1. へば! リターンズ
山下智久主演、嘘のつけない営業マン永瀬財地が帰ってくる!
2023年度・冬の放送予定で、総合90分、4K100分特別編を制作します!今回は、永瀬が「競売・家の差し押さえ」の危機に瀕した親友一家を、月下は「原野商法」の魔の手が迫る大切な祖父を、救い出すべく家族の絆を守るために奮闘します。
永瀬&月下の名コンビが不動産で悩む人々をあの“風”に乗って救います!(NHK公式より)
そういえば、2月中旬に『ゲキカラドウ2』の制作発表があったんだけど、今回泉里香はレギュラーから外れたようで、そのポジションには土村芳が入った。『ゆるキャン△』の飲んだくれの先生だね。
個人的には『ゲキカラドウ』も好きだが、仕方ないか。泉里香、忙しそうだもんな。『正直不動産』のほうには、ちゃんとキャストに名前が上がっている。ありがたいことです。へば!
2. 何度でも何度でも
さて次は今野敏サスペンス『機捜235×強行犯係 樋口顕』第5話(2023年2月24日、テレビ東京、原作、今野敏、脚本:村川康敏/照明:加藤賢也/撮影:宮﨑悟郎/監督:本田隆一/チーフプロデューサー:山鹿達也)。恒例により、話の筋はおいといて、高丸(平岡祐太)と恋人亜里沙(安座間美優)の例のシーンのみ紹介したい。今回のロケ地は麹町のフレンチレストランARGO(アルゴ)行ってみたいですね。
亜里沙「ねえ、どうしたの?」高 丸「……え?」
亜里沙「ずっと元気ない。何かあった?」高 丸「いや、別に。何でもないよ」亜里沙「本当に? 何かあったら話してね。だって私たち……」
高 丸「だから、関係ない(怒)」
亜里沙「……」
高 丸(はっ!)
亜里沙「……ごちそうさま」
亜里沙「帰るね」
高 丸「いや、あっ」
高 丸(溜息)
縞 長「高丸さん、やっぱりここでしたか」
縞 長「例のことでどうしてもお話したいことがありまして……」
縞 長「あれ、彼女は?」
とうとう縞長さん(中村梅雀)が来る前に喧嘩しちゃった亜里沙。次の第6話をご覧いただけばひと安心(2023年3月3日、テレビ東京、原作、今野敏、脚本:山岡順平/照明:加藤賢也/撮影:岸本正人/監督:児玉宜久/チーフプロデューサー:山鹿達也)。こっちのお店はステーキ・肉料理・イタリアングリル&カフェの「Mark Matsuoka Grill(マーク・マツオカ・グリル)中目黒」。
亜里沙「はい、着替え」
高 丸「いつもごめんね。ありがとう」亜里沙「ううん。あとこれ」
高 丸「え?」亜里沙「身体、無理しすぎないようにね」
高 丸「ありがとう」
高 丸「ああ、待って」
亜里沙「なに?」
高 丸「今度の休みに亜里沙の実家に行ってもいいかな」
亜里沙「え?」
高 丸「いつも仕事ばたばたで、遅くなってごめんね。ちゃんとお父さんとお母さんに御挨拶させて欲しい」
亜里沙「……」
高 丸「……だめ?」
亜里沙「それって、そういう挨拶ってこと?」
高 丸「うん。そういう挨拶」
高 丸「亜里沙」
亜里沙「はい」
高 丸「はっ!」
高 丸「なんか今、変な気配を感じた!」亜里沙「縞さん?」高 丸「……亜里沙……おれと」
(携帯電話のバイブ音)
亜里沙「縞さん?」
高 丸「いや……変なセールス」
亜里沙「いいよ、緊急かも知れないし」
高 丸「ごめん!」
╳ ╳ ╳
高 丸「亜里沙……」
亜里沙(お仕事がんばってね)
最後はイメージショットという、いつもと違う安座間さんの退場の仕方で、なんだなんだ、と思ったら、このドラマは次回、第7話が最終回なんだそうです。うぉっとお。二人はどうなるのかなあ。で、本編の内容はこのレビューでは全く紹介しませんでしたが、けっこう面白いですよ。
3. 気づけば藍井先生に夢中
一方『女神の教室』も残り2話となってきた。このドラマ、伏線の張り方が丁寧なようで雑なようで、どういうつもりなんだろうと気になって、つい話を先読みしながらレビューしてきたが、いよいよクライマックスである(第7話:2023年2月20日・第8話/2023年2月27日/制作:フジテレビ/第7話脚本:神田優/第8話脚本:大北はるか/照明:川埜允史/撮影:長谷川諭/第7話監督:谷村政樹/第8話監督:森脇智延/プロデューサー:野田悠介)。
さっき言った、丁寧なようで雑なような伏線というのは、たとえば第1話でいきなり風見刑事(尾上松也)が、自分の追っている事件について守宮学院長(及川光博)や柊木雫(北川景子)の意見を聞くという、本筋とは関係のない話題がぽんと投げ出されるけど、第3話以降はずっとスルーされる。それに代わって第3話冒頭に黒い折り鶴が登場するが、続く第4話ではこれも話題にならずに、第5話の終わりで、ようやくクロウのエピソードが出てくる。
そのクロウの正体が明らかになるのが第6話で、でもこのとき、風見刑事はクロウこと津田(安井順平)の態度に、激しい怒りをあらわにする。
風 見「いい加減にしろよ津山」
風 見「おれはお前を見張り続ける。お前がボロを出し法を犯すその瞬間を、絶対に見逃さない」
そしてこの後、津山は自殺する。これ、どう考えても風見刑事が圧をかけすぎた結果じゃないか……と思っていたら(ちょっと話が先に行ってしまうが)第9話で風見刑事は逮捕される。第1話で語られた女子高生強制わいせつ事件の容疑者を執拗に見張っていたために、逆にストーカーに勘違いされたようだ。つまり第6話のあの激昂と第7話の自殺は「この刑事は犯罪者を憎むあまり過剰な行動に走ります」という事前説明だったのだ。
そこで第6話のもうひとつのシーンがつながってくる。津山に会う前に、風見刑事は身内と思われる人物を見舞いに病院に来ている。それが誰かはまだ語られない。
しかし、柊木先生を脅した津山や女子高生を暴行した塾講師に対して風見刑事が暴走する理由を考えれば、入院しているのは、同様の(要するに女性をつけ狙うような類いの)犯罪被害で心身に深い傷を負った身内、妹とか知り合いとか、そんな感じの方なのであろう。
そして藍井先生(山田裕貴)。第1話では料亭で酒を飲んだ後よろめき、第2話ではみんなが弁当を食べている昼飯時にウィダーインゼリーっぽいものをチューチューする。第8話には食べ物についてこんな会話も出てくる。
雫 「日々の生活で楽しいとか感じたことないんですか?」藍 井「ありません」
雫 「あ、このうなぎの肝おいしいなぁ……」藍 井「食事は必要な要素だけ摂取できればいい」
ポップコーン大好きなくせにね。第6話ではポップコーンのバケツをかかえ、第7話の終わりのほうでは(ドラマの中ではもう夏だよ、という符丁ではあろうが)アイスを食べてる藍井先生。
そして個人研究室では爆音でハードなテクノを静聴したり、意外と多趣味な人だが、その藍井先生は、すでに第1話で、照井雪乃(南沙羅)と真中の成績評価をワンランク下げていた。
このあたりからの藍井先生の考えは、セリフでは説明されないが、丁寧に観ればだいたい分かる。
真中信太郎くん(高橋文哉)は家庭環境そのほか取り巻く状況に雑音が多く、また雑音に左右されやすい脆さがある。ただし能力は高い。照井雪乃さん(南沙良)はマジメで、やれることはすべてやっている。逆に言えばもう伸びシロはない。
一方、藍井先生にとって予想外だったのが天野向日葵さん(河村花)の躍進。やる気も努力も中途半端だった彼女は、何かをきっかけに、ぐいぐい成績が上がってきている。何が彼女を変えたのか。我々は知っているが、これが藍井には理解できない。
第3話の最後、年末に行う予定だったゼミ選抜を、藍井は前倒しにする。
次年度の夏には在学中の学生も司法試験を受けられるようになる。それでいちばんメリットがあるのは照井雪乃(南沙良)だ。照井さんは、ぶれることなく司法試験に向けて勉強しているが、もう限界に近い。というよりは限界を越えて、成績はじりじり下がり気味である。
できることなら早いうちに合格させて、解放してやりたい。逆に、次の試験で合格できなければ、二度目、三度目はない。「次がある」という考え方は藍井先生にはない。むしろモチベーションは回数を重ねるほど落ちて、合格率は低くなる。これは客観的な真実だ。
そういったあれこれの思惑が重なったため、藍井はいろいろ考え、その結果、ゼミ選抜試験の結果発表がいつもより遅れてしまった。今回は五位で切って六位は落とす。そうすると天野が入り、真中が落ちる。二人ともボーダーラインだが、真中はぶれやすく、天野は意味不明の急上昇だが、乱高下する気配もないのでそのまま合格。藍井ゼミの問題をゼミ外の仲間とシェアするとか、前例のないことをしたりするが、それも放っておく。あとは照井をどうやって合格させるかだ。
藍井先生なりに力を入れて指導したが、それでも照井の成績は下げ止まらまま、残念ながら一回目の司法試験には通らなかった。藍井先生にとってはこれで勝負はついたも同然。
藍 井「できることは何もないんですよ」
雫 「どういう意味ですか?」
藍 井「講義ではいつもいちばん前にすわり、予習や復習も完璧で、私の出す課題にも100%応えてきた。自主ゼミではその努力は変わらなかった。しかし成績は反比例するかのように落ちていった。他にどうしろと?」
藍 井「ついて来られない人間は切り捨てるしかない」
藍 井「それが彼女の人生です」
冷酷なようにも聞こえるが、実はこれは藍井先生自身の、真摯な教師としての敗北宣言にほかならない。もはや何もしてやれることがない。ここからもう一度、照井のモチベーションを回復することは不可能、なはずだった。
ところが、柊木先生発案のものすごく「下らないゲーム」のせいで、照井は司法試験への再チャレンジに前向きになる。それで藍井先生は、柊木先生に感謝の気持ちを述べて頭を下げる。
藍 井「くだらないゲームではありますが、照井は戻ってきた」
藍 井「私には到底できない」
藍 井「講義がありますので」
照れてる。可愛いですね藍井先生。藍井先生が、照井さんの成績がジリ貧になっていく様子を思い悩む姿は、第1話から第7話までちらちらインサートされていた。
だから私が予想していた第8話の展開は、照井さんが不合格になり、その報告を受けた藍井先生が、照井さんをゼミに入れた以上、ここで放り出すわけにはいかない、と考え、有名専門学校の誘いを断る、というものだった。
でも実際のドラマは、照井さんや真中君を自分にできない仕方で力づけ、実際に天野さんの成績を押し上げた柊木先生の(藍井先生には)理解できない実力を本気で認めて、それを理由に青南ローに残る決意をする、という終わり方だった。考えてみれば柊木先生が主役なんだから当然か。
藍 井「へんな同僚がいるんですよ。彼女の言うことはいつも私と真逆であり、予測がつかず」
藍 井「飽きずにすむ」
というわけで、なんか今回のレビューは藍井先生(山田裕貴)に寄りすぎてしまったが、仕方がないよね。だってこのドラマは、学生に限らず、教員や刑事といった様々な人々が、柊木雫先生との出会いをきっかけに、司法とは何か、法教育とは何かを問い直し、変わって行く様子を描くところに主眼があって、本当は柊木先生が女神(テミス)そのものだからだ。もっとも、喜怒哀楽が豊かで豚カツ弁当を食べてどこにでも大の字に寝そべる女神ではあるが。さあ、いよいよ残り2話だね。ではまた。