えーと私、5月3日に新宿のライブハウスで推し活(東京女子流 結成15周年おめでとう)、それから翌日には実家に帰省し、足腰が弱くなって施設に入った父親に会うという日程になっておりまして、限られた時間のなかでの更新となりますが、よろしく。じゃあさっさと本題。『あなたを奪ったその日から』第1話レビューの続きです(2025年4月21日放送、脚本:池田奈津子/撮影:白石利彦/照明:磯辺大和/演出:松木創/企画:水野綾子/プロデュース:三方祐人/制作:カンテレ・共同テレビ)。
娘の死から一年後。紘海(北川景子)は夫(高橋光臣)と別れて独りになり、がらんとした部屋で食パンをかじりながら、スマホでニュース記事を見ている。
NEWSバズポスト
「Yukiデリ社長結城旭、許されない隠蔽疑惑と謝罪なき幕引き」
2014年12月に発生した3歳女児の死亡事故から約半年以上が経過した。しかし、この事件の余波はいまだに収まる兆しを見せない。世田谷区の総菜店「Yukiデリ」で購入したピザを食べた3歳女児が、アナフィラキシーショックを発症し死亡したが、店舗側は一切の過失を認めず、謝罪の態度も見せなかった。
えっ?「2014年12月に発生した」……私、気づいていなかったんですが、前回に観た愛娘の死という悲劇は2014年12月、いまから10年前の話だったのだ。
理由もなくドラマの現在時制を実際の放送日の10年前に設定しないだろう。ということはつまり、このドラマの最終回は10年後の現在で終わるという構成になっているのか。これって、この子が13歳になるまで一緒に暮らすっていう話なのか? どうやってそんなに暮らし続けるんだ?
まあいいや、さらにネット記事をスクロールする紘海。
この不誠実な対応が、より一層の批判を招いている。「結城旭は何の落ち度もないとでも言うつもりか?」「結城旭は子どもが亡くなったというのに、一言の謝罪もないのか?」「結城旭の責任を回避する気満々の態度に、企業の未来はない」
SNS上では、Yukiデリと結城旭氏に対する批判が殺到。結城旭の無責任な対応が広く知れ渡り、ネット上は不買運動を呼びかける声まで拡がった。店舗がすでに閉店しているにもかかわらず、結城旭氏に対する非難は止まらず、その態度への不信感が強まっている。
さらに、結城旭氏は記者会見で「これは大人の責任だ」と発言。結城旭氏自身にも子どもがいるにもかかわらず、遺族の悲しみや怒りに寄りそう姿勢は一切見られなかった。被害者遺族を逆撫でするような言動に、会場の記者からも怒号が飛んだ。「結城旭は責任を取るつもりはないのか」 「結城旭は遺族の気持ちを考えたことはあるのか」との問いかけにも、結城旭氏は歯切れの悪い解答を続けるのみだった。
「ここまで誠意のない対応を取る人物が、再び社会で信用を得ることができるのか?」と憤る声も上がっている。事故の真相が明らかになることもなく、結城旭とYukiデリに対する批判は今もなお続いている。
内容が整理されていない、ちょっとダメダメな文章、しかも素材はテレビの記者会見と書き込みだけ、独自に取材した痕跡は皆無という、典型的なネットニュースの記事の感じが、まあまあ出ている。さらにスクロールしてコメント欄に移ると、当の結城旭の住所が書かれている。
匿名
結城旭の住所特定した↓〒135-0069
東京都江東区新豊洲1丁目10-88新豊洲の一戸建て豪邸過ぎるんだが
全然反省していなくて草
人殺しの住んでいいい家じゃないだろ
[いいね!34]
おいおい、コメント欄に、記事に出てくる人物の住所なんて書いたらだめだろ、削除削除。でもすでに紘海はその住所をしっかり記憶に刻みつけている。
情報収集を続けるうちに、紘海は結城の娘と思われる「RiRiko YK」という女の子のSNSまで辿りつく。
「この週末、うちのパパは/料理教室に行き始めました。」♯クラッセ料理教室
この記事を読んだ紘海は包丁を買う。何に使う包丁か。料理である。
そう、娘の生命を奪った結城旭の通う料理教室に、自分も通うことにしたのだ。でも、何のために? 結城旭に近づいて、情報を収集するためである。ではなぜ情報を収集するのか……。
講 師「いいですか? お料理の一番の隠し味は愛情」
講 師「愛情が詰まっているから、ママやパパの作る料理は美味しいんです」
講 師「愛情たっぷり注ぎましょう」
紘 海「あっ、痛ぁ」旭 「え?」
紘 海「あ、いや、困りますよね、愛情を注いで、なんて言われても」
紘 海「いやあ、愛情だけなら私も三つ星級だと思うんですけどね」旭 「大丈夫ですか?」
紘 海「ああ、いつもこうなんです。玉ネギに嫌われているんですかね」
紘 海(笑)
紘 海「あ、私、中越です」
旭 「あ、結城です」
紘 海「私、すっごい下手なんですよ。それで、うちの子ぜんぜん私の料理食べてくれなくって」旭 「ははは、うちもです」
紘 海「うちは3歳が一人。そちらは?」
旭 「高校生と3歳」
紘 海「3歳、一緒!」旭 「ですね」
講 師「そこのお二人」
講 師「おしゃべりの前に手を動かしてくださいね」
おしゃべりが過ぎて講師(藤山京子)に注意される二人。しかし結城旭と知り合いになり、しかも彼には死んだ灯と同い年の娘がいることまで聞き出せた。離婚して旧姓に戻っているので、名乗りを上げても、結城は、彼女が事件の犠牲者の母親だとは、まったく気づいていないようだ。
料理教室って行ったことないけど、作ったら試食をして終わるんだよね、きっと。でも終了後、紘海はトイレで嘔吐している。
娘を食物アレルギーで失ってから、何かを食べてもすぐ吐いてしまう体質になってしまったようである。北川景子がトイレで吐くのは『死刑台のエレベーター』(2010年角川、緒方明)以来かな? どうかな? どうでもいいことか。
まあとにかく、そういう身も心も苦しい料理教室ではあるが、静かな復讐の炎に燃える紘海は、さらに通い続けて、少しばかり挑発的な会話をしかけながら、結城旭から情報を引き出すのである。
紘 海「うちの子、市販のお総菜が大好きなんですよ」
紘 海「勘弁して欲しいですよ。『こんなの身体に悪いから買わないよ』って言っても、ぜんぜん聞かないし」
旭 「身体に悪いと思うのなら、食べさせては駄目ですよ」
旭 「子どもは親を信頼して口にするわけですから」
旭 「子どもの責任は親にある」
紘 海「……」
紘 海「……いいお父さん」
旭 「僕がですか?」
紘 海「お子さんをとっても大事に思っている。宝物みたいに。違いますか」
旭 「当たり前じゃないですか。子どもが一番の宝です」
紘 海(……その言葉が聞きたかった)
「身体に悪いと思うのなら、食べさせては駄目ですよ。子どもは親を信頼して口にするわけですから。子どもの責任は親にある」自分の誤表示を棚に上げて、食べさせた親のせいだと言った、あの記者会見のときと同じ発言である。しかし紘海は暴発しそうな憎しみの心をぐっとこらえて、「お子さんをとっても大事に思っている」と笑顔で返す。すると「当たり前じゃないですか。子どもが一番の宝です」と、またこちらの傷に塩を塗り込むような言葉を放つ。しかし紘海は「その言葉が聞きたかった」と独りつぶやく。こうして紘海のなかで、具体的な復讐の計画とモチベーションに火がついた。あかりと同じ3歳の娘、あんたの宝物を今度は私が奪ってやる。
紘海はネットに出ていた結城の住所まで車を乗りつける。確かにそこに書かれていた通り、高級住宅街のなかなか立派な一戸建てである。
すると人影が近づく。会社の部下である望月耕輔(筒井道隆)が結城を訪問してきたのだ。
望月は結城にとって大学時代のサークルの後輩で、家族ぐるみのつき合いもある。迎えに出てきた結城はエプロン姿である。
旭 「ああ、いらっしゃい」望 月「……その格好……」
旭 「料理中」
望 月「マジっすか。旭さんが」旭 「はっはっは」
萌 子「あ、モッチーだ」
望 月「あ、萌ちゃん、元気?」
萌 子「モッチー、かくれんぼしよう」
望 月「かくれんぼ? かくれんぼしようか。いいなぁ」
結城の次女、萌子を演じている子役は倉田瑛茉さん。一昨年暮れの日曜劇場『下克上球児』(2023年、TBS)では主人公の鈴木亮平と井川遥の家の末娘を演じ(倉田珠那名義)、昨年の『西園寺さんは家事をしない』(2024年、TBS)では松村北斗の娘を演じた超売れっ子である。
三人が家に入った後、しばらく玄関先の様子を窺っていた紘海は、意を決したように車に戻ると、タオルにくるんで鞄に忍ばせてあった包丁をもち出す。
包丁をにぎりしめ、戦闘態勢の顔つきで、結城邸に向かってずんずん進んでゆく紘海。さあどうする?
ってところで以下次回。ごめん。まだ事件が起こって1年後、2015年の話である。早くしないとドラマの進行からどんどん遅れる。1年遅れが3年遅れになり、5年、7年と引き離されていってしまう。……でもまあ、うちはだいたいこんなペースなんで。では。