実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第667回】DVD第4巻:Act.15の巻(5)



 『三大怪獣 地上最大の決戦』(1964年、本多猪四郎)で、夏木陽介(2018年1月逝去、享年81)の刑事の妹を演じていた星由里子さん。2018年5月16日に逝去されました(享年74)。育ちがよくて気が強くてお転婆な、正しい昭和のお嬢さんで、加山雄三の若大将シリーズのヒロイン。
 



 『三大怪獣 地上最大の決戦』は怪獣版『ローマの休日』で、来日中に失踪した某国のプリンセス(実は金星人の末裔)と、彼女をひそかに護衛する刑事(夏木陽介)のロマンスが話の軸になっている。だからふつうはプリンセス役の若林英子がヒロイン扱いになるはずなのだが、クレジット上は夏木陽介の妹(星由里子)のほうが上だ。



 エキゾチックなプリンセス若林英子と東宝の正しいお嬢さん星由里子がツーショット。それだけで嬉しいのに、さらにザ・ピーナッツが出てきてモスラの歌を歌うんだからたまんない。



 昭和39年(1964年)の正月ラインナップとして、東宝は当初、黒澤明『赤ひげ』を考えていたという。でも撮影が延びに延びて間に合わなくなり、急遽穴埋めとして準備されたのがこの『三大怪獣 地上最大の決戦』である。本多猪四郎は昔から黒澤明を補佐していたのだ。
 『赤ひげ』は、若大将シリーズのスター加山雄三を長期間にわたって拘束する結果となり、そのため1961年(第1作『大学の若大将』)から1971年(第17作『若大将対青大将』)までの10年間で、若大将が1本も公開されていない年はこの1964年だけである。なので代わりに同年公開の『三大怪獣 地上最大の決戦』には星由里子がヒロイン扱いで出た。てわけでもないか。



 さて、『赤ひげ』で加山雄三の母親を演じたのが田中絹代(ちなみに父親は笠智衆)。田中絹代はこれを区切りとして、兄の介護を理由に女優の仕事を大幅にセーブする。その田中絹代(1977年逝去、享年67)の最後の主演作品となったのが、1975年の松竹映画『おれの行く道』(山根成之)である。これは変な映画で、クレジット上の主演は田中絹代で実際の主演も田中絹代。でもポスターとか宣伝素材を見る限り、西城秀樹主演のアイドル映画にしか見えない。



 その前年の1974年7月、松竹は同じ山根成之監督と西城秀樹の組み合わせで『愛と誠』を映画化している。原作は人気劇画だし、主演はトップアイドルということで大ヒット。続編が企画されたが、スター西城秀樹と、鹿児島の女子高生だった早乙女愛(2010年逝去、享年51)のスケジュール調整が難しくて『続・愛と誠』(1975年)は早乙女愛だけ続投、ヒデキの代わりにオーディションで選ばれた南条弘二を相手役にして公開された。(西城秀樹のスケジュールに併せて早乙女愛を入れ換えることもできたはずだ。たぶん梶原一騎が早乙女愛にご執心だったのではないかと思う。なにしろ「早乙女愛」を芸名にあげちゃったくらいだから。)でも松竹としては、それはそれとして人気絶頂のヒデキの主演映画も欲しい、ということで、けっこうムリヤリな感じで制作され、『続・愛と誠』と同じ1975年に公開されたのが『おれの行く道』だった(ということだろうと思う)。



 お話としては同じ松竹の『東京物語』(1953年、小津安二郎)が下敷きになっていて、西城秀樹は原節子の役どころである。夫を亡くした田中絹代のお祖母ちゃんが、四人の孫を頼りに上京してくる。最初は歓待していた孫たちも、当てにしていた遺産がないと知ると、とたんに冷たくなる。そんな兄姉に腹を立てたのが、ガラが悪くて田中絹代のことをクソババア呼ばわりしていた末っ子の西城秀樹。中盤、田中絹代が孫たちの家をたらい回しにされている間は、多忙な西城秀樹抜きで話を進めて、実質的な出番は冒頭とクライマックスという、コストパフォーマンスの高い作品である。



 演出に鈴木清順フリークの山根成之監督らしい妙なケレンもあったと思うが、細部は忘れた。また鑑賞してみたい作品である。封切り時に劇場で観て(併映は渡邊祐介監督、研ナオコ主演『にっぽん美女物語 女の中の女』)、あとテレビの深夜放送か何かで観て、それ以来長いこと観ていない。ソフト化も、一度VHSで発売されたきりのはずだ。テレビの人たちにお願いしたいのだが、西城秀樹(2018年5月16日逝去、享年63)を追悼するなら、『おれの行く道』を放送してくれないかな。一番好きなのは『愛と誠』だけど、私はDVDを持っているからいいや。



 そういえばこの1975年には、TBSで『あこがれ共同隊』というドラマも制作された。郷ひろみと西城秀樹の共演で西城秀樹の恋人が桜田淳子、第1話のゲストに山口百恵が出るという鳴り物入りだったけど、桜田淳子もほとんどゲストみたいなもんで、西城秀樹もスケジュールの都合で途中で死んでしまうというとんでもないドラマだった。あれもソフト化されていないね。
 なんだろう、ここのところメディア上でもいろんな方が亡くなって、実は私個人の周囲でも葬儀が重なっている。本日も夕方からお通夜に行かなければならない。さっさと本編、Act.15DVDレビューだ。



 今回はクラウンの秘密基地(小林靖子の台本では「ルナ部屋」)の場面から。ルナは器用にパソコンのキーボードを叩き、何か調べものをしている。




 レイは『99の霊術・霊法』という本を見ながら九字の切り方かなにかの練習をしている。



 ちなみに2002年に皆本幹雄『あなたにも今すぐできる66の霊術・霊法』(成甲書房)という本が出版されていて、レイが持っているのとよく似ている。



 まことは台本の「マグカップを抱えているまこと」というト書きに忠実に、マグカップを抱えてぼーっとしている。まこと的には何も考えていないが、台本的には、彼女はちょっと風邪気味なので、身体を温める飲み物のカップを抱えてぼーっとしているのである。これが伏線となって、今回の最後の方で、まことは「ハクション!」と高層ビルも揺るがす大きなくしゃみをすることになる。そこへ入ってくる亜美。




 ちょっと疑問なのだが、前のシーンで亜美は、なるがうさぎを放課後カラオケに誘ったのを知っている。てことはクラウンに来ることも知っているはずなので、クラウンで鉢合わせするかも知れないとは思わなかったのだろうか? それとも、カラオケが終わったら、うさぎちゃんはきっと私たちの秘密の部屋にも来てくれる、とか期待していたのかな。



まこと「当たり、やっぱり来た」



亜 美「え?何?」
まこと「別に集合かかってないのに、みんな来るかどうかって話してたんだ」
亜 美「ああ……、何かクセになっちゃって」
まこと「同じ。家にいてもしょうがないし」



レ イ「うさぎは?」



亜 美「クラスの友達と歌ってるみたい」



まこと「ふーん」




レ イ「何?どうかしたの?」



亜 美「ううん……ただ私達はここに来るのがクセになってるけど、うさぎちゃんは違うんだなって」



まこと「そりゃあ、ああいう性格だし」
亜 美「うん、そうだよね」



 さしせまった用事がなくても自然とクラウンに足が運ぶ「仲間」だから、お互い隠し立てするような想いもないし、通じ合っている。あっけらかんと無防備な性格のまことには、亜美の複雑な胸の内が分からない。一方、思い悩む亜美の雰囲気を察し、気遣いつつも、「いつまで全部自分で抱えてクヨクヨしてんのよ」的なもどかしい気持ちもあるレイ。ぎくしゃくしている、とまでは行かないが、やっぱりうさぎがいないと、この空間はちょっとバランスが悪いのである。
 しかしそのうさぎは、クラウンのふつうのカラオケルームで、香奈美と桃子と「セ・ラ・ヴィ」で盛り上がっている。



 (たぶん)まだ歌うことに目ざめきってはいない清浦夏実13歳。最近はローカルアイドルやバーチャルアイドルに作詞提供もしている。ともかくノリノリで三人が歌いまくっている間、なるは秘かにカラオケルームを出てカウンターの元基に接触だ。カメ吉のお見合いを続けていた元基は一瞬(また女の子からアプローチ、おれモテキかも)てきな表情をみせるが、すぐに、どうも違うらしいと気づく。



元 基「あたしはジェシーよ。なあ、この子はどうだい?」



な る「かわいいカメ!」



元 基「分かる?」
な る「分かる分かる」



な る「あの、ちょっと教えてもらいたい事があるんだけど」



 前回の「あたしマリリン」と同様、この「あたしはジェシーよ」というセリフはもちろんアドリブです。



 さて翌日。なると待ち合わせたジュエリーオークション会場にやってきたうさぎ。と、ここで驚くべき事実(と過去回のミステイク)が明らかになる。前々回(第664回)で取り上げた朝の登校シーンで、下駄箱のところで話し合うなるとうさぎの会話を取り上げた。



な る「あした土曜日だよね、ちょうどやってるけど行く?」


 このAct.15のオンエア日は2004年1月16日(土)だったので、おそらく今回のエピソードは1月15日の朝から始まり1月16日に終わる、と推定していた。ところがこの看板には「ワールドジュエリー オークション2004 アトリエ・ル・デコ 日時 1月24日(土)14:00〜」と書いてある。つまり今回のお話はオンエア日より1週間先の1月23日、24日のできごとだったのである。



 まあ今回のエピソードの最後では、まことが人間アリ地獄に吸い込まれそうになって次週に続く、というパターンだから、ちょうど次週はリアルタイムから始まることができる、という利点はあるかも知れない。



 ただそうするとAct.14、うさぎが倒れるエピソードが1月14日ってことは間違いないから、それから一週間以上なると亜美は冷戦状態だったことになり、ちょっとつらいなあ。亜美としても精神的にだいぶ追い詰められてしまったのだろう。
 で、オークション会場。台本のト書きでは、いかにも金持ちらしい男女が入っていくのを見たうさぎが「さすが、宝石のオークション」と溜息をつくことになっているが、そんな描写はない。笑顔のなるがやってくる。



な る「うさぎ〜! お待たせ」



うさぎ「うわあすごい。あ、香奈美と桃子は?」



な る「ああ、あの二人は来ないから。私も帰るし」



うさぎ「え?」



な る「大丈夫。代わりの人が来ます」



な る「もう来てるかな……あ、いたいた!」
うさぎ「え……代わりってまさか……」





な る「何も言わなくてもいいから」



な る「えーと、地場君の携帯と住所と、誕生日、それから血液型」



うさぎ「なるちゃん!」



な る「頑張れ。じゃね」



 元基から聞き出した地場衛の個人情報メモを押しつけて(ちらっと見えたところでは、衛の血液型はA型で、これはしっかり原作に準拠している)帰っていってしまうなる。こうしてAct.15は、うさぎと衛、二人っきりの冒険物語となっていくのであった。というところで続く。