実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第1007回】お母さんとお呼び、の巻(北川景子『あなたを奪ったその日から』レビューその3)


 東京女子流(2010年結成)が15周年記念ライブの場で解散(2026年3月31日予定)を発表した。ここのところ、でんぱ組. inc(2008年結成/2025年1月5日解散)、RYUTist(2011年結成/2024年12月全員卒業)、TEAM SHACHI(2011年結成/2025年12月解散予定)など、けっこう長続きしていたメジャー女子アイドルグループの活動終了が続いているので、ひょっとしてとは思っていたが、ひょっとした。今回そのことを書こうかどうか迷ったが、ちょっとだけ書かせてくれ……ちょっとだけで済むかな。



 東京女子流の活動期は、私見では初期・中期・後期に分かれる。最も有名なのは、「アイドル戦国時代」の熱気を受けてエイベックスの秘蔵っ子としてデビューし、幼いルックスにシックなコスチューム、洗練された楽曲、ハードなパフォーマンスで独自の人気を誇った初期(2010年〜2014年)。


「鼓動の秘密」(2011年)


 日比谷野外音楽堂や日本武道館でワンマンライブを達成した2012年をピークに、2013年のツアーで故障者が続出するなどして、ゆるやかに衰退期に入る。
 そして中期(2015年〜2019年)は試行錯誤の時代。故障がちなメンバー1名が休養に入り(結果的には引退。新メンバーの加入はなく、メンバーの異動は15年間を通してこの時だけだった)、事務所の主導で「脱アイドル・アーティスト宣言」を行ってアイドルおたくの反撥を買ったりしていた。普通ならこのあたりで解散に向かってゆくものである。平均年齢12歳でデビュー、15歳で武道館ライブを体験、高校を卒業するあたりで離れてゆくファンも多い。良い夢を見させてもらったと、全員が大学進学を機に引退、でもおかしくなかった。



 しかしこのグループの本当のすごさは、実は中期から発揮される。2016年にシングル「深海」を発表。チャートは振るわなかったが、アイドルシーンをリードし、グループに新たな生命力を吹き込む先鋭的な新曲の意義を誰よりも理解したのは、彼女たち自身だった。


「深海」(2020年ライブ)


 それからというもの、メンバーは、目の前のステージで、自分たちの曲をいかに高いレベルで歌い踊るか、という課題にストイックに取り組むようになり、個々の歌唱力と体力とチームワークはずっと上昇し続けた。



 音楽的にはテクノ、K-POP風、王道アイドルソング風(バックダンサー付き)など様々な方向性を試し、売れるためのチャレンジが続く中期だったが、シングル「Hello, Goodbye」あたりから、誰が書いたどの楽曲にも、ほかでは得られない確固たる東京女子流の世界を感じさせるようになる。そんなわけでこれ以降を私は後期(2020年〜)と呼ぶ。
 そして2022年にアルバム『ノクターナル』を発表。



 私はこれ、4週連続オリコン1位を獲ってもおかしくない傑作だと思った。ところがこの最高傑作をもってしても、爆発的な人気回復にはいたらなかった。このあたりで解散という選択肢が出てきたのかなあ。
 それでも彼女たちのライブは進化を続け、優れた楽曲と歌と踊りが揺るぎなく一体となったステージパフォーマンスは、もう芸術品。


「フォーリンラブな時」(2024年ライブ)


 とてもエレガントなんですが、それだけでなく、しっかり身体を鍛えているというか、4人とも華奢なわりにスタミナが凄い。激しい踊りの後にすぐ歌に入っても、息切れせず音程もブレない。



 13周年記念のライブ(2023年)なんか、「昼の部」「夕方の部」「夜の部」と1日3公演あって、その「夜の部」の後半で「13周年」にちなんで「13曲ノンストップ」(メドレーではなく全曲フルコーラスで、間にMCなど全く入れず、13曲を歌って踊り続ける)という趣向があったのだが、後半になればなるほどみんな楽しそうにテンションをあげて、新井ひとみなんか10曲過ぎたあたりから明らかにギアが上がっていた。チームワークも良く、心技体そろった希有なアイドルグループでした。



 う〜ん、やっぱりキリがなくなるからこの辺にしておこう。(もうすでに長い。)新規のファンがなかなか増えない以上、仕方のない選択とは思うが、実にもったいない。でも、この7月に7枚目のアルバム、タイトルはその名も『東京女子流』をリリースするというあたりに、ただの解散ではなく、東京女子流という「作品」をきちんと完結させて、アーカイブしておこうという意志を感じます。そのうち後期の作品も評価される日がきっと来ます。



 切り替えていきましょう。えーと、『あなたを奪ったその日から』レビューの続きです。



 オンエアはもう第3話まで行って、現代にきちゃったのに、こっちはようやく事件後1年経った2015年だ(2025年4月21日放送、脚本:池田奈津子/撮影:白石利彦/照明:磯辺大和/演出:松木創/企画:水野綾子/プロデュース:三方祐人/制作:カンテレ・共同テレビ)。



 夫とも離婚して独りになった紘海(北川景子)は、SNSで娘の死の原因を作った張本人、惣菜店「YUKIデリ」の元社長、結城旭(大森南朋)の住居を突き止め、復讐のため、刃物を懐に玄関の前に立つ。



 ところがそこへ、結城の長女、梨々子(平祐奈)の家庭教師をやっている大学生の玖村毅(阿部亮平)がやってきて、不穏な紘海の姿に不審をいだく。



視線を感じた紘海は、包丁を握りしめたヤバい格好のまま、慌てて立ち去る。



 そんなことも知らず、結城はダイニングで、仕事仲間の望月(筒井道隆)と話しながら料理中である。そこへやって来る娘の萌子(倉田瑛茉)。



萌 子「ねえパパ、かくれんぼしよう」



望 月「萌ちゃん、今パパね、お仕事の大事な話しているんでね」



萌 子「かくれんぼ」



 旭 「萌、危ないから向こうへ行っていなさい」



(チャイムの音)
梨々子「あ、玖村先生かな」



萌 子「ねえパパ、かくれんぼ」



 旭 「今手が放せないから、おい梨々子、ほら先生お迎えして」
梨々子「はぁい」



萌 子「100数えたら見つけに来ていい」



萌 子「い〜ち、に〜い、さ〜ん」



 旭 「行かないぞ」



 旭 「行かないからな」



萌 子「ご〜、ろ〜く、し〜ち、は〜ち」



玖 村「こんにちは」
 旭 「よろしくね」



 一方、結城の家を離れ、緊張の糸が途切れた紘海は、握りしめていた包丁を川に放り捨てる。




 そして、結城の家の前に乗り捨て同然にドアを開け放しにしていたソリオに戻る。



 これでは復讐どころではない。ひとまず今日は退散することにする。シートに「BLACK&WHITE」の文字が。私は車に乗らないので知らないが、スズキソリオのブラック&ホワイトというのは、内装をグレードアップした特別仕様車だそうである。



 ここでCM。次のシーンは、なぜか実写版セーラームーンと同じ「CMが明けるとすっかり夜になっている」法則がここでもはたらき、真っ暗な夜。



 どれだけ走り続けたのか、とにかく路肩に車を止めた紘海は、ようやくほっと溜息をつく。計画がうまくいかなかったというよりも、安堵の溜息に近い。



 ところが紘海が車を離れている間、旭の次女、萌子(倉田瑛茉)が後部座席に「かくれんぼ」していたのであった。



萌 子「ばぁ!」



紘 海「きゃあ!」



萌 子「みぃつけた」




萌 子「おばちゃん、鬼?」


╳    ╳    ╳



萌 子「あ、モッチーだ」



望 月「あ、萌ちゃん、元気?」



萌 子「モッチー、かくれんぼしよう」


╳    ╳    ╳



萌 子「ここ、どこ?」


 なんか夜かと思ったら、外は明け方みたいに白んでいる。いったい何時なんだこれ。まあともかく、女の子の出現にうろたえた紘海だったが、結城の娘を知らず知らずに連れてきてしまったことに気づいて、結城の家に引き返すことにする。



萌 子「どこへ行くの」
紘 海「お家」



萌 子「萌のお家?」



紘 海「そう」



 しかしそのとき、紘海はまたブレーキをかけて車を停める。待てよ、考えてみれば、結城の「一番の宝」が向こうから転がり込んでくるなんて、千載一遇のチャンスだ。



 なにも素直に返すことなんか、ないではないか。そう考え直した紘海は、この子を連れ去ることに決め、結城の家に向かっていた車をUターンさせる。



紘 海「もう少し、かくれんぼしようか」





  こうして二人は、紘海のアパートへやってくる。殺伐とした屋内に萌子を招き入れた紘海は、結城の「一番の宝」を奪う計画を再び決行しようとする。



紘 海「靴、脱ぎなさい」





萌 子「ここ、どこ?」



紘 海「おやつ、食べよっか」



 台所へ食べ物を取りに行くふりをして包丁を探すが、唯一の包丁は今日、持ち出したあげく、川に捨ててしまった。



 調度もろくにない屋内で紘海の目に留まったのははリボン。娘の灯が亡くなったとき、つけていたリボンだ。



 紘海はこのリボンを首に巻きつけて、萌子を亡きものにして、結城への復讐を遂げようとする。



 その時、ベランダの外から踏み切り信号の音が聞こえて来る。近くを線路が通っているのだ。萌子は音のする方に吸い寄せられていく。



萌 子「電車?」



紘 海「電車だね」





 旭 「子どもが一番の宝です」



 旭 「仕事なんてやってらんないよ、こんな天気の良い日に」




 けれどもその時、萌子が「汽車ポッポ」を歌い出すのを聞いて、同じ歌が好きだった灯と萌子が重なってしまい、どうしても手を下せない。




萌 子「♪汽車汽車ぽっぽっぽっぽっ♪」



萌 子「♪しゅっぽっしゅっぽっしゅっぽっぽ♪」



萌 子「♪ぼくらを乗せて♪」





萌 子「泣いているの?」



紘 海「ごめんなさい」



紘 海「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」



 というわけで、紘海は文字通り結城から萌子を「奪って」自分の娘として育てる腹をくくったようなのだが、しかしそんなことできるのか?ということで第1話は終わり。



萌 子「おばちゃんはママ?」



萌 子「萌のママ?萌に会いに来てくれたの?」



紘 海「ママじゃなくて、お母さん」



萌 子「……お母さん……」


 次回レビューは第2話。すでに第4話放送も間近でどうしようもないが、頑張って追いかけます。


(なぜだろう。愛と憎しみはとても似ている)