実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第895回】またも怒濤のドラマラッシュの巻


 岸井ゆきの、快進撃。 海外の映画祭に出品ののち国内でも昨年暮れに封切られた『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱)が、第77回毎日映画コンクールでは日本映画大賞・監督賞・主演女優賞など5部門受賞、第36回高崎映画祭では作品賞・主演女優賞を受賞、『キネマ旬報ベスト・テン』では日本映画1位・主演女優賞など4冠を獲得、なんとあの『映画芸術』誌でもベスト1作品に選ばれた。



 3月10日に授賞式が行われる日本アカデミー賞では、なぜか作品賞にはノミネートされていないが(作品賞に『シン・ウルトラマン』とか入っちゃってるけどいいのか?)、主演女優賞は岸井ゆきの(『ケイコ 目を澄ませて』)、のん(『さかなのこ』)、倍賞千恵子(『PLAN75』)、広瀬すず(『流浪の月』)、吉岡里帆(『ハケンアニメ!』)の5人。岸井さんにとっても、主演賞のチャンスってそんなにないだろうし、これはあげたいし、あげるべきである。もし『流浪の月』の広瀬すずさんだったら、私は日本アカデミー賞に見切りをつける。あ、もうとっくにつけているか。

1. 『機捜235×強行犯係・樋口顕 初回2時間スペシャル』



 『機捜235』は、今野敏が、光文社の推理小説誌に年1作のペースで発表していた短編連作で、9年がかりで9作たまったところで2019年に単行本化、翌2020年にはテレビ東京でドラマ化、2021年には長編書きおろしの単行本第2作が刊行されてドラマ第2弾が制作、2022年にドラマ第3弾、そして2023年1月から連続ドラマ化と、なんだか勢いのあるシリーズである。というわけで始まりました『機捜235×強行犯係 樋口顕 初回2時間スペシャル』 (2023年1月27日、テレビ東京、原作、今野敏、脚本:安井国穂/照明:加藤賢也/撮影:岸本正人/監督:児玉宜久/チーフプロデューサー:山鹿達也)。



 機捜235というのは、第二機動捜査隊 第三方面隊 第五車という意味のコールサインで、渋谷エリアを巡回している覆面パトカーである。けっこう荒っぽい事件も多い現場なのに、若手の高丸(平岡祐太)は定年間際の巡査部長とコンビを組まされることになってシオシオ。ところがこの縞長という一見ロートルの巡査部長(中村梅雀)、実は元「見当たり捜査班」という、超人的な眼力で都会の群衆に潜む凶悪犯を見つけだし確実に追いつめる、スゴ腕の捜査官だったのである。



 ただ困ったことに、相棒の高丸が、忙しい捜査の合間、ほんの僅かな時間を作って恋人の亜里沙(安座間美優)とデートを楽しんでいると、独自の嗅覚でかならず現れるという、イヤな習性がある。



亜里沙「その捜査一課の警部さんってそんなに凄いの?」



高 丸「ああ、有名なんだよ。幾つもの大きな事件を解決していて……俺もああいう人のチームに入りたいなぁ」


 今回の連ドラ版『機捜235』は、同じテレ東・同じ原作者の人気シリーズ『強行犯係・樋口顕』とコラボしていて、すでに縞長&と高丸と樋口は対面している。



 内藤剛志と中村梅雀って、ものすごくテレ東っぽい「夢の顔合わせ」である。しかも、榎木孝明の警視も立ち合っている。で、話を戻せば、ここで平岡祐太が「俺も(中村梅雀の相棒じゃなくて)ああいう人のチームに入りたいなぁ」と言っているのは、内藤剛志のことね。



高 丸「俺もああいう人のチームに入りたいなぁ」



亜里沙「夢だもんね、捜査一課」



高 丸「ああ。そうなったら、その時は……」



亜里沙「……その時は?……」



高 丸「その時は……これからの二人のことを」



亜里沙「……え……」


 きらきら目が輝き出す亜里沙。しかしなぜか不吉な予感がして、そーっと店のそとに視線を移す。



 過去のスペシャルドラマでも、彼がようやく告白してくれそうになると、必ずあの人が入って来た。そして悪い予感は当たった。



亜里沙「えっ?」



高 丸「え」



高 丸「ええええええ!」



縞 長「いやはははは」
高 丸「しっ縞さん、どうして分かったんですか?」
縞 長「ほら高丸さん、今日、勤務終わりにコンビニでガム買ったでしょう。だからきっと、焼肉屋さんだなぁと思って。そしたらピンポーン。当たった。ああ、また御一緒ですね」



高 丸(ったく、どういう人なんだ)



縞 長「あ、高丸さん、今井達哉は、ミライ投資ファンドの諏訪専務と連絡を取り合ってました」



高 丸「ミライ投資ファンドの専務!?」



二 人(視線を感じて)



高 丸「どぉ~ぞ。私なんかに構わず話してください」



高 丸大事な大事な大事なお仕事ですから」



高 丸「あ、そこまで大事じゃない」



高 丸「いや、大事か……いや、大事じゃない……」



亜里沙「いーだ」



縞 長「……かわいい♡」


 以上。可愛い安座間さんでした。この感じだと毎回出てくるようにも思えないけど、できればシリーズ後半で事件に巻き込まれて、平岡祐太が助けるとか、そんなエピソードが欲しい。テレ東さん、お願いします。
 なお、実写版セーラームーン後に、戦士たち全員と共演した俳優ってなかなか思いつかないが、平岡祐太はあと一人というところまで来ている貴重な男優である。




 もともとアミューズなので、小松彩夏とは映画『僕は妹に恋をする』(2007年)でとっくに共演しているし、北川景子とはTBSの『LADY ~最後の犯罪プロファイル』(2011年)とテレ朝の『みをつくし料理帖』シリーズ(2012年・2014年)でメインキャストとして絡んだ(共演と呼ぶべきか、映画『真夏のオリオン』(2009年)にも黄川田雅哉と潜水艦の乗組員で出ていたね)。



 ついこの間までレビューしていたテレ東のドラマ『夫婦円満レシピ~交換しない?一晩だけ~』(2022年)では、夫婦交換サークルで沢井美優と一緒だった。ベッドを共にした経験もあるらしい。いやドラマの設定ですよ、もちろん。そしてこの『機捜235』で安座間美優と恋人同士の役。あと泉里香さえクリアすればコンプリートである。



 そういえば、『LADY ~最後の犯罪プロファイル』のときの北川さんはとんがりフレームのメガネでしたね。「眼鏡していてよく食う」というキャラ設定は今も変わらないか。




2. 『女神の教室』第4話



 さてそれでは、可愛いメガネのほうの北川さんが活躍する『女神の教室』第4話(2023年1月30日、フジテレビ、脚本:大北はるか/照明:川埜允史/撮影:長谷川諭/監督:谷村政樹/プロデューサー:野田悠介)。



 青南大学法科大学院の司法試験合格率は決して高くない。というか、いまや合格者は藍井先生の自主ゼミ、通称「藍井塾」からしか出てこない。そして藍井ゼミに入るには、先生が作る選抜テストに合格しなければならない。



 その藍井ゼミ選抜試験が、なぜか今年は例年より前倒し気味に実施される。浮き足立つ学生たちにとって、もはや司法試験にほぼ関係ない柊木先生の実技科目なんかそっちのけである。



 授業のペースを乱されたばかりか、学生間の人間関係までぎくしゃく。いささか御立腹の柊木先生は、教務室でくだんの選抜問題を目にする。




 「これがすべていけないのよ」と呟きながら、パラパラ問題を開いた柊木先生だが、その本格的な内容に、ついそこに腰を下ろし、入り込んで行く。




 夢中で解答に没頭しているうち、いつしかあたりは暮れなずむ。気がつけば守宮先生(及川博光)が柊先生(北川景子)の傍らに。 



 雫 「できたー」


:


守 宮「……うん」



 雫 「うぉっ学院長、いつの間に?」
守 宮「集中してたみたいですねぇ。どうでした?」



 雫 「……余裕ですよ、これくらい」



守 宮「ちなみに制限時間は90分」
 雫 「……余裕で過ぎてる」



守 宮「これ、藍井先生がお一人で作られたんですよ」



 雫 「そう……ですよね。正直、すごいと思いました。簡潔で、的確で、よく考えられている。こんな問題、いつ作ったんだろう」



守 宮「しかも自主ゼミなので、採点も彼一人で行います。テストの30人分を。……テストを早めたのも、彼なりの考えがあったからだと思いますよ」



守 宮「制度が変わり、来年からは在学中も司法試験を受けられるようになる。なかには、来年の夏にはもう、司法試験に挑むことになる学生がいるんです」



守 宮「時間はあまり残されていません。一人でも多くの学生を司法試験に合格させるための決断だったんでしょう」



 雫 「あの、学院長は、彼のやり方が正しいと思っているんですか?」



守 宮「ふふふ、そのために破格の給料をお支払いしてますから」
 雫 「どうして学院長は、藍井先生と私を組ませたんですか?」



守 宮「……私には夢があるんです。そのためにも、藍井先生と柊木先生、どちらもこの学校には必要なんです」



 雫 「夢?」
守 宮「ははは、まあ、それはいつか」



守 宮「私はあなたたちを良いコンビだと思いますよ」
 雫 「ええ?どこがですか?」



守 宮「真正面から、ちゃんとぶつかりあっているじゃないですか」



 そんな状況で、柊木先生がめげずに学生たちに出した模擬裁判の課題は民事裁判。作業中にマンションから転落し、それが原因で死亡した職人Aの妻が、元請けの工務店Bを訴えた案件。



 職人がセーフティーネットもせずに高所で作業したのは自己責任か、それとも雇うものの強みで危険な選択肢を暗黙裏に強いた業者に非があるか。学生たちは最後に「和解」という解決策を選ぶ。そしてそれが、柊木先生がみんなに伝えたかったことだ。



 民事事件は刑事事件と異なり、互譲という手段があるし、むしろ譲り合いの余地をさぐって和解に導くことができるのが一流の弁護士である。それはそうだよね。白黒つけるまで争い続けるよりは、お互い譲歩できる落とし所を見つけて和解させるほうか、遙かに難しいし、遙かに平和的である。



 面白いのは柊木先生の課題に対して、徐々に変化してゆく藍井先生(山田裕貴)の反応。初回は小馬鹿にしたような態度をとっていたが、徐々に苛立ちを見せ始め、今回はちょっと動揺さえしている感じなのだ。



藍 井「和解しか答えのない模擬裁判をやらせるなんてどうかしている」



藍 井「言ってしまえば和解は喧嘩の仲裁。法律論ではない。判例にも残らない」



 雫 「判例に残らないから、身をもって学んで欲しかったんです」



 雫 「大切なことだと思いませんか? 立場や考え方が違っても、どこかで折りあいをつけなきゃ、やっていけませんよ」



藍 井「……」



 雫 「あ、手伝いましょうか? 選抜テストの採点。一人じゃ大変でしょ」



藍 井「けっ、結構ですっ」



藍 井「いちいちコメントをつけて返すあなたのやり方では、一生終わりませんから」



 雫 「もう、人がせっかく……」


 「和解」というベストな解答を見いだし、ちょっとした小競り合いを起こしていた男子学生たちも「和解」した。それで柊木先生も藍井先生に採点のお手伝いを申し出て、「立場や考え方が違っても、どこかで折りあいをつけなきゃ」を実行に移したのだが、こっちはまだ機が熟しておらず、あっさり拒絶されてしまった、という、着地点のきれいなお話でした。

3. 『どうする家康』第4話



 さて。最後はほんのサワリだけになってしまうが、柊木先生と藍井先生が過去にタイムスリップするあれな。



 市 「元康殿、こちらじゃ、早う早う」



元 康「……清州がこれほどまでに栄えているとは……」



 市 「兄はこの数年で何もかも作りかえられた。特に桶狭間より後は、人も富も勝手に集まってくる」



 市 「かの小牧山城から、美濃を攻める。美濃を手に入れたら、次は西へ向かう」



元 康「西?」



 市 「乱世とは、まことに愉快な世であることよ」



元 康「……乱世が愉快ですか……」
 市 「力さえあれば何でも手に入る」



 市 「力さえあればどんなに大きな夢も描ける。愉快この上ない」



 市 「……ただし、男であればな」



 市 「すみませぬ。つい童のような物言いに戻ってしまいました」


  いよっ、かっこいいぞアニキ。有村架純もかすんでしまうわ。そしてこのあと、さらにカッコいい場面もあるのだが、私もそろそろ電池切れだ。今日はお出掛けしなきゃならないし、このへんですまぬ。また次回。


「欲しいものは力で奪い取るのです」