実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第763回】泉里香『隕石家族』第5話・第6話の巻

 みんなマスク来た? うちはまだ来ない。
 さて、評判が良いのか悪いのかよく分からない『隕石家族』だけど、とにかくレビューが滞っているので、さっさと進もう。
 第4話で「私は最後の時を森山先生と迎えたい」とドラマチックに家を出ていって、もう物語から退場かと思われた美咲(泉里香)だが、幸いそういうことにはならなかった。エンディングテーマが流れる中、あと数ヶ月で地球に衝突するはずだった隕石が、軌道を外れていったという驚愕のニュースが飛び込む。世界はまだ終わらないらしいのだ。



 そして第5話「リセット家族」(2020年5月9日、原作・脚本:小松江里子/照明:生嶋航/撮影:布川潤一/監督:竹村謙太郎)。「あれ」が来ないことが分かり、疎開していた人々が町に戻り始めたある晩、門倉家の勝手口で夜中におかしな物音がする。ママと結月がおそるおそる様子をうかがいにいくと、それは出戻りの美咲だった。



久美子「美咲?」
結 月「お姉ちゃん?」



美 咲「よっ、久しぶり」



結 月「何してんの」
久美子「どうしたの?」


╳    ╳    ╳



美 咲「ん~」



美 咲「バスはずっとスシ詰め状態で、しかもサービスエリアに寄っても弁当は品切れ、水も買えなくてな〜」



久美子「ちゃんと玄関から入ってくれば良いのに」
美 咲「それはちょっとね」



結 月「だよね。森山先生と田舎で過ごしてさ、最後の時いっしょに迎えるんだとかいって堂々と宣言して出てったんだもんね」



美 咲「状況が変わったんだから仕方ないでしょ。文句言うなら隕石に言ってよ」
久美子「それで、森山先生は?」



美 咲「いっしょに戻ってきた。先生、教師に戻るって」
久美子「じゃあ美咲もまた先生やるのね」



美 咲「ううん。私決めたの。先生がいるから中学の先生になって、先生が疎開するから一緒に田舎に行って、先生がまた先生するから『私も』って……それじゃあダメ」



美 咲「私は先生から自立したいの。だから自分がやりたいことをやる」
久美子「何するの?」



結 月「まさかモデル? よくスカウトされてたし」



正 子「美咲は政治家に向いているんじゃないの? 女性初の総理大臣になりたいって、小学三年の時よく言っていたものね」



久美子「昔のことはよく憶えてるのね。最近のことはよく忘れるのに」



正 子「なあに?」



久美子「あ、いえ」



美 咲「ね、おかわり」
久美子「え? すごいわね」



 しかしね。中学生のころから、あんなに森山先生(遼河はるひ)を一途に思い続けて、とうとう家族を振り切ってまで押し掛けていったのに、しばらく経って帰ってきたら、わりとあっさり「私は先生から自立したいの」と言う。疎開先で二人で暮らしていて、何かあったのかね。きっと何かあったんでしょう。そうなったらそうなったで、すぱっと方向転換できるところが彼女らしい。またそのくらい腹を括らないとやっていけないくらいの状況でもあるしね。第6話「勝手にしやがれ」(2020年5月16日、原作・脚本:小松江里子/照明:生嶋航/撮影:布川潤一/監督:トミー・チャン)。恒例の朝食シーン。

 


テレビ「……いちど止まりかけた経済を立て直すのは容易なことではなく、経済が元に戻るのは、まだまだ先のようです」



美 咲「だよね〜。何もかもぐちゃぐちゃになっちゃったんだから」



久美子「新聞に書いてあったんだけど、経営が厳しくて大幅なリストラをしている企業もあるんだって」



和 彦(急にむせる)


╳    ╳    ╳



「早期退職に応じてもらうことになる」



「君だよ」


╳    ╳    ╳



久美子「やあだ。パパの会社は大丈夫よ、大手なんだし」



美 咲「そうよ。それにアレの時も辞めずに忙しく働いていたじゃない」



正 子「そうですよ、何も心配することありませんよ」


 そう、世界が終わらないならば、ここしばらく経営もへったくれもなかった会社も、きちんと続くよう算段しなくてはいけない。結果、リストラ対象として肩を叩かれたのはパパの和彦(天野ひろゆき)だった。家族にはまだ内緒である。




が、しかし、いつものように仕事に出たフリをしたものの行き場もなく、公園でやっていた失業者向けの炊き出しで昼飯代を浮かせていたパパを、ジョギング中の美咲がみつけてしまう。



美 咲「パパ?」




美 咲「何してんの」



美 咲「会社は?」



和 彦「え、あの、その」



美 咲「まさか……」


╳    ╳    ╳



美 咲「はぁ、修羅場だねえ」
和 彦「でも大丈夫だ。退職金が出るから」
美 咲「とりあえずはそれでいいとしても、家族五人、いつまでもつか」



美 咲「いろいろ考えてから次の仕事決めようと思っていたけど、こうなったら手近なところで私が働くしかないか」
和 彦「言っておくがキャバクラは駄目だからな、あの、父親として許すことはできない。絶対ダメ」



美 咲「こうなってもまだ父親ぶるわけ?」
和 彦「え?」



美 咲「偉そうに父親ぶって、翔太君に男としてのケジメをつけろなんて言ったから、あの二人、別れることになったんじゃない、結月、怨んでたわよパパのこと」


 後に出てくるように、門倉家に居候をしていた翔太君(中尾暢樹)が突然、結月(北香那)に別れを告げて去っていったのには、いろいろ事情があるのだ。しかしこの時点では、結月はパパが翔太に説教したせいで出ていったと思ってむくれている。



美 咲「あの子、本気で翔太君のこと好きだったからなぁ」
和 彦「どうしたらいい?」



美 咲「私に聞かないでよ……じゃ」



和 彦「ああ、あの、リストラのことは言うなよ」



和 彦「次の就職先が決まったら自分から話すから、それまでは……」



美 咲「うちの家族に秘密はないんじゃないのぉ」



和 彦「これは秘密じゃない、公然の非公開だ」



美 咲「何言ってんだか」



和 彦「言うなよ」


 もうこの家族は隠し事だらけ。でも確かに泉里香の美咲なら、腹を括ればモデルでもキャバクラでも人気が出て、とりあえず稼ぎ頭になれそうだし、クールなようで根が優しくて家族想いだから、いざとなったらやるだろうなあ。



 で夕方、きゅっとネクタイを締めなおしたパパが、いかにも仕事が終わったという体で帰宅すると、家ではちょっとした騒動が勃発していた。



 最近どうも記憶の怪しいお祖母ちゃんの正子(松原智恵子)に、嫁の久美子(羽田美智子)が恐る恐る認知症の検査を勧めたところ、案の定「失礼にもほどがあるでしょ」大激怒。和彦はなんとか宥めようとするがおさまらない。するとそのとき謎の訪問者が。



 玄関のチャイムの音に「誰だよこんなときに!」と怒り出す和彦だが、やってきたのは見るから落ち着きある老紳士。自分を森本家の秘書、木下と名乗り、結月に折り入って頼みがあるという。



もっとも演じている浜田晃は13年前、『モップガール』第3話で、料亭の仲居のコスプレをした北川景子に金を握らせて手込めにしようとした国会議員なので、油断してはならない。まあこれは桃子(北川景子)自身の妄想シーンではあるが。






 すみません戻ります。木下の話とは先日、結月に一方的に別れを告げてこの家を出ていった翔太(中尾暢樹)のことだった。翔太の父は大資産家で、一年前、巨大彗星が地球に衝突するかも知れないと分かったとき、アラブの金持ちたちが、宇宙船を建造して地球を脱出する計画をひそかに開始した。このことについては前回の冒頭で少し述べたね。で、大資産家である翔太の父親もこの計画に申し込み、息子の翔太と二人で火星に移住しようとしていた。



 でも翔太は、自分だけ父親と生き残っても何の意味もないと考え、家を飛び出して地球に残る道を選んだ。それで恋人である結月の家に居候として転がり込んだのである。ところがここへ来て父親が急病にかかり、亡くなった。危篤を伝えられた翔太は、結月に理由も告げないまま門倉家を飛び出し、亡くなるまでずっと父親の看病をしていたんだという。



木 下「みなさん、大事なのはここからです」



木 下「実は、巨大彗星がまた向きを変え、三ヶ月以内に地球に衝突します」



和 彦「ええっ」



久美子「え、本当なんですかそれ?」
美 咲「確実な情報なんですか?」
和 彦「いやそんな、ニュースで何にも言っていませんでしたよそんなこと」



木 下「近々、政府から発表があります」



木 下「翔太坊ちゃまには生きていて欲しい。自分の代わりに、いちばん大切な人と地球を脱出して欲しい」



木 下「それが亡き旦那様の遺言です」


 宇宙船の出発は一ヶ月後。手続きのタイムリミットは二週間後。それまでに翔太お坊ちゃまと結月の二人に、旦那様の遺を汲んで地球脱出を決断して欲しい、そういう内容の依頼であった。さあどうする結月?



久美子「信じていいのかしら」
和 彦「あの言葉にウソはないだろう。いかにも有能な秘書だったよ。佇まいも威厳があったしなぁ」
久美子「だとしたら三ヶ月後には地球が終わっちゃって、私たちも……」



和 彦「でも、一度経験しているからか、そんなにショックじゃないんだよなあ」
美 咲「まあねえ」



久美子「なら、アレを用意しておかないと」



和 彦「それじゃアレもだ」



美 咲「アレもだ」




美 咲「ホッとしてるでしょう」



和 彦「ん?」


美 咲「あと三ヶ月なら退職金で何とかなるかもって」



美 咲「ま、それなら私も働かなくて済むからいいんだけど」



久美子「でも良かった。結月だけが家族のなかで生き残れるのね」



和 彦「運の良い家族だな、おれたちは」



美 咲「火星に脱出かぁ。映画みたいだね」



正 子「何、火星?……あ、結月、どこかへ行くの?」



久美子「えっ」



結 月「行かない」
全 員「えっ」



結 月「もしそうだとしても私は行かないから」



久美子「なに言ってるの? 一億分の一のチャンスなのよお」



美 咲「そうよ、こんなラッキーなことないんだから」



和 彦「どう考えたってそうだ。これで翔太君とも仲直りできるじゃないか」



結 月「パパは黙ってて。私は行かないの!」


╳    ╳    ╳



美 咲「結月がああ言い出したら、なかなかウンとは言わないよ」



久美子「そうねえ、あの子がいちばんこの家で頑固なんだから」


 いろいろ思い惑っていた翔太も、やはりどうしても結月を忘れられない自分の気持ちに正直になる。意を決して改めて門倉家を訪ね、黙って出ていったお詫びをして、結月を連れて地球を脱出したいと申し出るのだった。




 家族はその誠意を受け容れるが、結月自身は、恋人があまりにも多くのことを自分に隠していたショックや、話のスケールの大きさに、思わず翔太を追い出して玄関に鍵をかけてしまう。その態度に、怒ると怖そうな美咲がキレる。



美 咲「あんたってホントそう。子どもの時から一度こうだって決めたら何にも聞かなくて」



美 咲「けどね、今回だけはそうは行かないわよ」



美 咲「あんたがここに残っても、何の役にも立たないの」



美 咲「働けないし、家事もロクにできないし、無駄な予備校でお金だけはかかる」



美 咲「いい? あんたは我が家のお荷物なの」



結 月「お姉ちゃん……私のことそんなふうに……」
美 咲「思ってたわよずっとね」



美 咲「いなくなってくれた方がせいせいすんのよ」





和 彦「それが妹に対して言う言葉か」



美 咲「ぶつことないじゃない」



和 彦「お、お前いま足蹴にしようとしたな」
美 咲「それがどうしたのよ」



和 彦「なんだよその言い草は」




和 彦「いたぁ」



和 彦「まさか本気でケリをいれるなんてなぁ。しかも二発も」
久美子「パパだって本気のフリして美咲をぶったくせに」
和 彦「まあな」



久美子「でも、わざとあんなこと言ったのよね美咲は。なんとしても結月を火星に行かせてやりたくて」
和 彦「あいつは本当に優しいからなあ」



久美子「ええ。でもこのままじゃあ結月はなかなか、ウンとは言わないわよねえ」
和 彦「ほんと強情だからなあ」



久美子「私、もう一度結月と話してくる」



和 彦「うん……ああ」



和 彦「あのことは言うなよ」



久美子「分かってる……言えば、行くって言ってくれるかも知れないけど、傷つけて行かせても、宇宙で幸せにはなれないもんね」


 結月は本当は和彦と久美子の実子ではない。その真実を告げれば、あるいは結月は失意のうちに門倉家を出て行くかも知れない。でもそうやって傷つけて行かせても、宇宙では幸せになれない。



久美子「結月、みんな結月と最後まで一緒にいたいのよ。パパやママ、美咲やお祖母ちゃんも」



結 月「お姉ちゃんはどうだかわかんないけどね」



久美子「生き残れるチャンスがあるなら、結月だけでも生き残って欲しいの。それは分かってくれるわよね」



久美子「それで、何があったの? 翔太君と。何かあったんでしょ」



結 月「私のこと、もう好きじゃないって……なのに今さら一緒に宇宙に行こうなんて、もう勝手すぎるよ」



久美子「そう、翔太君そんなことを。……それで、結月は? 翔太君のことを嫌いになっちゃった?」



結 月「それは……」



久美子「人を好きになるって、辛いこともある。でもね、それでも、とっても素敵なことだから」


 ということで、第6話終了。全8話なのであと2話である。はたしてこのお話、どのあたりに着地するのであろうか。『おっさんずLOVE』と同じくらいよく分からないや。以下次回へ。