実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第809回】みんなちがって、みんないいの巻(北川景子『リコカツ』/泉里香『高嶺のハナさん』)


 『鬼滅の刃 無限列車編』は今週末ついに国内興行収入400億円を突破する。まあとにかく、この一年で映画興行界は、上映作品数を絞り、集客力のある映画だけを集中的に幾つものスクリーンにかける、という商売方法に偏ってしまったみたいで、それはそれで困ったもんだ。当分は『カメラを止めるな!』(2017年)みたいな作品は、ヒットどころか劇場にもかからないだろう。



 インディーズばかりではない。メジャー作品にも影響は出ている。ゴールデンウィーク公開予定だった『映画賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』の公開が5月12日に延期になったと思ったら、緊急事態宣言の延長&拡大にともない、再延期が発表された。いったい何に押し出されて上映できなくなっているのかといえば、そりゃもうコナンに決まっているでしょ。浜辺美波も声の出演をしているしね。



 そう思って名古屋のミッドランドスクエアシネマの番組表とか見たら、確かに『名探偵コナン 緋色の弾丸』も1日9回もかかっているんだけど、あと『るろうに剣心』も7回上映されている。それ以外の映画はだいたい1日1回くらいずつしかやっていない。『るろうに剣心』も強いね。
 そういえば先日、2021年4月30日の日テレ「金曜ロードショー」では久しぶりに第1作目がノーカット放送。地上波4度目の放送であったにもかかわらず、視聴率は12%をマークした。ちょっと前の『M14の追憶』に、この日だけ『リコカツ』の視聴率が低いのは何故だろうと書かれていた(ここ)。私はコメントし損ねちゃったんだけど、正解は「るろうに剣心に斬られた」だと思います。



 現在「金曜ロードショー」は視聴者リクエスト企画をやっていて、今週は『タイタニック』、6月になると『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3週連続オンエアなんて企画もあり、『リコカツ』は苦戦しそうである。なのでちょっと敵をディスっておく。金曜ロードショーのサイトでは「映画コメンテーター」なる肩書きの有村昆さんが、「僕の人生を決定づけた作品」と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を絶賛しているが、今ごろデロリアンで過去を修正したいなんて思ってるんじゃないですか? って、有村さんをディスってどうするよ。



 その『リコカツ』は第4話のラストでいったん「離婚はやめよう」というところまできたが、第5話では一転、紘一と咲、そしてふたりの両親がそれぞれ離婚届に押印して、話数的にも折り返し点となった。あと佐野史郎さんが腎臓の病気で降板されて、『ゲキカラドウ』に続き(続きって何だ?)平田満が後を継いだ。ドラマのなかでは、平田満は登場するなり、妻の三石琴乃に三行半をつきつけられて離婚宣言される。しかし三石琴乃は、自分に乳がんの疑いのあることを夫に黙ったまま別れたのである。





 以上で第4話レビュー終わり(おいおい)。で、私の感じるこのドラマの良さは、ちょっと変かも知れないけど、主人公二人のゆるぎない安定感だ。この第4話でも、周囲がそうとうバタバタしているのに、二人はあまり流されないで、タイトルとはうらはらに絆を深めていく。でも第5話では、咲(北川景子)がワガママ人気恋愛小説作家の水無月連(白洲迅)の指名で担当編集者に抜擢され、文芸部に異動したことがきっかけで、周囲がガタガタ動き始める(「ついにホントの新婚生活、開始!?」2021年5月14日、TBS、脚本:泉澤陽子/照明:椙浦明規/撮影:寺田将人/監督:坪井敏雄/プロデューサー:植田博樹・吉藤芽衣)。




 気まぐれな流行作家センセイのお気に入り美人編集者というわけで、文芸部の若い同僚(椿原愛)からは「やっぱり美人は得ですね」的な目で見られてしまうし、昼夜かまわず電話をかけてくるセンセイのワガママで、家庭生活も壊される。あげく、だんだん黒い本性をあらわしてきた自衛隊航空救難団の一ノ瀬空尉(田辺桃子)に「別れたほうが良いんじゃないですか」とまで言われる。



 紘一は、パートナーである咲の仕事の便とか実家の距離を考え、水戸の実家を出て都内に新居を構えた。しかしそのせいで勤務先の自衛隊百里基地までの通勤時間がかかり、同僚にもいろいろ迷惑をかけてしまった。紘一は内緒にしていたのだが、一ノ瀬はそのことを咲に告げて追いつめようとするのだ。



 咲 「彼女、言ってた。私が仕事を辞めて、あなたに尽くしたらどうかって」



 咲 「あなたも本当はそう思ってるんでしょ?」



 咲 「この際、はっきり言って」



紘 一「……仕事を辞めて、家庭に入ってもらうわけにはいかないか?」



 咲 「じゃあ、あなたが仕事を辞めて、家庭に入ってもらうわけにはいかないの?」



紘 一「それは無理だ」



 咲 「どうして?」



紘 一「自分はメディックという仕事を誇りに思ってる。この仕事以外考えられない」



 咲 「私も同じだよ。私も自分の仕事に誇りを持ってる」



 咲 「辞めたくない。あなたが仕事を辞めたくないのと同じようにね」



 咲 「一緒に水戸には行けない」




紘 一「分かった。では 別れるということだな」



 咲 「えっ? どうしてそうなるの?」



紘 一「一緒に来られないということは、別れるということだ!」



 咲 「極端すぎるよ。別々に暮らすとか、仕事の都合で別居婚になる夫婦なんて、たくさんいるんだから」
紘 一「夫婦は一緒に暮らすものだ。それは絶対だ」
 咲 「また そうやって古い価値観を持ち出す」



紘 一「自分には別居婚は受け入れられない」



 咲 「どうしてそんなに頭が固いの? 分からずや!」



紘 一「悪かったな。君の元彼なら、こういうときも柔軟に対応してくれるんだろうな」
 咲 「はあ? どうしてそんな話になるのよ」
紘 一「やはり君には最初から元彼のほうが合っていた」



 咲 「どうして今さらそんなこと言うのよ!」



紘 一「どうしていいか分からないんだ!」



紘 一「……本当は君についてきてほしい。だが、それでは君の大切な仕事を奪ってしまう」



 咲 「だから、別々に暮らしてみたっていいじゃない」



紘 一「別々に暮らす時点で夫婦ではない!」



 咲 「……どうして分かり合えないのかな。私たち夫婦なのに」




紘 一「自分達は あまりにも違いすぎる。一緒になるべきではなかったのか」




 咲 「結婚したのが間違いだったってこと?」



 咲 「やっぱり、いちど別れようとしたのを無理にやり直そうとしても、うまくいかないんだね」



 咲 「これじゃ、一緒にいないほうがいいよね」



 咲 「やっぱり私たち、離婚するしかないのかな」



紘 一「そうだな」



紘 一「それがお互いにとって、一番いい選択だと思う」





 咲 「取っておいてよかったね、これ」



紘 一「ああ……ああ、そうだな」




 いや、ここまできちんと話し合いができている夫婦って、ないよね。嫌いになったわけではない。むしろ好きだからこそ、お互いの立場を理解し、尊重している。元カレや仕事の同僚に対する嫉妬心もちらっと見せて、気持ちをぶつけあったりしているけど、感情にふりまわされて罵りあうこともない(いまの北川景子にはそういう表現が普通にできる)。ただどうしても譲れないところがあって、だから双方が納得する着地点がみつからない。とっても相性の良いカップルである。親もとで長く育った瑛太が、もう少し頭を柔らかくして譲歩することを覚えればなんとかなる。すでに結婚してしまっている、というアドバンテージもあるし、経験的にいえば、あとは何だかんだしているうちに、時間が解決してくれる。




 話の流れとしては、今後は元カレの青山弁護士や一ノ瀬空尉、咲の担当作家の水無月連なんかが、ますます暗躍することになるんだろう。でも二人を見ていると、大丈夫、とは思っても、別れてしまいそう、というハラハラドキドキはない。そういう安心感があるので次回もつい観たくなる、ってなんかちょっと変だよね。でもそれがこのドラマの魅力だ。高倉健みたいな瑛太も良いが、北川景子もほんとうにお芝居が上手になったね。デビューから観続けている我々としては、しみじみそう思う。



 5月21日に放送される第6話のタイトルは「家売る夫婦の最後」だって(笑)。攻めてるなあ。
 さて一方『高嶺のハナさん』だが、第4話はまるまる「ハナさん、お化け屋敷に行く」というエピソードになっている(2021年5月1日、BSテレ東、原作:ムラタコウジ/脚本:岡庭ななみ/照明:丸山和志/撮影:神田創/監督:堀江貴大/プロデューサー:瀧川治水・清家優輝)。原作は以下のとおり。

第16話「ねりまえん視察」



 ある日のハナさんは珍しく早いあがり。都内の遊園地に寄って、そこで売っている自社のお菓子の様子をみてくるというのだ。すると弱木も一緒に行くと言い出す。




 はからずも遊園地デートになってしまって心臓が破裂しそうなハナさん。ところがなぜかチャラ田とイチゴちゃんもついてくる。




 幸い商品は好評らしかったが、そこで担当者から、リニューアルしたばかりのお化け屋敷をぜひ観に行ってくれとすすめられてしまう。


第17話「おばけやしき」



 お化け屋敷は二人一組で入るルールになっている。じゃんけんの結果、チャラ田とイチゴ、ハナと弱木の組み合わせになる。弱木きゅんと一緒になって、始まる前から超ドキドキだのハナには、小学生のとき、お化け屋敷で恐怖のあまりお漏らししてしまったという苦い過去がある。







 ここから先は原作をだいぶアレンジしてある。私がいちばん興奮したのは、ハナさんの「え~っ!? まさか弱木くんの前でお漏らしするわけには……」というセリフ。これは原作にはなかったが、泉里香のモノローグに鼻血が出そうになった。私は変態かも知れない。




 あと、お化け屋敷に入ってからは、原作コミックではハナさんが怖さのあまりほとんど動けなくなって、弱木君にしっかり手をつないでもらって出て行くんだけど、ドラマのほうでは、いろいろゾンビ的なものが出てくるので、必死に走って逃げて、外に出たところで思わずハイタッチをするという展開。









第18話「視察打ち上げ」


 これはもう、思いっきり原作どおり。打ちあげの酒席で、ぎこちない二人。いちごちゃんに「高嶺先輩、弱木先輩、お化け屋敷でなにかあったんですか〜?」と尋ねられて狼狽したり、思わず「なんもないよ!」と反応した弱木にショックを受けたり。











第19部「COP始動」


 社長から呼び出されたハナさんは、新企画「COP」(クールジャパンお菓子プロジェクト)の責任者を任される。2020東京五輪とタイアップした企画で、お菓子を通じてクールジャパンをアピールするのだ。ただし、自分に足りない部分を補ってくれるパートナーを一人選んで、チームで取り組むように、というのが社長から与えられたミッション。ハナがパートナーに選ぶのは誰か。










第20話「告白」


 パートナーとして弱木を選んだハナさんは「僕なんかどうして?」と訊ねられ、うっかり「好きだから」と答えてしまって大慌て。












 以上、前回は3話構成のサザエさん方式だって書いたが、よく読んだら3話と限った話でもなくて、今回は原作エピソード5つぶん。この次のドラマ第5話も、原作の第21話「映画視察」、第22話「ヒトリズモウ」、第23話「謝りたいこと」、第24話「イチゴの夜」、第25話「イチゴの仮面」の5エピソードという感じで、サクサク軽快に進んで行く。物語の配列も原作の順序通り。



 『鬼滅の刃』大ヒットの要因に「妙なアレンジを加えず原作どおりに映像化したこと」ということを挙げていた人がいたけれども、『高嶺のハナさん』ってものすごく原作どおりの実写化で、だからマンガと比較することで、泉里香がいかに上手にキャラクターをデフォルメして実写に落とし込んでいるかがよく分かる。これは亜実ちゃん以来の、彼女の天性の才能ですね。北川景子も泉里香、演技の方向性がおおいに異なる戦士たちがそれぞれ絶好調で、嬉しい春です。ということで、また次回。