実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第936回】赤いドレスの女の巻(泉里香inドラマW『松本清張 眼の壁』5)



 東京ディズニーランド(千葉県浦安市)で開催されているクリスマス企画のパレードで、ミニーマウスが他のキャラクターからスカートをめくられた場面があり、様子を撮った動画が交流サイト(SNS)に投稿されて意見が飛び交った。施設を運営するオリエンタルランドは8日、取材に対し「一部の来場者を不快な気持ちにさせた。おわびする」と答えた。(共同通信2023年12月8日)


 トナカイのキャラクターによるミニーマウスのスカートめくり。演出かアドリブかは不明だが、いまの時代になぜ、とは思う。これをきっかけに、過去まで遡って検証されたら、ディズニーはどう対応するつもりだろうか。なにしろミニーマウスはもうすぐ芸歴100年。今日では許されないような数々のセクハラ被害を、かつては受けているのである。90年前の短編「ミッキーの摩天楼狂笑曲」(1933年)より。



 がしかし、このネタは、これ以上掘り下げると危険な気もする。えーと、話題を変えよう。
 みなさん「日本レコード大賞」の候補曲の基準って御存知ですか?昔は「対象年度に発売されたすべての邦楽シングル」という縛りがあった。具体的には「前年の10月1日からその年の9月30日までに発売されたシングル曲」のみが最優秀賞の候補の対象だったのである。その縛りが、今はもうない。


 作曲、作詩、編曲を通じて芸術性、独創性、企画性が顕著な作品とする。優れた歌唱によって活かされた作品で大衆の強い支持を得た上、その年度を強く反映、代表したと認められた作品に贈る。審査対象は「優秀作品賞」に選ばれた作品とする。


 「その年度を強く反映、代表したと認められた作品」であれば、必ずしもこの一年の間に発表された曲でなくても良いのだ。というわけで今回、新しい学校のリーダーズが、コロナ禍真っ最中の2020年5月にデジタル配信した「オトナブルー」が優秀賞に選ばれた。まさかエントリーされるとは思っていなかったので嬉しかった。



 新しい学校のリーダーズは、このブログでもつい取り上げた、剛力綾女さん主演の金曜ナイトドラマ『女囚セブン』(2017年)のエンディングテーマ「毒花」でメジャーデビューした。あれがまた、インパクトの強い曲だったが、その後、海外でブレイクして、逆輸入のようなかたちで日本でも評判になって、良かったです。



 そして驚きの、CBC『セーラー戦士 20年目の同窓会』放送決定(2023年12 月 25 日月曜日、23 : 10 ~ 23: 40)というニュース。すでに収録は済んだようで、出演時のメンバーカラーをあしらった衣装での集合写真も公開された。実写版セーラームーンはもともとCBCの制作である。『M14の追憶』にも指摘されていたが、実はCBCの実写版セーラームーン公式サイトはまだこっそり生きている。



 うかつに発覚すると消されそうなので黙っていたが、「美少女日記」だって未だに閲覧可能である。2003年11月1日(月)に沢井美優が「今日は千咲の誕生日」なんて書いているのも、まだしっかり読めるのだ(ここ)。にもかかわらず、今回「CBCで20年ぶりに同窓会が放送」という快挙を公式サイトはまったく触れていない。たんに放置されているだけであることがバレてしまった。



 さてそれでは前回に続き『眼の壁』レビュー。今回から2022年6月26日に初配信された第2話に進みます(2022年、全5話、原作:松本清張/脚本:深沢正樹/照明:宮脇正樹/撮影:金澤賢昌/監督:内片輝/チーフプロデューサー:青木泰憲、制作WOWOW)。



 会社の手形と共に消えた上司、関野徳一郎(甲本雅裕)の安否を気づかうウキシマ電業経理課長の萩崎竜雄(小泉孝太郎)。関野からの最後の電話連絡で、手形詐欺師の堀口(薮宏太)が、ナンバー「品川 お 73-25」の黒のセダンに乗ったことを知らされる。萩崎が、古い友人である『毎朝新聞』社会部記者、村木(上地雄輔)に頼みこんでナンバーを調べてもらったところ、なんとこの車の所有者が長野県選出の大物代議士、岩尾輝輔(金田明夫)のものであることが判明する。



 関野が被害に遭った手形詐欺はきわめて手馴れた組織犯罪の印象が強い。堀口も組織の一員だろう。その彼に岩尾代議士が車を提供しているということは、つまり反社が詐欺行為でこしらえたシノギが保守党政治家のフトコロに、おそらくは活動資金として流れ込んでいるということだ。これはパーティー券どころの話じゃないぞ。弟の進次郎も大丈夫なんだろうな。



 と思ったかどうかは知らないが、萩崎は親友の村木が教えてくれた銀座のクラブ「月世界」(原作では「西銀座裏にあるレッドムーンという酒場」)に向かう。岩尾代議士の行きつけで、どうやらそこに、お気に入りのホステスもいるらしい。店に乗り込む萩崎。するとなんとそこには、上崎絵津子(泉里香)が働いているではないか。



 えっ? 彼女は金融業者の山杉(陣内孝則)の所で働く事務員ではないか。なぜここに? 混乱する萩崎をよそに、近づいてきたボーイに耳打ちされた絵津子は、エントランスに向かう。大事な客をお迎えに行くようだ。



 一方、「いらっしゃいませ」と萩崎のところへやって来ボーイ(薮宏太)こそ、ウキシマ電業の手形を関野からパクった「堀口」その人なのだが、至近距離で顔を見ていない萩崎には知る由もなかった。



 「御指名はございますか?」と訊ねられ、一瞬、絵津子の方に視線を走らせたものの、こういう店は馴れてないし、何を聞くか、心の準備も出来ていない萩崎としては、「いえ」と答えざるをえない。「承知しました」と堀口は下がり、やって来たのは別のホステス(小向なる)。



みゆき「いらっしゃいませ。みゆきです。よろしくお願いします」
萩 崎「よろしく」



みゆき「お客さん初めましてですよね」



萩 崎「ああ……ここ有名人がよく来るらしいね。場違いだったかな」


 と、そこで店の空気がちょっと変わる。先ほど姿が見えなくなった絵津子(泉里香)に付き添われ、代議士の岩尾(金田明夫)が登場、VIPルームに入って行く。ターゲットの登場に、ただでさえ絵津子の美しさに心引かれている浜崎の視線はもう釘付け。




みゆき「どうしたの?」



萩 崎「今の人……誰だっけ……確か政治家の……」



みゆき「岩尾先生? 御常連よ」



萩 崎「やっぱりすごい人が来るんだ。一緒に部屋に入った人、親しそうだったね」



みゆき「絵津子さんは先生のお気に入りですからね」



萩 崎「もしかして、愛人?」



みゆき「さあ、どうかな」



みゆき「ねえ、ひょっとしてマスコミの人?」



萩 崎「違う違う、そんなんじゃないよ」


 みゆきを演じている可愛いホステスは小向なる。以前フジテレビで深夜放送されたミュージカルドラマ『Play a Life』(2023年3月30日放送)に出演していた。地上波では関東でしか放送されなかったらしいが、たぶん今でもFODで視聴できる。



 上口耕平と平野綾が主演の夫婦で、脚本・演出が上田一豪っていう、ミュージカル的には豪華な顔ぶれのなかで、わりと重要な役に抜擢されていた。前に書いたけど、『パリピ孔明』みたいなドラマは、みんな知っている上白石萌歌ではなくて、こういう、歌も芝居もできる、まだそれほど知られていない才能を広くお披露目する機会にすれば、もっと面白かったと思うのだが。
 ついでの余談。『パリピ孔明』を観ていて、だいぶ昔、日本のスーパーヒーローものが好きなアメリカ人が「でも、日本のヒーローは強すぎるよね」と言っていたのを思いだした。



 たとえば『スパイ大作戦』……分かんなきゃ映画の『ミッション・インポッシブル』を思い浮かべてもらってもいいんだが……とか、アメリカの作品って、事前にあれだけ綿密なシナリオを立てて仕掛けを作っても、本番でかならず想定外のアクシデントが起ったり、チームが思わぬ失敗をして、ピンチに陥る。でも日本のドラマの場合、孔明が事前に打った手は、すべて狙いどおりピタリピタリと決まって、外さない。そこが観ていて快感でもあるのだが、欧米人にとっては「ぜんぶ計画どおりなのでスリルとサスペンスが足りない」という感想になるらしい。面白いね。



 『眼の壁』に戻ります。店の名前が「月世界」なので、バンドが「ムーンライト・セレナーデ」を奏でる。でもみゆきは歌わない。当たり前だ。フロアではチークダンスが始まる。



 赤いドレスの謎の女、絵津子しか眼に入らない萩先は、隣に座ったみゆきをほとんど無視。こういう店のことは知らないが、いくらなんでもこの態度は失礼ではないだろうか。



 と、薄暗いVIPルームに動きがあり、岩尾代議士はお帰りのようだ。もちろん絵津子もお見送りに立ち上がる。慌てて後を追う萩崎。



萩 崎「そろそろ帰るよ」



みゆき「ちょっと待って、チェックはここ!」


 ところが、すれ違いざまその腕を、思いのほか強い力で掴む男がいる。結局、岩尾の後を追おうとしていた萩崎は、そいつに無理やり押しとどめてられてしまった。



 しかし萩崎は男の顔に見覚えがない。何者か? 新キャラクター謎の男、田丸(加藤雅也)の登場である。っていうか、実は第1話からチラチラ出ていたが、このレビューでは紹介するヒマがなかった。



田 丸「おつき合いくださいよ、萩崎さん」
萩 崎「あなたは?」



田 丸「え、お忘れですか?」



萩 崎「どこかでお会いしましたか?」
田 丸「まあ、こんな平凡な顔ですから憶えていただけない」
萩 崎「すいません」



田 丸「岩尾先生に何か御用ですか?」
萩 崎「いや……」



田 丸「触らぬ神に祟りなしと言いますから」



田 丸「飲みましょう。私、田丸と言います」



萩 崎「触らぬ神って、どういう意味ですか?」



田 丸「いいからいいから、さあ行きましょう」


 てな感じで、謎の男、田丸の強引なリードで、再びお店のテーブルに押し戻されてしまった萩崎。一方、店の外では、岩尾のお見送り。



 絵津子になにやら耳打ちをしている岩尾。まあ、ただの親父ギャグかもしれないが。その傍らには「堀口」の姿も。



絵津子「ありがとうございました」



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萩 崎「田丸さん、でしたね。どこでお会いしたんでしょうか」



田 丸「それは、おいおいで良いじゃないですか。ねえ」
みゆき「はい」



田 丸「ね、あの美人のホステスさん、ほら、赤いドレス着た」



みゆき「絵津子さん」



田 丸「うん。呼んでくれる?」



田 丸「彼女が気になるようですね」




絵津子「御指名いただき、ありがとうございます。絵津子です」



田 丸「どうぞどうぞ」



絵津子「絵津子です。初めまして」



萩 崎「萩崎です」





絵津子「何か?」



萩 崎「いや……別に」



田 丸「美しさに見とれてしまいましたか?」




田 丸「あ、私はちょっと失礼。トイレへ」



みゆき「御案内します」



田 丸「うん」




 というわけで、岩尾を追う邪魔をしたかと思えば、わざとらしく席を外して、絵津子と二人きりで会話するチャンスをくれる謎の男、田丸。彼はいったい何者か。そして萩崎は絵津子に何をどう訊ねれば良いのだろうか。以下次回。