実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第811回】逆光のマドンナの巻(北川景子『リコカツ』第7話)


 今回は生徒会長(池田エライザ)も大ピンチらしい『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』は4月29日(木)公開改め5月12日(水)公開改め6月1日(火)公開。本当に6月1日に公開されたら浜辺美波さんが10回ジャンプする動画を配信してくださるそうなので、ジャンプしてくださいますように、ではなくて公開してくださいますように。



 さあ、時間がないしサクサク本題にはいろう。『リコカツ』第7話「離婚宣言!そして、新たな恋の予感…!?」(2021年5月28日、TBS、脚本:泉澤陽子/照明:椙浦明規/撮影:寺田将人・大場貴文/監督:鈴木早苗/プロデューサー:植田博樹・吉藤芽衣)。紘一(永山瑛太)と咲(北川景子)がバラバラになった途端に、ドラマとしての面白味が大幅にレベルダウンて、二人の気持ちと同じくらいつまんなくなった。予想どおりというか、ご覧になったみなさん、そう思われたでしょ。逆に後半、離れ離れになりながらも、お互いのことを忘れられない二人が、ラインでやりとりするあたりから、がぜん楽しくなってくる。


(以下のシーンで、北川景子演じる咲には、常に後光が差している。背後のテラス窓から入ってくる陽光を浴びているわけだが、対照的に紘一は、あまり光の届かない暗い屋内にいる。が、ラインでやりとりをしながら少しずつ移動して、電話で会話が通じると、明るい縁側に出て腰を降ろす。まるで咲の背後の窓から差し込む陽光が、紘一に届いているかのような構図である。紘一にとっては、咲こそが自分を照らしてくれる光なのだ。ただし夜になれば、光の入らなくなった窓をカーテンが覆う。カーテンはもちろん、暗闇から咲を守る紘一の象徴である。「自分がいなくなっても、せめて君のことを守れるように」と紘一の意志で残していったものだ。二人の距離は本人たちが思っているほど遠くない。互いへの想いは感応しあっている。以上の演出に加え、監督はさらに、この一連の場面で、ところどころ二人の動作をシンクロさせることによって、絆の深さを強調する。咲が歩き回れば紘一も歩き回り、紘一が縁側に腰を降ろせば、咲もダイニングに腰かける。)





(通知音)



(LINE 新着メッセージがあります。)




紘 一(離婚する理由その6。皿の洗い方が甘い)



 咲 「えぇっ? ちゃんと洗ってたし」



紘 一「残り95個は追加で、ライン、LINEで絶対に送る」




紘 一「絶対にだ」



 咲 「ホントに送ってきたんだ」



 咲 「真面目か!」



(通知音)





 咲 (離婚する理由その7。お皿の洗い方にこだわりすぎる。だったら最初から自分で洗えばいいのに)




(通知音)



紘 一(離婚する理由その8。家族会議の時 『紘一さんいい人じゃない』と言われたのに肯定しなかった)



 咲 「え~っ?」




(通知音)



 咲 (あそこで肯定したら変でしょ。離婚報告の場なんだから)



紘 一「うっ、うっ」



紘 一「それとこれとは……」



 咲 (別れた後も、自分の印象がそんなに気になるんだ)



 咲 (あの場面でそんなこと考えてたなんて、がっかり。紘一さんだって『咲さんみたいな人と一緒になってくれて安心してたのに』って言われたとき、肯定するべきだったんじゃない?)



紘 一「あ~っ!あっ、もう!」



(携帯着信)




 咲 「もしもし」



紘 一「まだ返信を送っていないのに、続けてドンドコドンドコドンドコ」



紘 一「……ドコドンドコドンドコ送ってくるとか……その……焦ってしまう」



 咲 「前から思ってたけど、文字打つの遅いよね」



紘 一「えっ?」



紘 一「だが、ひとたび電波の届かないところに行けば、君のその技術は役に立たない」



 咲 「えっ? 話、飛躍しすぎ(笑)」



紘 一「離婚する理由その9。文字を打つのが遅いと笑った」



 咲 「離婚する理由 その10。器が小さい」



紘 一「小さくない!」



 咲 「ほらぁすぐ怒る」







紘 一「ああ、ああ、では、うん……あの、聞こう、うん」



紘 一「元気……だったか?」



 咲 「……うん、私は元気だよ。そっちは?」



紘 一「ああ、特に問題はない……うん。よかった」



紘 一「実は……」



 咲 「うん?」



紘 一「いろいろと気になって仕方ないことがある」



 咲 「なに?」



紘 一「自分は君を一生守ると言ったのに、何の役にも立たず」



紘 一「キズモノにしてしまったのではないかと、自分の無力さに嫌気がさす」



紘 一「すまない」



 咲 「私は……」



 咲 「大丈夫……」



紘 一「そうか」




紘 一「ああ、そういえば 君のお姉さん、離婚すると言っていたが大丈夫か?」



 咲 「ああ、うん。貴也が……」



紘 一「えっ!? えっ?」



 咲 「あ……青山さんが」



紘 一「ああ、ああ、あの弁護士の元カレ貴也が力になってくれてんのか」



紘 一「ああ、そうだよな。自分よりよっぽど頼りになるだろうな。あの元カレ貴也は」



 咲 「そんなこと言ってないじゃない」



紘 一「それとも、元カレ貴也ではなく、今の、今の彼氏貴也に戻ったのか?」



 咲 「なに言ってるの? 何でそうなるわけ?」



紘 一「離婚したとたん、元カレ貴也と下の名前で呼んで」



 咲 「もういい加減にして! 男の嫉妬は見苦しいよ」



紘 一「嫉妬?……しっ 嫉妬? ……えっ、嫉妬?」



紘 一「すまない!」



(電話が切れる)




紘 一「嫉妬……」



紘 一「嫉妬……」


 ケンカなのに観ていて楽しい。普通のホームドラマで夫婦ゲンカのシーンを延々続けられたりしたら、イヤになっちゃうだろうが、そこを一回ひねって、離婚してからリモートで文句をぶつけ合う、という設定にした脚本が秀逸である。別れの場面の、離婚する理由が五つ以上続かない、というくだりにも感心したけど、その続きをここでこういうふうに使うか。



 このあと咲は、クリーニングに出したまま忘れていた紘一のシャツを、実家に届けに行く。もちろん、紘一の顔が見たかったなんだけれど、あいにく不在で、義父に渡した後、もやもやしたまま帰路につく。




 すると想い出の定食屋を見つける。「よしの食堂」は神奈川県相模原市に実在するお店を、名前ごとロケ地に使っている。「鳥のからあげ定食」は750円だそうだ。



で、つい店内に入って、あの時の唐揚げ定食を注文する。そこで、一ノ瀬(田辺桃子)と連れ立ってやってきた紘一とばったり再会する、というくだりがある(一ノ瀬は遅れてくるので、しばらく咲と紘一の二人きりだ)。



 個人的にはちょっと意外だった。今回は二人は直接会わないまま、お互いに対する想いを募らせて終わるのだと思っていた。



紘 一「なぜ君がここに?」



 咲 「えっ……それは……」



紘 一「もしかして」




紘 一「君は、本当は……」




紘 一「この店の唐揚げが気に入ったんだな」



 咲 「へっ?」



紘 一「だから言っただろう、ここの唐揚げは最高だと」
 咲 「ああ……うん、そうだね」



紘 一「君の考えや気持ちは、手に取るように分かる」
 咲 「……ホントだね……」



紘 一「……もう、君の夫じゃないのにな」



 ドラマ的には笑わせに来ている場面だが、ポイントは、「君の考えや気持ちは、手に取るように分かる」とか言いながら、紘一には「咲も紘一のことが好き」という肝心で単純な事実がまったく分かっていない、という点にある。まあ、咲も第1話で、結婚した理由を「私の勘違いでした!完全に吊り橋効果ですけど!」って言い放ったきり、訂正していないもんな。上書きしてやらないと自動更新されないのだ、この男の認識は。



 このあと「遅れてしまいましてすみません」と、これ以上ないバッドなタイミングで一ノ瀬が店に入ってきて、雰囲気はぶち壊しとなり、咲は店を飛び出して行く。





 その時でさえ「もう帰るのか?」と、咲の態度の急変に驚いている。咲が嫉妬しているなどとは思いもよらないのだ。もちろん一ノ瀬の想いにもまったく気づいていない。




 ともかく、ダブル主演という名目だが、救出したそのとき、紘一が一目ぼれして、最初のデートでプロポーズして、そこから動き出す物語なので、北川さんが常に永遠のマドンナとして、物語の中心で輝いていなければいけない。瑛太もそれを踏まえて、北川さんの魅力を引き立てる役割に徹している。



 それがこのドラマの魅力なのだが、まだ咲の周辺は、お母さん(三石琴乃)の若い恋人が結婚詐欺師だったり、姪っ子(夏野琴子)が学校で問題を起こしたり、元カレ(高橋光臣)や担当作家(白洲迅)の両方が迫ってきたり、イベントが盛りだくさんだ。




 田辺桃子演じる一ノ瀬3尉こと「筑前煮女」も、天性の憎まれ役というか、絶妙の間合いで二人の邪魔をしているし、このへんのごちゃごちゃが片づかない限り、物語は最終章に進まない。



 『月刊 ザ テレビジョン』によると、『リコカツ』は2021年の6月18日放送第10話が最終回とのことであるという。予想では最終回は時間拡大しそう。だとすれば、少なくとも次回の第8話(6月4日放送)では、2人の関係性にまだ大きな変動は起こらなそうである。



 しかし、となると、次回の金曜ロードショーは『ボヘミアン・ラプソディ』である。私と同じように、次回は観るのをお休みしても、最終回の視聴に大きな支障はない、と見切った人は、来週は『リコカツ』を一回休みして金曜ロードショーにボヘミアンしてしまうかもしれない。いや私は北川景子主演だからこっちを観るさ。でも視聴率がたいへん心配。こうなると、敵が連続ドラマではないのが痛いね。
 一方『高嶺のハナさん』は、ハナさんと弱木きゅんが社運をかけてCOPに挑む。





 ハナさんはお菓子に対する無垢な弱木に「自分に欠けているもの」があるかも知れない、と思ってパートナーに選んだのだが、でもひょっとすると自分は究極の公私混同をしているのではないか、と悩んでもいる。まあそうとも言えるね。






 ただここから、原作マンガを知っているとかなり苦しい展開になる。なぜならこのCOP(クールジャパン・お菓子プロジェクト)なる企画、原作では、オリンピック開催期間にあわせて海外の観光客にもウケるお菓子をヒットさせて、海外進出の足がかりとしようというビッグなプロジェクトなのである。「オリンピック」という肝心のひと言がないと、なぜお菓子会社が「クールジャパン」で「ミツバチ製菓の社運をかけた世界戦略」を練っているのかがいま一つ伝わらないように思う。





 まあしかし、そこは目をつぶって、ドラマは原作どおり、アニメオタクの弱木が「クールジャパンって言葉には漫画やアニメも含まれるはずですし、いろんな視点からヒントを得たほうがよくないですか?」とハナさんをアニメ映画鑑賞に誘い、言われたハナさんが「まあ何かヒントになるなら別にいいけど」とかクールに言いながら、内心では弱木との映画館デートに超浮かれる、という展開になる。








 しかしもうタイムアップで、私も疲れた。やっぱり、どちらも戦士が主演のドラマをふたつ、同時進行でレビューするには無理がある。このブログは、ウィークデイ深夜2時の実写版再放送をレビューするなどというバカな企画から始めたが、もうそんな体力はないよ。今回はこれまで。『高嶺のハナさん』はそのうちまとめて特集しようかな。







 ま、さしあたって今回はどっちかというとイチゴちゃん祭りだしな。ではまた。