実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第931回】遺影のプリンセスの巻(『ゼイチョー』第2話)


 世界で最も海賊版が出ているグループはビートルズではなかろうか。今回デジタル技術を駆使した「最後のビートルズの新曲」が発表されたが、これがヤブヘビとなって、これからAIが生成した「ビートルズの新曲」が続々とネットに出回るような気もする。なんにせよ、2023年にビートルズとローリング・ストーンズの新譜がどちらも聴けるなんて、ただただ驚くばかりである。



 さて、2023年10月28日、愛知県岡崎市で、普段は春に行なわれている家康公秋まつりの「家康行列」が開催された。NHK大河ドラマ『どうする家康』からは、茶々役の北川景子、本多忠勝役の山田裕貴、榊原康政役の杉野遥亮、井伊直政役の板垣李光人が特別参加として行列に加わった。



 みなさん馬に乗ったが、北川さんは妊婦さんということもあって輿に乗り、家康公に銃口を向けるシーンを再現、岡崎市民のハートを撃ち抜いた。



 丁度その頃、2023年10月25日から10月29日、東京の池袋PARCO本館B1で開催されていた502EASY POP UP STOREに、それ以外の戦士が集結した。このイベントでは、「期間中、お買い上げ金額税込み¥12,800以上で、お客さまのスマホにて502EASYブランドプロデューサー小松彩夏と2shot撮影」という特典があったそうで、私だったらそんなのより、このメンバーの写真を自分のスマホで撮らせてもらえるなら、10万円くらいなら購入しちゃう。



 さあそれでは本題。前回やり損ねた企画、沢井美優さんが出演している日本テレビのドラマ『ゼイチョー ~「払えない」にはワケが有る』をレビューしよう。



 原作は慎結『ゼイチョー!〜納税課第三収納係〜』という漫画で、2016年から2017年まで講談社の『BE LOVE』に連載されていた。『BE LOVE』ってどんな漫画雑誌かというと、今やっている菅野美穂主演の連続ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』が連載されていたという。これは観ていないな。あと末次由紀『ちはやふる』も、この雑誌の連載作品なんだって。


『ちはやふる』(2016年)広瀬すず


 私は『ちはやふる』は原作は読んでいなくて、劇場版実写映画しか観ていない。かるたに賭ける青春スポ根物語だったが、それ以外にも恋愛とか進路の悩みとか、なんか色々な要素がごちゃごちゃ入っていて、いまひとつスポ根らしいストレートさを味わいきれなかった。そしたらその年の末に『咲 -Saki-』の実写版がやって来た。


『咲 -Saki-』第1話(2016年)浜辺美波


 こちらはもう、登場人物みんながひたすら麻雀に打ち込む物語で、友情とか家族の確執とか、そのほかの要素もすべて、試合中の回想シーンとしてのみ処理され、すべての要素が麻雀卓のうえに収斂してゆく、雑味の残らない脚本の構造が見事であった。勝負の駆け引きを選手たちがモノローグで表現するのだが、セリフとセリフの間も計算されており、低予算ながら、とても格調を感じる仕上がりであった。こういうのは監督の指導の賜物ではなかろうか。


『咲 -Saki-』第1話(2016年)山田杏奈


 それと、久保ヒロミ『人は見た目が100パーセント』も『BE LOVE』連載作品らしい。安座間美優が出演していた。


『人は見た目が100パーセント』第5話(2017年)安座間美優


 そして現在連載中の作品になにがあるかというと、庄司陽子『生徒諸君!Kids』……って、『生徒諸君』?……私が中学生の頃に同じ講談社の『少女フレンド』で連載が始まった漫画だぞ。大学生の時に小泉今日子主演の劇場版を映画館に観に行ったな。


『生徒諸君!』(1984年)小泉今日子


 ちなみに、現在連載中の『生徒諸君!Kids』はナッキーの双子の子供達が主人公の漫画だそうである。また双子を産んだのか。そういう遺伝子か。という話をしていてはキリがない。すまない。あっ、それからこれも。


『私たちはどうかしている』第8話(2020年)浜辺美波


 これも『BE LOVE』に連載されていた漫画が原作だ。……いや本当にすまない。ええと、ドラマ『ゼイチョー ~「払えない」にはワケがある』だ。ゼイチョーとは「徴税吏員」のことで、税金を延滞している市民を訪問し、納税を促す。何度お願いしても納めてくれない時には、家財等の差し押さえもする。通帳を握りしめて逃げ出す人は捕まえる。ただやっぱり(タイトルどおり)税金を払えない人にはそれなりの理由があるわけで、そのへんの事情を汲んで、一緒によりよい解決策を模索することが本来の仕事である、ともいえる。ただの税金取り立て屋ではない。公務員ですからね。



 この物語は(たぶん東京近郊の)みゆき野市役所の徴税第三係に配された新人職員の百目鬼華子(山田杏奈)が、彼女の指導係で、一見チャラいけど芯の通ったベテラン、饗庭蒼一郎(菊池風磨)のもとで現場を学びながら、滞納者に寄り添える市民のための徴税吏員を目指す、という職業物のドラマである。



 第2話「滞納者はお嬢様同級生」(2023年10月21日、原作:槙結/脚本:三浦駿斗/照明:木幡和弘/撮影:宮本亘・山﨑聖史/監督:河合勇人/チーフプロデューサー:松本京子/制作:日テレ)。華子と饗庭(あいば)の二人が訪問する相手は、もう一年以上住民税を支払わず、滞納額が10万円を超えてしまったパチンコ店の店員、小沼真名美。演じているのは田辺桃子。『ゆるキャン△』の大垣でお馴染み、というか、当ブログ的には『リコカツ』の筑前煮女と言ったほうがいいのかな。



 今年もTBS火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』(2023年1月~3月)で筑前煮女の再来みたいな役を演じ、TBSの深夜枠「ドラマストリーム」の『スイートモラトリアム』(2023年5月~7月)では小西桜子とダブルヒロイン、日テレの金曜ドラマDEEP『癒やしのお隣さんには秘密がある』(2023年7月~9月)では主役、フジテレビ『いちばんすきな花』(2023年10月~)では仲野太賀の婚約者と、出演作品が途絶えることなく続いている。すごい。




 この『ゼイチョー』第2話では、前半はミニスカートから伸びる美脚もあらわなパチンコ店の制服姿、後半には就職面接みたいなスーツの山田杏奈とツーショットで、対照的なへそ出しルックを披露してくださっている。



 お昼休み。パチンコ店の裏でひっそり一服している真名美を訪問する饗庭と華子。しかし百目鬼(どうめき)という珍しい名字に反応する真名美。なんと二人は小学校の同級生だった。



華 子「小沼真名美様ですね」



華 子「みゆき野市役所の者です」



華 子「小沼様、昨年からの住民税とその延滞金132,800円分が未納となっております」



真名美「住民税?」



華 子「わたくし徴税第三係の百目鬼華子と申します」



真名美「百目鬼って……あんた転校生?」



華 子「はい」



饗 庭「え何、知り合い?」
華 子「小中学校の同級生です」
饗 庭「なんだそれ早く言ってよ」



真名美「へえ。今は税金の取り立てしてるんだ」



華 子「取り立てじゃなくて徴収です。滞納している住民税、納めてください」



真名美「……そういうこと?……」



華 子「えっ?」



真名美「住民税とか何とか言って、復讐に来たんでしょ」



華 子「私はただ納税のお願いに来ただけです」



真名美「普通そんなんで職場まで来る?」



華 子「お店の許可は取ってます」
饗 庭「お送りした文書でも『御自宅が留守の場合は職場までお伺いすることがあり得る』とお伝えしたはずです」



真名美「そんなの読んでない」



饗 庭「うそぉ。いや、それ言われちゃうとね、ね」



真名美「そもそも税金なんて払いたくないの」
華 子「払いたくない?」



真名美「知ってる? 毎月1日と、偶数月の15日って、税金で養われる奴らがパチンコ打ちに来るの」



饗 庭「1日は生活保護の受給日」
華 子「偶数月の15日は年金ですね」



真名美「私が税金を払っても、あいつらのパチンコ代に消えるだけ。そんなの馬鹿らしいと思わない?」



華 子「受給は権利です。納税は国民の義務であり相互扶助の」



真名美「変わってないね。そういう理屈っぽいところ」



真名美「あの頃の転校生ちゃんのまんま」


 それにしても近年のドラマは、こういう「仕事の合間に一服」のシーンでも、人物がタバコを吸っているカットそのものは映さないようになった。



『孤独のグルメ』第2シーズン第2話「神奈川県横浜市 日ノ出町のチートのしょうが炒めとパタン」(2013年7月17日初回放送)より。お店は日ノ出町の「第一亭」。十年前はまだ店内での喫煙シーンもあったのだ。なお井之頭五郎が喫煙していたのはシーズン4(2014年)までである。



真名美「とにかく私は払わない」



真名美「じゃ、仕事中なんで」



 取りつくシマもない。ひとまず引き上げる二人。
 帰路の車中、饗庭は華子に、真名美との関係を尋ねる。そこで華子は、すでに第1話で話した両親の離婚話、税金を滞納がちになって差し押さえを受けた話、その時の徴税吏員(市川由衣)の印象、母、麻子(沢井美優)が過労で還らぬ人となった話、の続きを語り始めるのだった。



饗 庭「経済状況に問題なしでの納税拒否か。家宅捜索に移るっつうのも手だけど……」



饗 庭「いやまあ、同級生だしなぁ。納得したうえで収めてもらいてえか」
華 子「私は、別に」
饗 庭「あそう」



饗 庭「つうかさ、あの『復讐』ってどういう意味?」



華 子「子供の頃、両親が離婚した話はしましたよね」



饗 庭「ああ、百目鬼さんのお母さんと相楽の父親の話?」



華 子「はい。それまで手に職がなかったこともあって、母はなかなか仕事がみつかりませんでした。それで急に生活が苦しくなったんです」
饗 庭「……おう……」



華 子「母は税金を滞納するようになって、家宅捜索されて」



華 子「動産差し押さえを受けることになりました」



詩 織「それではこれより、国税徴収法第142条に基づく捜索を開始します」



麻 子「貧乏人から金取ってどうすんのよ」




麻 子「ちょっと……ちょ、ちょっと!」



╳    ╳    ╳



麻 子「お母さん、何にも無くなっちゃった」



華 子「……母は元の生活を取り戻そうとしたんですが」



麻 子「帰るよ」
酔 客「帰らない」



麻 子「じゃはい、せえの、はい」



酔 客「今日は帰らないっつってんだろ」
麻 子「おしまいなの、はいはいはい、ほらほら、立って立って」



華 子「無理がたたって、私が十歳の時に」



華 子「それで私は、父方の祖父母に引き取られることになって、小学校を転校したんです」



饗 庭「あ、そこにいたのが小沼さんね」



華 子「彼女のお父さんは建設会社を経営していました。私とは違って裕福な家庭で育っていて」



華 子「返して!」



真名美「転校生ちゃん家、貧乏なんだって」



真名美「かわいそ~う」



真名美「見て。靴ぼろぼろ」



同級生「汚なぁ」



真名美「……捨てといてあげるね……」





華 子「だからといって公私混同しません」
饗 庭「え?」



華 子「ずいぶん昔のことですから……公平公正、相手が同級生でも滞納を許すわけにはいきません」



饗 庭「よし分かった。じゃあこの件は百目鬼ちゃんメインで」



饗 庭「それにしてもさ、よく捜索受けたのに、徴税吏員になろうと思ったね」



華 子「祖父母の家に行った後、助けてくれた方がいたんです」



詩 織「華子ちゃん、顔上げて」



詩 織「下ばかり見ていたら、もったいないよ」



華 子「その女性の徴税吏員の方が私の目標です」


 家財が差し押さえにあう回送シーンは第1話にも出てきたけど、そのときの徴税吏員、羽生詩織(市川由衣)が、小学生の華子(子役:小井圡菫玲)を励ましに来てくれて、それが、彼女自身も徴税吏員になるきっかけとなった。という重要な場面なので、また回想シーンが出てきて、沢井さんも出てくるかも知れない。期待しましょう。



 というわけで、このあともう一度、休日に真名美に会いに行った華子は、真名美の靴の汚れを見て、口では「払いたくない」と強がっているけど、本当はやっぱり「払えない」のではないかと考えるようになる。



 そして、実は同級生だった当時から、真名美(子役:金子莉彩)の父親の建築会社は経営不振でほどなく倒産し、両親(山本東・早瀬マミ)が離婚して、父親が彼女の前から姿を消してしまっていた、という事実を知る。



 パチンコ客のオヤジ(ベンガル)たちに対する真名美の冷たい態度は、文無しになって自分を捨てていった父親を、彼らに重ねているからではないか。彼女のために華子がやってあげられることはあるか。



 というふうに話は続くが、沢井さんはもう出てこないので今回はこのくらいで。ちなみに、華子の職場「みゆきの市役所納税課徴税第三係」には『高嶺のハナさん』のチャラ田(猪塚健太)も何気に混ざり込んでいる。公務員なので、さすがに髪は黒く染め直しているが。



 あと真名美が同棲している彼氏はボックス・コーポレーションの戸塚純貴くん。現在は失職中で、真名美に苦労をかけまいと毎日ハローワーク通い、というフリをしているが、戸塚純貴がそんな誠実な彼氏の役をやるわけがない(笑)。



 登場したときから、実は彼は田辺桃子にたかっているヒモ、というオチであることは、大抵の視聴者にミエミエである。というわけで、また次回。



 次回から連続ドラマW『松本清張 眼の壁』(全5話)レビューを始めます(予定)。