実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第760回】泉里香in『隕石家族』第3話の巻

2020年9月11日公開、実現して欲しい

1. アフターマス

 ハロプロのアイドルグループ、こぶしファクトリーが3月いっぱいで解散したけど、ラストライブが無観客公演になってしまって可哀そう、という話を【第756回】の冒頭(ここ)に書いたが、もはや、無観客でもライブができて、まだ良かったね、というところまで事態は進展してしまった。


はちみつロケット(2019年4月6日@Zepp Tokyo)


 ももいろクローバーZの名物マネージャーが手がけて、ももクロの公式妹分みたいな位置づけだったスターダストの「はちみつロケット」が、2014年以来の活動に終止符を打つことになった。2018年春にメジャーデビュー、2019年春にZepp Tokyoでワンマンを成功させ、2020年春は解散である。諸行無常。
 ラストライブは4月26日、よみうりランド内の日テレらんらんホール……の予定だったが、このご時世でやむなく中止になり、ニコ生で過去のライブ映像を流してグループの歴史を振り返る「ラスト生配信」をもって解散した。いちおう、ライブができる状況になったら一回だけ解散ライブをやる、と言ってはいるものの、すでに芸能界引退を明言しているメンバーもいるわけだし、どういうことになるのだろうか。


宮本佳林さんと船木結さん


 そのほか、ハロプロ関係では、室田瑞希(アンジュルム)が3月22日の無観客ライブ(CS中継)で卒業、その後、6月にグループを卒業する予定だった宮本佳林(Juice=Juice)と船木結(アンジュルム)は卒業延期を発表した。もちろん秋元康プロデュースのグループでも、春の卒業を発表していた何名かが宙ぶらりんな状況だ。AKBの峯岸みなみや乃木坂の白石まいやんといった大物はともかく、このままだと曖昧にフェードアウトしてゆく人も少しずつ増えてくるのではないか。そういえば嵐はまだ何も発表してないよね。


グループ卒業の延期を発表した白石麻衣さんとご懐妊を発表した北川さん


 アイドルの現場がいつごろになれば復活するのか、今はまだ見当もつかないが、ライブハウスなどでの公演の形態は従来とだいぶ異なることになるのではないか。たとえば開始時間を厳守、客入れは素早く、狭い現場で動線が生じるドリンクの売買は無し、公演は60分以内、アンコールは無し、とか。最大のポイントは、物販における握手や撮影などの特典会で、ああいう接触型のイベントはおそらく、事態が沈静化し、ライブが復活してからも当分は自粛されるのではないだろうか。たぶんAKBグループの握手会も。でもそれをなくすとCDの売り上げに響くから、形式を変えて、たとえばアイドルが全員、防護服を着るようなかたちで開催されるかも知れない。


かつて防護服と防毒マスクでハグ会を開催したバニラビーンズ(2010年5月@HMV渋谷店)


 いずれにせよ、アイドルとの「接触」のあり方が、コロナ以降は大きく異なってくると思う。それはアイドルおたくにとって根本的な変化を意味するんじゃないか。たとえば今のアイドルがSNSなどで発信するライブ動画のたぐい。内容は、ただメンバーでじゃれあっているだけだったり、数秒のTikTok だったり、身の回りの雑談とか、他愛のないものだ。でもオタクは熱心にフォローする。そこには、推しのアイドルを知りたいという純粋なファン意識に加えて、握手会や撮影会で本人と話すときの話題作りというか、ネタを仕込む、という意識も、たぶんあるんじゃないかと思う。違うかな。いずれにせよ、現在インディーズ系のアイドルがやっているネットでの情報発信は、握手会とかリリースイベントのサイン会とかで会うという目的に向かって、ユーザーを誘導するようなかたちで行われている。アイドルと接触や会話という究極の価値が担保されているから、どんだけ中味がなくてもよかったのだ。これまでは。しかしドルヲタにとって一番の目的であった「推しとの接触」が、現在はできない。そしてコロナ収束後も再開の保証はない。


「あつまれ どうぶつの森」でヴァーチャル握手会を開いた指原莉乃さん(2020年5月2日)


 ともかく、とうぶん接触の見込みがない今、ドルヲタはその飢餓感をラインライブやインスタライブのコミュニケーションで癒やさなくてはいけない。手段であったものが目的になった。だから潜在的に、かつてと要求の水準が異なっている。そして自覚的なアイドルはそのことにすでに気づいて、これまでとはレベルの違うものをファンに提供しようと努力している。一方、無自覚に「おうちで踊ろう」的な動画を配信しているだけのアイドルもいる。いまネット動画を観ていると、ポストコロナのアイドル状況というものについてあれこれ想いを馳せずにはいられません。

2. 灰色の終末



 さて『隕石家族』第3話「エースをねらえ!」である(2020年4月25日、原作・脚本:小松江里子/照明:生嶋航/撮影:布川潤一/演出:千葉行利)。大家さんはじめコメント欄のみなさんから、好評をほぼいただいていない(苦笑)。でも私としては初回から面白くて、回を重ねるごとに面白くなっている。困ったものである。アバン・タイトルなどのイメージ映像で、隕石が地球に近づく様子がビリヤードの玉で表現されているのだが、お母さんの不倫に始まって、まさに玉突き事故のように、門倉家の面々に心理的な連鎖反応が起こっていく。



 今回のお話は、マザコンのパパ(天野ひろゆき)の、遅れてきた反抗期。お祖母ちゃん、ていうかパパのママ(松原智恵子)は、メタボ体型で血圧の高い息子の身体が心配で、食事制限に余年がない。おかげでパパは、塩分を控えて、パスタはひとりだけソースなしの麺だけとか、お寿司も醤油なしとかの生活を強いられている。






 何もつけない寿司は旨くない。塩分ぐらい、あと半年で世界が終わるのだからいいじゃないか、とも言えず、マザコンのパパはお祖母ちゃんの言うことに逆らえない。そんなパパの前で、スパゲッティにたっぷりミートソースをかけ、お寿司はもちろんお醤油をつけ、バナナをほおばるママ(羽田美智子)と結月(北香那)と姉の美咲(泉里香)。





 とにかく泉里香が何でもむしゃむしゃぱくぱく食べるのがこのドラマの最大の見どころである。



 さて、ママと結月が、結月の恋人翔太(中尾暢樹)がバイトしている「カフェ・イスカンダル」でお茶していると、外出していたカフェの店長(ブラザートム)が帰ってくる。



店 長「応募してきちゃった」



翔 太「え?」
店 長「クラウドバンズって知ってる? あそこの社長が『残りの人生どう生きるか』これで心打つ作文を書けば、一億円、くれるらしいのよ」



久美子&結月「いちおく?」



店 長「そう。金持ちも、金の使い方に困っちゃったんだね。ただ、原稿用紙に手書きで書かなくちゃいけない。それの方が気持ちが伝わるんだって」


 それでか、と久美子は納得する。ここのところ、久美子がレジ打ちのパートしているスーパーで、「400字詰めの原稿用紙って、どこにあります?」と聞きに来る人が多くて、原稿用紙が飛ぶように売れているのだ。




 久美子も結月を連れて原稿用紙を買いに走る。一方、パパ(天野ひろゆき)の会社に、実母の正子(松原千恵子)がやって来る。最近、高血圧の息子の身を案じて、検査に連れて行こうというのだ。


 
 「忙しいのよ母さん」と抵抗するパパを無理やり引っ張る松原智恵子。まあ世界の終わりが近いので、会社も今や、早退しようが無断欠勤しようがお咎めなし。忙しいもへったくれもないんだけどね。
 一方、原稿用紙をゲットしたものの、手遅れだったママと結月。



結月「どうすんのよこの原稿用紙。こんな買っちゃって」



久美子「もう締め切ったなんてねえ……」


 1億円の懸賞作文は、ちょうど応募を締め切られてしまったところのようである。原稿用紙の処置に困った二人は、パパの机に適当に突っ込んでおく。




 そして無理やり病院に連れて行かれてぐったりのパパは、帰宅して、見慣れない原稿用紙の存在に気づくと、鉛筆を取って、憤懣やるかたない気持ちをそこにぶつける。



 やがて晩ご飯の時間になって、パパは書き上げた作文を折り畳んでポケットに突っ込み、ハイテンションのまま食卓に臨む。



正 子「今日は動悸や痺れはなかった? 手足のむくみは?」
美 咲「なかったって」



正 子「用心しないとね、なにしろ」
美 咲「なかなか自覚症状が出ないのが高血圧だから、でしょ」
久美子「さ、いただきましょ」



一 同「いただきまあす」



正 子「どうかしたの? 和彦」



和 彦「……くそばばあ……」



久美子「え、今、なんて?」



和 彦「くそばばあ」




(ポケットから出した原稿用紙を広げ、作文を読み始める)



和 彦「中学は地元の公立に行きたかったのに、なのに受験させられて私立に入れられた。『和彦、中学は受験して私立に行くのよね』」



和 彦「部活はアメフト部に入りたかったのに、危ないからと反対された『部活は文科系にするわよね。吹奏楽部はどう?』」



和 彦「将来は電車の運転手にあれほどなりたいって言っていたのに、『お父さんと同じ電機メーカーに就職するわよね』」



正 子「和彦、何を……」



和 彦「せめて結婚だけはと、母さんのもってきた見合いを断って久美子に決めたのに、ずっとそのことで嫌味を言われ続け」



和 彦「あげくに高血圧だ検査だ薬だ。大丈夫だと言っているのに」



正 子「和彦、何を言っているの? お母さんはあなたのためを想って」



和 彦「僕は……」



和 彦「母さんが嫌いだ」





╳    ╳    ╳



結 月「くそばばあかあ、言ったね、パパも」



美 咲「よくもまあひとつひとつ憶えていたもんだ」



久美子「でも、これも役に立ったわね」



三 人「ふふふ」



結 月「ねえ、パパって何歳だっけ」
久美子「53よ」


 2020年現在で53歳ということは、1966年か1967年の生まれである(演じている天野ひろゆきの実年齢は50歳)。私よりもちょっと下。長島一茂がちょうどこの世代なんだけど、かれは1999年の9月に結婚していて、その理由として、ノストラダムスの予言にあった1999年7月が無事過ぎるまで結婚を控えていた、と語っていた。馬鹿馬鹿しいように見えて、けっこう重要である。
 『隕石家族』の第1話のサブタイトルは「好きよ、キャプテン」で第3話は「エースをねらえ!」そして次回第4話のタイトルは「どうにも止まらない」である。リリーズの「好きよキャプテン」は1975年9月に発売された。山本鈴美香の『エースをねらえ!』(第1部)は『週刊マーガレット』の1973年新年号から1975年第5号まで連載された。山本リンダの「どうにもとまらない」は1972年の6月に発売された。ブラザートムが演じていたカフェ・イスカンダルの店長は古代鉄郎という役名だが、TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』が最初に放映されたのは1974年である。つまりこういったネーミングが示唆するのは、1972年から1975年、大阪国際万博以降の1970年代前半という時代である。どういうことなのか。
 この時代、経済面では、1971年のニクソン・ショックと1973年の第一次オイル・ショックで、高度成長期にあった日本の経済が戦後初めて大きく揺らいだ。社会的には公害の問題が顕在化して、1971年に映画『ゴジラ対ヘドラ』が公開され、1973年には300件を超える光化学スモッグ注意報が発令された。そして1973年に小松左京『日本沈没』と五島勉『ノストラダムスの大予言』が刊行されベストセラーとなり、映画化された。ドラマ『隕石家族』における世界の終わりのイメージは、この時代、自分たちが大人になるころには世界が終わるんじゃないか、という漠然とした不安を抱きながら、なす術もなく、ただ宿題をしてご飯を食べて学校に通っていたかつての少年少女に、とても懐かしい感情を呼びさます。私がこのドラマに感じるいちばんおおきな魅力はそこにある。
 実は『隕石家族』第1話を観て、私はけっこう面白いと思ったのに、評判が芳しくないものだから、同世代の古い友人たちに視聴を勧めてみた。そしたらわりと好意的な感想が返ってきて、しかもみんな、このドラマのベースがあの時代の、まったりした終末観というか、灰色の絶望感に依拠している、ということを口々に指摘していて、あ、やっぱりこれは世代によってはちゃんと受けるのかなと、やや安心しました。ウィキペディアを見たら脚本の小松江里子さんは1962年生まれ。なんだほとんど同世代じゃないか。やっぱりね。

3. 彼女はデリケート


 ママは高校時代のあこがれのキャプテンと再会し、それがきっかけで「純愛」と「家庭」の二股生活に入り、パパはマザコンから解放されて、お祖母ちゃんに「くそばばあ」と言い放った。今回は詳しく触れなかったが、その背景には、ママの純愛の相手であるキャプテンの存在があるからややこしい。いずれにせよ、世界の終わりが来る前にやり残したことと言うには、あまりにもスケールが小さいかも知れないが、人生そんなもんである。
 さてお待ちかね。今回、第3話で泉里香の演じる長女の美咲にも転機が訪れる。前回も書いたように、泉里香は中学時代に孤独な自分を救ってくれた森山先生(遼河はるひ)に憧れていて、というか恋をしていて、森山先生と一緒にいたいがために中学教師の職についた。毎日学校に通って、最後の半年を先生と一緒に過ごせればそれでいい、そんなふうに考えていたのだが、その想いをずっと前からうすうす知っていて、重荷に感じていた森山は、最後の最後に、美咲を突き放そうとする。



森 山「隣りの学区の中学の先生でね」



美 咲「良い人よ」




森 山「一度、会ってみたら」



美 咲「でも私は、森山先生と一緒に、最後まで中学の教師をするつもりでいますから」



美 咲「あと四ヶ月、ずっと先生と一緒にいられたら」



森 山「……私ね、疎開することにしたの」



美 咲「え、疎開?」



森 山「田舎に帰って、土でも耕して、あと四ヶ月暮らそうって」



美 咲「どうしてですか? 私が中学生のころからずっと、教師は生き甲斐だ、どんなことがあっても勤め続ける、と。だから私は教員免許を取って中学の先生になったんです」



森 山「ごめんなさい。もう決めたの」



美 咲「そんな……」
森 山「私はひとりでその時を迎える。でも門倉さんは、そばに居てくれる誰かと一緒に生きることを考えてみて」



森 山「お願い」


╳    ╳    ╳










美 咲「……許さない……」



 前回の繰り返しになるが、泉里香の身長は公称166cm、森山先生の遼河はるひは173cm、身長差的にはちょうどいい感じのカップルに見えますね。
 泉里香にはほかにもいろいろ屈折した過去があり、それは次回以降で明らかになってくるようだ。妹よりも整った美人でスタイルも良くて頭も良い、そのために自分はこの家の子どもではなくて、貰いっ子ではないかというコンプレックスを子どもの頃からいだいていたんだそうです。そして、泉里香の決意が今度はパパに影響を与える、というふうに玉突き事故を起こしながら、ドラマは折り返し点となる第4話へと進む。つまんないと思っている人には申しわけないが、まだレビューは続くよ。



 てなあたりで、時間もだいぶ費やしたし今回はここまで。では。次回の美咲は、私にはちょっと亜美ちゃんに見えたぞ。