実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第932回】物語はまだ始まらないの巻(『眼の壁』その1)

窪寺 昭
2020年11月13日逝去



 さてそれでは今回からしばらく、昨年、2022年の6月から7月にかけて放送された泉里香主演の連続ドラマW『松本清張 眼の壁』(全5話)をレビューしてみたい。



 「ドラマW」というのはWOWOWが制作するオリジナルドラマのブランドである。ちなみに「ドラマW」に実写版セーラー戦士が出演したのは、2015年3月にオンエアされた第7回WOWOWシナリオ大賞受賞作品『十月十日の進化論』(脚本:栄え弥生)に小池里奈が出演していたのが最初だと思う。



 連続ドラマは2008年から始まっており、多くは原作つきの作品を、劇場公開映画とも地上波ドラマとも異なる、1話52分×全5回から全8回という尺で(一番近いのはNHKの土曜ドラマかな)丁寧にアレンジして映像化している。



 ただ、このブログでこれまで本格的にレビューしたのは、2016年10月に北川景子主演で放送された中山七里原作『ヒポクラテスの誓い』ぐらいですね。その後、2017年11月に放送された『石つぶて』第1話に小松彩夏がホステスの役で出ていたので、少しだけ取り上げてみた。



 安座間美優も2018年6月の『ダブル・ファンタジー』第1話、第2話に出演していて、これも少しだけ取り上げてみた。



 次に2021年の8・9月に『密告はうたう 警視庁監察ファイル』がオンエアされた。これは泉里香がヒロインで、しかも私の好きな家政夫のミタゾノさん(松岡昌宏)が主演だったので、しっかり鑑賞するつもりだった。



 だったのだが、ちょうど直前までテレビ東京でやっていた『高嶺のハナさん』(2022年6月~8月)が面白くて、繰り返し観ながら結局この年の年末まで延々レビューしてしまったために、機を逸してしまった。未だに観ていない。またそのうち。



 その次のWOWOW連続ドラマWは『雨に消えた向日葵』(2022年7月~8月)だった。沢井美優が出てきたので、これもチラ見程度に扱った。と、このように、WOWOWの連続ドラマWは実写版セーラー戦士と縁が深い。全員が出演している。



 ついでに言うと、現在かなり雑にレビューをやったりやらなかったりしている『ギフテッド』も、WOWOWと東海テレビの共同制作である。



 さて、松本清張の原作『眼の壁』は、1957年に雑誌連載され、翌年に光文社から刊行された。これは『点と線』の連載および刊行時期とほぼ並行していて、1960年にカッパ・ノベルスに入り大ベストセラーになったのも同じ時期である。映画化もだいたい一緒で、どちらの作品も雑誌連載中に映画化が決まり、翌1958年に『点と線』が東映から、『眼の壁』が松竹から、それぞれ公開された。



 『眼の壁』は主演が佐田啓二で監督が大庭秀雄という、『君の名は』のコンビで映画化されたが、その後、ながらく再映像化されないままであった。これは松本清張の代表作としては異例のことである。ふつう何度かテレビドラマ化されているものなのだ。


『眼の壁』(1958年松竹)佐田啓二・鳳八千代


 思いつくままに拾ってみても、『ゼロの焦点』(1959年)が2度の映画化と6度のドラマ化、『砂の器』(1961年)が1度の映画化と7度のドラマ化、そして『霧の旗』(1961年)が2度の映画化と9度のドラマ化、『球形の荒野』(1962年)が1度の映画化と8度のドラマ化、といった具合である。



 個人的には『霧の旗』の最初の映画化(1965年松竹、監督:山田洋次、主演:倍賞千恵子)と、2度目の映画化(1977年東宝、監督:西川克己、主演:山口百恵・三浦友和)がいまでも印象に残っている。2度目のときは『惑星大戦争』との2本立てだった。



 『シン・エヴァンゲリオン完結編』で、後半のミサトさん(の戦艦ヴンター)の登場シーンで『惑星大戦争』の音楽が使われたときにはちょっと笑った。こういうことがあるから庵野秀明を観てしまうのである。



 松本清張作品でいちばん最初にドラマ化されたのは短編『地方紙を買う女』(1957年)で、1959年に映画化された後も何度もドラマになり、9回もテレビドラマ化されている。



 なかでも円谷英二監修『恐怖劇場アンバランス』(1973年フジテレビ)の1篇として放送されたのを、いつだったか深夜の衛星放送で観たときは「えっ円谷プロで松本清張原作?」と驚いたものである。


井川比佐志・夏圭子・山本圭


 毎回独立したエピソードだけど、冒頭と末尾に同じストーリーテラーが出てきて、それが青島幸男。



 ひょっとして『奇妙な出来事』(1989年フジテレビ)の斉木しげるや『世にも奇妙な物語』(1990年フジテレビ)のタモリはこの流れを汲んでいるのか。とにかく異色のシリーズであった。



 このように、映像化された松本清張作品は、だいたい昭和30年代(1955年~1965年)に書かれたものが多いが、『黒革の手帖』だけは昭和55年(1980年)の作品である。7回ドラマ化され、うち6回はテレビ朝日で(残りの1回はTBS)、最新作となる2017年(2021年にはスペシャル版放送)の武井咲版には、沢井美優が出演した。



 そうだ。肝心の『黒い樹海』を忘れていた。原作が発表された1960年に大映で映画化、その後、NHK「松本清張シリーズ」(1962年)、テレビ朝日「土曜ワイド劇場」(1986年)、再びテレビ朝日「土曜ワイド劇場」(1997年)、フジテレビ「金曜エンタティメント」(2005年)と4度のドラマ化があった。



 菊川怜と豊原功補の2005年金曜エンタティメント版では、菊川怜がほとんど場面ごとに着替えて登場、ドラマの中で28の衣装替えがあったことで話題になった。



 そして2016年の『松本清張ドラマスペシャル 黒い樹海』(テレビ朝日)では、北川景子が『パラダイス・キス』(2011年)以来、パリピ孔明と5年ぶりの共演となった



 話が横に逸れてるね。ええと、このように松本清張作品は、『顔』(1957年松竹)や『張り込み』(1958年松竹)といった初期の代表的な映画化作品も含めて、繰り返し映像化されている。ところが『点と線』と『眼の壁』の2作品は、どちらも原作発表時に1度、映画化されて以来、ながらくリメイクの機会を得なかった。これは松本清張の代表作としては異例のことである。……って、ようやく話が元の流れに戻ってきた。



 でも『点と線』は2007年に、テレビ朝日開局50周年番組として、ビートたけし主演、前・後編の二部作形式でドラマ化された。東京駅のホームを始め、セットやデジタル処理によって再現された昭和30年代半ばの東京の光景が評判になった。



 そして残る『眼の壁』が2022年、WOWOWによって初めて連続ドラマ化された、とそういうことである。というわけで、はじまりはじまり。



 今回の時題設定は1990年。原作が出版された1958年から32年後で放送された2022年より32年前。ちょうど中間をとったということだ。バブルが崩壊し始めた1990年も、言われてみればだいぶ昔の話である。主人公の小泉孝太郎の学生時代からの親友で、いろいろ情報提供する記者の上地雄輔。新聞社のデスクは書類でごちゃごちゃで、タバコも吸い放題。



 前回『孤独のグルメ』の喫煙シーンがSeason4を境に消えた話をしたが、こういう場面は、もはや地上波のドラマでは普通に流すこともままならない。あとパソコンが見当たらない。私が分割払いでPC-9801VXを購入したのが確か1987年だったけど、1990年当時、まだ新聞社にはパソコンが普及していなかったのかな。



 おでんの屋台にピンク電話。原作からは30年ほど時代設定を遅らせたけれども、基本的にはレトロな昭和感を前面に押し出す路線と言えるだろう。



 さて冒頭。もう遅い時間だが、ウキシマ電業(原作では「昭和電業製作所」)では、経理課長の萩崎(小泉孝太郎が)が、暗い会社のオフィスで、上司の帰りを待っていた。

 ……と、うぉっと。もうこんな時間になっていたとは! じゃあ今回はここまで。ドラマのあらすじに一向に入ることが出来ず済まない。年寄りの長話はこういうもんだと思ってください。