実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第901回】物語はまだ終わらないの巻(『女神の教室』第10話)


 日本アカデミー賞、というか岸井ゆきのさんのほうに気をとられて、本場の米国アカデミー賞はノーマークだったよ。2023年、第95回アカデミー賞はインディーズ系のA24が制作した「中華系移民のSF家族劇」『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞の7冠を独占した。そんなことになっているとは知らず、たまげた。



 思い起こせば、1987年の『ラスト・エンペラー』は第60回アカデミー賞で9部門(作品賞、監督賞、撮影賞、脚色賞、編集賞、録音賞、衣裳デザイン賞、美術賞、作曲賞)にノミネートされ、その全てで最優秀賞を受賞した。日本では坂本龍一の作曲賞が話題になった。ところが主演のジョン・ローンも相手役のジョアン・チェンも、ノミネートすらされなかった。



 2000年の『グリーン・ディスティニー』は、第73回アカデミー賞の10部門にノミネート(監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞、歌曲賞、外国語映画賞)され、4部門を受賞(撮影賞・美術賞・作曲賞・外国語映画賞)したが、主演のチョウ・ユンファもミシェール・ヨーもチャン・ツイィーも、やはりノミネートすらされなかった。



 その翌年、第74回アカデミー賞主演女優賞では、『チョコレート』のハル・ベリーがアフロ系アフリカ人、もしくは非白人として初めての主演女優賞に輝いた。そして翌年公開されたジェームズ・ボンド映画20作目『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002年)では、初めてメインのボンドガールに黒人の女性が起用されたということでおおいに話題になった。



 でも有色人種ということで言えば、本当はすでに第18作目の『トゥモロー・ネバー・ダイ』で(1997年)に、ミシェール・ヨーがボンドガールになっていた。アクション担当の中国のスパイだけど、ボンドと協力して、ラストシーンではボンドと結ばれるのだから立派なボンドガール。だが英米ではハル・ベリーのような話題にならなかった。



 いや長くなった。それ以降は、『ラスト・サムライ』(2003年)の渡辺謙が第76回助演男優賞ノミネート、『バベル』(2007年)の菊地凛子が第79回助演女優賞にノミネート、そんなもんだったかな。ともかく、ハリウッドを中心とする西洋の映画界では、黒人(アフロ系)俳優を取り巻く状況は少しずつ変わってきているが、アジア人に関してはぜんぜん動かんなあ、というのが私の感想で、最近はアカデミー賞にも関心を失っていたので、今回の『エブエブ』の嵐、特に助演男優賞(キー・ホイ・クァン)と主演女優賞(ミシェール・ヨー)は本当に快挙だと思う。



 キー・ホイ・クァン(關繼威)はベトナム生まれの中国系アメリカ人。子役出身だそうだが、長らくスタッフ側の仕事に回っていて、この作品が久々の俳優復帰だという。ミシェール・ヨー(楊紫瓊)は、言わずと知れたマレーシア出身の世界一のアクション女優。さっきも話題にしたし、話し出すとキリがないからもういいや。どうでもいいがジョディ・フォスターと同い年。同世代として、私もまだもう少しがんばろう。(関係ない。)彼女の受賞スピーチは、あちこち解説しないとわかんない発言内容があるけれど、それは長くなるので措く。とりあえずどんなことを言ったかだけ採録しておくね。



「ありがとう。私みたいに小さな少年少女、見ていますか? これはみなさんの希望の証、夢はかなうっていう証よ。女性のみなさん、誰にも『あなた歳を取り過ぎましたね』なんて言わせてはだめ。あきらめないで!」(拍手)



「ダニエルズ、A24、素晴らしいキャストとクルー、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に関わった全ての方がいなければ、今日私はここに立てませんでした。この受賞を私の母、そして世界中のお母さんたちに捧げます。なぜなら彼女たちこそスーパーヒーローだからです。彼女たちがいなければ、今夜ここにいるみんな、存在しなかったでしょう」



「私の母は84歳です。このトロフィーは、母のもとに持って帰ります。たぶん今、家族や友人と一緒にマレーシアで中継を観ています。愛してるよ、これをみんなのところに持って帰るね! そして私のキャリアの原点である香港の拡大家族にも……私を大切にしてくれて、私を助けてくれてありがとう。みんなのおかげで私は今日ここにいます。そして私の名付け子たち、兄弟姉妹、家族みんなに。ありがとう。ありがとう。ありがとうアカデミー。歴史が動いたよ!ありがとう!」


 彼女がデビュー間もない香港時代、ミシェール・キング名義で撮った『皇家戦士』(1986年、香港、D&B)は真田広之との共演作品だけど、真田広之もアクションから出発して国際的に活躍している。いつか海外の非アクション大作で再会すればいいなあ。



 マクラが長くなってすまない。本題。なんかいつもほぼ一周遅れで、しかもいつも間違った答案の答え合わせに付き合わせているみたいで恐縮ですが、『女神の教室』第10話レビューです(2023年3月13日/制作:フジテレビ/脚本:大北はるか/照明:藤本潤一/撮影:長谷川諭/監督:澤田鎌作/プロデューサー:野田悠介)。



 私が先週予想した第10話は、ん~と、学生たちが自主的に女子高生暴行事件の情報収集を始め、その結果、新証言が得られて、いったん無罪となっていた塾講師の松下(渡部秀)は逆転有罪となる。その功績もあって、柊木先生は学校を去り、再び裁判官として現場に戻る、クライマックスは最後の授業、という感じの内容だった。これは次回予告に「それでは最後の授業を始めます」という笑顔の柊木先生のカットがあったからなんだけど、コメント欄でM14さんから、卒業前の最後の授業という意味ではないか、という指摘がありまして、言われてみればそのとおりだなあ、と。



 このドラマは第1話、東京地方裁判局の「効率が悪すぎる」判事だった柊木雫(北川景子)が、所長の砂川篤史(信太昌之)から、令和4年(2022年)9月付けで青南大学法科大学院の派遣教員に任命されるところから始まる。日付はリアルタイムで、登場人物が誰もマスクをつけていない点だけが非現実的だが、これは仕方がない。そして雫の教え子となるメインの学生たちは、みんな2年生だった。で、法科大学院の修業年限は3年間。つまりドラマが終わる2023年3月には、学生たちは最終学年(3年生)に進学し、新米教師の柊木雫は新米教師として飛び込んだ最初の半期を終える。



 なんか非常に中途半端。これでエンディングというわけにはいかないから、柊木先生は半年という短い間、学生や同僚に多くのものを残して、再びまた法廷に戻って行く、という終わり方になるんだろうな。私はそう早合点していた。



 第3話の最後に藍井ゼミ選抜テストの実施が、例年より大きく前倒しになって、2022年11月28日(月)に実施されることがわかる。なぜかというと、2023年からは、在学中であっても所定の単位を修得し、1年以内に修了見込みの者は司法試験が受験できるようになるから、在学中に受験するなら、対策も早めに立てなければならない。



 そして第5話、2022年12月9日(金)に、藍井ゼミ選抜メンバーが発表になる。選ばれたのは沼田(マンマーレ松口)、照井(南沙良)、矢崎(葉月ひとみ)、左右田(橘優輝)、そして天野(河村花)。今回は在学中に司法試験を受験する前提で、メンバーは精鋭中の精鋭5名に絞られ、真中(高橋文哉)はゼミに落ちる。



 それでまあいろいろあるが、第6話のラストには、みんなで仲良く司法試験合格祈願の初詣で。 これで2023年のお正月。
 第7話。なんとか藍井ゼミに入ったは良いが、その後の成績が奮わない照井さん。辛いときは吐き出しちゃいなよ、という仲間の励ましに初めて、睡眠時間も削りに削って限界に達している苦悩を告白する



雪 乃「あきらめたくない。司法試験まであと六ヶ月」



雪 乃「それまではどうにか頑張ってみる」



 やはり在学受験を目ざしていたのである。初の在学生受験は、現実世界ではまだ実施されていない。法務省から発表されている2023年の司法試験スケジュールによれば、試験日は今年の7月12日~7月16日。ということはこの時点でドラマは2023年の1月半ばである。ここまでは(私にとって)それほど驚く展開ではなかった。



 ところがここからあと5分くらいで、いっきに司法試験の当日まで話が飛ぶのである。みんな夏服だし、藍井先生(山田裕貴)はアイスを食っている。桐谷が試験開始直前に照井さんに激励のメッセージを送るが、スマホの画面も2023年7月12日(水)である。
 このドラマはリアルタイムの2023年春で終わるのではなく、さらに未来に進んで行くのだ。



 第8話は合格発表。藍井ゼミ5名のうち、沼田(マンマーレ松口)、矢崎(葉月ひとみ)、左右田(橘優輝)の三人が合格したが、照井(南沙良)は残念ながら不合格。向日葵(河村花)は在学受験をしなかったので、照井さんだけが落ちたということだ。これはきつい。



 ということはともかく、今年の司法試験の合格発表は2023年11月8日(水)に予定されていて、ドラマもちゃんとその日付に合わせてある。つまり柊木先生が青南法科大学院で実務演習をやるようになって、早くも1年2ヶ月が過ぎている。


 
 なので藍井先生も、もう実技演習の時間に本を読むふりをするのもやめて、真面目に学生たちの議論を聞いている。ちょっと可愛い。



 このとき、藍井先生は司法試験専門の加藤予備校からスカウトを受けていて、結局その誘いを断る。で、もう要らないから捨てようとしたその加藤予備校の今年度パンフに載せられた「在校生の言葉」のなかに、飛び降り死した津山邦彦の名前を見出す。



 クロウこと津山邦彦は、法に触れない範囲で雫にいやがらせを続けるために、法律を学んでいたのである。そして加藤予備校に問い合わせをすると、亡くなる直前に、次期受講申し込みを済ませていたことが明らかになる。ここから藍井先生は、津山は本当は自殺ではなかったのではないか、という疑惑をいだく。



 津山の死は第6話のラスト、初詣でやら新年会の後だったから2023年1月。およそ10ヶ月が経って、疑惑が発覚した。
 で、第10話の始めのほうでは、藍井先生が刺されて、事の成り行きを心配する学生たち、桐谷くん(前田旺志郎)、真中くん(高橋文哉)、向日葵ちゃん(河村花)、照井さん(南沙良)、水沢くん(前田拳太郎)が柊木先生を囲む。珍しく歯切れの悪い柊木先生。このときすでに、藍井が刺された真相を(したがって津山の「自殺」の真相を)つかんでいて、藍井先生が刺されたのも自分のせいだと、内心はとても乱れているのだ。



桐 谷「柊木先生」



真 中「藍井先生のことニュースで見ました」



向日葵「風見さんが藍井先生を刺したって。何があったんですか」



 雫 「いま詳しいことは警察が調べてくれているから、みんなは心配しなくて大丈夫」



真 中「でも」



 雫 「藍井先生は、幸い命に別状はないみたいだから」



 雫 「みんなはとにかく期末テストに集中して欲しい。単位が取れずに卒業できなかったら、元も子もないでしょ」



雪 乃「この状況で勉強しろって言うんですか?」
水 沢「藍井先生は本当に大丈夫なんですか?」



 雫 「ごめん、私このあと講義があるからもう行かないと。みんなは勉強頑張ってね」


 期末テストなので、すでに年は明けている。つまり第10話は2024年の1月下旬から始まる話である。青南法科大学院の学生たちが、塾講師の松下に脅されていた女子高生を説得し、松下を法で裁くだけの証拠を用意する。



 そして黙秘を貫こうとする風見刑事に訴え、その頑なな心を開いて、自供を促すという話。それはすべて学生たちが自分で考え話し合って決めて行動したことで、柊木先生の指図ではない。ただ、照井さんが苦しむ女子高生の気持ちに寄り添った態度も、向日葵ちゃんが風見刑事に語ったことばのひとつひとつも、すべて柊木先生から学んだものであった。



雪 乃「苦しかったら、何も言わなくていいから」



雪 乃「憶えておいて。あなたは何も悪くない。絶対に」



雪 乃「苦しい思いをしなくちゃいけないのは、あなたじゃない。加害者なの」


╳    ╳    ╳



向日葵「目の前に困っている人がいたら、とことん話を聞いて、その人のことを必死に考えて、助けられる方法を探す」



向日葵「私たちが青南ロースクールで学んできたことです」



 良い子たちですね。ここで、私が前回勘違いした「最後の授業」がある。大学の最後の授業だから、1月の終わり頃か。そしてラストは卒業式。2024年3月。来年のちょうどいまごろ。後半は予想外すぎる展開で畳みかけてくるよね。



 で、これで終わりかと思ったら、本当にエピローグがあった。しかも1話分。第10話で終わりではなくて、第11話があったのだ。もう次回は、サスペンス劇場になったり、近未来予測SFになったり、大変だ。



 で、予告編を見ると、再チャレンジの照井さんを含め、みんな令和6年(2024年)の司法試験をクリアして、実際に新米法律家として活躍を始めているようだ。ということは、最終回の舞台は2025年の春ごろかな。2025年といえば超高齢化社会のひとつの節目だ。いわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上になって、総人口の18%を占める。高齢者の独り暮らしが、総世帯数の約4割に達するそうだ。
 それとは関係ないだろうが、せっかく念願がかなったわりには、みんな表情が冴えない。






 まあそれはそうだ。柊木先生の薫陶をいっぱいに受けた法律家の卵たちだ。現場のエリートたちから見れば、みんなまぐれで司法試験を通ったような、そのくせ仕事が真面目で丁寧すぎて、非効率的な新人である。向日葵ちゃんなんか、お父さんとも色々ありそうだし。理想と現実の間には、思っていたよりも遙かに大きなギャップがあるはずだ。



 そして桐谷君。桐谷君(前田旺志郎)はやっぱり、一発で司法試験を通過するのは無理だよね。一発どころか、再チャレンジでも。
 第1話を思い出して欲しい。このドラマは令和4年司法試験の結果発表があった2022年9月6日から始まっている。卒業生の田辺先輩(田村健太郎)が、やっぱり不合格だった厳しい現実を見て、立ちつくす桐谷純平。自分の未来の姿を見ている。





 そしてそんな二人の姿を、切なげに見守る柊木雫。いずれその一人が自分の教え子になるとは、まだ思いも寄らない。



 このときは彼女もまた、志半ばで夢破れた挫折者である。 この日、雫は東京地方裁判所の砂川所長(信太昌之)から、思わぬ辞令を渡されたのだ。



砂 川「柊木雫、青南大学法科大学院、派遣教員としての勤務を命ずる」



 雫 「ロースクールの教員を兼務しろと?」



砂 川「いや、専任で」



 あこがれの判事になれたのに、上から疎んじられて職を追われた。裁判に時間がかかり過ぎ。当たり前の判決を言うのに、被告人に40分も語りかけるという効率の悪さ。加えて青南ロースクール出身という毛並みの悪さ。それで裁判所から追放された。せっかく司法試験に合格できたのに。柊木先生は、決して自ら望んで教師になったわけではないんですよね。



 そしていま、最初に送り出した卒業生たちが、ある者は司法試験に落ちて挫折し、ある者は組織に属することで挫折し、夢をあきらめかけている



桐 谷「店長、このまま俺を雇ってもらえませんかね」


╳    ╳    ╳



雪 乃「なんでも自分の意志で出来ていた学生のころとは違うの!」


 かれらの気持ちに再び光を灯せるのは、自分自身、挫折から始まって、かれらの教師となり、未来の法律家を育てるという新しい夢を見つけた柊木先生しかいません。守宮学院長(及川光博)は、もちろんそこまでお見通しである。



守 宮「柊木先生、あなたの出番です」



 ラストシーンは、仲間に見守られながら、司法試験2度目のチャレンジの結果を見る桐谷。現実的には難しいが、ここはファンタジーで、めでたく合格で最終回を終わらせてやって欲しい。頼む。



 ドラマなんだから、どうか合格で。けっこうハラハラドキドキですよね。てことで、今回はこれまで。いやぁ、次で本当に最終回なんだろうな(笑)。