実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第92回】目指せ脱マイナー、その他もろもろ詰め合わせの巻

 

 

 画像は、来週から始めるつもりのAct.3DVDレビューの予告編。コミック旧版第14巻のあと書きで、武内直子はアニメ『セーラースターズ』のテーマ曲を観月ありさが歌っていることに触れ「レイちゃんは観月ありさちゃんのイメージで描いた」というようなことを述べている。セーラームーンの連載開始は1992年なので、その前年に公開された観月ありさ主演のこの映画『超少女REIKO』が、火野レイの具体的なイメージの源泉だろう。大河原孝夫の脚本・監督デビュー作。霊媒師だった祖母の血を受け継いだ超能力少女、九藤玲子が、学園祭の近づいた高校で、怪奇現象の謎に巻き込まれる物語である。
 さて、本日は小ネタをいくつかまとめてみました。

1. 『ダサいブログ』の陰謀と戦う


 他のブログもそうなんだろうけど、この「はてなダイアリー」には、どういうリンク先からどの程度の数の訪問者が来ているか、分かる機能がついている。このブログの場合、いちばん多いのはやはり「セーラームーンリング」からの来訪者であるが、ぽんたさんとか石肉さんとか、リンクを張ってくださっている方のところから飛んで来てくれた方々も、意外とおられる。以前D.Sさんが『は〜どぼいるど☆じゅぴた〜』という安座間美優ファンサイトを作ってリンクを張ってくださったときも、そこを経由してこちらにたどり着いた方々が、けっこういた。
 その D.Sさんが、マイナーな沢井美優のマイナーなファンのために、新しくマイナーなサイトを開設された。その名も『まいなぁ☆みれにあむ』という。そして「リンク集」で、またこのブログを紹介してくれているのだ。で、こちらとしても、これはきっと新たな沢井ファンの方のご来訪があるかも知れない、と予想して、情報もないのに無理やり『少林少女』の記事なんかを書いていたわけです。
 ところがですね、待てど暮らせど、『まいなぁ☆みれにあむ』からの来訪者がほとんどないのである。心配になって見に行ったら、サイト開設から2週間を過ぎた今もなお、タイトルページの末尾にあるカウンターが500に達していない(本日昼調べ)。芸能人のファンサイトが、一般人のブログ以下のアクセス数である。これでは「沢井美優マイナー化のさらなる促進」をたくらむD.Sさんの思うツボではないか。
 仕方ないので私、最近はまず『まいなぁ☆みれにあむ』に飛んで、そこから自分のサイトをチェックすることにしています。みなさんもぜひ、ご協力ください。

2. 失はれた「失はれた週末」


 昨年4月から今年の3月まで、中部エリア限定で再放送された実写版セーラームーンを改めて視聴しながら、結局、全話レビューすることになっちゃったこのブログだが、その際、いくつかの実写版レビューサイトについては、できるだけ読まないようにして、だからあえて言及もしなかった。結局は何度か引用したぼうたろうさんの『千咲ちゃんねる』も実はそのひとつで、再放送期間中は極力、参照しないようにしていた。どうしてかというと、ああいう詳細な各話の分析的レビューを読むと、どうしても影響されて、それをなぞるようなことしか書けなくなるからである。『M14の追憶』も本当はそうなのだが、そもそもこのブログの産みの親のようなものなので、開き直って、むしろ積極的に引き合いに出させていただいた。
 そういうわけで、これまで触れなかったサイトは色々あるが、そのなかでも特に「参照したいけど我慢」していたのは、そうです、実写版のファンなら一度は読まれているであろう黒猫亭とむ蔵氏の「失はれた週末」aka「ひこえもん劇場」である。
 ご存知の方はご存知の通り、このサイトは、特撮テレビ番組としての実写版セーラームーンを、脚本、演出、撮影、そしてプロデューサーの制作スタンスといった様々なレベルから1話ずつ詳細に論じた、実写版批評のある種の極北でございます。かなり突っ込んだ批判も多いが、それもまあ、愛情の表れと取れる。特に白倉プロデューサーに対するこだわりは、何というか「愛憎相半ばする」という言葉を連想せずにはおれない。
 この1年間「ここの演出、黒猫亭とむ蔵さんはどんな風に分析されているのかなあ」と思ったことは何度となくあったが、しかし「読んじゃったら、私はもう再放送レビューなんて、1行も書く気がなくなってしまうんじゃないか」とも思って、私は「失はれた週末」に関しては「見ざる・聞かざる・言わざる」に徹した。ついでに言うと、このブログを、高丸監督だろうが健光監督だろうが「とりあえず誉めたおす」というミーハーなノリで徹底したのも、もちろん私の嗜好もあるが、クリティカルな黒猫亭さんのレビューとの差別化を目指す部分もあったような気がする。でも、このブログを始める前に、すでにざっと目を通してはいたので、たぶん影響は受けているだろう。私の再放送レビューのなかに「失はれた週末」と同じような記述があったとすれば、それはだいたい私の無意識のパクリと考えて下さってけっこうです。
 しかし「けっこうです」って、それも無責任な話なので、再放送も終わり、改めてDVDで最初から再レビューをやるにあたって、こんどはきちんと「失はれた週末」を参照しながら、自分の再放送レビューを検証してみるかな、とも思い立ったのである。で、久しぶりに見に行ったら、無くなっていた。「失はれた週末」が失はれてしまったのである。
 検索したら、黒猫亭とむ蔵さんはブログをやっていて、最近は「黒猫亭とむざう」に改名されたらしい。そのブログ「黒猫亭日乗」の5月31日付け記事によれば、サイト閉鎖は「掲載サイトが閉鎖」されたことに伴う処置だという。
 「失はれた週末」は、プラズマさんという方が運営されていたセラミュファンサイト「あんこっくたぶれっ」というサイトの1コーナーだったのであるが、その「あんこっくたぶれっ」が閉鎖されたらしい。これまたセラミュに関してはものすごく情報が系統的に把握されていて、とても重宝するサイトだった。それに管理人さんの関心が、もっぱらラストドラクル三部作にあったというのも、私のような、河辺千恵子でセラミュに開眼した人間にとっては嬉しかった。そうか、終わっちゃったのか。ちゃんとダウンロードして保存しておけばよかったよ。
 そういうわけで、親サイト「あんこっくたぶれっ」の閉鎖に伴い「失はれた週末」もなくなっちゃったんであるが、ただ日記によれば「コンテンツ自体に関してはオレが引き取って公開する予定なので、暫くブランクは空くが何れ従来通り参照可能な形に持っていくつもりである」ということなので、ひと安心である。再公開されたら、ぼちぼち参照させていただこうと思う。御本人は「ぶっちゃけコンテンツの内容相応の参照ニーズがあった時期はすでに過ぎている」とおっしゃるが、いえいえ、そんなことはございません。ぜひ近いうちの再公開をお願いします。
 その黒猫亭とむ蔵改め黒猫亭とむざう氏が、6月3日のブログで「セラムンの舞原が帰ってきた!」と叫んでいる。「久々にセラムンのレビューをノリノリで書いていた頃の高揚が戻ってきました 」とも。もちろん『仮面ライダー電王』の話だ。近々レビューを書かれるらしい。これはとても楽しみだ。しつこいようだが便乗して私も叫ぶ「脚本は小林靖子、監督は舞原賢三、そしてプロデューサーは白倉伸一郎だっ!」。

 

3. 実写版とアニメ版をめぐる雑談


 6月3日の【第90回】で、実写版Act.2とアニメ版第8話が、色々な意味で対称的であることを書いたが、次に書くAct.3のDVDレビューのために、火野レイ初登場となるアニメ無印第10話を見ていて、やっぱり初期エピソードの小林靖子には、アニメ版をわざとひっくり返した設定の話を書こう、という意図があるんじゃないかという気がしてきた。
 アニメ第10話「呪われたバス! 炎の戦士マーズ登場 」では「午後6時に火川神社の前を通るバスが失踪する」という怪事件が起こる。火川神社では、毎日午後5時に恒例の祈祷が行われるが、これをやると「恋愛運がアップする」というので、女の子たちに大人気なのだ。だから祈祷の儀式が終わる午後6時ごろには、火川神社前のバス停は、帰りの女生徒たちで大にぎわいになるわけですね。で、そこへやって来るバスの運転手が妖魔で、沢山の若い女の子を、バスごと異次元空間に拉致してしまうのである。近所の人たちは、火川神社の神主(レイのお祖父さん)や巫女の霊感少女(レイ)が何かやってるんじゃないかと勘ぐって、レイに詰め寄ったりする。
 バスが異次元空間に吸い込まれる瞬間を目撃したうさぎは、翌日、知り合ったばかりのレイのもとに駆けつける。

レ イ「あら、うさぎちゃん、どうしたの」
うさぎ「あ、あのね、あたし見ちゃったの。昨日もね、6時のバスが消えちゃったの」
レ イ「あなたまでうちのおじいちゃんのせいだっていうの?」
うさぎ「へぇ?」
レ イ「警官が何度も来たわ。うるさくてしょうがないのよ!」
うさぎ「違うの、そんな意味じゃなくて……ただ、レイちゃんならなんか知ってるかなぁ、と思って」
レ イ「知らないわ!」
うさぎ「ごめんなさい。あたしレイちゃんとお友達になりたいの。本当よ」
レ イ「いいから帰って!」
うさぎ「ま、また後でね。さよなら〜」
レ イ「まったく冗談じゃないわ(落ちていた変身アイテムを拾い)あの子が落としていったのかしら」

 うさぎと一緒にいたルナは、レイが第3の戦士であることを察して、わざとマーズの変身アイテムを落としていったのである。
 というわけで、ここでもAct.2のときと同様、アニメ版と実写版は、色々な関係が逆転している。アニメ版では、レイがうさぎの意図を誤解して「帰って!」と追い返してしまうのに対して、実写版のレイは、クラスメートらしき子たちに詰め寄られ「帰って!」と言っているところを、うさぎに助けられる。またアニメ版では、ルナが火川神社から追い出されるときに変身アイテムを落としていくが、実写版では、まずレイがブレスレット(変身アイテム)を落としてしまい、うさぎがそれを届けに火川神社に行くのだ。やはり小林靖子は、アニメの設定の細部を意図的にひっくり返しながら、実写版の脚本を執筆しているのではないか、と思えてしまうのである。
 実写版は、アニメ版とは別物の、原作に基づく再映像化ということになっているが、やはり色々な点でアニメ版を意識している。以前【第36回】や【第37回】で書いたアニメ版『R』第54話と実写版Act.23の関係もそうだと思うし、あるいは、アニメ版無印第21話と実写版のAct.47の間にも、私はちょっとそういうつながりを感じる。
 無印第21話「子供達の夢守れ!アニメに結ぶ友情」は、セーラーVのテレビアニメを制作しているアニメ会社「スタジオダイブ」にうさぎたちが見学に行くという、一種の楽屋落ち的な楽しいエピソードである。で、アニメーターの松野浩美は、妖魔に取り憑かれて異様に作画力がアップし、ライバルの只下和子より上手くなる(笑)。それで麻藤順一監督(!)からラストシーンを任されて、こう言い放つのだ「監督、ラストシーン、セーラーVは殺します!そういう刺激的な話を、今の子どもたちは望んでいるんです」。

4. みんながアニメ版に「浮かれていた」あの頃


 こういった、実写版を連想させる要素が出てくるアニメ版のエピソードを拾い集めるのも、今後の課題だと思って、最近ぼちぼちアニメ版を観ているわけですが、ただこのブログを読んでくださっている方々の中には、アニメ版をリアルタイムで観ていなくて、実写版でセーラームーンを知ってから、最近になって改めてアニメの方をチェックして「ストーリーは水戸黄門的ワンパターンだし、作画的にも大したことないし、何でコレがそんなに熱狂的に受けたの?」という疑問をもたれた人も、けっこうおられるのではないだろうか。
 実際、以前も書いたように、初期のアニメ版はかなり厳しい条件のもとで制作されていて、作画枚数も少ないし、客観的な作品としてのクォリティは決して高くはない。そういう冷静な見地からすると、アニメ版を神聖視する熱狂的なファンが、実写版をむちゃくちゃに批判していた放送当時の状況も、いまいち分からなかったりするのだろう。でもアニメ版『セーラームーン』には、やはり作品の巧拙を越えた魅力があり、それはオーラのように周囲に波及して、いわく形容しがたい熱気を生み出していた。
 私は、アニメ版がどうしてあれほど多くの人々を惹きつけ、社会現象にまでなったのか、その理由は、作品そのものをいくら分析しても見えてこないんじゃないか、やはり、あの作品を取り巻いていた同時代の空気を吸わないと、理解はできないんじゃないか、と思っている。実は私自身は、アニメ版が始まったころは結婚とか仕事のこととか個人的に色々あって、かなり傍観者的にそのブームを眺めていたに過ぎない。だから本当はそんなことをえらそうに言えた義理でもないのだが、それでもやはり、セーラームーンという作品が、登場するやいなや幼女から大きいお友達までをがっしり捉えて興奮のるつぼに引きずりこんでいった、あのエキサイティングな感じはそれなりに記憶していて、だからこそアニメ版原理主義者的ファンの心情も、それなりに理解しているつもりだ。
 しかしそんなリアルタイムのニュアンスを伝えるコンテンツは、現在のネット上でそうは見つからない。アニメ版の放送開始は1992年で、大きいお友達のみなさんは、パソコン通信の会議室などで、亜美ちゃんやレイちゃんの魅力を熱く語っていた。そしてインターネットが世間でもおおむね普及した1997年に、アニメの放送は終了してしまう。現在ネット上で閲覧できるセーラームーンファンサイトは、ほとんどがそれ以降に設立されたものである。したがって、当時の熱狂を分析したり、その意味を読み解こうとする試みはあっても(もちろん、それはそれで貴重なものだ)熱狂そのもののなかから生まれたようなサイトや、あの頃の空気をそのまま封印したような掲示板の過去ログに出会うことは、なかなかできない。
 私が知っている範囲で、そういう「あの頃」を最もヴィヴィッドに再現しているネット上の記事は『WEBアニメスタイル』の小黒祐一郎氏のコラムだ。この記事は、大げさに言えば「セーラームーンって一体なんなのか?」という問題を考えるうえでの貴重な資料であり、実写版オンリーのファンの方々にも、できれば一度は目を通していただきたいと思います。まだ読んだことがないという方はぜひご一読下さい。これです。
 というわけで今回はこれまで、次回ももう一回、小ネタ集をお送りします。


P.S. と書き終わって「黒猫亭日乗」を見に行ったら「電王」第19話のレビューがアップされていた。