緊急事態宣言。個人的な事情で申し訳ない。6月は祭日もないし、例年、仕事のほうが忙し目なのだが、今年は特に、月末に大きなプレゼンテーションが控えている。それで週末も、趣味のブログなんかやっているヒマがないというか、自宅でいろいろ準備しないと間に合わない。なので今月いっぱい、このブログも休みます。
……と言いたいところだが、それではレビューが遅れをとるばかり。
なので、改めまして緊急事態宣言。今月いっぱい、このブログは泉里香登場シーンを、1回につき1シークエンスずつ紹介する時短営業で進めたいと思います。よろしく御了解ください。
と、言い訳が終わったところでレビュー再開。NHKドラマ10『正直不動産』第7話「過去の自分と今の自分」(2022年5月17日放送/原案:夏原武/原作:水野光博・大谷アキラ/脚本:根本ノンジ/照明:長谷川誠/撮影:金澤賢昌/プロデューサー:宇佐川隆史・清水すみれ/監督:川村泰祐/制作:NHK・テレパック)。いよいよ物語は後半戦。
光友銀行融資課の榎本美波(泉里香)に請われて、自宅の売却を希望する美波の顧客、藤崎秀樹(前田吟)・芳恵(中田喜子)夫妻を訪問する永瀬財地(山下智久)。いつもの 月下咲良(福原遥) は、今回はおりません。
秀 樹「私と妻は共働きをしておりまして」
秀 樹「今年、二人とも退社して、その退職金でこのうちのローンは完済を」
美 波「今現在、お仕事は?」
秀 樹「いやいや、年金暮らしですよ」
秀 樹「ただ二人で合わせて月々22万程度で、収支が赤字になる時があります」
秀 樹「老後の蓄えもありませんし、思い切って家を売って、賃貸に住もうかと」
永 瀬「そうですか」
芳 恵「私はあまり気が進まないんですけどね」
秀 樹「……」
美 波「ご家族は?」
芳 恵「娘が一人います。今は結婚して、国分寺のマンションに夫と子どもと……」
芳 恵「あっ 私にとっては孫なんですけどね。三人で暮らしてます」
永 瀬「お孫さん」
芳 恵「ええ。今5歳で、よく遊びに来てくれるんですよ」秀 樹「娘はいずれ夫の実家に住むそうなんで、家のことは全て、我々に任せると言ってくれてます」
美 波「ご状況は よく分かりました」
美 波「不動産のプロである永瀬さんに、ご意見をお聞きしたいんですが、このお宅を売却するとしたらおいくらになると思います?」
永 瀬「築年数と広さから、およそ5, 000万円といったところでしょうか」
秀 樹「5, 000万。あぁ、それだとだいぶ、余裕ができます」
永 瀬「ただ、武蔵小金井駅から20分とやや遠い点と、裏にマンションが建設中のため」
永 瀬「陽あたりが悪くなることを考えると、あまり好材料とは言えませんね」秀 樹「え?」
永 瀬「ただ売却を任せていただけるのであれば、精いっぱい頑張らせていただきますが、正直言って すぐに売れるかという確約はいたしかねます」
秀 樹「そうですか」
芳 恵「……」
美 波「永瀬さん」
美 波「最近、ご高齢の方との賃貸契約に難色を示す大家さんが多い、って耳にしたんですが」
永 瀬「そういう傾向もありますね」美 波「ですよね」
美 波「そこで、専門家の意見も考慮した上で」
美 波「私はこちらのプランをおすすめします」永 瀬(ん?)
美 波「当行で扱っております『キラキラ長寿』という、リバースモーゲージタイプのローンです」
秀 樹「リバースモーゲージ?」
美 波「はい」芳 恵(あれ?どういうこと?)
美 波「一般的な住宅ローンは金融機関からお金を借りてご自宅を購入し、月々返済していきますよね」
美 波「ですが リバースモーゲージはご自宅を担保に毎月、融資が受けられるんです」
美 波「なので 「逆」という意味の「リバース」と「担保」という意味の「モーゲージ」という名前が付いているんです」
秀 樹「なるほど」
美 波「お申し込み年齢は65歳以上になっておりまして、愛着のあるご自宅に住み続け、従来どおりの生活を送りながらも融資を受けられるというのが、このローン最大のメリットです」
永 瀬(まさか榎本さん、自分の金融商品を営業するために俺を利用したってこと?)
美 波(あなたがデリカシーないことしたからです)
美 波「このローンは、ご旅行や、可愛いお孫さんへのお祝い、さらに、長期入院費、高額医療費、介護費など、ご融資金の使い方が自由なのが特徴なんです」
美 波「お二人のこれからを考えますと」
美 波「私はご自宅を売却するより、こちらの商品をおすすめします」
美 波「永瀬さんもそう思いませんか?」
永 瀬「そうですね」
永 瀬(メインバンク相手にノーなんて言えるわけないの分かってるくせに!)
永 瀬「もちろん私もこちらをお薦め……」
(正直の風が吹く)
永 瀬「……なんて、1ミリもできないんですよ!」
美 波「は?」
秀 樹「なぜですか?」
永 瀬「榎本さんは耳ざわりのいいことしか話してませんが、このリバースモーゲージが、なぜリバースなのか、お分かりになりますか?」秀 樹「いいえ」
永 瀬「一般の住宅ローンは、返済すれば借金がどんどん減っていきます。しかしリバースモーゲージは、逆に借金が増えていくからです」
美 波「永瀬さん?」
芳 恵「どういうことですか?」
永 瀬「いいですか、この商品のデメリットの一つに『長生きリスク』といわれるものがあります」
秀 樹「長生きをすることが悪いんですか?」
永 瀬「ええ。大きなリスクです」
永 瀬「このローンは契約期間20年の場合が多いんですが」
永 瀬「もしご主人がこの契約期間20年、すなわち85歳を超えて長生きしてしまった場合、契約満了時に一括返済が要求され、返済不能な場合、担保であるこのご自宅を失うこともあるんです」
芳 恵「ええっ!」
永 瀬「もちろん 契約内容次第ではありますが」
永 瀬「私が言いたいのは、先ほどのようにメリットだけを聞いて融資を受けるのは危険だということです」
美 波「永瀬さん、ありがとうございます」
美 波「ちょうど今から リスクに関して説明させていただこうと思っていたんです」
秀 樹「あっ、そうだったんですか」美 波「はい」
正直者の永瀬を連れて来れば、なかなか売りにくい物件であることを正直に言うだろうから、そこでリバースモーゲージを進めよう。……というのが美波の魂胆だったわけだが、裏目に出てしまった。とそこへ、藤崎夫妻の娘の真理(山崎直子)と孫の颯人(野濱拓海)が遊びにやって来る。
颯 人「ばぁば遊びに来たよ~」
芳 恵「あ~颯人~」真 里「お母さん、ごめんね急に。お客様?」
芳 恵「うん。 さあ颯人、ねっ、お庭で遊ぼうね」
颯 人「やったぁ」
芳 恵「はい、やったぁ」
╳ ╳ ╳
芳 恵「お~」
芳 恵「えっ、これ何ですか?」颯 人「ショベルカー」
秀 樹「すいません。孫が急に遊びに来てしまって」
秀 樹「あの……家を売却するか、光友銀行さんのローンをお願いするか、もう少し考えさせてください」
美 波「もちろんです」
╳ ╳ ╳
永 瀬「榎本さん! 榎本さん!」
永 瀬「すいませんでした、余計なこと言って」美 波「ええ。永瀬さんのおかげで全て台なしです」
永 瀬「じゃあ、お食事は」
美 波「行ぐわげねぇべ!」
咲 良「秋田弁、出ちゃいました?」
咲 良「それ、めっちゃ怒ってます」永 瀬「だよね」
ということで「へば!」に続いて二度目の秋田弁による捨てぜりふであった。続く。