私はこの歳になってようやく初めて「もう紅白はいいや」という気持ちになった。今回の『第71回 紅白歌合戦』(2020年12月31日、NHK)は、無観客のぶん様々な演出の試みがあって、ショウとしてはすごく面白くなったが、なんか「紅白」という特別な感じは消えました。考えてみれば、ホールに客を入れてやる歌謡ショウ形式のテレビ番組なんて、もう「NHKのど自慢」と「NHKおかあさんといっしょファミリーコンサート」と「NHK紅白歌合戦」くらいしか残っていないか。
今年はそれと並行して、手もとのスマートホンでAbemaTVの「ももいろ歌合戦」も観ていたんだけど、こっちのほうが面白かった。全体的には長すぎるけど、フルコーラス歌うって、やっぱりいいなあ、と思った。紅白なんか、もともと持ち時間が短いし、中にはサビばかり3曲ぶんぐらいつなげた「紅白特別バージョン」なんてもあるけど、歌う方も聴かされる方も、もの足りなくないかい。今さらな話だけど。
あと結成10年で紅白初出場のBABYMETAL(岡崎百々子入り)を観ていたら、さくら学院は来年閉校なんだなぁ、とじわじわきて、むしろ悲しくなってしまったよ。さて本日はお正月の小ネタ集。脈絡ない雑談になると思うけど、そこはお屠蘇気分でご勘弁を。
1. 嬉しい誤算
まずはやっぱりNakoさん(笑)。今年もお誕生日おめでとう(「今年も」って……)。というわけで、まずは2020年最終週の映画興行ランキングから言ってみよう。
1位はもちろん『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』で、週末にまた10億円ほど積んでトータル324億を超えた。いよいよ未知のゾーンに突入。原作者や声優やアニメーターにはボーナス出ないのかな?とにかくおめでとう。2位は『劇場版ポケットモンスター ココ』で初週にしてトータル6億円。さすがポケモンです。3位が『新解釈三国志』でトータル25億円弱。これも強いね。4位『映画 えんとつ町のプペル』は、お笑いコンビ「キングコング」の西野さんが書いた絵本のアニメ化だそうで、すみません、知らなかった、なんと初週で5億円近く稼ぐヒット。
そして『約束のネバーランド』ですが、土・日に1億円弱を積み、2週目にして10億円……は行かなかったが、9億5千万円は達成。10億円越えは確実となった。ここまでくれば、たぶん15億円は狙えると思う。いろんな意味で予想を裏切る……というより、私の悪い予想が大ハズレだったわけで、でもこれはとても嬉しい。この流れに乗って2021年を良い年にしていきましょう。
2. Knockin' on Heaven's Door
さて、今回はのっけから紅白にケチをつけたが、なんだかんだとNHKは偉大だ。もちろん12月28、29、30日と小林靖子脚本で実写ドラマ『岸辺露伴は動かない』全3話を放送してくれたからだ(制作統括:鈴木貴靖、土橋圭介、平賀大介/脚本:小林靖子/照明:鳥内宏二/撮影:山本周平/演出:渡辺一貴)。
けっこう面白かった。ただ私の評価はあてにならない。(言わなくても分かっているか。)私は原作をほぼ読んだことがなくて、ちょっとアニメを観て、実写版の映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017年)を観たぐらいだ。実写版は楽しめたが、ファンには不評で、興行成績も10億円まで行かなかった。
ジョジョはマニアが多いので、この実写ドラマ版『岸辺露伴』もネットでどう言われるか気になっていたけど、小林靖子はアニメ版のシリーズ構成も担当していて、そもそも本人が原作のファンだけあって、評判は上々でやれやれ。
NHKの広報が力を入れているのか、今回は小林靖子インタビューがいくつかのメディアに配信されている。だいたい似たようなものだけど、まずは『テレビガイド』から、映像化の経緯について。
小 林「まずは原作の短編がいくつもある中から、どれをピックアップするかから始めました。実写に落とし込める作品をまず決めて、漫画から2本、小説から1本決めました。3話とも短編なので49分の枠には少し短くて、原作の要素を膨らませていくことで伸ばしました。今回は原作を知らない方にも見ていただけるよう、まず岸辺露伴が何者であるか、という紹介の描写も入れています。あとは、特殊能力の描写が実写では難しい部分もあり、方法や使う回数なども少し変えています。映像にするという意味では、漫画をアニメにすることと同じですけど、実写になると情報量が多くなります。空気感がロケとセットでは違ったり、雰囲気が原作と変わったりしてしまう。最近はテレビも奇麗になって、口のドアップなどを実写でやると気持ち悪くなってしまうから、それが大丈夫なように変えたりしました」(『TVガイド』2020年12月24日)
次は『リアルサウンド』から。今回、主役のカリスマ漫画家、岸辺露伴(高橋一生)のパートナー的存在として、編集者の泉京香(飯豊まりえ)が全話を通じて活躍するが、原作ではそれほど大きな扱いではないという。ひょっとして飯豊まりえに何かしら思い入れでもあるのかな、と思ったが、お答えはそうであるようなないような、微妙な話だった。
小 林「明確には言葉にはしづらいのですが、京香の出番が増えたのは“ドラマの勘”というか、感覚的なものなんです。京香がいることによって物語が上手く流れてくれるのではないかなと。監督やプロデューサー、集英社さんの方でOKならばOK、変える必要があれば変えるという風に構築していきましたた」(『Real Sound』2020年12月28日)
そうか。意味もなく不敵な大物感を漂わせる飯豊まりえの秘密がなにか分かるかと思ったが、「ドラマの勘」だって。
最後に『オリコンニュース』。ここでは「そもそも文章を書くことが好きではないです」 という仰天の発言。
小 林「文章というか、小説の地の文が苦手。せりふを考えるのは好きなんです。だからシナリオは書ける。ト書きには美しい文章や独特な表現はいりませんからね。小学生の頃からノートにせりふのやり取りだけを書いて、脳内で映像化して楽しんでいました。作家や脚本家は自分の表現したいことや自分にしか書けないものを持っているイメージがあるのですが、私はそういうタイプではないんですね。だから自分のことを作家とも脚本家とも思っていないんです。強いて言えば“脚本士”。作品やキャラクターの魅力を映像的にどう伝えるべきかを考えて、これまで培ってきたシナリオライティングの技術を駆使してそれを実現する。そこに自分らしさは必要ないというか、全く意識していないですね」 (「ORICON NEWS」2020年12月27日)
「脚本士」だって。まあね。ドラマの基本は台詞である。ギリシア悲劇だってシェークスピアだって基本はセリフのやりとりだけだ。ト書きの部分がふくらんで小説になったわけだが、近代以降の文学はト書きを高く評価し過ぎである。別に小林靖子は間違っていないね。というわけで次の話題。
3. AVソムリエの怠慢
『an・an』の表紙を飾るなんてけっこうすごいことなのに、元日からAVソムリエでYahooニュースに載っているタキシード仮面もいる。渋江譲二。記事は『日刊スポーツ』の「映画監督・谷健二の俳優研究所」というコラム。谷健二は2014年の短篇映画『Dの記憶』(youtubeで視聴できる)や、2018年にMXテレビで放送された『メンドル学園』(私は観てない)で渋江くんと組んでいる。
コラムは、谷健二さんが高校生のころ、ラジオの「福山雅治のオールナイトニッポン」のファンだったという話から始まる。イケメンが堂々と下ネタを語るときのインパクトを語った後、本題へ。
「知り合いの女優さんが掲載されているとのことで久々に週刊プレイボーイを購入。昔の気分に戻ってペラペラとページをめくっていると、ここにも知っている俳優さんの名前が。しかしその見出しは「注目の“AVソムリエ”が激推し!!秋の夜長にテイスティングしたい赤ワイン女優&白ワイン女優」。立ち読みだとスルーしてしまうであろう内容、そこに今回紹介する渋江譲二くんが“A○ソムリエ”の肩書で掲載されている……。
イケメンが下ネタを話す。これほど強いものはない。元来イケメンといえばシャイでむっつりでいてほしいものである。何かで読んだが、少年誌で人気が出る主人公は大体童貞である。ろくでなしブルースの前田太尊や、スラムダンクの桜木花道を思い浮かべてみて欲しい。そこにきて、イケメンヒーローであった彼の転身(俳優は辞めていません)は希少であり尊い。今後、AVソムリエとして俳優として、より明るい未来が待っているであろうと確信している」(「映画監督・谷健二の俳優研究所」12月26日)
ということだが、しかし渋江譲二はここんとこ、AVソムリエとしての仕事をマジメにいるのか。別にしていなくてもいいが、FANZAのAVレビューは「渋江譲二が巣ごもり期間にキュンキュンする傑作と出会った!石原希望の可愛さに度肝を抜かれた!」(2020年7月1日)以来、更新がないし、上の記事に紹介されている『週刊プレイボーイ』でイチオシ女優の天然かのんさんにインタビューしているのだって2020年9月21日号 (発売日は9月7日)である。
ステイホーム期間でAVソムリエの需要は高まるかと思ったらあまり高まっていない、ということであろうか。まあ俳優業にもっと精を出せって激励だと思って欲しい。
4. Mars meets Saturn
最後の話題。昨年の暮れは『ハンサムセンキョ』のおかげで当ブログなりの仕方で窪寺昭を送ることが出来た。そしたらネルケ版初代マーズの七木奏音が、年末のブログで、藤木孝と窪寺昭に追悼のことばを綴っていた。
そうか、七木奏音と窪寺昭は2018年の『七つの大罪 The STAGE』で共演していたのだ。
藤木孝さんわたしがまだまだ芝居に恐れていたとき、より役として生きれるように 沢山の言葉やアドバイスをかけてくれました。なにより 藤木さんのお芝居を楽しむ姿がずっと 印象に残っています。自由にやっていいんだって 楽しんでいいんだって…
窪寺昭さんでらさんのカツラをメイクさんに被せられながらメイク室で来るのを待機してるとわたしの姿を見た瞬間に崩れ落ちるまで笑ってくれました。なにかとツッコミをくれてだけど芝居に対しての自信をくれて…次に共演できる日までまた ひとつひとつ力をつけて会いたい会えるのを楽しみにしていました。
おふたりの お芝居をまだまだ観ていたかった。でも おふたりから感じた舞台を芝居を愛する周りの仲間を気遣う優しさそしてお二人が仲間からとても愛されていた日々。
もっともっと書きたいことはあるけれど 今は精一杯です。(七木奏音オフィシャルブログ「ななきいろ」12月31日)
こういうの読むと、この一年は舞台関係者にとってまさしくサバイバルの年だったんだな、と改めて実感させられる。奏音は、何よりも本人の努力あってのことだが、仕事にも比較的めぐまれていた。そのことに感謝しつつ、逝ってしまった先輩たちの想いも汲んでいるのだ。ときどき松野莉奈のことも書くし、この子のブログを読むと、私はいつも心が洗われます。
セーラームーン的には『少女☆歌劇レヴュー スタァライト -The LIVE- 青嵐 BLUE GLITTER』に、セーラーサターンの高橋果鈴と姉妹役で再会した。そういうのも有料配信してくれたのが、2020年の収穫といえば収穫であった。
まとまりはないが今回はそんなところで。重ねて、今年もよろしくお願いします。