今週は妻の実家で葬儀があったんだけど、義母と同じ日にタワレコの創業者も亡くなっていたという。ネットで訃報を読んでうらやましくなった。
タワーレコードの創業者、ラッセル・ソロモンさんが3月4日夜(アメリカ時間)、アメリカ・カリフォルニア州サクラメントの自宅で亡くなった。92歳。報道などによると、心臓発作だという。
タワーレコード発祥の地で、ソロモンさんが暮らしていた地元紙『サクラメント・ビー』は、ソロモンさんの息子、マイケルさんの話として以下の話を紹介している。
「日曜日の夜、(ソロモンさんは)サクラメントの自宅でアカデミー賞の受賞式典を見ていた。式典で誰かが着ていた衣装がみっともないと感想を言っていて、それから妻パティさんにウィスキーのおかわりを頼んだ。パティさんが戻ると、ソロモンさんは亡くなっていた」(錦光山雅子「タワレコ創業者が死去 92歳。自宅でウイスキーを飲みながらアカデミー賞を楽しんで最期を迎えた。」『ハフィントンポスト』2018年3月6日)
これが現時点でのベスト・オブ・ベスト、理想の死に方だと思うが、どうですか。家族と一緒に団らんしていたというのが良いよね。今年初めの『M14の追憶』を読んだとき、すごく残念だったのは、何か虫の知らせで「今年は久しぶりに一緒に紅白でも観て年を越そうか」なんて話になっていれば、M14さんは理想的なお母様の送り方ができたのになあ、ということ。まあこんなことを言っても仕方がない。
俳優の大杉漣さんも亡くなった。ご家族や関係者の皆様は大変だったろうけど、これも役者として理想的な死に方じゃないかと思う。虚々実々のフェイク・ドキュメンタリー風味のドラマ『バイプレーヤーズ』の放送期間中に、ロケ地で体調を崩し、松重豊がLINEで様子がおかしいと気づいて病院に付き添ったとか、最後はバイプレーヤーズの面々に看取られたとか、ちょっと出来すぎで、第一報を目にしたとき私は、これは怖れを知らないテレビ東京の、新手の番組宣伝かと勘違いしたくらいである。
大杉漣といえば1984年の『変態家族 兄貴の嫁さん』(国映・新東宝)だ。ピンク映画で小津安二郎の画面構成や設定やセリフ廻しを徹底的に模倣したドライなパロディだが、周防正行監督のデビュー作でもあり、カルトムービー化した。でもそんな話をすれば長くなる。当サイトでは、映画『Dear Friends』の父親役、テレビ朝日版『みをつくし料理帖』の種市と、北川景子さんのお父さん的な立ち位置の役で紹介させていただいている。
当然ながらネット上でも多くの関係者が哀悼の言葉を寄せたが、私の印象に残ったのは要潤のツイートだった。
今、漣さんにメールした。信じられない。勘弁してくれよ。あまりにも急じゃないか。僕の目標の人だったんだよ。僕の役者としての指針を作ってくれたんだよ。まだまだ夢を叶えて行こうね、ってついこないだ語りあったばかりだったんだよ。約束したこと終わってないよ。ねぇ、漣さん連絡してよ。(2018年2月21日)
その5日後の2月26日には「海月姫ご覧いただきありがとうございました。いつまでも落ち込んでいる場合じゃないな。よし、立ち上がろう」というツイートがあるから、大杉漣の訃報に、一週間近く落ち込んでいたんだろう。私は、要潤の「僕の目標の人だったんだよ。僕の役者としての指針を作ってくれたんだよ」という嘆きを読んで、ちょっと考えてしまった。
最近じゃ珍しくないが、『仮面ライダーアギト』(2001年)は、アギト、G3、ギルスという3人の仮面ライダーが登場する群像劇というコンセプトが売りで、白倉伸一郎は、主演は3人のライダー全員だと言っていた。もっともタイトルは『仮面ライダーアギト』だし、要潤の演じたG3は事実上、ライダー2号だった。がしかし、『アギト』の3人のイケメン(賀集利樹、要潤、友井雄亮)のなかで、当時お母さんたちに一番人気だったのは要潤だった。それが証拠に『アギト』の後、ただちに昼の帯ドラマ『新・愛の嵐』に抜擢されている。こうなると、前作『仮面ライダークウガ』でオダギリジョーが成功した後だけに、要潤をこのまま主役級の二枚目路線で売り出していく、という戦略もあったと思う。
でも彼はかなり早い時期に、脇役、バイプレーヤーの方に自分を振って、それで成功を収めた。そのきっかけがひょっとして、大杉漣との出会いだったのかなぁ、と思うのだ。『新・愛の嵐』の次に要潤はNHK朝のテレビ小説『まんてん』(2002年)に出ている。私は観ていないけど、キャストに大杉漣の名前も入っているところを見ると、ここで要潤は大杉漣と出会ったのではないか。その出会いが、二枚目よりも脇役に役者の面白さを見出す「僕の役者としての指針を作ってくれたんだよ」という影響になるのではないかな。……という、たんなる妄想だが、大杉漣の命日となった2月21日は、なんと要潤の誕生日である。本人も運命的なものを感じているかも知れない。
そして(ここからがようやく本題なんです、すみません)奇しくも今放送されている『海月姫』の要潤は、確かに大杉漣の遺伝子をいくぶんか受け継ぐような怪演を見せているのだ。
蔵之介「何いちゃついてんだよ」
花 森「あれ? 蔵之介さんじゃないですか」
蔵之介「あっ」
花 森「どうですか? このお店。修さんが初デートだということで、花森版<東京いい店、落とせる店>ランキング第3位の大人の隠れ家をご紹介したんです」蔵之介「ちょっと黙って」花 森「ちなみに私も、ここで13人ほど口説き落としました」
蔵之介「シーッ!」
花 森「えっ? 口説き文句を知りたい? いいですよ教えます」
蔵之介「だから 黙ってって!」
花 森「シーッ!」
修 「あっ」
月 海「蔵之介さん?」
蔵之介「あーあ」
しょうがねえなあ。
ただ原作漫画と比較すると、花森の出番は後半に入ってけっこう削られている。だから今後の出番が気になる。たとえばドラマはいよいよ舞台がシンガポールに移るんだけど、原作ではなぜか花森まで単独でシンガポール入りするのだ。しかも大阪弁のインド人ニーシャに金を借りて。
それでシンガポールに着くなりカジノに飛び込んでルーレット一発で有り金を全部スってしまう。もうクズのなかのクズ。
ぜひ大杉漣イズムを継承した要潤でやって欲しいんだが、この場面、ドラマに残っているかな。
もっとも、花森の出番が減ったぶん、原作の後半ではあまり出て来ない稲荷翔子(泉里香)がドラマではかなりフィーチャーされていて、我々としては非常に満足な部分もあって、それはそれで嬉しい。
翔 子「バカヤロー!」
佐々木「そんなに好きなの?鯉淵ジュニアのこと」
翔 子「えっ!? 好き?」
翔 子「誰が?」
翔 子「私が? あいつを?あの眼鏡童貞野郎を? あのナナフシみたいな男のことを?」
佐々木「どこが そんな好きなの?」
翔 子「それは……」
翔 子「横顔とか 喉元とか」
翔 子「指のラインとか」
翔 子「人を見下したような冷たい目とか」
佐々木「めっちゃ惚れちゃってんじゃん」
翔 子「あ〜!」
翔 子「お願いやめて!」
翔 子「惚れてることを自覚させないで!」
佐々木「まあ 別に どっちでもいいけど。それより 天水館の契約とっとと終わらせないとホントにまずいと思うよ」翔 子「分かってるわよ」
佐々木「ていうかさぁ このタイミングで権利書ないとかおかしいんだよなぁ」翔 子「えっ?」
佐々木「天水館の連中がどっかに隠したとか」
そう。グローバルシティクリエイトによる天水地区買収計画は着々と進展し、稲荷翔子(泉里香)はついに、天水館のオーナー千世子(富山えり子)に接触、天水館買収の同意を得たのだが、天水館に住むオーナーの娘、千世子(富山えり子・二役)が機転をきかせて権利書を庭に埋めたために、計画は一時足踏み状態なのである。
一方、蔵之介(瀬戸康史)と月海(芳根京子)そして「尼〜ず」の面々(富山えり子、内田理央、松井玲奈、木南晴夏)は、ファッションブランド「ジェリーフィッシュ」を立ち上げ、期間限定ショップを出す。ブランド服を売って自分たちで天水館を買い取る資金を貯めようという計画だが、ほとんど客が入らず、アパレル業界の厳しさを思い知る。
その間、天水館を改めて調べた翔子は、ついに庭に埋められた権利書の隠し場所を探り当てる。
これでチェックメイトだ。翌朝、宴会のままこたつで寝ていた尼〜ずたちを中華鍋とお玉でたたき起こして、稲荷翔子は勝利の立ち退き勧告。
翔 子「おはよう天水館の皆さま」
翔 子「つったって もう ここはおめえらの家じゃねえけどね!」
翔 子「キャ〜 ハハハハハ」
ばんば「大丈夫かこいつ」
ジ ジ「私たちのショックより、あの人の興奮度が数段上です」
翔 子「あんたたちに任せてたらいつまでたっても引っ越しの準備終わらないと思ってね」
翔 子「手伝いに来てあげたのよ」
男たち「失礼します!」千絵子「ちょっと、ここは男子禁制よ」
翔 子「各自 それぞれの部屋を掃除してさしあげて!」
ばんば「わしの部屋に入るな!」
まやや「ばんばさん!」
翔 子「あはははは」
╳ ╳ ╳
蔵之介「どういうこと!? すぐ出てくって」
翔 子「あ〜ら、鯉淵家の長男がいまさら 何のご用?」
蔵之介「また強引な真似したのか」翔 子「強引?こっちは 50万払ってやって、引っ越しの準備まで手伝ってあげてんのよ」
翔 子「ありがとうございますは?」尼〜ず「ありがとうございます」
翔 子「よしよし いい子たちねえ」
稲荷絶好調。ところがそこへ佐々木から電話が入る。外資系のリゾート会社が、とんでもない金を払って天水館を買い取ったというのだ。
翔 子「はい 稲荷ですう。あ? 佐々木?」
蔵之介「月海は?」ジ ジ「部屋にいると思います」
翔 子「はあ!? 中止?」
佐々木「はい 急きょ決まったらしく、いや今、社内バタバタで」
翔 子「ちょっと、何が…… 佐々木!?」
翔 子「切りやがった」蔵之介「何かあったの?」
翔 子「何でもないわよ」
蔵之介「すげえ動揺してる感じだけど」
どういうことか。蔵之介たちが出したジェリーフィッシュの期間限定ショップはほぼ失敗に終わったが、一匹だけ大魚をつり上げた。それがアジアを中心にアパレルブランド「AVITY」を展開している会社「R,Z.P.V」のCEO、カイ・フィッシュ(賀来賢人)である。
カイ・フィッシュは、月海がデザインしたクラゲのドレスに不思議なインスピレーションを感じて、ぜひ「AVITY」に月海を招いて、デザイナーとして育てたいと思っている。そのために財力にまかせて、ジェリーフィッシュをまるごと買い取ろうと申し出たのだ。
カ イ「3億で、どうでしょうか?」
月 海「3億!?」
カ イ「あのドレスとワンピースのデザイン、私に売ってください」
カ イ「デザイナーのミス月海、あなたと一緒に」
蔵之介「はあ?月海と一緒ってどういう意味ですか?」
カ イ「月海さんを シンガポールに連れて帰りたいんです。そこで しばらく勉強してもらってからあなたがデザインしたブランドを新しくつくるんですよ」
だが蔵之介は拒む。大手に買収されるつもりはない。月海のことを一番わかっている自分だ、「ジェリーフィッシュ」は自分がプロデュースして、天水館で尼〜ずと一緒に作ってこそ意味がある、というのだけれど、本音としては月海を手放したくないだけだ。でも現在の窮地を脱するにはカイ・フィッシュの財力にたよるしかない、と考えた月海は、蔵之介に内緒でカイに連絡を取り、自分がシンガポールに行く代わりに、天水館を救って欲しいと頼んだのである。
月海はその場で、カイの秘書に付き添われて天水館を出て行く。翔子だってフンマンやるかたない。
翔 子「中止って どういうことよ!」佐々木「天水館をね、シンガポールのマッカレルリゾートに売るんだって」
翔 子「はあ!?」佐々木「すっごい金が動いたらしいっすよ」
翔 子「嘘でしょ、今さら何なのよ」
佐々木「まあうちらはもう外されたんで、きっとどっか飛ばされますよ」
佐々木「えっ 何 何 何」
佐々木「えっ えっ えっ…!?」
翔 子「この私が このまま黙って引き下がるわけないでしょ」
╳ ╳ ╳
蔵之介「だ、か、ら、今すぐ カイ・フィッシュをここに呼べって言ってんの」受 付「申し訳ございません、外出中ですので」
蔵之介「だったらその外出先教えて。すぐ行くから」
(受付嬢のひとりがそっと警備員を呼びに行こうとする)
蔵之介「分かんないんだったら分かる人 出してよ」
蔵之介「さっきから 何回も何回も」
翔 子「私も話あんのよ」
天水館買収のチャンスを奪回したい稲荷翔子と月海をシンガポールに連れて行かせたくない蔵之介、二人の思惑が一致して共闘の体制に入る。カイはすぐにでも月海を日本から連れ去りたいのだが、なにせ月海には海外渡航経験がないので、パスポートの発行を申請しなければならない。いまだったら一週間くらいかな。それまでの間カイは都内にある傘下の外資系ホテルのスイートルームを転々と移動させて彼女を匿う。何とか彼女を諦めさせようとする蔵之介と翔子は、ようやくカイのもとに辿り着いた。コンビっぽい感じで登場したが、まあこの二人なので、根本的に息が合わない・。
翔 子「あんたが天水館を買ったバカ社長?」
蔵之介「月海は どこだ?」
翔 子「あんたね、あのオタク女に 何億もの価値があるわけないでしょ!」
蔵之介「月海はどこだって聞いてんだよ!」
翔 子「しょうがないわね、頭で分かんないなら体で分からせてあげる」
翔 子「一晩だけよ」
蔵之介「何なんだよさっきから。邪魔すんなって!」翔 子「はあ!? そっちだってさっきから月海、月海……」
蔵之介「うるさい帰れよ!」
翔 子「あっ ちょっと」蔵之介「おい! 待てって」
カ イ「私は月海さんを一流のデザイナーにする」
カ イ「あなたに それができますか?」
╳ ╳ ╳
花 森「居場所を知りたい……しかし 連れ戻したら天水館はなくなると思いますが……」蔵之介「もし それで なくなるんなら、しょうがないと思ってる」
蔵之介「ここまでやって来れたのは、あいつがいたからだ。月海がいなきゃ、ここまでやって来れなかった。なのにあいつだけ犠牲にするなんて、俺にはできない」
蔵之介「花森さんお願い、力貸して」
蔵之介「お願いします!」花 森「ふう」
花 森「あもしもし、すぎもっちゃん?」
花 森「なる早で居場所調べて欲しいチャンネーいるんだけど」
ていう感じで、ちょっと翔子の勢いに推されちゃっているきらいもあるけど(そして泉里香の出番が多いのは嬉しいことだが)花森もがんばってる。
というわけで第8話。順調にいけばあと2話で終了だろう。原作ではシンガポールで月海があれこれ体験して、アパレル業界に携わることの意味というか、デザイナーとしての自覚というか、そういうプロフェッショナルな感覚を身につけて成長していくプロセスがけっこう丁寧に描かれる。その間、天水館では、月海が帰ってくることを信じてジェリーフィッシュを再起動するんだけど、その原動力となるのが、ドラマで木南晴夏が演じているジジ様だ。ずっと地味だったジジ様が、物語の終盤に入って、月海不在中のジェリーフィッシュの屋台骨を支える。そして、いままで月海や尼〜ずを引っ張ってきたつもりでいた蔵之介は、実は自分が尼〜ずと天水館を必要としていたことをはっきり自覚する。少女漫画を読むのは久しぶりだったけど、実に面白かった。ドラマも残りを楽しもう。最終回には、これまで部屋から一歩も出ず、尼〜ずにご託宣を垂れていた天水館の守護尊、漫画家の目白先生が登場するはずで、誰にキャスティングされるのかなあ。
てあたりで、今回はこれまで、『帰ってきた家売るオンナ』はお休みでごめんな。
【おまけ】
コメント欄にありますように明日の第9話にエンディミオン登場とのビッグニュースが!
渋江君によれば「ちょっちーっと」出ているということなので、みんな瞬きしないで見ていようね。