実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第657回】セーラーパワーがクライマックスを呼ぶの巻(泉里香in『海月姫』第9話)



 クランクアップだそうで、お疲れ様でした。内田理央も松井玲奈もそれと分かる姿だね。
 というわけで佳境に入った『海月姫』第9話「奇跡は俺たちが作る!月海奪還大作戦」(フジテレビ、2018年3月12日放送、脚本:徳永友一/撮影:川村明弘/演出:山内大典)です。仕事づかれでそんなに書けないけど、泉里香の出番も少ないし、まとめてみよう。
 Jellyfishブランドの服は来日したアジアの若きアパレル王カイ・フィッシュ(賀来賢人)の目にとまり、才能を見込まれたデザイナーの月海はヘッドハンティングされる。予想もしない展開にとまどう月海(芳根京子)だったが、地区再開発で取り壊しの危機にある天水館を救うには、カイ・フィッシュの財力に頼るしかない。月海は天水館を買い取ってもらう代わり、シンガポールに飛んでカイの会社の専属デザイナーとなる決意を固める。でも海外旅行の経験がないので、パスポートが発行されるまでしばらく日本に滞在しなくちゃならない。
 一方、月海のシンガポール行きに納得いかない蔵之介(瀬戸康史)は、さっそく月海奪回の行動に出る。だがカイは、月海の将来にとって蔵之は邪魔にしかならないと考えているので、都内の外資系ホテルを転々と移動して月海をかくまう。
 月海の居場所がつかめない蔵之介は、カイの会社のモデルオーディションに参加し、情報を得ようと目論む。あいかわらずの美貌の女装でカメラマンからも好評を博した蔵之介だが、オーディション会場にはなぜか稲荷翔子まで姿を現すのだった。



カメラマン「はい カメラテストいくよ。いいねえ」



カメラマン「はい目ヂカラ……はいキレイ」



ディレクター「彼女 いいわね。意思の強そうな あの目がいいわ」



佐々木「おはようございます〜」
翔 子「お待たせ〜!」



翔 子「モデルのオーディション会場って ここ?」



蔵之介「地上げ屋?」



ディレクター「何なの? あなた」
佐々木「モデル事務所O.I.N.A.R.Iからやってまいりました」



翔 子「稲荷翔子よ!」



蔵之介「ハァ……」



ディレクター「オイナリ? 聞いたことないけど」



翔 子「さあ、始めましょうか」
佐々木「フゥ〜 神々しい!」






翔 子「ちょ、何よ!」



蔵之介「何よじゃないでしょ、何しに来たんだよ」



翔 子「あんたの弟から連絡あったのよ。万が一男だってバレたときのために、私にも協力してほしいってね」



蔵之介「あいつ 余計なことを……」



翔 子「このままシンガポール行かれたらこっちも困んのよ」



翔 子「はいはいはいはい、どいて邪魔」



翔 子「佐々木!」



佐々木「はい」



翔 子「何してんの」



翔 子「早くシャッター押しなさいよ!」



蔵之介「いや 絶対駄目だろ」


 「絶対駄目だろ」どころか、これだけコミカルにやっても、さすがに泉里香だといけるなあと思うんだけど、まあ私はモデルだのショーだのの善し悪しがイマイチ分かっていないのですみません。ともかくスタッフの一番人気は蔵之介(というか蔵子)。ディレクターを演じているのは内田慈。つい最近、坂下雄一郎監督の『ピンカートンに会いにいく』に主演された。この映画には岡本夏美さんが出ているので私も観てみたい(内田慈さんじゃないのかよっ)。




ディレクター「お疲れ。蔵子あなたホントによかったわ」
蔵之介「ありがとうございます」



翔 子「私は?」



ディレクター「私が 社長に推薦してあげる」



蔵之介「うそ。ホントですか?嬉しい」



翔 子「私は?」



佐々木「稲荷さん、これ お呼びじゃない」




蔵之介「ちなみに社長って今、どこにお泊まりかって分かります?」
ディレクター「もちろん知ってるわよ。何で?」
蔵之介「あっ、いや二人きりでちゃんと挨拶がしたいなと思って」



ディレクター「うちの社長は天才だけどだからといって、ハートまでつかまれちゃ駄目よ。自分の周りの才能のある女と片っ端から寝るのが社長の悪い癖だから」



ディレクター「ホテルメイズ。寝るのはいいけど、クールにね」



佐々木「へえぇ、あのイケメン社長やりますね」
翔 子「今頃あの子も食われちゃってるかもね」
佐々木「わ〜お」


 言われたホテルに駆けつけて、さてどうやって泊まっている部屋を探そうかと思案していると、ロビーにはすでにカイの秘書ファヨン(伊藤ゆみ)が待っていた。アイコニックだ。



ファヨン「やはりあなたでしたか」



ファヨン「オーディションに、見慣れない新人モデルが来たとの連絡がありました。カイ社長に会いたがっていたと」



蔵之介「バレちゃしょうがないか」



ファヨン「ここにはいません。お帰りください」


 というわけで作戦は失敗。次は旅券発行所の見張りである。
 月海は天水館を出て行った日にパスポートを申請して、発行され次第、日本を出発することになっているという。そこで受け取りにやってきた現場を押さえようと、発行日に手分けして都内の主な旅券発行所を見張ることにした。



 池袋パスポートセンターの担当はジジ様(木南晴夏)とまややさん(内田理央)、それになぜか稲荷がつきそっている。



まやや「月海よ、来い〜来い〜来い〜」



ジ ジ「まややさん、先は長いので少しセーブした方が良いかと」



まやや「月海殿の一大事にセーブなどできるか」



翔 子「そこうるさい!なんで私があんたたちのお守りしなきゃいけないのよ!」



まやや「それは こっちも同じだ」


 なんてことをやっているうちに、有楽町パスポートセンターを張っていたばんば(松井玲奈)と花森(要潤)が月海を発見。




 ただちに全員に、有楽町へ集合せよとの号令がかかる。



翔 子「有楽町よ、急いで!」


 だがしかし、これはひっかけだった。ばんばが押さえた月海モドキはまったくのニセモノだった。おそらくこっちの作戦を読んだフィッシュ・カイが仕掛けたのだろう。



 替え玉の月海を演じたのは清水葉月さん。『家売るオンナ』第9話(2016年9月)に出てた。



 三軒屋万智(北川景子)のことを嗅ぎまわる週刊誌記者(大西武志)がいることを知った屋代課長(仲村トオル)は、抗議のために単身『週刊新代』編集部に乗り込む。でも、最初は「美人悪徳不動産屋」という記事を書こうと思っていた記者が、取材の結果ぜんぜんそうじゃないことが分かったので記事は止めた、という話を聞いて数分で和解する。そのとき、投げやりな感じで屋代の相手をしていた編集部の女の子が清水葉月だったね。



 ともかくこの子は月海じゃない。みなさんだまされたのだ。その間に本物の月海は、まんまとパスポートを取得して空港に向かってしまったようだ。万事休す。おそらくそのまま空港に駆けつけるのだろうが、そもそも羽田か成田かも分からない。どうする?



ジ ジ「月海さんは?」



翔 子「すぐに戻って捜したけど、新宿にはいなかったって。池袋にも見当たらないし、私たちがニセ者に振り回されてる間に、パスポート取られてまんまと逃げられたわね」



まやや「して蔵子は何と?」
翔 子「取りあえず 今度は羽田と成田に分かれて捜そうって」



翔 子「っていうか これ無理でしょ。無鉄砲にも ほどがある。フライト時間も分かんない、空港も分かんないじゃ見つけようがない」




まやや「お、 お尋ね申す!」



 男 「おお びっくりした」
まやや「おさげでこんな感じの眼鏡を掛けた、いかにもクラゲが好きそうなおとなしめな女子を見掛けませんでしたかのう?」



翔 子「ちょっと そんなこと聞いて分かるわけないでしょ」


 なんと、まややが話しかけた相手はタキシード仮面。情報は得られなかったが、さい先はいいぞ、と思っていたら、いきなり大ヒントが示される。実は月海は、泉里香たちが張り込んでいた池袋にいたのである。




 その証拠に、池袋パスポートセンターにいた一人の少女が、さっきお姉さんにクラゲのイラストを描いてもらったという。この画は月海のだ!




 この子は新津ちせちゃん! 新海誠監督(『君の名は』)のお嬢さんらしいが、昨年のミュージカルでちびちびを演じていた子である。



 実写版マーキュリーとタキシード仮面が交差して生じたセーラーパワーがミュージカル版ちびちびを召還し、ちびちびの証言から月海の行き先が判明する。まあ羽田じゃなくて成田だって分かっただけだけど(笑)。でも今から成田に駆けつけても、シンガポール直行便のフライト時間に間に合わない。というところで、ばんば先輩が鉄ヲタならではの超能力を発揮する。
 まやや役の内田理央は、原作どおりの展開でもファッションショーで美貌を披露できる機会があるけど、ばんば先輩にそういう場面は、原作漫画では出て来ない。それならそれで、ドラマも最後までもじゃもじゃ頭のままでいっちゃえ、と私は内心思っていたが、やはりスタッフは松井玲奈のかわいい顔を一度は出さないと、と思ったようだな。



佐々木「もしもし」



稲 荷「成田よ 成田に向かって」



佐々木「はい! 成田だって」



 修 「ごめん 今 分かった」



蔵之介「花森さん 急いで車で向かって」



花 森「車は無理ですね。成田までは超渋滞中、到着まで3時間以上かかります」
蔵之介「嘘でしょ……」



ばんば「花森、どけ」
花 森「あ、はい、ばんば先……」




花 森「カワイイ!」




ばんば「間に合うぞ」



蔵之介「えっ?」



ばんば「JR新宿駅、15番ホーム。山手線 外回り 14時発」



ばんば「池袋、上野方面の7号車に乗って日暮里へ向かえ」



ばんば「降りたら目の前にあるエスカレーターで上に行き、日暮里駅の広いコンコースを歩くと、正面に案内板が出てくる」



ばんば「左側が北改札、京成線の乗り換え口だ」



ばんば「最短3分で乗り換えれば、14時25分発の京成スカイライナーに乗ることができる」



蔵之介「分かった すぐ行ってみる」


 ということで、一同は成田に向かう。でも結局、シンガポール行きの便は飛んでしまった。がっくりとうなだれる蔵之介と修。しかし月海はどたんばで飛行機を降りて、日本に残ったのだった。とりあえずめでたしめでたし。だけど天水館の立ち退き問題は振り出しに戻る、というところで第9話は終わり、いよいよ明日が最終回である。





 今回のエピソードはだいぶ原作を離れてドラマオリジナルなものになった。何といってもシンガポール編がまるまる省略されたことが大きい。そのぶんカイ・フィッシュの複雑なキャラクターが大幅に端折られた。またシンガポール滞在中の見聞を通して、月海がデザイナーしての自覚をもつようになり、一方、月海が戻るまで日本でJellyfishブランドを守ることを決意した尼〜ずも、それぞれに社会性を身につけ成長していく、という過程もそれほどきちんとは描かれない。せいぜい尼〜ずのみんながバイトを始めたりする程度である。それに較べると瀬戸康史の蔵之介は、自分が月海や尼〜ずを引っ張っていたつもりが、実は自分こそ彼女たちによって変化していることを自覚し、とまどい、「蔵子」というもう一人の自分に馴染めば馴染むほど、蔵之介として月見に引かれていく自分との折り合いのうけかたに悩んでいく。修との兄弟関係が原作と逆転しているぶん、むしろ原作以上に蔵之介のキャラクターには膨らみができて、もうこれ構造的には完全に、月見ではなく蔵之介が主人公のドラマになっている。
 ともかく次回は最終回。原作最終回では、天水館の奥にこもったまま一度も姿を見せなかった漫画家の目白先生がついに登場する。ドラマ版にも期待したい。誰が目白先生を演ずるのか。みんなで観ようね。