実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第868回】歌姫彩夏復活の巻(『ブラック/クロウズ』レビュー)


 島田陽子さんが亡くなった。
 訃報続きですが、こっちもトシなもんで、もうあっちに行った方が馴染みの人が多い。
 島田陽子のデビューは1970年12月11日放送の『おさな妻』第11話(東京12チャンネル、C.A.L)だが、これは1話限りのゲストで、本格的なレギュラー出演はそれから数ヶ月後、1971 年4月3日に始まった『仮面ライダー』が最初である。企画段階ではヒロイン役だったが、最終的にはヒロインの友人役になったという。



 しかし真樹千恵子の演じていたヒロイン緑川ルリ子が、1クール13話でヨーロッパに去って番組を降板したのに対して、島田陽子の野原ひろみは2クール目も残留し、新規加入した山本リンダ、冲わか子、中島かつみらと共に、ライダーガールズの一員として、立花藤兵衛の経営するスナック・アミーゴ改め立花レーシング倶楽部を彩った。



 2クール終了後、同じNET(テレビ朝日)のポーラ名作劇場『続・氷点』(1971年10月25日〜1972年1月24日)に出演することが決まってライダーを降板。『続・氷点』の辻口陽子役が好評で、島田陽子は人気女優の仲間入りをした。ただ『仮面ライダー』の制作順では26話目だった「日本危うし!ガマギラーの侵入」が放送順では34話になってしまったために、視聴者から見ると、島田陽子は第25話(1971年9月18日)に出てからしばらく姿を見せず、その間『続・氷点』に出るようになって、で第34話(1971年11月20日)にもう一度だけライダーにお目見えしてから居なくなった、という妙な感じになっている。



 阿部征司プロデューサーによれば、島田陽子は当時、藤岡弘と同じ事務所で、そっちから推薦があったのだという。いわゆるバーター。ということは、藤岡弘と同じ松竹だったのか。



 藤岡弘に松竹感は皆無だが(笑)1965年に松竹ニューフェイスとして採用され、歌謡映画や青春映画で二枚目として活躍することを期待されていた。けれども、会社から回ってくる作品は自分にしっくり合わない。もともとアクション志向だったんだろうね。それで上に直訴して、他社のオーディションも受けさせてもらって、日テレ/東映の『ゴールドアイ』(1970年)のレギュラーをつかんだことが『仮面ライダー』へとつながったという。



 これも時代である。もうちょっと前ならあり得ない話だった。1960年代まで、日本の大手映画会社の間には、互いの引き抜き合戦を防止するための、いわゆる「五社協定」があって、映画俳優たちは他者への移籍を許されず、勝手にテレビに出ればクビにされ、あるいは飼い殺しにされた。特に永田雅一社長の大映がひどくて、他者作品への自由な出演を訴えた山本富士子は映画界から追放され、テレビと舞台に活路を見いだし、後に映画出演の依頼が来ても二度と応じなかった。永田社長にポスター序列の不満を訴えた田宮二郎も解雇され、司会業に転じ、クイズタイムショックで復活するまで地方巡業をしていた。



 でもテレビの普及とともに映画そのものが斜陽産業となり、五社協定の締めつけも次第にゆるんで、1971年の末に大映が破産するころには、消滅してしまった。藤岡弘が松竹出身なのに仮面ライダーを演じたり、東宝アクション映画でスターになれたのは、そういう時代の推移も影響している。もっとも藤岡弘は、さらに自由を求めて、仮面ライダーをやりながら、こっそりNHKの時代劇『赤ひげ』のオーディションに合格して、揉めたそうですね。



 閑話休題。島田陽子さんの映画デビュー作は1972年の『初めての愛』のヒロインで、私は観ていないけど、森谷司郎監督の東宝映画で、主演は東映の御曹司で後の東映社長の故・岡田裕介という、これまたゴッチャゴチャな組み合わせである。このころもうすでに、映画産業は新たな「大作」や「スター」を生み出せるような状況ではなかった。にもかかわらず島田陽子は、なぜか普通の制作ではない破格の話題作に出演し続けた。



 橋本忍が立ち上げた橋本プロダクションの第1回作品『砂の器』しかり、角川春樹事務所の第1回作品『犬神家の一族』しかり、アメリカ・NBCの大作テレフィーチャー『将軍 SHOGUN』に至っては、当初ヒロイン役に決まっていたジュディ・オングの辞退というタナボタで転がり込んできた代役なのに、これで「国際派女優」の肩書きを得てしまったのだから、もうそういう運命の人としか言いようがない。その一方で私生活では何度もスキャンダルや金銭トラブルを起こして、30代の終わりに出したヘアヌード写真集は55万部売れて、57歳にしてMUTEKIからセクシー女優デビュー。こういう人はもう出てこないかも知れない。女優の業を背負った波乱の女である。


 
 長々とすみませんでした。共同テレビ制作『ブラック/クロウズ~roppongi underground~』後編のレビューである。このドラマは前後編の2回に分けて放送されたが、内容は3話という変則的な構成で、前編が第1話と第2話の前半、後編が第2話の後半と第3話という形になっている。



 小松彩夏がゲスト出演しているのはその第3話「堕ちた歌姫」である。舞台となる六本木の闇カジノ「ウルトラヴァイオレット」に、オーナーの大友(萩原聖人)が登場。店長の神崎(小関裕太)に実業家の手塚(袴田吉彦)を紹介するところから始まる。手塚はギャンブルをするために来たのではない。自分も闇カジノを経営するつもりで、その準備として、一ヶ月限定でオーナーからこの店の経営権を譲り受けたのである。



 もともとウルトラヴァイオレットの従業員であるウェイトレスの詩歩(松井愛莉)とあゆみ(森カンナ)、黒服でディーラーの紘人(三浦獠太)たちも、手塚のもとで働く。やがて詩歩は、今はジャンケット(富裕な客をカジノに誘い込んで金を使わせる客引き)としてて闇カジノに出入りしているかつての歌姫、陽子(小松彩夏)と知り合う。もともと陽子のファンで、仕事の合間に話を交わすうちに、詩歩は陽子が手塚のDVに縛られ、逃げたくても逃げ出せない状況であることに気づく。



詩 歩「へぇぇ、そんな感じで週刊誌って来るんですね。じゃあ、跡つけられてたってことですか?」
陽 子「そう。それで男と居るところを撮られちゃって……」



詩 歩「……あ……ごめんなさい、またこんな話」



陽 子「いいの。あなたと話していると、気が紛れるから」




詩 歩「……それ……」



陽 子「そろそろ戻ろっか」



詩 歩「もしかして、手塚さん?」



詩 歩「……あの、私ホントに昔、陽子さんの歌が好きで、救われたこともあって」



詩 歩「だから、恩返しじゃないですけど、何かできることがあれば、力になりたくて」



陽 子「……放っといて……」



詩 歩「お節介、ですよね。よく言われます」



陽 子「もういいの。どうせあたしなんか、居なくなればいいんだし」



 数々のスキャンダルを起こし、実質的に芸能人生生命を絶たれた状態の陽子は、それでもエゴサーチに余念がない。でもSNSでも彼女の話題はジリ貧で、引退説や死亡説といったフェイクニュースもたいしてバズらない。



たかあき「10歳の息子と実家近くの喫茶店に行ったら、白川陽子の『I BELEVE YOU』流れててびっくり。僕と嫁の思い出の曲。15年前、この喫茶店でよく聴いてたわ」
SHOTA「友達が白川陽子の死亡説について話していたけど、マジ!?」
高橋です「7年前に失くした白川陽子のCD出てきた。オークションにでも出すか」
Mumii★「白川陽子、最近見ないけど、芸能界引退したの?好きだったンだけどな〜残念(泣)」



 最初のツイートだと、15年前に大ヒットを出していたようだ。15年前といえば2007年。現実世界のヒットチャートは「千の風になって」とコブクロと嵐とKAT-TUN。「おしりかじり虫」。女性歌手ではYUIの最盛期で、あと常連で宇多田ヒカル。イメージ湧きづらいね。ドラマの最後の方で、当時の白川陽子のアルバム「I REMEMBER YOU」の内容が少しだけ判明するが、こんな感じ。



1. I REMEMBER YOU
2. You Make Me
3. Love Love Kiss
4. あなたと
5. 約束の向こう


 歌手としては華原朋美っぽい感じにあゆ混ぜ込んだイメージかな。何にせよ、愛野美奈子といい、映画『キラーヴァージンロード』(2009年)のアイドルAYAKAといい、小松彩夏って、本人はそんなに気が進んでないのに、歌手の役をやりがちなのは何故か。『キラーヴァージンロード』の森高千里ふうコスプレ、またやってくれないかな。もう無理だろうか。



 さて話を戻して、手塚の愛人兼客引きとして飼い殺され、離れたくても暴力で屈服させられて心理的に抵抗できず「どうせあたしなんか、居なくなればいいんだし」という自虐的なセリフをつぶやくしかない薄幸の美少女。もはや少女ではないので美女。可哀相だが小松彩夏にとって十八番の役どころではあるよな。



陽 子「最近はエゴサしてもあんまり出てこないんだ。もう存在してないのと同じか」
詩 歩「そんなことないですよ」
陽 子「別にいいの。手塚さんに飼われていればいいだけ。もう諦めてるから」



詩 歩「……陽子さん、やっぱり戦わなきゃダメです」



陽 子「勝手なこと言わないでよ」



詩 歩「勝手ながら、私も一緒に戦いますから」





陽 子「……カメラ?」



詩 歩「はい。手塚が闇カジノを経営している証拠を収めるんです。『これを流されたくなかったら別れて』って」



陽 子「無理。ばれるって」



詩 歩「大丈夫。イカサマばれないように、いろいろ学んできたんです」



 というわけで、詩歩は隠しカメラを仕込んだペンで、闇カジノで客(今奈良孝行)と話す手塚の様子を撮影、これをネタに陽子を解放しようと考えたんだが、手塚のほうが一枚上手であった。



 客 「ほう。すっかりオーナーって感じじゃないですか」



手 塚「いえいえ」



 客 「店構えも立派で、さすが手塚さんですね」



手 塚「お陰様で当店も軌道に乗って参りまして」



手 塚「今度は本格的に新しい場所にオープンしようと思いまして」



手 塚「いま探しているところです」



 客 「ほう。いよいよですね」



手 塚「まぁ、ただその前に幾つかやらなきゃいけないことがありましてね」



陽 子「私、気分が悪いので、今日は……」



詩 歩「そこまで一緒に行きます」



手 塚「人選をね、まずはやらないといけませんので」



手 塚「裏切り者の排除」




手 塚「失礼」



手 塚「感心しませんね、こういうのは」



詩 歩「どうして?」



手 塚「所有物の管理は怠らないんですよ、私は。お前と違って」



詩 歩「手塚が闇カジノを経営している証拠を収めるんです」


 こっちが盗撮をしかけたつもりが、手塚はとっくに、陽子の持ち物に盗聴器を仕込んで、二人の会話を盗み聞きして録音していたのだ。で、詩歩が行動するまで泳がせておいて、ここで支配人の神崎を呼びつけ、従業員の責任を問う。あわよくば難癖をつけて、この店をそのまま手に入れてしまおう、という魂胆なのだろう。



手 塚「神崎さん、あなたが関与していないという証拠はない。悪いけど同罪ってことで、痛い目みてもらいますよ」



神 崎「嫌ですねえ。それは金で解決できませんか?」



手 塚「金ですか。それなら、首を括るぐらいの額じゃないと」



神 崎「わかりました」




神 崎「勝負はギャンブルでつけませんか?」




手 塚「何を言っているんです」



神 崎「言い値で賭けます。ゲームもルールも全部、自由にお選びください」


 ありえん展開だが、もちろん手塚は興に乗じてギャンブルの提案に応じる。ゲームはバカラ。手塚が用意させたカードで手塚の手下がディーラーをやるのだから、どうとでもその場を操れる。神崎ピンチ……ってまあ、そんなに古いドラマでもないし、いちおうネタバレしないように(バレバレだけど)ここから後の話はまた、興味がある方は配信などでご覧ください。
 役の上でのことに過ぎないのだけれど、アミューズの若手売れっ子たちが、小松彩夏をしっかりリスペクトしている様子がリアルっぽく感じられて、嬉しいドラマでありました。