Googleで「アリバイ崩し」と入れると「参ります」というキーワードが意外と出てくる。なんだよ「アリバイ崩し参ります」って。もちろん正しくは「承ります」だ。みんな間違えんなよ。
その『アリバイ崩し承ります』も、2020年3月14日放送の第7話「多すぎる証人のアリバイ」で最終回を迎えた。すでにこれまでの6話と、AbemaTVで配信された「特別編」で、原作単行本7話ぶんのエピソードは使い切っていて、最終回の原作は、現在ネットの「Webジェイノベル」で無料配信されている『アリバイ崩し承ります2』(現時点では第1話と第2話のみ)から採られている。
原作はどの話も、アリバイ崩しのみに特化した安楽椅子探偵もので、謎解きに関係ない要素はできるだけ排除されている。今回のドラマは、そこを映像作品として見栄えがするようにあれこれ脚色していて、雰囲気はだいぶ異なったが、まあ成功だったと私は思う。もちろん骨格となる原作が、ぎりぎり必要な素材だけで精緻に組み立てられた謎解きミステリなので、ドラマ的に肉付けしたことでその論理性がやや損なわれた回もなくはない。でも一方では、浜辺美波を好奇心旺盛なキャラクターにして積極的に捜査に加わらせ、さらに警察側に安田顕と成田凌はじめユニークな人物を配置することで物語にメリハリをつけて、すごく楽しかった。ただ最終回では、ミステリとしても原作を(ちょっと無理やりだったが)もうひとひねりしてあった。いままで全話、ほぼ原作どおりだったので油断して観ていたら、成田凌が議員の息子で浜辺美波と幼なじみであったというドラマ独自の設定を活かしつつ、最後の謎解きで意外な方向に進んでいくので「おおっ、そうなんだぁ」なんて驚いた。浜辺さんはとうとう、民間人のくせに殺人事件現場をブルーシート越しに覗いていた。
そんなわけで、単純に浜辺美波さん目的で観始めたドラマだったけど、とにかく楽しかったです。続編に期待したい……と書きたいところだが、原作のストックがない。9本ある原作のうち、特別編を含め、すでに8話を使ってしまっている。しかも今回の原作のうちいちばん古いものが2014年、いちばん新しいのが2019年に書かれている。このペースではシーズン2まであと5年は待たなくてはいけない。
質の高い安楽椅子探偵もの短篇ミステリを5年間で8本書くというのは、わりと良いペースである。ハリイ・ケメルマンの『九マイルは遠すぎる』に収められたニッキイ・ウェルト教授シリーズ8篇は、1作目の執筆から最終作までの間に20年という歳月が流れているし、「ブロンクスのママ」が活躍するジェイムズ・ヤッフェ『ママはなんでも知っている』の8編も、足かけ16年かけて書かれている。そう考えれば「わずか5年」とさえ言える。でもそう考えるのはミステリファンくらいで、一般的にはめちゃくちゃ遅筆と言われるんだろうね。とにかくそういうわけなので、ドラマ版が好評だったから原作も続編がどしどし出る、なんて状況はありえないし、この原作に匹敵するオリジナル脚本が書けそうな人は(蒔田光治や三谷幸喜を含めても)見あたらないので、続編は無理です(断言)。でも、あと1編だけ原作のストックがあるので、それで特別編をもう1本作ってください。
以上。それでは本題に入って、DVD第4巻レビューの完結編(えっ前回が完結編ではなかったの?)本日のお題はこちらです。
北 川「セーラーマーズ火野レイ役の北川景子です」沢 井「セーラームーン月野うさぎ役の沢井美優です」北 川「DVDをご覧になっ……てくださった方々」
二 人「ありがとうございます」
沢 井「うふふ」
北 川「噛んでた?」
DVDのおまけの特典映像「セーラームーンにおしおきよ」ですね。第3巻と第4巻で沢井さんのお話相手役を務めるのは北川景子さんです。DVDの発売日は2004年の6月25日で、この特典映像の撮影はそのひと月前ぐらいかな。第3巻と同様、北川さんのメイクとか服とか仕草とか、普段着すぎて、今だったら周囲のスタッフが黙っちゃいないかもな、というレベルの雑さです。
1. マスオさん
最初はAct.13ラスト、クンツァイトとセーラームーンが初めて対峙するシーンを観ながら、お題は四天王について。
沢 井「クンクンはもうここから、登場してからもうほとんど出ていますね。石になってないし……」北 川「ネッフィー(ネフライト)もなってなくない?」沢 井「なってない」
沢 井「ネッフィーはネッフィーってみんな言うじゃん」北 川「ネッフィー」
沢 井「ゾイゾイ(ゾイサイト)は『ゾイゾイ』って言ってるじゃん。クンクンは『クンクン』って言ってるんですよ。私たちのなかで」北 川「なかでは」
沢 井「……ジェダイトって『増尾さん』じゃない……」北 川「ジェダイト……あだ名がないね」
沢 井「ね。でもみんな四天王ってカツラ似合ってるね……あ、ジェダイトはどうだろう」
北 川「こら!気にしてるから」沢 井「そうだよね」
沢 井「でもネッフィーはすごい」北 川「似合ってるよ、あの人ぴったり」
沢 井「うん……」北 川「それぞれ似合ってるよ……」
沢 井「うん……やっぱクンクンも似合っているじゃん」北 川「……ジェダイトも……似合ってる……じゃん」
沢 井「あはははは」
沢 井「てことは、クンクンが出てきて男性キャストが全員揃ったってことですよね。いつかね」北 川「うん、いつか?」沢 井「五対五とかさ」
北 川「五対五……殴りあい? ぜんぜんやるよ」沢 井「やるんだ」
北 川「いくらでもやってやるよ。ふふふ」
北 川「戦いをメインにしていきたいね」沢 井「ホントに?」北 川「もちろん」
沢 井「思ってないでしょ」北 川「思ってるよ。そういう、恋愛とかより戦いの方が好きなんだけど」
沢 井「うん恋愛よりは…ファイト!」北 川「FIGHT!」沢 井「うん、いい、それがいい」
2. Act.13未使用シーン
ここで挿入されるのがAct.13の未使用シーン。放送された本編で言うと、AパートとBパートの間にあたる。ほんとうだったらこのシーンのあとCMというはずだったけど、時間の都合で省略された場面ですね。 音楽も入っているので、最終的な尺の調整で切られたのだろう。
元基のカメ行方不明事件がきっかけで、古びた洋館に一人住む謎の青年シン(実はクンツァイト)と出会ったうさぎ、そして衛。
シンが記憶喪失という話を聞いたうさぎは、どうにかして彼の記憶を取り戻させてやりたい、と飛び出していく。後を追う衛、という場面。撮影台本で言うとシーン13「洋館・外」である。撮影台本の全文は【第381回】でご紹介済みなので興味のある方はご参照ください(ここをクリック)。
衛 「おい、待てよ」
うさぎ「何よ」衛 「お前、ホントにあのシンってヤツに何か思い出させるつもりか?」
うさぎ「そうだよ。悪い?」
衛 「本人がいいって言ってるんだぞ。ほっといてやれ」
うさぎ「何それ。何にも覚えてないんだよ? そんなの……」
うさぎ「何とかしてあげたい。ほっとけないよ!」
自分も過去の記憶をもたない衛の心境は複雑で、記憶を取り戻すことが本当に幸せかどうか分からない、というシンの独白に共感している。だからうさぎに忠告したいが、うさぎはどんどん突っ走る。そのまっすぐな善意に心惹かれつつ、衛もうさぎの後を追うのである。このやりとりが削られたせいで、次のBパートでうさぎの後をつけ回す衛がややストーカーっぽく見えてしまうのは難点だが、まあ削ってしまったら整合性がなくなるというほどのシーンではないことは確かである。
以上でAct.13の振り返りは終わり。で、次はAct.14について、と思ったら、なぜか沢井さんが次回予告の話題から始める。
沢 井「てか予告で泣けますよね」北 川「……泣けない……」
沢 井「え?」北 川「何で予告で泣けたの?」
沢 井「この時とか、あの、泣きがあるときの予告? 泣きがある回の前の週の予告はいつも泣くの私」北 川「なんで?」
沢 井「なんでだろうね」
北 川「分かんない、分かんないよ。その気持ちは分からない」
沢 井「ジ~ンって来んだよね」
沢井美優は当時から、泣くシーンになれば泣く気持ちを作るという、まっとうな芝居をする人で、だから予告を見ていても、そういうのを思い出したりして泣けてくるわけだ。ところが北川さんは、少なくとも当時は、そういうの抜きでいきなり涙を流せてしまう人だった。たとえば実写版ファンには有名なAct.10の「もらい泣き」の場面。自分たちが月の世界から転生してきたことを知ってショックを受けたうさぎが、子供たちの作ったかぐや姫の紙芝居を見ているうちにポロポロ泣き出す。それを横から見守るレイの目も潤んでいる。
前巻(DVD第3巻)の特典映像のなかでその場面が出てきたとき、北川さんは「わたし演技でもなんでもない涙がでているからね」「ほら見てごらん、泣いてるから。ほら」と冷静に指さしているのだ。そりゃ、こういう人なら、沢井さんが何で予告編で泣けるのかなんて分からないだろうな。それを「分かんないよ」とはっきり言い切るのがまた北川さんである。
3. 未使用カットがなぜ多い?
で、Act.14に入る。まずは未公開シーンから。これはクンツァイトの術によって倒れたうさぎを、衛が亜美の家まで運んでやった後くらいの場面か。
亜 美「いつもうさぎちゃんが心配してくれて、助けてくれて」
亜 美「でも、私だってうさぎちゃんを守れる。守らなきゃ」
亜 美「うさぎちゃん、絶対妖魔なんかにさせない」
╳ ╳ ╳
╳ ╳ ╳
枕元につきっっきりで看病する亜美、いてもたってもいられず、うさぎがクンツァイトに出会ったコンチェルト・ホールまで駆けつけ、なにかクンツァイトを探し出す手がかりはないかと焦るまこと、神社で祈祷するレイ、それぞれの仕方でうさぎを助けるために必死な戦士たち。亜美の握りしめるうさぎの手の指はすでに爪が伸びて、だいぶ妖魔化が進んでいる。うさぎのまっすぐな純真さによって救われた(傷つきもしたけれど)亜美が、うさぎを「守る」というワードをはっきりと口にしているところがポイントだろう。こういうふうにして、前世からの使命とかそういうこととは関係なしに、プリンセスを守る護衛戦士たち、という構図が出来てゆくところが、実写版セーラームーンのひとつの特徴である。そういう意味ではやはり意味があるが、でもまあ、切ってもドラマの流れが分からなくなっちゃう、というほどではない。放送されたカットだけで、亜美がいかにうさぎのために真剣になっているかは、よぉく分かるもんね。
沢 井「亜美ちゃんは私に恋しちゃってるからさ」
北 川「いけね。いけね、忘れてた」
沢 井「そんな感じじゃん14話とか」
沢 井「ここではいないね、レイちゃん。4巻では少ないですよね」
沢 井「残念……なんか、辛口なコメントを」
北 川「……できない……悲しくてできない……」
沢 井「14は、ほとんど寝てたね」
北 川「倒れてたよね」
沢 井「そう、寝てたね」
と、ここでたぶん沢井美優に内緒にしていた秘蔵オフショットが公開される。亜美の部屋で昏睡状態の撮影を続けているうちに、ガチで寝オチしてしまった沢井さんを、浜千咲(泉里香)が起すところ。前にもこのブログで引用したと思うが、ふだんドラマのなかでは「うさぎちゃん」と言っている亜美が「うさぎ」と呼び捨てにしているところがちょっと新鮮である。
千 咲「うさぎ、本番だよ!」
沢 井「……ごめんなさい……」
沢 井「やーだー」
北 川「本当に寝てたんでしょう」
沢 井「そんで、上赤さん、上赤さんでしたよねこんとき、すんごい笑顔なの」
上赤寿一撮影監督は、最近では『仮面ライダーアマゾンズ』にも参加していたかな。
以上、前半Act.13とAct.14にまつわる特典映像はこれくらいですが、あともうひとつ、Act.14の未使用シーンが出てくるので、これを紹介して今回は終わりにしたい。Act.14は撮影台本を見ていないので分からないが、やはり明らかに、撮影したけれど使われなかったシーンが多いように思う。これはもちろん、舞原監督が新年会のシーンで、美少女たちのはしゃぐ姿にのめり込んでカメラを回しすぎて、他のシーンが入らなくなってしまったということであろう。
マ マ「おっはよ〜う!」
進 悟「うっそ、まだおせち残ってんの?」マ マ「いいじゃない、おせち」
マ マ「一月いっぱい、おせち行くわよ!」
進 悟「うっそ」うさぎ「私おせち好き」
マ マ「そうよね~」
マ マ「って、あらうさぎ、あんたちょっと顔色悪いわよ」うさぎ「そうお?」
マ マ「冷たいわね。でも今日はうちでおとなしくしていなさい」
うさぎ「だめ、今日は亜美ちゃんたちと新年会」マ マ「またぁ、風邪だったらどうすんの?」
うさぎ「大丈夫」
進 悟「うさぎに風邪引く資格なんてないよな」
うさぎ「どういう意味よ」
進悟役の武子直輝といえば現在は『刀剣乱舞』なんかをはじめ舞台をメインに大活躍中であるが、昨年2月にはイメージDVDを出したんだってな。だいぶ後になってから知ったので取り上げなかったが、たいしたもんじゃないか。26歳。これからのイケメンである。
てなとこで本日はこれまで。次回は特典映像の後半。
ちょっと遅くなっちゃったけどリュウソウジャーも終わってしまったな。まだライブツアーがあると思うけど、みなさまお疲れ様でした。