実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第928回】さらに迷走する秋時雨の夜の巻


 『正直不動産』スペシャルドラマはお正月、2024年1月3日オンエア、そして第2シーズン全10話の放送も1月9日からに決定した。NHKの発表したキャスト表を見ると、山下智久/福原遥/市原隼人/泉里香/松本若菜/長谷川忍……、よしよし、それでよし。脚本は前作同様根本ノンジ。



 その根本ノンジが現在手がけているドラマ『パリピ孔明』を配信で観た。私は三国志にはさっぱり無知なのだが、『M14の追憶』ほか賞賛する方が多かったので視聴した。



 いや面白かった。『パラダイス・キス』(2011年)で北川景子と実にいやらしい濃厚キスを交わした向井理を、一生許さないつもりだった私が、これに免じて許そうと思ってしまったくらい面白かった。ディーン・フジオカの中国語ナレーションも、たぶん日本ではめったに聞けないレアものだ。



 ただ、少々残念だったのが、ヒロインの英子を演じた上白石萌歌。第7回東宝シンデレラオーディション(2011年)グランプリ。もともと歌がうまくて、すでにミュージカルの舞台経験もあり、adieuという別名義でCDも出して、ライブ活動も行っている。私も、姉さんの萌音ともども、けっこうヘビーローテーションで聴いている。



 『パリピ孔明』の冒頭で、本当は私は、諸葛孔明と一緒に、初めて聴く英子の歌に心が持っていかれるほどの感動を得たかった。



 でもそれは通勤中や在宅ワーク中に聴いている上白石萌歌の歌声以外の何ものでもなかった。第1話のいちばん大事なつかみだっただけに惜しまれた。


adieu(上白石萌歌)First Live 2021年8月25日ZeppDiverCity


 それに上白石萌歌の歌声って、このドラマの役にはちょっと上品すぎないだろうか。だからさあ、私はだいぶ前から、上白石姉妹は、とにかくインファント島の小さな双美人をやらなければいけないと主張していたわけだよ。東宝シンデレラは東宝のドル箱であるゴジラ映画と切っても切れない間柄である。そしてモスラとも。



 みなさん御存知とは思うが、ここで歴代の東宝シンデレラをおさらいしておこう。1984年第1回大会グランプリの沢口靖子は、同年の『ゴジラ』と1989年の『ゴジラVSビオランテ』でヒロインを演じた。



 1987年第2回大会グランプリの小高恵美は『ゴジラVSビオランテ』(1989年)から『ゴジラVSデストロイア』(1995年)まで6作連続で、ゴジラの心が読める超能力少女・三枝未希を演じた。



 また、このとき審査員特別賞だった水野真紀は、だいぶ後になるが『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)でエロい女性キャスター役で出演した。



 1991年第3回大会グランプリの今村恵子と審査員特別賞の大沢さやかは、ふたりそろって翌1992年の『ゴジラVSモスラ』(1992)にインファント島の小美人「コスモス」役で出演した。



 1996年第4回大会グランプリの野波麻帆は翌年1997年の『モスラ2 海底の大決戦』で映画初出演した……あ、これはゴジラ映画じゃないか、まあいいや。



 そして審査員特別賞の田中美里は数年後、『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(2000年)で自衛隊の対ゴジラ特殊部隊員役で主演する。いや主演はゴジラか。



 2000年第5回グランプリの長澤まさみと審査員特別賞の大塚千弘は、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)と『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)の2作で、43年前に日本にやってきた小美人(ザ・ピーナッツ)の末裔、マナ(長澤まさみ)とヒオ(大塚ちひろ)という設定で出演した。



 しかしこの後、国産ゴジラシリーズは『シン・ゴジラ』(2016年)まで長いブランクに入る。その間に開催された2006年第6回大会グランプリの黒瀬真奈美、審査員特別賞の増元裕子・池澤あやかはゴジラ映画に出ることもなく、みんなわりと早いうちに俳優業を引退してしまった。



 で、その次の2011年第7回大会は東宝シンデレラ史上最大となる8名の受賞者を出した。グランプリが最初に書いたとおり上白石萌歌。当時10歳。小学5年生。



 審査員特別賞が2歳上の姉、上白石萌音と秋月成美、松島純菜、山崎紘菜。初めて設けられたニュージェネレーション賞に小川涼と浜辺美波。



 ところで秋月成美と松島純菜ってその後どうなっちゃったんだ?たしかオーディションの3年後に受賞者みんなで写真集を出したときには、一緒にいたはずだが。



 で、その後、国内ではゴジラの歴史としては初めてとなる原案・脚本:虚淵玄の劇場版アニメ映画『GODZILLA』3部作(2017年–2018年)や、原案・脚本:円城塔のテレビアニメ『ゴジラS.P.<シンギュラポイント>』(2021年)なんかがあったけど、東宝シンデレラとの絡みは、2016年の第8回東宝シンデレラオーディションで、初代「アーティスト賞」を受賞したXAIが劇場版アニメ3部作のテーマ曲を歌った程度だった。



 さて『シン・ゴジラ』以来7年ぶりの東宝実写版ゴジラ新作『ゴジラ -1.0』(2023年)がやって来る。主演は神木隆之介と浜辺美波。現実世界では2019年の『屍人荘の殺人』で共演しているふたりだが、私の脳内の正しい歴史では、2019年にそんな映画は撮られておらず、ほんとうは2019年にはこのコンビが『シン・ゴジラ対モスラ』で共演しているはずだ。



 ちなみに沢口靖子は1984年に第1回東宝シンデレラグランプリ、同年『ゴジラ』、翌1984年にNHK連続テレビ小説『澪つくし』主演、で1999年に東映で科捜研の女シリーズがスタートしている。これが正しい。田中美里は1997年にNHK連続テレビ小説『あぐり』に出てから2000年に『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』に出ている。これは間違い。浜辺美波のように、東映の仮面ライダーでヒロインをやってNHK連続テレビ小説に出てから最後に『ゴジラ』というのは大間違い。



 しかしそれ以上に大問題なのは、とうとう『ゴジラ -1.0』にも出ていない(らしい)うえ、『パリピ孔明』で歌っている上白石萌歌だ。上白石姉妹が初めて共演した映画『羊と鋼の森』が公開されたのは2018年、妹の萌歌がadieu名義で最初のミニアルバムを出して本格的に歌手活動を始めたのが2019年。このあたりも現実の歴史のほうが間違っていて、私の脳内歴史が正しい。しつこいようだが本当は『シン・ゴジラ対モスラ』が制作されて、上白石姉妹は小美人の名義で「モスラの歌」を歌っていなければならなかった。



 歌手としての活動は、CDの枚数、テレビ出演、ライブ本数どれも、妹の萌歌よりも萌音のほうが活発であるが、まあとにかくこの姉妹、お母さんは音楽の先生だそうだが、ピッチは外さない、声は安定していて上品、癒し系、そして当然ながら声質がよく似ていて、インファント島からやってきた小美人にうってつけだと思う。あえて難を言えば10cmほどある身長差(姉の萌音が152cm、妹の萌歌が163cm)だ。ちなみにこれまで最も身長差のあった小美人は、たぶん『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』と『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)のマナ(長澤まさみ)とヒオ(大塚ちひろ)だ。



 長澤まさみは身長169cm、大塚千弘は162cmで7cm差。まあ映像作品だし、そもそも特撮で小さくするので、そのへんの塩梅はなんとでもなるだろう。私から言えば、東宝がなぜ東宝シンデレラ出身、東宝芸能所属、歌が上手くて姉妹だけに声質もピッタリのこの二人に「モスラの歌」を歌わせるためにモスラ映画を作ろうとしなかったのか、そのほうが不可解である。



 一方、この際だから『パリピ孔明』にも苦言を呈しておこう。私は原作もアニメも観ていないけど、この物語を映像化する時のキモは、やはり英子が最初に歌う場面でいかに視聴者の心を掴むか、にかかっていると思う。そういう意味で上白石萌歌なんて、すでにメジャーリーグで投げている選手を連れてきてはダメである。視聴者も「誰この子?」と思って、しかし歌いだすと「何この子うまいじゃん!」となって、孔明と気持ちがシンクロするような、ほとんど名前を知られていないような人を探してこなくちゃね。



 それは難しいことではない。ちょっと前にBiSHがブレイクしてアイナ・ジ・エンドの歌唱が話題になったけれども、そういう才能はまだいる。現在、国内の女性アイドル市場は秋元関連団体の一党支配で、外来のK-POP系やそれに影響されたダンス・アンド・ボーカル・グループがイノベーションを試みているが、そこそこの事務所に所属するアイドルグループで、ルックスもちゃんとしていて、歌で勝負したいのに、トレンドに乗れず、くすぶっている美少女アイドルというのは、別に地下アイドルまで探しに行かなくても、ざらにいる。『パリピ孔明』の実写版を制作するので、英子役オーディションやります、なんてことになったら、絶対いい子が見つかるはずである



 最近ブレイク中の元ゆるめるモ!あのも、今は「あのちゃん意外と歌うまい」みたいな感じで話題になっているし、すでに『咲 -Saki-』(2017年)や『血まみれスケバンチェーンソーRED』(2019年)で、実は芝居もなかなかできるところを見せている。(どっちの作品でも浅川梨奈と対決している。)そういう潜在的なブレイク力を持った才能はまだまだいるのだ。たぶんスタッフも、できれば世間に知られざる才能を自分たちで見つけてきて、孔明だけでなく視聴者もビックリさせ、ドラマと同時進行でその子をCDデビューさせて売りだしてゆく、なんてこともやってみたい、と思っていたに違いない。でもきっと、上がそういう冒険を認めてくれないのでしょうね。やっぱり上白石萌歌じゃないとスポンサーはつきにくい。そのへんが今のテレビドラマの限界かな。



 そういうふうに考えると、仮面ライダーやスーパー戦隊というお手本に倣ったとはいえ、ほとんどドラマ初出演の少女たちを選んで制作された実写版セーラームーンって、やっぱり凄い番組だったんだなと思う。(まあ全員中学2年生という設定ではそれ以外にやりようがなかったとも言えるが。)……という話を枕に、久しぶりに実写版DVDレビューを始めようと思ったのだが、予感していたように、やっぱり本題に入れなかった。今回はとうとうセーラームーンに関する話題もないまま、これにて終了。すみません。


へば!