実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第900回】ヘタレ探偵藍井ピンチの巻(『女神の教室』最終回目前)

1. 「まだ出会う前の誰かのために生きることができる」



 岸井ゆきのさん 日本アカデミー賞最優秀主演女優賞おめでとうございます。(拍手)
 いやもう授賞式なんか軽く無視して、わざとWBCかなんかを観ていてやろうと思っていたが、だんだん居ても立ってもいられなくなって、結果的にはこれまでの人生でも、かなり力を込めて見入った日本アカデミー賞となった。関係者のみなさまには、このブログの【第895回】で、どうせ岸井さんにはくれないだろうとか、いろいろ書いたことをお詫びしたい。すみません。



 受賞スピーチも素敵でした。ただ、テレビでは途中が編集されていたし、ネットの記事を一巡してみたが、震える声で語り出した彼女のことばをそのまま全文採録した記事にはお目にかかれなかった。以下、私がテレビ中継を聞きながら文字起こししたものに、各記事から拾った内容を補った(たぶん)完全版を載せておく。



岸 井「(呼吸を鎮めながら)ありがとうございます。いや……身に余る賞を、ありがとうございます。本当に、三宅組の誰一人が欠けてもここに立てなかったので、とても感謝していますし、支えてくださった関係者の皆さま、そして原案となった小笠原恵子さんにも感謝します。ありがとうございます」



岸 井「あの……え……どうしよう……私は映画が大好きなんです。映画を……あの……映画を観ることが大好きで、映画を観てるときは……なんか、何語でもしゃべれるし、どこへでも行けるし、何者でもないと思えるから凄く好きで、演じることも、常に役があって他者があって、他者を演じることで、こう、自分を見ることができるというか」



岸 井「30年も40年も前の映画を初めて観たとき、ああ、これを観るために今までがあったんだな、って思えることがあって。映画はずっとそこで、ずっと見つけてもらうのを待ってくれていて。そういうふうに、まだ出会う前の誰かのために、生きることができるのかな、って思ったりして……」



岸 井「ちょっともう、何を話しているのか分からなくなってきたんですけど……本当にこの作品には、私が見たことがない景色をたくさん見せてもらいました。劇場で、やってるんです、まだ。やっているんです。上映中なんです! あの、ぜひ劇場で観ていただきたいなって思っています。いま、もうそれだけが私の、望みです。すいません。ありがとうございました(拍手)」


 『ケイコ 目を澄ませて』(2022年ハピネットファントム、三宅唱監督)は上映中!
 ありがとう日本アカデミー賞。この際だからもうひとつ、無理な注文をつけておく。のん(『さかなのこ』)は主演女優賞と主演男優賞、両方にノミネートしてほしかった。

2. 「お幸せになってください」



 さて、今野敏サスペンス『機捜235×強行犯係 樋口顕』は第7話で最終回となる。長いこと縞長(中村梅雀)に邪魔されてきた高丸(平岡祐太)と亜里沙(安座間美優)の関係も、これで一段落、大団円である(2023年3月10日、テレビ東京/原作:今野敏/脚本:安井国穂/照明:加藤賢也/撮影:岸本正人/監督:児玉宜久/チーフプロデューサー:山鹿達也)。



 第1話で二人が落ち合った店が「焼肉ホルモン マーク松岡」、前回紹介した第6話のお店が、同じ系列の「Mark Matsuoka Grill(マーク松岡グリル)中目黒」、そして今回も第6話と一緒。行きつけのお店である。



亜里沙「うわぁ、映えるね。パンケーキ超有名なの。写真撮ろっかな」



高 丸「亜里沙」
亜里沙「え?」



高 丸「これ」



亜里沙「これってまさか」





高 丸「ごめん。本当は場所とかタイミングとか、もっと考えてから渡さなきゃと思ってたけれど」



高 丸「大切な人に会うことや大事なことは、先延ばしにしちゃ駄目だなって思った」



亜里沙「どうしたの? 何かあった?」



高 丸「(首を横に振り)受け取ってくれる?」



亜里沙「うん!」







縞 長「うわぁぁぁぁ」




縞 長「おめでとうございますぅ」



縞 長「今ね、このお二人、やっと婚約できたんですよ。もう私はずっとやきもきしてたんですよはははは」



縞 長「おめでとうございます。高丸さんをよろしくお願いします」
亜里沙「はい」



亜里沙「じゃあ私はこれで」
高 丸「え、ちょっちょっ、どうしたの」



亜里沙「だって、きっと何か大切なお仕事があるんでしょ」



亜里沙「高丸をよろしくお願いします」



縞 長「ほ、ほんとうにすみませんこんな大事な時に。お幸せになってください」



亜里沙「ありがとうございます」



亜里沙(店内の客の拍手に送られて退場)



高 丸「もう何なんですか」



縞 長「どうしても気になることがあるんです」


 というわけで、めでたしめでたしと言えるのかどうか迷うが、とにかく二人の関係も一段落である。

3. 疑わしきは被告人の利益に



 次は第9話まで来てしまった『女神の教室』(2023年3月6日/制作:フジテレビ/脚本:神田優/照明:川埜允史/撮影:長谷川諭/監督:谷村政樹/プロデューサー:野田悠介)。3月13日月曜日にはもう第10話、最終回である。



 塾講師が女子高生をカッターナイフで脅したとされる強制わいせつ事件。調べれば調べるほど疑わしいものの、決定的な証拠も証言なく、被告は無罪となった。



 怪しいイケメン塾講師(渡部秀)は小林靖子『仮面ライダーOOO(オーズ)』の中の人である。真中君(高橋文哉)は仮面ライダーゼロワン、水沢君(前田拳太郎)は仮面ライダーリバイスで、どんだけ仮面ライダーが好きなんだこのドラマ。
 でも向日葵ちゃん(河村花)は納得がいかない。



 無実をあおる被害者側のネガティブキャンペーンが功を奏し、勇気をもって告発した少女(中村守里)は一転、メンヘラ少女の妄想とネットで散々叩かれ、心がくじけて自殺。



 これで被害者が直接、法廷で証言することは不可能になってしまって、容疑者は無罪。やさしい向日葵ちゃんは、裁判はどうして少女やその家族の気持ちに寄り添ってやれないのか、と憤る。でも裁判とはそういうものなのだ。



 雫 「天野さん、いまここに警察が踏み込んできて、五年前に起きたある殺人事件の容疑者としてあなたを逮捕したらどうする?」



向日葵「え?」



 雫 「どうやって無実を証明する?」



向日葵「それは……」



 雫 「その日、どこで何をしていたかを説明して、その証拠を用意できるかな」



 雫 「やっていないことをやっていないと人に認めさせることはとても難しい」



 雫 「だから『疑わしきは被告人の利益に』この原則が必要なの」



雪 乃「冤罪を防ぐためですか?」



 雫 「うん。冤罪は絶対にあってはならない人権侵害。そして冤罪は真犯人を取り逃すことにもなる」



桐 谷「そっか、そうだよな」



向日葵「でも、真犯人を無罪にしている場合もあるってことですよね」



 雫 「真犯人を見つけ出すのは捜査機関のすること。刑事裁判の目的は冤罪の防止、つまり自分がやっていないにも関わらず、やったとされることを防ぎ、もしやっていた場合にも、やったこと以上の責任を負わされることがないようにすることなの」



 雫 「裁判官だって人間。決して全能じゃない」



 雫 「自分は正しい。そういう思いこみが冤罪を生んでいるの」



 雫 「だから裁判には、検事がいて、弁護士がいて、裁判官がいる」



 雫 「それぞれが役割を全うし、それぞれを信じて力を併せる」



 雫 「そうすることでようやく真実に近づける。それをみんなにも自覚して欲しい」


 それでも「疑わしきは被告人の利益」があるために守られている「法で裁けない悪」は存在する。そんな事実に納得いかず、法律を勉強するモチベーションすら失いそうな向日葵を、どう導いたらいいか。柊木先生(北川景子)自身、裁判官という立場なので悩んでしまうが、めげずに「被害者学」(victimology)なんてものに新たに取り組んでみる。



 そして学生時代の同期の弁護士、安藤麻理恵(佐藤仁美)の力を借りて、被害者に寄り添い、被害者の力になれる弁護士とはどういうものかを、身をもって示してもらう。そしてようやく笑顔の戻った向日葵に、自分の書き込みのいっぱいしてある『被害者学』を託すのである。




 雫 「そうだ」




 雫 「はい」



向日葵「え?」



 雫 「あげる。後は任せた」


 私にもやることいっぱいあるし、被害者学を究めるのは、弁護士志望のあなたの未来に任せるから、と分厚い研究書をほいっと学生にあげちゃう柊木先生。太っ腹だ。なにしろこの本は、税込み価格が17600円もするうえに、現在Amazonや紀伊国屋などのネット通販では絶版扱いなのだ。


 
諸澤英道『被害者学』成文堂、2016年
A5判、1074頁、本体16,000円


 内容は1, 000頁を越えるガチガチの研究書。こんなの真剣に読んでいたら、司法試験どころじゃなくなると思うぞ、天野さん。でも、天野さんがこれを開いてみると「後は任せた」なんてのは方便で、柊木先生はすでにじっくりこの本を勉強してあった。無数の書込みと付箋。






 という話なんだが、しかし今回はそういう本筋とは別のところで、物語はとんでもない方向に進展してゆく。柊木先生を逆恨みしていたクロウこと津山(安井順平)は、実は自殺したのではなく、風見刑事(尾上松也)の手にかかったようなのだ。



 風見刑事は、妹(桜川博子)が高校時代にわいせつ行為の被害にあって心を病んでしまったことから、法で裁けないストーカーや性犯罪者を見ると、必殺仕事人と化してしまうのである。というあたりまでは前回で予想できた展開であるが、でも、その調査をするのがまさか藍井先生(山田裕貴)だったとはびっくり。



 なぜか急に行動派の名探偵になった藍井先生は、柊木先生が実技演習の授業をしている間、独りで風見刑事の許を訪れて、クロウの自殺の真相について詰問する。そればかりかラスト、本当にナイフをかざして塾講師に襲いかかった風見刑事を止めようとして、自分が刺されてしまうのだ。いったいどんな展開だ。



 最終回の予告には、なんか街頭で行き交う人々に呼びかけをしている学生たちの場面が出てくる。ひょっとして女子高生暴行事件の新たな目撃者とか証言とかを集めようとしているんだろうか。



 私個人は【第893回】に書いたとおり、清掃員の「事件当日に叫び声などの助けを求める声は一切聞こえなかった」という証言が怪しいと思うんだが。そして結果的にはこの事件をきっかけに柊木先生は学校を去り、ふたたび裁判官に戻る、というエンディングを想定しておりましたが、次回予告の終わりには柊木先生の「それでは最後の講義を始めます」というセリフも出てくる。



 でも、自分で予想しておいて言うのもアレだが、藍井先生は刺されて重傷だろうし、そういう状況で柊木先生まで去っていったら、結局、青南ローは終わっちゃうんじゃないか? いったいどういう着地点が用意されているのか? ラストでいきなり「5年後」とかになって、本物の法廷で互いに検事、弁護士、裁判官として意見を戦わせる先生と向日葵ちゃんと照井さん(南沙良)とか、そんな感じになるのかな。ある意味、最後まで目が話せない展開ではあるな。てことで、もうすぐ、最終回を刮目して待て。