にかけて語られる。最初は、自分を守ろうとしたタキシード仮面がクンツァイトに倒され、そのショックでセーラームーンが初めてプリンセスになる「Act.9 セレニティ PRINCESS」(旧版コミック第2巻)。えーとこれまでは連載第9回とか言っていましたが、本当は原作は「Act」表記なんですね。実写版はそれを忠実に踏襲しているわけだ。ただどっちがどっちだか区別がつかなくなると思うので、ここでは「第〜回」というふうに書いていました。言うまでもなく、セーラームーンがプリンセスの姿になるところは実写版のAct.25ラストに相当します。実写版では前世の記憶をとりもどさなかったプリンセスと戦士たちだが、原作の方は、これがきっかけでうさぎは色々と思い出す。

(むかし、あたしは、月から青い星を見るのがとても好きだった。青い星、地球国の第一王子、だれよりも強くステキな人、エンディミオン。あの人を見たくて、ときどき地球へおり立ったりしたわ。……エンディミオン。
 でも、もう、こんなふうに会ってはいけない。なぜ?地球と月の住人は、通じてはならないの。それは神のおきて。好きになっちゃだめよ。でも、もうおそい)

そして「あの日」のできごとのフラッシュバック。月に攻めてきた地球の兵士たち。それを扇動するベリル。「月の王国をわれらのものとするのだ!幻の銀水晶をこの手に」
 「やめろ!やめるんだ!むだな争いは!」と必死でそれをとめようとするエンディミオン。だがベリルは叫ぶ「王子、地球をうらぎるのか!?すべては地球の繁栄のためだぞ!」そしてプリンセスを見つけたベリルは、クインメタリアの力を受けてプリンセスに剣を振りかざす。それを守ろうとして背中から貫かれるエンディミオン。絶叫するプリンセス。うさぎの記憶はそこまでで途切れている。
 一方、クンツァイトもまた記憶を取り戻す(エナジーが流れ込んでくる。オレたちはなぜこんなとこにいるんだ?オレたちはオレたちのマスターをさがして、地上にふたたび生まれかわったはず。オレたちのマスターはどこだ?)そしてあの時、マスターと交わした口論が甦る。

エンディミオン「なぜ争いなどするんだ」
 クンツァイト「王子、われわれはいいなりはもうたくさんだ!月の王国のやりかたにはがまんできない!一方的にわれわれを監視するなど!」
エンディミオン「いついいなりになったというんだ!監視だと!?だれにふきこまれた?あのいまわしい生きものか?わからないのか!?われわれは利用されているんだぞ!あいつに!」


 以上が連載第9回で語られる前世の物語です。次は「Act.10 MOON 月」(旧版コミック3巻)。まだ前世のことを完全に思い出せない戦士たちは、ルナの提案で、すべての謎の根源である月に行ってみることにする。満月の夜に集まり、プラネットパワーを結集して飛翔する5人とルナは、地球を後にして、かつてシルバー・ミレニアムが栄えていたという「マーレ・セレタティス」(晴れの海)に降り立つ。「ねえ、うさぎ、これがほんとの<月のうさぎ>」とダジャレをいうジュピター。
 青白い月夜の廃墟、かつてのムーン・キャッスルの中心地に、石の剣が刺さっている。この剣は、実写版では「Special Act」に登場するアレです。
 その剣を引き抜くと、ちっこいクイーン・セレニティの立体映像が現れる。これも実写版の「Special Act」で、ルナの前に出てくるあれです。「それは伝説のプリンセスを守る聖剣。ジュピター、マーズ、マーキュリー、そしてヴィーナス、あなたがたのものです。ルナ、よくみんなをつれてきてくれました。わたしは地球でよぶところの、月の女神セレーネの化身、シルバー・ミレニアムの前女王クイーン・セレニティ」
 「お母さま?」と問いかけるセーラームーンに「かわいいセレニティ。あなたね。見えるわその姿が」と答えるクイーン。「双方向で話が?」といぶかしがるマーキュリーにクイーンが説明する。

 「もう肉体は滅んでしまったけれど、ムーンキャッスルのメインコンピューターが作動しなくなったとき、サブコンピューターが作動し、こうしてわたしの意志のみのこすことができた。この映像はコンピューターがつくりだしたものです。ルナとアルテミスをコールドスリープにより再生させ、ずっとコンタクトをとってあなたたちを見守り、このときをむかえるのをまっていました。
 いまは廃墟になってしまったけれど、おぼえていますか?このムーンキャッスルが美しかったとき、ドームのなかではあったけれど、緑や風が吹いていたころ。でもプリンセス・セレニティ、あなたはそれよりもほんものの緑や風にこがれ、よく地球へおりたった。そして恋をみつけた」

 幸せだった日々の回想(そう、あたしはあの人に会いたくて、みんなの目をぬすんではよく地球におりたったんだわ)。こっそり逃げ出そうとするプリンセスをつかまえるジュピター。説教するヴィーナスとマーキュリー。そして 背後に困った顔のマーズ。

 ジュピター「プリンセス!」
 ヴィーナス「また、ナイショで地球にいきましたね!?」
マーキュリー「あなたはシルバー・ミレニアムを継ぐ者として学ばなきゃいけないことが山ほどあるんですよ!」

 さらに説明を続けるクイーン・セレニティ。これは長いよ。長いけどだいたいの事情が分かる。

「わたしたちは月に生まれた長寿の生命体。月に伝わる聖石、幻の銀水晶を守り、地球のマイナスの因子をとりのぞき、地球がプラスの方向へよりよく進化していくのを監視し、たすけることが使命。
 いまでもよくおぼえている。あの年、太陽の活動がやけに活発だった。あの異常な太陽が、災いをもたらしたにちがいない。……地球にいつのまにか入りこみ、地球をわがものにしようとした<あいつ>。あなたたちの敵、あれはまさに悪魔(サタン)なのです。巨大なパワーをもつ幻の銀水晶に目をつけ、長寿であるわたしたちにあこがれる人間のこころにつけこんだ。そして人々をあやつり月までせめてきた。
 あのとき、若く強き地球国の王子エンディミオンだけが、まよわずさいごまで、あやつられた地球の人々を説得したけれど……おそかった。彼はあなたを守り、たおれ、悲しみのあまりあなたも自害を……おぼえていますか?そのことを。わたしはやっとのことであれを封印したけれど、このムーンキャッスルすべて、石とかえられ、くずれてしまった。そして地球国も滅び、もういちどはじめから地球は進化をたどることになった。それは、太古の話。
 でもまた悪魔はよみがえってしまった。いま、地球のどこにひそんでいるかはここからもさがせないけれど、奥深くでうごめいているわ。あのとき、わたしはあなたをうしなったショックで混乱し、悲しみと迷いの弱い心で封印をおこなってしまった。それで幻の銀水晶のパワーを出しきれず、封印は不完全なものとなった。でももういまとなってはやりなおしはきかない。あなたしかいないの。幻の銀水晶の真の力をつかって、あれを封印できるのはプリンセス!あなただけなの。
 プリンセス・セレニティ、おぼえておいて。幻の銀水晶は、すべてあなたの心しだいなの。強い信念と協調、そして深い愛情、それがないと悪魔であるあれを消し去ることはできない。プリンセスであり、正義の戦士セーラームーンであることに、誇りと自信をどうかもって。そして、忘れないで。あなたがひとりの女の子であるということも。あなたが生まれかわったほんとうの意味もそこにあるのだから。忘れないで。
 セーラーマーズ、マーキュリー、ジュピター、そしてヴィーナス、力をあわせて、どうぞプリンセスを守って。そしてこの王国を、このムーンキャッスルをもういちど……もうパワーがない……話せるのもあとわずか……セレニティ、しあわせになって……」

 と言って、クイーン・セレニティの立体映像は消える。最後の方の「そして、忘れないで。あなたがひとりの女の子であるということも。あなたが生まれかわったほんとうの意味もそこにあるのだから」というセリフは、実写版のテーマを考えるうえで重要だと思います。


 最後が「Act.11 再開 ENDYMION」(旧版コミック3巻)。ダーク・キングダムにとらわれた衛を奪回するためにベリルと最終決戦に挑む戦士たち。しかしセーラームーンはベリルにとらえられてしまう。「どんなにまったことか。太古のむかしから。異常な流星群の夜明け、あの災いの年、あの太陽の超巨大なガスのかたまり、邪悪な暗黒点から、流星雨とともにこの星にふりそそぎ、この地に生まれてきた、暗黒の神のめざめのあのとき、わがおおいなる支配者、クイン・メタリアにひざまずいたあのときからまっていたのよ、ずっと!」
 そのときヴィーナスが、最後の記憶の覚醒をはたす。

ヴィーナス「プリンセスを放すのよ!ダーク・キングダムの女王クイン・ベリル。ベリル(…思い出した…)おまえ、地球の人々をあやつり扇動し、月へ攻めてきてすべてをめちゃくちゃにした女!あの悪魔、クイン・メタリアに魂を売った女!(…思い出した、いまはっきりと。あのときこの女が、プリンセスと王子エンディミオンを!)おまえまでこの世に転生していたなんて!」
  ベリル「くくっ。あのときはあと一歩、わたしはちりと化し、いまいましいクイーン・セレニティのおかげで、わがおおいなる支配者クイン・メタリアも地の底へほうむられた。だが宇宙の偉大なる流れはふたたびわれらをよみがえらせてくれた。くくっ」
ヴィーナス「ベリル、おまえだってあの悪魔に利用されているにすぎないのよ!」
  ベリル「くくっ。幻の銀水晶とプリンセスを手にしたいま、わがおおいなる支配者の復活をまつまでもない。このわたし、クイン・ベリルがこの世を支配するのよ。真の女王となるの。この新しい連れとともに。王子エンディミオンとともに!」
ヴィーナス「……あたしをおこらせたわね……剣よ!わが王女、守れる聖剣よ、いでよ!わが手に!」

 ヴィーナスの手に、あの月の聖剣が現れる。それを渾身の力でベリルにふりかざすヴィーナス「月よ、わが王国シルバー・ミレニアムよ。聖剣とわれに力を!!」さすがのベリルもひとたまりもない。
「おお……やっと手に入れたのに。王子エンディミオン……あなたを……ずっと、あなたを、見ていたのに……ずっと」と言いながら滅び去るベリルの脳裏に最後に浮かぶイメージは、仲むつまじくよりそう地球の王子と月のプリンセスを、貧しい使用人の身なりで物陰から見つめる前世の自分の姿だった。


 で、原作のダーク・キングダム篇は一気にクライマックスに向かいます。敵はクイン・メタリアの力に支配された衛=エンディミオンだ。セーラームーンのみならず、他の戦士達も、さすがに衛を攻撃することにためらうなか、ヴィーナスだけは躊躇せず「かれはもうべつの人格として生まれかわっている。クイン・メタリアとおなじなのよ!」とばんばん攻撃する。どうしてかというと、セーラームーンの手でエンディミオンを倒させるのは、あまりに忍びないからですね。だから自分で、と思う。でもローリングハートバイブレーションをはじき返されて倒れてしまう。それを見てセーラームーンもついに決意する。

(この人はもう別人なの!?この人をたおすしかない!?殺すの!?道はえらべないの!?こうするしかないの!?これが、生まれかわってきたあたしたちの運命なの!?まもちゃん…)

 そしてメタリア化した衛を聖剣で貫くと、前世と同じように、返す刃で自らの腹を突いて命を落とすセーラームーン。絶叫するヴィーナス。

「プリンセス、こんな、こんな瞬間をむかえるために、あたしたち生まれかわったんじゃ……ないっ!!いやあああっ」

 個人的にはこのセーラームーンの自害のシーンはかなり衝撃的でした。だから実写版を観ていて、プリンセス・ムーンなんてものが登場して、ストーリー的にはけっこう原作を離れてきたかなと思っていたら、衛=エンディミオンがメタリア化して原作の流れに戻ってきたときには、沢井美優が自害するシーンなんかやられたらどうしようと、ほんとうに気が気じゃなかった。そんな原作ファンも、けっこういたのではないかなあ。

 というわけで、今回はデータだけ投げだしてぶっきらぼうですが。こんなところで