実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第75回】亜美の悩み、まことの決意、そして動く白猫の巻(Act.45)


 小松さんは春から10時台のドラマだそうだ。おめでとうございます。北川さんは『ヒートアイランド』よりも前に『その時は彼によろしく』が公開される。安座間さんはモルディブですか。そして我らがプリンセスは…TDL。万丈さん(沢井党七海会所属)ですら夏の『眠れる森の美女』再演までの動向がつかめていないという。なんとかなりませんかね。
 もう春だ。前に立ち上げた<沢井美優需要拡張プロジェクト>も、そろそろ第2案を出さなきゃ。なのに仕事は年度替わりだし再放送は毎週2話だし、とてもそこまでやってられない。いや第2案も、アイデアは一応あるのだ。時代劇。TBSなら『水戸黄門』だ。まずは1回、病気のお父っあんをかいがいしく看病する長屋の娘役でゲスト出演。でスタッフの好印象を得て、次のシーズンはレギュラーだ。
 ミュージカルゆかりの四国かどこかの藩で、幕府の転覆を謀る陰謀が進行して、殿様は幽閉される。からくも悪党一味の手を逃れた姫は、その窮状を訴えんと、貧しい町娘に扮して江戸へやって来る。ことの成り行きを聞いた黄門様ご一行は、姫と連れだって世直しの旅に出る。道中、峠の茶屋で旅の子どもたちとなごむ姫。その姿は、身なりは貧しくても一挙手一投足にプリンセスの気品というものがにじみ出ている。丘の上の木陰では怪しい黒装束の人影「やはりあれは姫に間違いない」。その夜、旅籠屋に忍び込んだ黒装束は、鳩尾責めでプリンセスの気を失わせて連れ去り、猿轡をかませ荒縄で縛り上げて粗末な物置に放り込む「でも、あの子強いよ。きっと大丈夫」。
 馬鹿もほどほどにAct.45です。

1. ちょっと冷たい亜美ちゃん


 というわけで、Act.44終了に引き続きまして、3月14日(水)深夜2時45分、Act.45再放送。美奈子、そしてまことをめぐる物語がクライマックスに向けて動き出す。と同時に、主人公であるうさぎがまったくその流れの外に追いやられてしまって孤立する。いわゆる「うさぎ問題」がすべての視聴者の目にあらかさまに示される回でもある。その責任の多くは、一見したところ亜美にある。
 戦いを終えたみんなの前で、レイが「ヴィーナスは戦士の力に目ざめていない」ことを暴露したとき、うさぎは海岸でひとり膝をかかえていた。クラウンに美奈子が初めて姿をあらわし、言い争いをした結果レイが去ってしまったとき、うさぎは一人でなるちゃんを見舞っていた。そしてヴィーナスが戦いの途中、力尽きて倒れてしまったとき、セーラームーンはゾイサイトの最後を看取っていた。何も知らないままだ。そして今回うさぎは亜美からのテレティアで、美奈子が倒れて緊急入院したことだけは知らされるが、その詳細すら教えてもらえない。

うさぎ「疲れ?じゃあ、前と一緒なんだ」
亜 美「うん。休めば大丈夫みたい」
うさぎ「そうかぁ。でも私も行くよ。どこの病院?」」
亜 美「あ、今日は静かにしてあげた方が良いみたい。私たちも帰るから」
うさぎ「そうなの…」
亜 美「うん。じゃ」
うさぎ「あ、明日…」

 じゃあ明日いっしょにお見舞いに行こうよ、と言い出すより先に、亜美は電話を切ってしまう。取り残されるうさぎ。
 そして翌日の登校日。クラスの、たぶん半数以上が欠席している。ミオも、なるちゃんも、そして山本ひこえもん君もいない。春菜先生は言う「せっかくの登校日ですが、見てのとおり、来れない人が沢山います。みんなも知ってると思うけど、最近とつぜん抜け殻みたいになっちゃう人が増えているでしょう。それのせいなの。みんなも気をつけてね」。しかしカナミやモモコの言うとおり、気をつけろったって、何に気をつければいいんだか。
 一方うさぎは、メタリアの力がどんどん増している事実に、改めて愕然とする「こんなに…なるちゃんだけじゃない。早く妖魔を倒して、みんなを元に戻さなきゃ」
 そういうわけでせっかくの登校日も、あっさり簡単なホームルームで終わったらしく、下校風景。そそくさと教室を出て行く亜美を、廊下で呼び止めるうさぎ。でも亜美の態度はどこかよそよそしい。

うさぎ「亜美ちゃん、美奈子ちゃんのお見舞い行こうよ」
亜 美「あ、そっちはまこちゃんが…大勢で行くと疲れさせちゃうし」
うさぎ「そうか。あ、じゃあさ、一緒にクラウン行こ」
亜 美「今日ちょっと寄るところがあって、さき行っててくれる?」
うさぎ「いいけど…そういえばさ、レイちゃんって」
亜 美「神社が忙しいみたい」
うさぎ「ふーん…」
亜 美「じゃあ」 

 という具合に、亜美は今回、ほとんどうさぎを放り出している。実は私、最初に観たときには、これがちょっと、いかにも冷たいなあと思ったものだ。
 もちろん亜美の気持ちは「うさぎちゃんは、ほかに大変なことがあるから」というかたちで説明される。でも前に美奈子が倒れたときも、病院に駆けつけずにはいられなかったうさぎの性格を思えば、むしろここでは一緒に美奈子を見舞いに行った方が、うさぎにとっても一種の気晴らしになるだろうくらいは考えついてもいいはずだ。それに、レイがクラウンを出ていったと言ったって、この期に及んで戦線離脱したというわけでもない。実際「戦いを止める気はないわ」と明言しているのだ。そしてレイがマーズれい子になって美奈子に対抗した、その真意に気づいたのは亜美だ。レイがただ美奈子を嫌っているのではなくて、何か美奈子のことを思って謎めいた行動をとっていることは分かっているはずだ。だったら、二人がケンカしちゃったことも正直に打ち明けて、一緒に説得に行こう、とでも誘った方が、衛のことでつらい目にあっているうさぎちゃんにとっては、これもちょっとした気分転換になる。亜美はそんなふうに考えることができなかったのだろうか?
 できなかったのだ。みなさんはもうご承知ではあろうが、私の理解は、最初のところで間違っていたのです。

2. 亜美の気持ち


 アヴァン・タイトル。美奈子がかつぎ込まれた処置室の前でたたずむまこと。そこへ亜美が駆けつけて来る「まこちゃん、美奈子ちゃんは?」「いま診てもらってるんだけど、ちょっと普通じゃないっぽいんだよね」。そのとき、二人を押しのけるように、看護婦たちがガラガラと、医療器材をのせたワゴンを運び込む。それを見た亜美は顔を曇らせ「そうみたいだね」と暗い表情でつぶやく。私はここで大事なポイントを見逃していたのだ。
 まことは今回、もう少し後になって、病院で美奈子とアルテミスとのやりとりを立ち聞きしてしまい、美奈子が余命いくばくもない事実をはじめて知って、愕然とする。つまり、この冒頭時点では、まことはまだそこまで深刻な事態だとは気づいていない。とにかく、ただの疲労などではなさそうだ、という漠然とした不安。「ちょっと普通じゃないっぽいんだよね」というセリフはそういう意味だ。そして亜美はそれに相づちをうって「そうみたいだね」と答えている。だから私は最初、亜美もここでは「ちょっと普通じゃないっぽい」美奈子の容態を心配している、と理解したのである。そしてそう考えたので、これ以降のうさぎに対する亜美の態度を冷淡に感じたのだ。美奈子の病状がつかめない以上、近づけたくないのも分かるけど、もう少し、ひとりぼっちのうさぎの淋しい気持ちをくみとってやっても、いいんじゃないのか。うさぎは美奈子のお見舞いをしたがっているのだ。
 でもこのシーンをよく観なおすと、亜美は運び込まれる器財や装置なんかを一瞥して、ハッとしている。医療器具のアップに挟まれるかたちで、目を見張る亜美の表情が強調されているのだ。そうだった。亜美は、将来はママのようなドクター志望の、成績優秀で真面目な少女だった。ひょっとするともう独学で、専門的な医学の勉強を始めているのかもしれない。Act.33なんか見ていると、ママの病院にも行き慣れているようだ。要するに医者のタマゴとしての知識と目を持っている。
 彼女はまことと違って、この冒頭で、運びこまれた装置や薬剤をさっと見ただけで、美奈子が置かれている状況を、まことよりも一足早く、即座に理解したのである。それも、どのような病気か、自覚症状がいつ頃から始まったと推定されるのか、あとどれほどの命なのか、そして救われる可能性がどれほど低い確率であるかを、レイや、あるいは美奈子自身よりも正確に。
 そしてその時、亜美にはずっと疑問だった謎が解けた。美奈子がどうして最初から、仲間に加わろうとしなかったのか。なぜ一時は芸能界を引退しようとしたのか。レイはどうして美奈子を相手にすると普通じゃなかったのか。そして戦士の力に目ざめていない事実を暴いてまで、美奈子を戦わせまいとしたのか。これまで亜美は、美奈子とレイの関係を、ずっと何かもの問いたげな表情で、黙って見つめていたのだが、ようやくこれですべてが理解できた。美奈子ちゃんは手術も受けず死ぬつもりなんだ。レイちゃんはそれを知っていたんだ。だから美奈子ちゃんにあんな態度をとったんだ。レイちゃんに確かめなくちゃ。私が気づいたことを知れば、レイちゃんはきっとすべてを話してくれる。
 というわけで亜美は翌日、登校日の帰りに、さっそくレイのもとを訪ねようとする。うさぎはそんな亜美を呼び止めたのである。だから亜美は嘘をついてまで、うさぎを振り切らなければならなかった。美奈子とレイのケンカをうさぎに伏せておきたかったからではない。美奈子の真実についてレイと話さなければならなかったからだ。そしてやはり、すべて亜美の予想どおりだった「そうか、やっぱりレイちゃん知ってたんだ。美奈子ちゃんのこと」。
 だからレイと話した後の帰路でルナにつぶやく「うさぎちゃん、地場君のことだってすごい我慢して普通にしてるんだもん。これ以上、負担になることは言えないよ」と言う亜美のセリフの「これ以上、負担になること」とは、「美奈子ちゃんの容態がけっこう悪そうなこと」でも「レイちゃんがクラウンから出ていったこと」でもなく、医学的事実として、このまま放っておけば確実に「美奈子ちゃんがもうすぐ死んじゃうこと」である。地場君がうさぎのために「命を吸い取られる石」を埋め込まれたのに、美奈子ちゃんまでプリンセスのために自ら命を落とそうとしている。そんなこと、いまのうさぎちゃんにはぜったい言えないよ。
 もちろん、うさぎの前でそれを隠して、亜美自身、気づいていないふりをして、一緒に美奈子のお見舞いに行く、という方法もあるにはある。でも亜美には無理だ。うさぎちゃんといて、これ以上うそをつくことは亜美にはできない。かといって真実を告げることもできない。だから顔を合わせないようにするしかなかった。亜美もまた、深く悩んでいたのだ。

3. だってやっぱり笑っちゃうよ


 が、しかし、当の美奈子が病室でアルテミスと決別するシーンを観て、私は今回、申し訳ないがちょっと笑ってしまいました。すみません。だって美奈子、相変わらず不必要にボディラインを強調してるし、アルテミスのリアクションも、その美奈子のセクシーぶりにどぎまぎしているとしか思えないしさあ。
 今回と次回は高丸監督、最後の登板である。私は前から、高丸監督って、猫、特にアルテミスにいろんな芝居をさせるのが好きなんじゃないか、と書いてきたが、今回もその印象はますます強まった。ここは解説ぬきでシーンをまるごと再現してみる。

美奈子「ジュピターたちに怪しまれちゃったかな」
  (アルテミス、テーブルの上をするすると動きながら)
白 猫「みんなにも、本当のことを言えばいいんだ。仲間なんだから。あの時、一緒に……」
  (首を上げるアルテミス。Act.40、風船割りの回想)
美奈子「あれはマーズに乗せられただけ」
  (アルテミス、意を決したようにくるりと振り向いて)
白 猫「美奈子、手術を受けよう!」
美奈子「アルテミス……」
  (アルテミス、テーブルを美奈子の方へにじり寄って行く、そしてアップで首を振りながら)
白 猫「僕はもう、こんな君は見ていられない。君が、このままいなくなってしまうのも」
  (美奈子は起きあがる。前かがみのタンクトップの胸元はアルテミスの目の前すぐ!)
美奈子「なんだか、告白されてるみたい(うふっ。どお)」
  (アルテミスは必死で目を閉じる。両手を懸命に振って)
白 猫「僕は真面目なんだ!もう前世の使命じゃなくて、今の君を大切にするときだと思う」
美奈子「いまの私なんて、もうすぐ消えちゃうんだよ」 
  (アルテミス誘惑に負けて目を開ける。まだ見える!)
白 猫「だから、手術をすれば……」
  (美奈子、ゆっくりベッドから出て、窓際に立つ)
美奈子「成功する可能性なんて、ほとんどないのに……」
  (すかさず空のベッドに飛び移るアルテミス。ぬくもりと残り香が目当て)
白 猫「でも、ゼロじゃない。それに賭けるのは、怖いと思うけど……」
美奈子「怖いんじゃないよ。そんな賭けまでする必要はないってだけ」
  (アルテミス、温かいベッドをひょこひょこ歩み寄りながら)
白 猫「どうして……」
美奈子「アルテミス、前世の使命を果たすつもりがないのなら、あなたもマーズと同じよ。一緒にはいられない」
  (ここは、Act.38の撮影所のシーンと同じ、美奈子ズーム・イン3連発。高丸監督の趣味か?次回のセーラームーン登場シーンもそんな感じだった。そして目を丸くするアルテミスのアップ)
白 猫「えっ!」
美奈子「出てって」
白 猫「何で君はそうガンコなんだ。ヴィーナスじゃなくて、愛野美奈子として話してくれ」
美奈子「愛野美奈子なんて、明日にでも消えちゃうような存在よ。でも、ヴィーナスは消えない」
白 猫「え〜っ」(というふうに聞こえる)
美奈子「残念だわアルテミス。あなたが前世の使命を放り出すなんて。さようなら」
白 猫「美奈子……」

 アルテミスは自分でドアを開けて出ていく。ショックのあまり、まことがそこにつっ立っていることにも気づかない。でもねえ、別に最初からドアが少し開いていても、ぜんぜん問題はないのだが。つまりこうだ。まことが美奈子の見舞いにやって来た。寝ている美奈子を起こしちゃ悪いので、少しだけそっと病室のドアをスライドさせて、中の様子をうかがったら、アルテミスと衝撃の会話を交わしていたので、呆然と立ちつくしてしまった。で、絶交を申し渡されたアルテミスはその隙間を通ってシオシオと出て行く。その姿を追う美奈子と、まことの目が会う。ね、アルテミスにドアを開けさせる必要はない。
 なのにアルテミスは回れ右をしてベッドから飛び降り、スライド式のドアを自力で開け、すり足で出ていく。足の裏で廊下を拭きながら去るのだ。そしてレイのもとへ転がり込んで、石を蹴飛ばそうとしてみたり、次回は目玉焼きを作ったりするのである。CGも使えないのに、なんでこんなに動かそうとするかな。やはり高丸監督の趣味なのではないか。

4. 「まこと!」


 というわけで、たとえ今から手術をしたって「成功する可能性なんて、ほとんどない」と言う美奈子に、アルテミスは「でも、ゼロじゃない。それに賭けるのは、怖いと思うけど」と、なんとか手術を受けさせようとする。しかし美奈子の答えは「怖いんじゃないよ。そんな賭けまでする必要はないってだけ」だ。
 もちろん美奈子も、前回の衛が「そりゃ俺だって死にたくないけどな」言ったのと同じ感情はあるよね。でもたぶん、美奈子にとって「怖い」のは「私が私である理由」をこの世界に刻んでいけないまま消えていくことだ。
 美奈子が芸能界に入ったのは、歌が好きだったからであり、歌を通じて「私はここにいる」と訴えたかったからだ。けれどもアイドルになってみて、しょせんは流行り廃りの世界だと思った。もしいま手術を受けて、失敗に終わったら、すぐに人々から忘れ去られて、戦士としてもいちばん肝心な時に戦えないことになって、本当に何も残らない。それなら最後の命の炎を、前世の使命を果たすという、自分に与えられた、自分にしかできない確かな目的を成し遂げるために燃やし尽くした方がいい。「愛野美奈子なんて、明日にでも消えちゃうような存在よ。でも、ヴィーナスは消えない」。もう戦士の力に目ざめることはできないままかも知れないけど、絶対やり抜く。そんな悲壮な覚悟だ。
 一方まことは、初めて古幡(今回は台本にならってこう呼んでみよう)に告白され、断った直後に、戦士の力を使いこなせるようになった。因果関係は明らかだ。その時から心の中に住みついた古幡という存在が、まことに戦士の力を与えた。一人じゃないことに気づいたから、戦士として目ざめたのだ。しかし本人は逆に、古幡への想いを捨てたから目ざめることができた、と思い込んでる。まことは内心、怖いのだ。古幡もやがて、今まで自分が愛した人たちのように、いつか自分を離れていくかも知れない。もうそんな淋しさは味わいたくない。だから「ぜんぶ前世から決められていた。だから私は一人で良いんだ」と言い聞かせて、納得しようとしている。元から諦めていれば、失うこともない。
 でもレイにはそのへんの心境を見透かされて「じゃあ元基君のことは?『一人でいい』なんてとらわれてる証拠じゃない」なんて図星を指されて反論できない。
 そんなまことが、美奈子に激しく感動する。自分が前世を拠りどころに古幡を忘れようとして、それでもなお未練たらしく引きずっているというのに、この人は前世の使命だけを真っ直ぐに考え、我が身のことは、命すら顧みようとしない。「すごい。すごい強いよ。やっぱりリーダーなんだ」。本当は美奈子にとっても「前世の使命」こそが、自分が自分であることの証をこの世界に残すための拠りどころなんだけどね。
 こうして今回、セーラージュピターは、美奈子から受け取った強い決意を、戦いをもって示そうとする。相手はついにダーク・キングダムを飛び出したメタリアが取り憑いた妖魔。つまりこいつを倒せばメタリアも吹っ飛ばせるというわけだから、相手にとって不足はない。命を賭けるにふさわしい敵だ。でもメタリアのかたまりが取り憑くって、メタリアって結局なんなんだ?パスいち。
 古幡への想いを吹っ切るために命まで危険にさらすその姿は痛々しいはずなのに、私はこの戦いをすごく痛快な気持ちで見入ってしまった。やっぱりジュピターの戦いぶりは格好いいや。
 マーキュリーはどっちかっていうと、いつも戦いを楽しんでいるような感じだし、マーズはエレガントに戦ってポーズを決めることに熱心だし、ヴィーナスは倒すことよりも敵の頭の上をどれだけ宙返りできるかに力を入れているし、結局、常に真っ向勝負で戦っているように見える正統派はセーラームーンとジュピターの二人だ。バスケやってた沢井さんとダンスの得意な安座間さんということもあるのだろう。でもセーラームーンは特に最近、襲われて自分を守るための戦いになることが多いうえに、力み過ぎるとプリンセス・ムーンになってしまうという厄介な問題をかかえている。誰かを守るために、いつでも力を出し切って戦っているジュピターは戦闘シーンの華だ。今回も、自分自身のためというより、ヴィーナスを守って「たとえ命を捨てても、前世の使命は果たす」というヴィーナスの決意を、変身できないヴィーナスに代わって実現してやるために、自ら避雷針になってサンダーボルトを落として妖魔もろとも自爆しようとするのである。それを見た美奈子は思わず「まこと!」と叫ぶ。美奈子がプリンセス以外の戦士を初めて現世の名前で呼ぶ瞬間である。

5. おまけ


 なんて落ち着いて鑑賞できるのは再放送だからの話。3年前は、このジュピターの自爆シーンに、クラウンのカウンターでは古幡が買ってきた亀のお守りを落とし、カラオケルームでは一人ぼっちのうさぎが「まこちゃん!?」と叫んでペンダントが輝き出す、なんて思わせぶりというか、不吉なシーンが挿入されたので「え、まこちゃんひょっとして死んじゃうの?」って個人的には大パニックだった。みなさんそうじゃなかったですか?いや実際、その後の予告編ではまことの姿が出ないし、壁にもたれかかって沈み込んだ表情の美奈子、そして美奈子の変身シーンのさわりが出てくるので、こりゃひょっとして、ジュピターが散ってしまい、それを目の当たりにした美奈子が逆に「生きる」ことを決意して戦士の力に目ざめる、って展開かよ、と思ったものだ。
 それからもうひとつ、初放送の予告編は例によって短いバージョンで、代わりに最後にプレゼント告知があった(もちろん今回の再放送はDVD仕様の予告編ロングバージョン)。セーラームーンが DVD1巻、マーキュリーが2巻と3巻を両手に、マーズが4巻、ジュピターが5巻、ヴィーナスが6巻をもって、それぞれ前へ飛び出して一言いってはぴょんと隣に飛び去り、次の子が飛び出してくる。最後は全員で横一列。一番手のセーラームーンは、DVDを持っていない方の手を口に当てて笑顔。マーズはめちゃくちゃはじけて早口。か、可愛いっ。

セーラームーン「テレビの前のみんな!」
 マーキュリー「番組のDVDを」
    マーズ「1巻から6巻セットで」
  ジュピター「5名様にプレゼントします」
  ヴィーナス「必要事項を書いて応募してくださいね」
 全員ならんで「待ってまーす!」

 5人とも、本編の重々しいストーリー展開のストレスを吹き飛ばそうとするかのような明るさなのだが、それはともかく5人全員でのプレゼント告知というのはけっこう珍しい。だからますます、全員がそろうのはこれが見納めってことかな、ジュピターには次回以降はもう回想シーンでしかお目にかかれないのだろうか、という気がしたのだ。
 今から観なおすと、このプレゼント告知は次回、Act.36のバトルシーン撮影の合間に撮られたものであることが分かる。だからマーキュリーとマーズとジュピターは、妖魔に吹っ飛ばされたときの汚しが顔に入ったまま。これがまたキュートです。Act.36の最後にも、おそらくこれと同時に撮ったと思われる『キラリ☆スーパーライブ』のDVDプレゼントの告知があるが、こっちはセーラームーンぬきで4人並んでいる。だから全員そろってのプレゼント告知は、やはりこれが最後だ。こういうのもDVDの特典映像に入れられなかったものか。ホントに可愛いんだからみんな。
 ともかくそんなこんなで、ジュピターがどうなるか真剣に心配していたあのころが懐かしい。フェイントで良かった。でもそうやってホッとさせておいて、やっぱり、美奈子は「いってしまう」んだもんなあ。小林先生の意地悪。私は美奈子の命は最後には救われると信じていたのだ。みなさんはいかがでしたか?と今回のレビューは追憶モードで幕。次回はヴィーナス感動のラストバトルだ!


【今週の猫CG】なし
【今週の待ちなさい】なし

(放送データ「Act.45」2004年8月21日初放送 脚本:小林靖子/監督:高丸雅隆/撮影:上赤寿一・松村文雄)