インディード家庭教師編。これは、いまから受験生になってでもお願いしたい。
1. 「日常であったこと全部がりなとの思い出なんだもの」
わわ〜〜 もうすぐ大人じゃーん!なんてことをきょうはお稽古がお休みだったのでゆっくり考えていたらひさしぶりに涙がでにでにでて ティッシュが数枚減ったそんなお昼ごろでした。
そんな日も たまにはあったって いいよね。
(七木奏音オフィシャルブログ『ななきいろ』2018年7月8日)
ネルケ版初代セーラーマーズ、七木奏音、7月8日のブログ。この子の文章は擬音の使い方がちょっと変わっているんだ。涙が「でにでに」出るとか。
注釈しておくと、七木奏音はもう2月に21歳になっている。だから「わわ〜〜 もうすぐ大人じゃーん!」というのは彼女自身のことではない。昨年2月8日に、親友だった私立恵比寿中学の松野莉奈が急逝した。そしてこの7月16日が彼女が20回目の誕生日だった。だから7月8日に記事にしたのである。
8日の更新というのは偶然ではなくて、2017年の5月8日以来、彼女は毎月、月命日の8日には必ずブログを更新していて、時にはストレートに想い出を語ったり、夢のなかで彼女に再会した話を書いたりしている。そんなにメインの話題にしなくても、たとえば舞台が無事、千秋楽を迎えたご挨拶で、ふっとこんな一言が入っている。
あ、いつも勝手にパワーをもらってた楽屋のりな(OvO)ありがとう。(『ななきいろ』2017年8月8日)
また、それ以外の日でも、たとえば2018年3月21日には、奏音自身のお母さんと松野莉奈さんのお母さんが一緒に彼女の舞台を観に来たという話も出て来る。
ちょっとへんてこな話をしてしまうとわたしのお母さん、よく光が視えるのふわふわっとしてたりスーッと動いたりしてるらしい劇場とか人が集まる場所はとくに
だいたい白いらしいんだけど二幕の雪女の出番前にその日は黄色くていつもよりちょい大きめの光が ひゅーって隣に座ってたママの肩らへんにきたんだって。ママも気づいてたらしく観劇後に2人で、りな来たか!ってなったんだそう。
りなだったらいいなぁ。あのシーン。観てくれたのかなぁ。
(『ななきいろ』2018年3月21日)
ただ2018年3月8日、4月8日には更新がない。ひょっとすると、2018年の2月8日に一周忌の記事を書いて、それでひとつ、区切りをつけようと思ったのかも知れない。でも5月8日には復活して、6月8日、7月8日と続いている。
亡くなった直後のブログ(2017年2月12日)で、奏音は「これからはいつでも会えるよね」と莉奈に語りかけていた。だから今も思い出すたびに彼女を感じる。できるだけ泣いたりせず、前向きに、とは思っているけど、元気ならもうすぐ20歳の誕生日だったんだな、とか「ゆっくり考えていたら/ひさしぶりに/涙がでにでにでて/ティッシュが数枚減った」ということです。
会えなくなってしまった人をクヨクヨ引きずっていても、後ろ向きになるばかりだ。いいかげん気持ちを整理して、前に進まないと。なんて、ストレートに言う人はさすがに多くないと思うが、悲しみや追憶の涙はできるだけカットした方がコスパが良い、という考えは、やはり今も優勢だと思う。私は逆なので、一年半経ったいまでも涙が「でにでに」でてくる七木奏音に深く共感する。
だから、親しい生命を不意に失い、悲しみにくれている人々や地域に向かって、マスメディアが「がんばれ」「復興」なんてワードをがんがん投げかけるのは、せめて年が改まってからにして欲しいなあ、それまではもう少し、寄り添う言葉を探してみては、とも思うわけだが、そんなスローペースな意見は少数派か。
2. 「裏ドラ、見たほうがいいですよ」
作品中で主人公が着ていたジャージのレプリカが付録、というハタ迷惑な特典のせいで、予約しようかどうしようか迷っていた(結局は予約した)映画『咲 -Saki- 阿知賀編 epsode of side-A』の限定版ボックスセットが届いた。まずいなあ。だって女子高生のジャージだよ。私が将来何らかの容疑で家宅捜索を受けて、これが出てきようものなら、ぜったいロリコンの変態と決めつけられて人生積んでしまう。と想いながらも一方ではワクワク。目当ての特典ディスクはとりあえず措いて本編だけ見たが、やっぱり面白いよこれ。
私は相変わらず麻雀のルールを全く知らなくて、もうセリフの90%は何を言っているのか意味不明なんだけど、メインキャストがそれぞれ見せる超能力は、前作よりさらに分かりやすく(バカバカしく、とも言う)パワーアップしている。
最強といわれる東京代表、白糸台高校麻雀部の司令塔、宮永照。前作のヒロイン宮永咲の姉で、姉妹どちらも浜辺美波が演じている。
この子が相手を睨むと、相手の背後でスモークがもくもく起こり、そこからずずず〜っと丸いミラーがせり上がってくる。
鏡があるので敵の手が丸見え、という、なるほどそれなら私にも強さの秘密がよく分かる(笑)。
そして運気のエネルギーを貯めに貯めて麻雀牌を取りにいくとき、パワーが溢れかえって腕を中心に激しい竜巻が巻き起こる。これはどういう意味があるのか分からない。
志田友美がよかったです。お芝居のポテンシャルは『仮面ライダー鎧武』のヒロインである程度わかっていたけど、改めて大スクリーンで観て本当に可愛いと思った。小松彩夏、加村真美に続く「岩手県第三の美少女」と呼びたい。脚が長くてスタイルいいし、一昨年に東京女子流の新井ひとみとのデュオでリリースしたサマーソングもよかったなあ。
3. 「毎回こういうやり方しなくても、言ってくれれば手ぇ引くから」
すみません。とにかく前作同様、楽しくて泣ける麻雀青春映画だ。さて本題。『探偵はBARにいる3』の続きである。
恋人の依頼で、失踪した女子大生、麗子(前田敦子)の行方を探っていた探偵(大泉洋)は「ピュアハート」という店に辿り着く。「ピュアハート」は、表向きはモデルクラブ、実は売春あっせんの窓口をやっている。麗子もここで「バイト」をしていたようだが、マネージャー(野間口徹)は知らぬ存ぜぬの一点張り。
その晩、探偵は工藤というヤクザ(斎藤歩)に捕らえられ、「うちのモデルに何の用だ?」とアイスピックで尻を刺され脅迫されるはめに。
ピュアハートのオーナーをやっている謎の女、岬マリが間に入って、何とかその場を収める。探偵は岬マリの面影に、何か昔の記憶を刺激されるが、よく分からない。まあ男って、すごい美人に会うと「昔会ったことがあるかな」って思ってしまうもんね。そうじゃないですか?
それにしても、高級コールガールまがいのバイトをやっているとはいえ、麗子はしょせん素人の女子大生である。そんな子の周辺をちょっと嗅ぎ廻っただけで、なぜ血眼になったヤクザに追われ、アイスピックで尻を突かれなければならないのか。そのあたり、昨今のススキノ界隈におけるヤクザ事情が絡んでいるようだ。どうなっているのか、探偵は馴染みのヤクザに問い合わせてみた。桐原組の相田(松重豊)である。
でも相田に会うのは危険な賭けでもある。前回なんか有無を言わさず、大倉山スキージャンプ台のてっぺんに縛り付けられたりもした。
そして今回は、パンツ一枚の裸に剥かれ、漁船の舳先にくくりつけられ、真冬の石狩湾を周航だ。
お れ「ちょっと聞いただけなのに!」
特典映像のメイキングによると、靴下は残して、よりボクサーパンツ一枚の裸を強調したいというアイデアは大泉洋から出てきたものらしい。
ということはさておき、探偵がなぜこんな仕打ちを受けるかというと、松重豊は桐原組の若頭、いま嗅ぎ廻っている売春クラブ「ピュアハート」は花岡組の傘下で、桐原組と松岡組はいま一触即発の危ない関係にあるんだそうだ。
相 田「新聞、読めよ。ともかくだ、ウチと多少なりとも縁のあるおめえが花岡の売春機関を突いて跳ね回るってのは非常にまずいわけだ。わかるな?」
ピュアハートのオーナー、マリは北城仁也(リリー・フランキー)の情婦だった。
北城は海産物でしのぐ田舎ヤクザの息子だったが、花岡組の盃をもらってから急速に延び、飲食業の多角経営で「札幌経済界のホープ」と呼ばれるほどにのし上がった、未来の大物候補。その北城がいら立ちを隠せない。
北 城「しかしこのタラバ、うめえな。道産か?」天 山「稚内です」
北 城「うん、さすがだ。身がぎっしり詰まって旨味があるね。食感も良い」
北 城「だから注文したんだよな、オレが喜ぶと思ってさ」天 山「はい」
北 城「じゃご褒美だ。口開けろろよ」
北 城「ほら。ほら」
天 山「おおおおわっ!」
北 城「オレが欲しいのは毛ガニだ。毛ガニ持ってこい!」
北 城「どうした。食べなさい」
以上、プロレスラー天山広吉の役名が出て来ないので、「天山」とした。ともかくいま、北城はご機嫌ななめで、天山はタラバで墓穴を掘る。理由は「毛ガニじゃないから」。なぜか。
数日前、北竜町の国道をはずれたところで、北条水産の冷凍トラックが何者かに襲撃され、運転手が射殺され、積み荷の毛ガニが運び去られるという事件が起こった。
ロシアからの毛ガニ密輸をめぐるヤクザのいざこざか、と思われたが、北海道日報記者の松尾(田口トモロヲ)の情報では、殺された運転手は椿といって、武闘派でならした北城の側近だという。
そんな男に任せなければならない積み荷が、ただの毛ガニとは思われない。つまり甲羅の裏には蟹味噌ではなく、袋に入った「白い粉」がギッシリ入っていたようなのだ。
しかも漁港の聞き込みによれば、その日、椿は若い女と一緒だったという。
複数の目撃証言によれば、積み荷の作業の間、女は食堂で海鮮丼をぱくついていて、それから一緒にトラックに乗り込んだという。警察もその女を捜しているんだそうだ。
その晩、探偵と高田は再び「ピュアハート」に潜り込む。ただし今度は許可も得ていない不法侵入だ。
で、オフィスのパソコンをパスワード解除して女の子のデータベースを覗く。すると、あった。
麗子は「りんね」という源氏名で登録されている。そして顧客データを照合すれば、この二ヶ月ほどは「椿秀雄」なる男ばかりが繰り返し麗子を指名していたという。
椿は北城からの密命で、計五キロ、末端価格にして四億円相当の覚醒剤を仕込んだ毛ガニを密輸、運搬していた。そこを待ち伏せしていた何者かに生命を奪われ、積み荷も消えた。これは北城はもちろん、バックにいる花岡組にとっても面目丸潰れだ。襲撃者の正体は分からない。たとえば花岡組とあまり友好関係にない桐島組の跳ねっ返りがやらかした、なんてのは事実に反するが、疑心暗鬼の花岡組はそう思い込むかもしれない。松重豊の苦虫をかみつぶしたような表情(いつもそうだが)もそのせいだ。
で、麗子はまさその時、トラックの助手席にいた。ということは麗子もその時に殺されたのか? いや椿と一緒に射殺されたのなら、わざわざ麗子の死体だけ運び去る意味が分からない。いったい麗子はどこに行ったのか? ひょっとしてマリ達が匿っている?
翌日、探偵と高田はオフィスの前に待ち伏せして仕事を終えたマリを尾行する。
尾行に気づいているのかいないのか、マリはまっすぐ帰宅。探偵と高田はそのまま、マリの自宅マンション前で張り込む。
夜には情夫の北城が入っていったり出ていったり。そして明け方、ついにマリが動き出す。
高田の自動車は、原作では「相手の弱みを握り、相手の駆け引きを冷静に見抜き、粘り強く、不屈の精神を持って交渉に臨めば、間違いなく五千円には売れるカローラ一三〇〇」だが、映画版は一作目から光岡自動車のビュート。もうボロボロ。マリの乗ったベンツを尾行する。
4. 「だって私、ウニもイクラも超好きなんです」
町はずれのアパートに車が止まると、マリ一人が車を降りる。
両手には食料や日用品がたくさん入ったスーパーかコンビニの袋。マリのような暮らしの人が、自分で下げるようなものではない。
チャイムを押すと、中の住人が顔を出す。その顔を単眼鏡で確認し、手元の写真と見くらべる探偵。間違いない。麗子だ。ビンゴ!
それにしてもどういういきさつで、マリは麗子を匿うことになったのだろうか。ここまで来たら本人に直接会って聞くしかない。そしてそのまま連れ戻してしまえばミッション完了である。
マリはただ食料や日用品を届けに来ただけらしく、たいして待つ間もなく部屋から出て車で戻っていった。チャンスだ。直ぐに退出麗子の部屋に突撃する探偵。
お れ「あの、わたくし管理会社の者なんですけど、こちらから異臭がするという話がございまして、至急、確認させてもらいたいんですけど」
お れ「ガスが漏れてるかも知れませんのでね、消防や警察に通報する義務がございまして」
さすがに何の反応もない。そこで探偵の「おれ」は、エサを撒くことにした。原田誠と同棲していた部屋を物色した際、麗子の部屋にK-POPか何かのアイドルグッズが所狭しと並んでいたことを想い出したのだ。
グループ名は「ネイキッド」。これを使えば行けるかも(笑)。そして案の定、ネイキッドと聞いて麗子は直ぐドアを開けてしまう。
お れ「……あとですね、ただいま簡単なアンケートに答えていただきますと、ネイキッドのコンサートチケットが当たるんですけども」
麗 子「きゃ」お れ「警察でもやくざでもない、原田誠の依頼で来た!」
ターゲット獲得。でも事件解決にはほど遠いですね。というところで以下次回。