1. 『安家』第1話
中国、上海にある「安家天下」静宜支店は、目まぐるしく変化するこの街では珍しく15年の歴史を誇る不動産屋だ。しかし後からやって来たライバル会社に顧客を食われて、今や業績はすっかり低迷している。
営業不振のテコ入れのために北京本社から新たな支店長として派遣されてきたのが、不動産売買の天才と言われるファン・スージン(孫儷、スン・リー)。彼女の決めゼリフは……。
北京衛視が日本テレビから正式に『家売るオンナ』のリメイク権を得て制作、2020年に衛星放送で放映されて大好評だったという『安家』(I will Find You a Better Home)の冒頭である。気づかないうちにHuluで配信されていたので、今回2話ほど視聴してみた。で、面白かったのだが、リメイクと呼ぶには、だいぶ本家と印象が異なる。ひとことで言えばコメディ色を排除して、全編どシリアス。主人公は「GO! 」なんて言わない。
脚本をまかされた六六(張辛)氏は、かつてドラマにもなったベストセラー『上海、かたつむりの家』(原題「蝸居」2007年)の作者である。不動産バブル、貧富の拡大、ローン地獄といった現代中国の現実を生々しく描き出し、物議をかもした小説だ。そういう方なので、中華版の執筆にあたっては「天才不動産家(の美女)が家を売りまくる」という基本設定をベースに、現代中国のリアルな社会問題を大幅に取り込んだという。
さらに、ストーリーラインにも大きな変更がある。本家の『家売るオンナ』では、チーフのサンチーに影響されて、テーコー不動産新宿営業所の面々が意識改革してゆくが、この中華版では、むしろ主人公が、元々の店長(羅晋、ルオ・チン:仲村トオル演じる屋代課長に相当)の方針に影響され、ただ家が売れれば良いと思っていた自分の姿勢を反省し、職場の和やかな雰囲気や地元の歴史文化、義理と人情を大切にする考え方に共鳴して、本社に反旗を翻す流れになっているようだ。こうなると『家売るオンナ』よりも『正直不動産』に近い。
だからといって脚本家がオリジナル版を無視しているわけでもなく、逆にそれを読み込みながら、新たな物語を作り出している。たとえばオリジナルの第1話で、庭野(工藤阿須加)が帰宅するサンチーの後をつけて、サンチーが一家惨殺事件を起こした事故物件に住んでいることをつきとめる、というくだりがある。格安だから、という理由らしいが、その逸話をめぐって話が膨らむことはなかった(そもそも帰宅してからのサンチーのプライベートは描かれなかった)。
しかし中国版はこの設定を活用して、第1話は「事故物件をそれと知って借りに来たいいカモ」と思っていた顧客がすごい美人で、みんな色めき立っていたら、実はそれが鬼上司だった、というイントロに始まり、初日から遅くまで残業した主人公が自宅へ帰ると、やはり事故物件だけあって建物全体に不気味な雰囲気が漂っていて、しかも中国なので一戸建てではなくアパートだから、隣の住人のドアも何かしら気になる、というホラーテイストの引きも用意されている。
また、オリジナルの屋代課長(仲村トオル)はかつて「ミスター・テーコー不動産」と呼ばれるほど成績抜群の営業マンで、サンチーもその過去を知っているようであったが、この中国版ではもう少しそこが掘り下げてあって、二人は過去にもどうも何か関係があったらしい(最初の方しか観ていないのでよく分からないが)。
というように、あらかじめ正式に権利を取得したから「リメイク」をうたっているが、そうですね、『家売るオンナ』にインスパイアされた別物のドラマという感じ。少なくとも『モップガール』と『トゥルー・コーリング』ぐらいの差はある。
しかし、にもかかわらず、とんでもないパクリもあるのだ。みなさんは「住もう君」をご記憶ですか? テーコー不動産のマスコットキャラクター。スペシャル版では一ノ瀬(笑福亭鶴瓶)が、第2シーズンでは鍵村(草川拓弥)が着ぐるみに入ってチラシ配りをしていた。
『安家』第1話では、白州美加(イモトアヤコ)とはだいぶルックスの異なる、仕事やる気のないジュー(孫佳雨、スン・ジャーユウ)が、チラシ配りを命じられて、いやいやキャラクターの着ぐるみ着せられるわけだが、この着ぐるみが相当に問題である。
おいおいおいおい。日テレから権利を買い取るヒマがあったら、こっちの方をきちっとした方が良いと思うのだが。ていうか、こっちの方は大問題になりかねないので、こういうところで「住もう君」とか使ったらいいのに。
中国ビジネス界の了見ってよく分からないですね。
2. 『夫婦円満レシピ』第4話予告編
続いては、『家売るオンナ』にもゲスト出演していた佐津川愛美が主演する深夜ドラマ『夫婦円満レシピ~交換しない?一晩だけ~』の話題。またまたyamabosiさんにコメント欄で教えていただいたところでは、ツイッターで長田成哉が「パーティーシーンに度々出現しますのでぜひ見つけてください」と言っているとのこと。
スワッピングパーティーなので、本来どのような組み合わせなのかがよく分からないでいたのだが、長田さんと沢井さんが夫婦だという。スタッフにリュウソウジャーのファンでもいるのか?
それはともかく、今回もパーティーシーンはなかったので、沢井さんのお姿は残念ながら見られなかった。その代わり、予告編に黄川田雅哉がいよいよ登場する。
始めは夫以外の男に抱かれることに抵抗があった志保(佐津川愛美)だが、それが刺激となって浩介(千賀健永)に激しく求められたり、夫婦仲も円満になって次第に夫婦交換にハマる。
スワッピングの夜には、一人娘をママ友の裕子(橋本マナミ)の家に預けることにしていたが、もちろん裕子に事情を打ち明けてはいなかった。ところが、実はけっこう情報が筒抜けなんである。ママ友おそるべし。
志 保「裕子さんごめんね、このあいだ」
裕 子「ううん。うちの子、梢ちゃんのお泊まりで大興奮だったよ。ぜんぜん寝なくてさぁ」志 保「うふふ」
志 保(でもそのおかげで私たちは、時々窪塚さんたちと、夫婦交換することになった。志 保(それは誰にも言えない、私たち夫婦の秘密……)
裕 子「じゃあ今度は、私の頼みを聞いてもらおうかしら」志 保「もちろん、なんでも言って」
志 保(でもその秘密が、すぐに私たちだけのものじゃ無くなるなんて)
志 保(思いもよらなかった)
裕 子「志保さん、お願いがあるの」
志 保「……何?……」
裕 子「うちの夫と寝てくれない?」
裕 子「仁科家とうちで、夫婦交換して欲しいの」
志 保(まさか、裕子さんと夫婦交換することになるなんて!)
この、橋本マナミが妻なのにぜんぜん抱こうとしない、実にもったいない夫というのが、誰あろう黄川田雅哉なのであった。以下は予告編です。
裕 子「あなた、ネットで買ったの」
裕 子「どう?」
真 司「おやすみ」
裕 子「私は愛されてないの」
裕 子「私だって愛されたい」
裕 子「ねえ志保さん、一生のお願い」
裕 子「ねえお願い」
志 保「抱きたくなりますか」
真 司「え?」
志 保「え?」
浩 介「あははは」
志 保「本音、ですか」
浩 介「嫉妬させてあげましょう」
裕 子「夫以外としたことがなくて」
真 司「やっぱりダメです」
志 保「私を、抱いてください」
これはちょっと中国版リメイクは難しいだろうな。ということで、次回、当サイトでカメ吉のスワッピング初体験を実況する……かどうかは未定です。
3. 『高嶺のハナさん』第3話
すみません、本編のつもりでいた『高嶺のハナさん』第3話「ハナの憧れの上司、不動凪(なぎ)登場!!」(2022年10月15日)をレビューする余裕があまりなくなってしまいました。まあしかし、原作との比較という観点でいえば、新キャラクターの不動凪(小柳友)登場回でなので、それほど多く語るべきこともないかな。
不動はミツバチ製菓商品企画部の伝説のエースで、内心は華にメロメロだが、いざ対面すると緊張のあまり冷たい態度をとってしまうという、いわば男版ハナさん。ただし、華と弱木は両想いだが、不動のほうは一方通行。ハナにとって不動は仕事上の尊敬する目標以上の存在ではない。しかしだからこそ、不動の帰国は華にとって「仕事を取るか恋を取るか」の二者択一を突きつけられたに等しい。なので華は弱木との別れを決意する。
傷心の弱木を見て、ここぞとばかりに起死回生のアタックをかけるイチゴ。
というのが原作漫画の流れだが、この実写版の登場人物たちはだいぶ違う。特に主人公。あんまり仕事と恋の二択に悩んでいない。あんまりというか、ぜんぜん (笑)。
華 (不動さんに認めてもらうんだ!)
華 (そしたら弱木くん一緒に遊ぼうね~)
華 (弱木く~ん)
「弱木きゅ~ん!弱木きゅ~ん!」
華 (不動さん!)「不動さん!」
華 (弱木きゅ~ん!)
「弱木きゅ~ん!」
……まあ、こっちのほうが楽しくていいやね。そして実写版には実写版の流儀というか、原作にはない、シーズン1のギャグの反復という荒技も出てきた。
第1シーズン第11話
第2シーズン第3話
更 田「何につまずいたんだ弱木!」苺 「弱木先輩いったい何につまずいたんですか!」う め「何につまずいたんや強!」
更 田「おいおまえ何につまずいたんだよおい」う め「教えてくれや。何につまずいたんやおい」
更 田「ちょっと待って。え?何につまずいたんだって?ちょっと待って、何につまずいたんだって? なあ」
やっぱり実写版が楽しそうでいいや。てことで今回はこれまで。本編が少なくて済まなかったね。
華 「弱木くん何があったの!?」