実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第934回】耐えられるか? 試練の地味回の巻(『眼の壁』その3)

泉里香オフィシャルカレンダー2024
12月19日発売(予約は締め切ったそうですが)


 先週に続き風邪ひき継続中。体調は戻りましたが、歳をとると咳とか喉の痛みがしつこく残って困ったな。



 さて、2022年WOWOW制作の連続ドラマ『松本清張 眼の壁』(全5話)どこまでいったか。1990年、バブル崩壊のせいか何かは知らないが、資金繰りが悪化したウキシマ電業製作所の経理部長、関野(甲本雅裕)は、急場をしのぐために、金融業者の山杉(陣内孝則)から持ちかけられた怪しげな話に乗ってしまう。Wikipediaによると「資金繰りが苦しく正規の融資を受けられない企業に融通手形を振り出させ、それを預かったまま行方をくらます」ことを手形のパクリと言うのだそうだ。まあ私にはよく分からない。セリフを読んでくれい。



川 上「手形の交換?」
関 野「はい。二億円の現金調達のために手形の交換を利用します」



篠 田「それが堀口という仲介者の提案なのか?」
関 野「はい、そうです」



川 上「詳しく説明してくれないか。本来、手形っていうのは、仕入れ先に支払うときに振り出すもんだろう。なぜそれが現金調達につながるんだ?」



関 野「確かに手形は支払いの際に振り出します。しかし、他者が発行した手形は、銀行に持ち込むことで現金に換えることができる、手形の割引というものがあります。今回はこれを利用します」



山 岡「ああ、つまり、わが社が発行した手形と他者が発行した手形を交換し、受けとった手形を銀行に持ち込むことで現金化する、ということだね、うん」



関 野「我が社が振り出した手形の金額が口座から引き落とされるのは60日後。つまり大口の入金の後ですので問題はありません」



篠 田「しかし、そんな話につきあってくれる会社があるかね?」



関 野「それも堀口氏が紹介してくれました。味王食品です」



川 上「味王食品って……大手じゃないか。よくそんな話に応じたな」



関 野「はい、実は味王食品の決算が近づいており、今期利益を計上したいというニーズがあるそうです」



関 野「我が社は二億円の手形を発行し、味王食品の一億九千万円の手形と交換します」



篠 田「味王食品は一千万円の利益を手にできるわけだ」



関 野「味王食品から受けとった手形を東京興業銀行に持ち込み、手形の割引で即日一億九千万円近くの現金に換えることができる」



山 岡「即日……そういうことは可能なのかね」



関 野「はい。堀口氏は東京興業銀行の大山利雄常務と懇意にしていて、通常七日から十日かかる手形割引を即日取り計らってもらうとのことです」



関 野「大山常務は、味王食品の手形であれば、信用もあるし、すぐに現金化することは可能だ、と仰っているそうです」



山 岡「二億円の手形を発行すれば、すぐに一億九千万近くの現金を調達できるということだな」



関 野「はい。堀口氏への手数料を含めて一千五百万円ほどの損失にはなりますが、現状ほかに選択肢はありません。さいわい不足分につきまして別口の短期融資を取りつけることができました」



篠 田「山岡常務、どう思われますか?」



山 岡「進めるべきではないでしょうか」



篠 田「社長、いかがでしょう?」



山 岡「分かった。すぐに決裁書を回してください」



関 野「ありがとうございます!」


 というわけで、いよいよ当日。段取りとしては、まず味王食品の経理部長と会って手形を確認して、それから一緒に東京興行銀行に持ち込む。ところが、待ち合わせたラウンジにいるのは仲介人の堀口(薮宏太 ex Hay Say Jump!)だけで、味王食品の経理部長がいない。



関 野「あの、味王食品の経理部長さんは、まだ……」



堀 口「それが、谷山部長は急用ができてしまい、来られなくなりました」



堀 口「でも御安心ください。手形は預かってきています。こちらになります、御確認ください」



関 野「あ……はい」



 この時点で、もう不安は募るが、後へは退けなくなっちゃった感じで、お互いの手形を確認する。次は東京興業銀行だ。



 行員の案内で堀口と関野は応接室に案内される。間もなく、勢いよく入って来たのが大山利雄常務取締役。



堀 口「大山常務、お忙しいところありがとうございます」



堀 口「お話申し上げたウキシマ電業製作所の関野部長です」



関 野「関野でございます。この度はたいへんな御無理をお聞きいただき、ありがとうございます」



大 山「いえ、どういたしまして。さっそく係に申し付けてきましょう」



関 野「はい」



大 山「堀口さん、後で来てください」



堀 口「よろしくお願いします」



関 野「お願いいたします」


 ほとんど顔もよく見せず、挨拶も早々にさっさと出ていってしまう「大山常務」。これまた怪しいですね。



関 野「あの……これだけでよろしかったんですか?」
堀 口「常務は個人的な利益をお考えかもしれませんので、余り大げさにしたくないのでしょう」



関 野「そういうことですか」
堀 口「関野さん、御社の手形をお願いします」
関 野「はい」



堀 口「これで手形の交換は成立しました。では先ほどご確認いただいたこちらの手形を、常務に現金にしていただきます」



堀 口「手続きして来ますのでお待ちください」
関 野「お願いします」



 ということで堀口も退場。関野は独り残されて、ゲームは終わった。待てど暮せど誰も戻ってこない。



 30分も待たされたあげく、応接室を飛び出した関野は出会った行員を捕まえてみる。



関 野「あ、すいません、ウキシマ電業製作所の関野と申しますが、大山常務はどちらにいらっしゃいますでしょうか」



行 員「大山でしたら二日前から北海道へ出張中ですが」



 堀口も、大山常務の名刺を持っていた男も、応接筆に案内した行員も偽物だった。味王食品の一億九千万円の手形も偽物だ。応接室はなぜ使えたのか。銀行側の話では、頭取と親しい国会議員の名刺を出して、ちょっとの間、商談に場所を貸してくれと言ってきた男がいたので、融通してやったということだ。
 関野は当然、堀口を紹介してくれた金融業者の山杉(陣内孝則)のところに怒鳴り込む。



関 野「あの男は詐欺師です。手形を持ち逃げしたんですよ。二億円の手形を!」
山 杉「そんな……何かの間違いじゃないですか?」



関 野「とにかく堀口を呼んでください!」
山 杉「おい、堀口さんに連絡とってくれ」



山 杉「もし彼が本当に手形を持ち逃げしたのなら、何とお詫びして良いのか……ただ私は、あなたがお困りのようだったので、お力になりたい一心だったんです」



関 野「嘘をつくな。あなたもあの男の仲間じゃないのか!」



山 杉「……おい、電話は」



事務員「つながりません。番号自体が使われていないようです」



関 野「ほかには、他に手がかりは? どこに住んでいるんだ?」



山 杉「いや、そこまでは」



関 野「そんなことも知らない相手を紹介したのか?」


 原作の関野は、このあと会社に戻り、顛末を報告して、社長に「責任を取れ」と言われ、湯河原に行って首を縊ってしまう。そりゃ責任を取れって言われたらそのくらいしかできないよね。でもさすがにドラマの関野はそんな無駄死にはしない。いったん引っ込むが、やはり山杉が怪しい。っていうか山杉しか手がかりがない。



 それで事務所の外で見張って、タクシーに乗って出て行く山杉の後をつけ、雑居ビルに入るところまで追跡してきた。



 公衆電話で会社に連絡すると、もう夜遅いのに、思ったとおり萩崎だけは関野を心配して待っていた。



 「部長、ひとまず戻ってください。篠田常務は部長が手形を持ち逃げしたと疑っているんですよ!」と呼びかける萩咲だが、関野としては、せめて奪われた手形を取り返すまで戻るつもりはない。



 と、山杉の入った雑居ビルから出てきた人影が。



関 野「堀口だ! 堀口が出てきた!」



萩 崎「山杉社長が入ったビルですか?」



関 野「そうだ。一人で出てきた。車が停まった。黒のセダンだ。ナンバーは品川、お、73-25だ……竜雄君済まない。また連絡する」



萩 崎「部長、待ってください!」



 そしてそれっきり関野は消息を絶った。



 翌日、顧問弁護士の瀬沼(山崎銀之丞)を呼んで役員会議が開かれ、会社の信用のためにこの件を警察沙汰にはしない方針が決まる。誰も関野の身を案じもしないどころか、篠田常務に至っては「騙されたのは関野個人であり、会社が騙されたのではない」とまで言いだす。憤懣やるかたない萩崎は、独自で動くことにする。



 まずは山杉商事だ。金の融通を頼み込む顧客のふりをして正面突破を試みたものの、門前払いをくらう。



 萩崎は仕方なく事務所のビルの前の喫茶店に張り込む。するとタクシーが停まり、そこへ山杉が、一人の女性と連れ立って出てくる。



 ドラマではここで上崎絵津子(泉里香)が再び萩崎竜雄の前に姿を見せるわけだが、原作では、さっきの山杉の事務所におしかけた場面で二人は邂逅している。



  ドアを開けて姿を見せたのは、上背のある若い女であった。黒い瞳が、最初にこちらの眼をひいた。瞳はまっすぐに竜夫の顔に線を引いたように当てられた。余分なものがすこしもない事務的な眼であった。



 青いツウピースが、体にきれいな線で密着していた。その姿勢が椅子に落ちつくと、さあ用事をうかがいましょうと督促するように竜雄を見た。



 竜雄は、上崎絵津子の容貌を観察した。黒目の勝った眼が大きい。細くとおった鼻筋と小さく引きしまった唇があった。頬から顎にかけた線にどこかおさなさの名残があり、そこだけが勝気な瞳や唇と融和しなかった。(松本清張『眼の壁』新潮文庫)


 「青のツウピース」で初登場である。いいですね。ということころで今回はここまで。しかし、私の頭が悪くて「手形のパクリ」ということを二、三行で説明できなかったばっかりに、今回はこのブログ史上、最も地味な、おっさんだらけの回になってしまったな。すまない。



 あまりにも花が無さ過ぎなので、少しニギヤカシの美女を紛れ込ませてみるか。最初は藤沢周平原作の映画『花のあと』より、甲本雅裕と北川景子(2010年、東映、中西健二監督)。





 続いてテレビ朝日『木曜ミステリー 出入禁止の女 〜事件記者クロガネ〜』第5話(2話連続放送の前半)より、甲本雅裕と沢井美優(2015年2月19日、監督:田崎竜太)。





 最後はテレビ東京『金曜8時のドラマ 三匹のおっさん3 〜正義の味方、みたび〜』最終話(第8話)より、甲本雅裕と小松彩夏(2017年3月10日放送、監督:猪原達三)。





 ……安座間との共演作が見当たらなかったな。本日はこんなところで。じゃ、これに懲りずにまた次回。