実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


最新記事〕 〔過去記事〕 〔サイト説明〕 〔管理人

【第810回】別れても好きな人の巻(北川景子『リコカツ』第6話)


 2008年2月25日の朝刊。だいぶ古いものだが、『ゲキカラドウ』で泉里香と共演した平田満が『リコカツ』で北川景子とも共演することになって、そういやゴールデンタイムのテレビ欄に平田満と沢井美優の名前が並んだこともあったな、と思い出したので載せてみた。



 さてチマタではどんぎつねが星野源に捨てられたと話題だ(笑)。それで思ったんだけど、『逃げるは恥だが役に立つ』って(私は前半の3話くらいしか観る機会がなかったんだけど)『リコカツ』に似ているなあと。違うかな。どちらも「結婚シミュレーションドラマ」という括りになりませんか? 




 私事ですが、うちの娘はしばらく前に東京の大学に行っちゃって、そのまま東京で就職していて、加えてこの四月からは息子も京都の大学に入り、私はいま新婚時代の二年間以来、およそ四半世紀ぶりに妻と二人きりで暮らしているわけ。なんか妙に意識しちゃったり、突然、熟年離婚を突きつけられたらどうしようか、なんて対応を考えてみたり(笑)。そんな心境で観るとなおさら『リコカツ』は沁みる。ほぼ毎回、感動の涙を流しています。バカだねえ。



 ちょっと脇道にそれるんだけど、北川景子の女優デビュー作となった実写版セーラームーンは、白倉伸一郎プロデューサーが田崎竜太をパイロット監督に起用して制作、2003年10月から2004年9月にかけて放送された。現実の麻布十番によく似た「東京の十番街」を舞台に、十四歳の少女たちの葛藤を描いた、仮面ライダーでもスーパー戦隊でもない異色の青春特撮ドラマだった。



 その翌年、白倉伸一郎プロデューサーは再び田崎竜太をパイロット監督に起用して、『Sh15uya』(シブヤフィフティーン)を制作した。このドラマは現実の渋谷によく似たバーチャルシティ・シブヤを舞台に、十五歳の少年少女の葛藤を描いた、仮面ライダーでもスーパー戦隊でもない異色の青春特撮ドラマで、2005年の1月から3月にかけて。月曜深夜に放送されていた。新垣結衣の女優デビュー作である。変身後のバトルスーツは、セーラームーンでクイン・ベリルの衣裳を担当していた竹田団吾のデザインであった。



 ほかにも実写版セーラームーンと『Sh15uya』にはつながりがあって、どっちも主題歌が小枝(現:小川トモヨ)だとか、『Sh15uya』第6話にゾイサイト(遠藤嘉人)がストリップ劇場のサンドイッチマン役でゲスト出演して、新垣結衣に蹴り倒されるんだけど、そのときの看板に「SMクイーン別里瑠(べりる)」と書いてあったり。




 そういうわけで、私のなかではなんとなく、北川景子と新垣結衣は「同門デビュー」みたいな印象がある。ただの錯覚だけど。



 『Sh15uya』は、回りの少年少女がみんな定期的に記憶をリセットされ、無限ループのような時間を生きているなか、エマ(新垣結衣)だけが記憶を失わず、シブヤというVR都市の秘密を握っている、という話だった。2015年に日テレで放送された『掟上今日子の備忘録』はその正反対で、主人公の掟上今日子(新垣結衣)だけが毎日毎日記憶をリセットされてしまうという設定だった。ガッキーのドラマのなかでは、私はこのふたつが特に気に入っています。



 本題に戻ります。『リコカツ』第6話「家売る夫婦の最後」(2021年5月21日、TBS、脚本:泉澤陽子/照明:大金康介/撮影:寺田将人・大塲貴文/監督:小牧桜/プロデューサー:植田博樹・吉藤芽衣)。『家売るオンナ』を意識したエピソードタイトルだが、実は家は売らないという話で、泣けた。



 これまでリコカツと言いながら、別れる気配を強めるどころか、ますます互いを思う心を深めてきた二人だが、いよいよ今回、離婚する。現実的には、この時点で離婚する必然性はほとんどなくなっている。紘一(永山瑛太)が一種の単身赴任と割り切ってひとまず実家に戻れば良いだけの話なんだが、第6話なんで、ドラマ的にはここらでおおきく転調しなくては、ということなのか。



 もう離婚するからたんなる同居、と割り切ってしまったことで、かえってひとつ屋根の下、気兼ねせずマイペースで過ごせるようになった二人だが、Xデーは近づいてくる。それぞれの父親も、母の希望する離婚に同意して、次はいよいよ(変な言い方だが)自分たちの番だな、とか思いながら、不意の五月雨に足止めされて雨宿り。しかしやがて、雨足も弱まって行く。




 咲 「紘一さん 見て!」



紘 一「虹か」



 咲 「二重になってる。ダブルレインボーだよ」



紘 一「おお……」



 咲 「初めて見た。何かいいことありそう」



紘 一「虹というのは、太陽光が空気中の水分に屈折・反射して起こる現象だ」



 咲 「えっ?」



紘 一「内側の虹は主虹といい、外側の虹は副虹という」



紘 一「水滴に出入りする光の入射角が違うのだ。副虹は主虹が強く輝かなければ存在しない」



紘 一「つまり、咲さんは自分にとって内側の光で」



紘 一「その、つまり」
 咲 「ん?」



紘 一「つまり……」



 咲 「ん?」



紘 一「うん、何でもない」




 咲 「何か、指輪みたいじゃない?」
紘 一「うん?」



 咲 「ほら、ちょうど2つあるし、結婚指輪だ」




 咲 「ねえ 貸して、貸して」




 咲 「こうして、見ると」






 咲 「何か、元気出た」



紘 一「そうだな」



 咲 「紘一さんがいてくれてよかった」



紘 一「自分も、君がいてくれてよかった」









紘 一「きっきれい……綺麗だな」



 咲 「うん。綺麗だね」




 咲 (どうしよう。私いま幸せだ)



 咲 (このまま時が止まればいいのに)


 いい歳した大人が「このまま時が止まればいいのに」なんて、可愛いですね。でもここで第3話「うれし恥ずかし偽装の新婚旅行」の、温泉旅館での会話が、伏線として利いてくる。



紘 一「私たちはいま、雨宿りしてるんじゃない? 雨がやんだら別々に歩きだす」



 咲 「今は少しの間だけ同じ場所で雨宿りをしている」



 咲 「私と紘一さんはそういう関係なんじゃないかな」



 雨が小降りになって、雲間から太陽が出て、虹が出てしまった。もうすぐ雨は止む。あんなこと言わなきゃ良かったね。



 別れの日、最後の晩ご飯ぐらい作るよ、と手料理を準備していた咲(北川景子)だが、担当している恋愛小説家の水無月連(白洲迅)が、執筆に行き詰まったといって押し掛けてきた。





 こいつこそ、せっかく離婚はやめようといった二人を、再び離婚に押しやった張本人みたいなもんだ。が、特別任務のあった紘一が自衛隊から帰宅した時には、もうほとんど料理は作家センセイに、さんざん食い散らかされた後だった。



 咲 「あ……今日がもう終わっちゃう」



紘 一「最後の晩餐だったのに、遅れてすまなかった」



 咲 「ううん、こちらこそごめんね」



紘 一「いや」



 咲 「それに水無月先生、味はイマイチとか言いながら、けっこう食べちゃって」



紘 一「自分も食べたかった、君の手料理」



 咲 「えっ?」



紘 一「いや」



 咲 「おなかすいたでしょ? あるもので何か作るよ」



紘 一「焼き魚が食べたい」



╳    ╳    ╳



 咲 「どうぞ」



紘 一「ありがとう」



二 人「いただきます」





紘 一「うん」



 咲 「いいの?最後の夜に食べるのがこんな……」



紘 一「自分は これが食べたかった。毎回、焼き具合が違っていて、食べる前は緊張する」



 咲 「何それ。ディスってんの?」



紘 一「それがいいんだ。君が一生懸命、焼いてくれたのが伝わってくる」



紘 一「実家の味しか知らなかったが、いつの間にかこの焼き魚がうちの味になっていた」



 咲 「うちの味? 紘一さんと私の?」



紘 一「ああ」



 咲 「やっぱり離婚するの、やめる?」



 咲 「何か離婚する理由がないような気がしてきた」



紘 一「理由はある。100個ぐらい優にある」



 咲 「えっ? ああ、そう、言われてみれば100個ぐらいは余裕であるな」



 咲 「じゃ今から100個あげよう」



紘 一「ああ。ちゃんとメモをとる」
 咲 「うん」
紘 一「足りるかな」



 咲 「離婚する理由その1。私はホントは朝ご飯はパン派なの」



紘 一「えっ、そうなのか?」
 咲 「ずっと我慢してたんだから」



紘 一「朝パン」



紘 一「離婚する理由その2。君の料理の腕前は最低レベルだ」



 咲 「作れなくたって困らないもん」



 咲 「離婚する理由その3。服装の趣味が合わない。いつも同じダサいシャツ」



紘 一「自分は これが気に入っている」
 咲 「でもダサい」



紘 一「服、ダサい」



紘 一「離婚する理由、その4。インテリアにうるさすぎる」
 咲 「こだわって何が悪いの?」
紘 一「こだわりすぎて息が詰まる」



 咲 「さっきは気に入ってるって言ってなかった?」



紘 一「あっ……だな。撤回する」



紘 一「離婚する理由、その4……」



 咲 「行きつけのお店が大盛りすぎる!」



紘 一「大盛りのほうがいいだろ」



 咲 「そんなに食べられないもん」



紘 一「ああ……半ライス」



紘 一「離婚する理由、その5……」



 咲 「声が大きくて、いちいちうるさい。ついでに顔もうるさい」



紘 一「顔がうるさい。どういうことだ?」



 咲 「ほら、また顔がうるさくなってる」



紘 一「顔」




紘 一「離婚する理由、その6」




 咲 「そっちの番だよ」



紘 一「自分は以上だ」



 咲 「100個は優にあるんでしょ?」



紘 一「そっちこそ言っていいぞ」



 咲 「考える。色々、色々たくさんあったけど、今すぐは思い出せない」



紘 一「自分も考える。絶対100個はある。でないと 何ていうか……」



紘 一「だが 100個思いつくのに一生かかりそうだ」



 咲 「一生かかる?一生かけて100個離婚する理由を探し続ける?」




紘 一「5つしかなかったとはな」



 咲 「ねっ」



紘 一「だが、一度決めたことだ。残り95個は追加で、ラインで」



紘 一「……ライン? ライン?」



 咲 「LINE」



紘 一「ラインで絶対に送る。絶対にだ」



 咲 「楽しみに待ってる」



紘 一「ああ……」



 咲 「次はちゃんと支え合うことのできる人、選びなよ」



紘 一「ああ。君もな」



 咲 「うん」


╳    ╳    ╳



紘 一「うん」
 咲 「うん」



紘 一「おいしい」



 咲 「おいしい? ホント?」





二 人「ごちそうさまでした」



紘 一「いや、自分がやる」



 咲 「ありがとう」







紘 一「うん?」



紘 一「荷物が届いたのか?」



 咲 「あっ、そういえば」



紘 一「カーテンか」



 咲 「今さらカーテン来ても、遅いのに」



 咲 「これつけて、部屋が完成するとこ見てみたかったな」



紘 一「つけよう」



 咲 「えっ、でも……」



紘 一「ああ……いま分かった。この家には君の選んだカーテンが一番似合う」


╳    ╳    ╳




紘 一「これが、君がイメージしたこの家の完成形か」



紘 一「自分のようにインテリアに疎い人間にも分かる。とても落ち着く」



紘 一「素敵だ。素敵な家だ」





 咲 「まいったか」



紘 一「まいった。全面降伏だ」




紘 一「この家を売るのは、やめよう」



 咲 「えっ?」



紘 一「君はここに住むべきだ」



 咲 「なに言ってるの?」



紘 一「ここからなら、君の会社にも、水無月先生の仕事場にも、通いやすいだろう」



紘 一「自分はここに住み続けることはできないが、ローンのことは気にするな」



紘 一「自分も払い続ける」



 咲 「そんなこと、しなくていいよ」



紘 一「初めてこの家に入ったとき、本当は……感動した」



紘 一「ここがなくなってしまうのは寂しい。……とても寂しい」



紘 一「自分達は別れるが、君が住み続けてくれたら嬉しい」



 咲 「何で今さら、そんなこと言うかな」



紘 一「君にプロポーズをして、結婚式で君を幸せにすると誓った」



紘 一「だが、それができなかった。すまない」



紘 一「すみません……うん?」



紘 一「ごめんなさい」



紘 一「そんな、そんな自分のせめてもの気持ちだ……君に新しい相手ができるまで」



 咲 「そんなこと……」



紘 一「自分は、想いを、言語化するのに、時間がかかる」




紘 一「すまない」




 咲 「……遅い……」




 咲 「……遅い!……」



紘 一「最後にこのカーテンをつけることができて良かった。自分がいなくなっても、せめて君のことを守れるように」


╳    ╳    ╳




紘 一「では、そろそろ行く」



紘 一「今から責任を持って届けを出してくる」




紘 一「今までお世話になりました」



 咲 「お世話になりました」






 長いでしょ。長いんだよ。ビデオの録画時間でいうと正味45分あまりのこのドラマで、CMも挟んで後半の10分以上もの間、カメラはダイニングから一歩も出ず、役者は北川景子と瑛太の二人だけというワンシーンが続いているんだ。久しぶりに台本を読んでみたいと思った。このドラマ、第1話では冒頭の雪山から披露宴会場、第2話ではキャンプ場、第3話では温泉と、それなりにロケが行われていたが、第4話は二人の家で行われたホームパーティーに主要キャラクター全員集合、第5話では「離婚はやめよう」といった二人の新婚生活仕切り直しから破局まで、徐々に物語の主要なパートが家のなかだけで展開するようになってきている。これはドラマ制作の現場にも「巣ごもり現象」がおこっていると見るべきなのか、脚本家の作劇術なのか。ともかくそのぶん、主人公二人の関係がしっかり濃く描かれているんですね。





 で、紘一が出て行って、一人家に残された咲は、このあと、やっぱり離婚はいやだと思って家を飛び出す。しかし追いついた時には役所の前かどこかで、紘一はすでに、さっくり離婚届を提出した直後であった。







 離せない別れの握手をムリヤリ振りほどいて去って行く紘一、さっきまで握っていた手の温もりを頬にあてて泣きじゃくる咲、というところで第6話終了。



 まあドラマの展開としては仕方ないんだろうけど、キャラクター的には相当無理があるよね。咲がいま担当として抱えている作家はかなり面倒な人物で、ふりまわされる彼女に夫の理解は欠かせない。当分の別居も必要かも。でも、まだお互いをこんなに想い合っているなら、離婚に発展する案件ではない。これまでだって紘一は、咲に理解のあるところを示してきたじゃないか。なのに今回は、口下手で、決めたことは守る、という頑固者キャラの一点突破で、離婚届を出すところまで話をもって行く。かなり強引な運びである。こいつ何考えているんだろう、と脚本を読んだ瑛太も思ったのか、後半になればなるほど、何を考えているのかわからない怪演で視聴者の感情移入を拒む。で、結果的に視聴者の気持ちは北川さん演じる咲にシンクロするのだから、北川ファンとしてはこれでいいのか。あとM14さんも書いていたけど、あのテーマソングがかかると無理筋の物語展開にもだいたい納得する、というのもあるな。



 こうしてついにサイは投げられた。「リコカツ」のタイトルにいつわりなし。はたして復縁はあるのか? 次回は「うさぎと結婚詐欺師」「腹黒3尉、煮物が余る」「恋愛小説家の憂鬱」の3本です。ではまた。





 あ、それから北川景子さんはこのドラマでよく走っているね。いまのところ第1話、第2話、第4話、第6話で走っている。そのうち第4話でパパ(平田満)を追いかけている以外は、どれも瑛太が相手で、瑛太から逃げ出す(第1話)、瑛太の手を引いて走り出す(第2話)、瑛太を追いかける(第6話)となっている。全話終了してから振り返ってみたい。



……こっちの人も走っているし、こっちのレビューもやらんとなぁ……