実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第637回】泉里香『カンナさーん!』解決編の巻:その3


最近、地下鉄東山線で泉里香さんとよく一緒になります。


 いつまでもミュージカルに浮かれていてはいけない。こともないんだろうけど、今回はいきなり本題だ。『カンナさーん!』第9話(TBS、2017年9月12日、脚本:マギー/撮影:岡崎真一・佐藤勝成/演出:平野俊一)。このドラマ、初回が視聴率12%でその後も堅調にほぼ二桁を維持していたのだが、前回まで紹介した第8話でいきなり7.2%と大きく数字を落している。ネットで感想ブログなどを拾うと、第7話のラストについて「トン子先生がクズすぎる」なんて書いているサイトもありました。




 「美人で優しい先生だと思っていたら、ラストで本性を現わした」だの「礼といちゃいちゃしていて目を離していたから、麗音がジャングルジムから落ちたんじゃないか」とか、さんざんな言われようで、ひょっとしたらそのせいで視聴率が下がっちゃったのかも知れない。



 でもこの第8話でようやく誤解も解けて「実はトン子、いい人だった」という噂が出回ったのか、この第9話と続く最終話で再び10%を越えたようだ。

1. 冷戦構造


 第9話のサブタイトルは「夫の最後のプロポーズ……崖っぷちママ幸せの時!! のはずが……大借金でド貧乏転落!?」であるが、要潤が渡辺直美に再プロポーズしたとかそういうことは、もうぜんぜん扱わない。そんなことをしていたら話が進まない。泉里香の出演シーンだけに絞り込むのであしからず。言うまでもないか。



 姑の柳子(斉藤由貴)の陰謀で、危うくレオこと息子の麗音(川原瑛都)を手放すところだったカンナ(渡辺直美)。だが柳子の送り込んだ刺客トン子こと緒川俊子(泉里香)は、カンナから麗音を奪うつもりもなければ、そもそもカンナの元夫・礼(要潤)と結婚する気もなかった。
 柳子の陰謀が水泡に帰して数日、麗音のケガは順調に回復して、いよいよ快気祝いの日。柳子は性懲りもなくケーキ持参、夫の徹三(遠山俊也)連れで参加である。
 さっき、泉里香がいい人だと分かったせいで、この第9話からまた視聴率が二桁復帰したと書いたが、一部には、この数字は斉藤由貴の不倫騒動効果という説もある。確かにあのニュースを踏まえて斉藤由貴の芝居を観ると、魔性の女というか、天性のお騒がせ女のサガみたいなものが虚実を越えて観る者に迫る。あり得ない話だが、仮に目の前に今現在の斉藤由貴が現れて見つめられたら、格別にファンでもなかった私でも瞬殺でパンツをかぶるだろう。
 つまらない話をすまない。以下、長いけど一気にいくぜ。



カンナ「麗音、ばぁばが買ってくれたケーキがあるよ〜」




柳 子「おめでとー」



麗 音「だれのお誕生日?」



トン子「今日はレオ君の怪我がなおったお祝いだよ」
カンナ「麗音、明日から保育園、行っていいって」



麗 音「ほんとぉ? やったあ!」



徹 三「長引かなくてよかったねえ」
カンナ「ええ、ぜんぶ俊子さんのおかげです」
トン子「あ、いえ、私は何も……ケーキ切りますね」



柳 子「でも本当そうよ。カンナさんだけだったら、まだ治ってなかったかも知れない」



徹 三「おい!」
柳 子「ん?」



柳 子「あら、睨まれた」



カンナ「本当にお世話になりました」



柳 子「私はずーっとお世話してもらいたかったんだけどね」




柳 子「あ、また睨まれた」



徹 三「いちいち口を挟むからだよ」
柳 子「だって」



トン子「レオ君ケーキだよ」
カンナ「俊子さんはこれからどうするの?」



トン子「ん……まだ考えてるところです」



柳 子「私の計画では一ヶ月後ぐらいには礼と、結婚してる予定だったんだけどね」




トン子「いや、ですからそれは最初から」



柳 子「絶対うまくいくと思ってたんだけどな〜。すごく残念」



カンナ「あの〜、ケーキを食べたら帰ってもらってもいいですか?」



柳 子「あら、はっきり言われた」



徹 三「はっはっはっ。いつもこんな感じなんです」
トン子「いいですね仲良くて」



柳 子「うんそう。仲良しなのよ」



カンナ「ホント、とっても仲良しなの」



柳 子「ね」



カンナ「ね」


 すごいですね。前回も書いたとおり、私だったらこんなクズの姑とは金輪際お付き合いはゴメンだし、こんな東西冷戦構造みたいな家庭内にはとても住めないが、カンナは寛大にもそれを赦し(あれだけのことをされて軽口を叩き合えるのだから、まあいちおう赦したことになるんじゃないか)柳子はたいして反省もせず我が道を行く。でもさすがの柳子も、まあ自分の不倫騒動も忙しいし、多少の後ろめたさや反省はあったのかなかったのかな、カンナに言われたとおり、ケーキを食べたらすぐ帰ったみたいである。

2. ダイアローグ


 家に残ったのはカンナと俊子と麗音だけ。たぶん麗音がもう少しトン子先生と遊びたいと言って、俊子が残ったのだ。ここも長いシーンだけど一息に行くね。



麗 音「いらっしゃいいらっしゃい、オカサナ屋さんですよ」



トン子「こんにちは、おいしいお魚ください」
麗 音「はい、ちょっと待っててくださいね」



カンナ「俊子さん、さっきの話なんだけど」



トン子「……はい……」



カンナ「これからのこと。今度は俊子さんが自分らしく居れる場所が見つかればいいね」







トン子(私は替えのきく着せ替え人形なんだ……)



トン子(私自身が必要とされているわけじゃない)



トン子(そう思ったらカメラの前でどんどん笑えなくなってしまって……)



カンナ「お節介なんだけど、俊子さんみたいな人がなんにもしていないのは、もったいないと思う」



カンナ「さんざんお世話になっていて、説教するつもりじゃないんだけど」



カンナ「俊子さんがいろいろあってモデルさんを休んでるってのは分かっている。けど、今休んでいるのは、次にまた翔ぶためでしょ」



カンナ「今、私も会社の仲間も、夢だった仕事をやめなきゃいけなかったりでさぁ」



カンナ「やりたいことをやれるって、すっごく恵まれてたなんだなぁって、いまさら痛感してるの」



カンナ「だからそれが出来る人には、がんばって欲しいんだよね」



麗 音「はい、どうぞ」



トン子「わあ、ありがとう!」



カンナ「麗音はお店屋さん上手だね!」



トン子「私この数日間、レオ君から沢山の元気と力もらいました」



トン子「カンナさんからも。私も前に進まなきゃ、って背中を押してもらいました」



カンナ「じゃあ、いつ? いつ前に進む?」



トン子「……それは、まだ……」



カンナ「まだ背中を押す力が足りないかな?もっとバチーンと押さなきゃダメ?」




カンナ「なんてね。お茶いれてくる」



トン子「はい」



麗 音「じゃあ次、トン子先生がお店屋さんね」
トン子「うん」



トン子「いらっしゃいませいらっしゃいませ、何にします?」



トン子「新鮮なお魚そろってますよ」



カンナ「ねえ、明日一日、私につきあってくんない?」




カンナ「ためしに翔んでみようよ。何が見えるかわかんないけど」


 基本的にカンナさんと麗音くんがしゃべって、俊子はそれを受ける芝居。しかもけっこう長丁場をちゃんとこなせるってことで、ドラマ現場における泉里香の評価が上昇し、女優の仕事が増えることを期待してやまない。マネージャー、バラエティも良いがそろそろ仕事のジャンルをシフトしてくれ。

3. 意外と細かい伏線


 で翌日、カンナは俊子を連れて、自社ブランドの路面店に出かける。
 どうせ会社にいても、もう退社決定でお邪魔虫だからと、販売店の方へ出向いて、実際に製品を売る苦労を体験しておこうと、店長で知り合いのめぐ(平山あや)に頼んだのである。泉里香は前夜のおままごとのシーンで「お魚屋さんごっこ」を演じていて、それを見ていたカンナが彼女に「お洋服屋さんごっこ」をさせることを思いつく。このドラマの脚本はそういう細かい伏線を貼って、エピソードのつながりを丁寧に組み立ててくれているのでありがたい。


カンナ「実際お店に来るのは初めて?」
トン子「はい」
カンナ「えっと、私がデザインした服は……」



カンナ「…ええと…」



カンナ「売れた。全部」



カンナ「これが厄介払いされるデザイナーの現実か」



カンナ「え〜ん」



め ぐ「そこで何落ちこんでんの?」



カンナ「あ、めぐさん、おはようございます」



め ぐ「久しぶり。いや参ったね。ブランドが突然閉鎖なんて。今ショップの子たちみんな次の就職先探し回ってるよ」



カンナ「私も漏れなく参ってます」



め ぐ「ま、私は最後までがんばってやってくつもりだけど」



カンナ「昨日電話でお願いした件なんですけど、今日一日、彼女と一緒にここで販売のお手伝いをさせてください」
め ぐ「いいけど本気なの?」



カンナ「私も、一枚でも多く売りたいんで。いまオフィスにいてもやることないし、よろしくお願いします」
め ぐ「ちょっちょっ……」


╳    ╳    ╳



め ぐ「ね、彼女って緒川俊子さんだよね」
カンナ「気づきました?」
め ぐ「気づくよウチにもポスター貼ってあったもん」



トン子「カンナさんやっぱり私……」



カンナ「まあまあまあまあ、やるからには真剣になるんで」



カンナ「で、いつもどのくらい売れるんですか?」



め ぐ「まあ平日だといいとこ20万前後かな」



カンナ「ふぅん……私はその倍、売ってみせます」



め ぐ「じゃあまあ、お手並み拝見ね」


 平日だと20万って、ロケーションは知らないけど、けっこう売れるもんなんだね。
 というわけで販売の仕事開始、最初はカンナさんの勢いがありすぎるキャラに客もどん引きだ。渡辺直美もここは芸人としてちょっと笑わせにかかっているかもしれない。視線を合わせないように逃げる客。まあ気持ちは分かる。



カンナ「いらっしゃいませ〜。気になるのがあったら広げて見てみてくださいね」



カンナ「それ可愛いですよね〜。こういうのはこういうのと合わせたら似合うんじゃないでしょうか。絶対可愛いですよ」



カンナ「着てみたら〜」
め ぐ「いきなりがっと行きすぎかな。お客さんの様子ちゃんと見てよ」




╳    ╳    ╳



カンナ「いらっしゃいませ〜」




╳    ╳    ╳



め ぐ「ジットリ近づいちゃダメ!」
カンナ「私いまジットリしてました?」
め ぐ「してたけど」


 ところで、この若い女性客二人のうち一人は、トン子を見てなにやらそわそわしている。モデルの緒川俊子だと気づいたようだ。ひそひそ話をされてなんとなく居心地悪そうなトン子は、顔をそむけ、俯いてしまう。



若い客「……違うよ、ほら行くよ」



一方、カンナもカンナで、まだ意欲が空回りして、上手く客の心がつかめない。



カンナ「これだと色んなのと組み合わせできるんで、一枚持っておくと楽ですよ」



 客 「でも私、腕出したくないんですよね」
カンナ「えっ、何でですかそんなに細いのに」
 客 「いや恥ずかしくて」


╳    ╳    ╳



カンナ「はぁ、八連敗。一枚売るのがどんだけ難しいか」



め ぐ「分かったでしょ」



カンナ「私ふだんの必死感が前面に出ちゃうっていうか、暑苦しいんすかね」
め ぐ「まあそれもカンナらしさなんじゃない。だって売り方に正解なんてないんだから。それが好きっていう人もいると思うよ」


 店長のめぐに背中を押されて、カンナは「自分らしさ」をもっと前面に出そうと思い立つ。そのために、まずお店の服を自分自身にコーディネート。でもこの店、カンナの身体が入るサイズの服がないじゃん、と思っていると、シャツを二枚あわせてスカートにしちゃうんである。



カンナ「接客してたら、案外みんな自分に自信がないんだなって思って。でも人の目を気にするより、もっと自由に楽しんで着られれば、って!」
め ぐ「いいと思う。カンナにしかできない接客だよ」



カンナ「トン子ちゃん、どう?」



トン子「このコーディネートだったら」



トン子「これとか」



カンナ「いいねえ」


 こういうのがおしゃれなんだね。『パラダイス・キス』を見た時もアレだったけど、私どうもファッションものには弱いなあ。実写版セーラー戦士がモデルやっててもファッション誌はあまり買う気にならないし。まあオシャレの理解できないおじさんってことで。

4. てをつなぐ


 と、調子が出てきたところに新しい客が入ってきて、いい感じで仕事を再開するカンナは、ようやく売り上げに成功。



カンナ「いらっしゃいませ。それ、かわいいですよね」



カンナ「私も着ているんです」
 客 「えー超カワイイ!」



カンナ「そうなのスカートにアレンジしてみたんだけど」



カンナ「こんな感じでベアトップにもできちゃう!」



╳    ╳    ╳



カンナ「ありがとうございました」



 客 「教えてもらった合わせ方してみます」



カンナ「絶対似合うと思います」



 客 「ありがとうございます」



╳    ╳    ╳



カンナ「ようやく一着売れました!」



め ぐ「やったね」
トン子「おめでとうございます」



カンナ「一枚売るのがどんだけ大変でどんだけ嬉しいか」



カンナ「さ、次はトン子ちゃんの番だよ」
トン子「え?」



カンナ「この喜びは味わった方がいいって」



トン子「いやぁ……」


╳    ╳    ╳





カンナ「いいねぇ、バッチリじゃん!」
め ぐ「さすがプロだね」
トン子「いや、でも私……」



め ぐ「いらっしゃいませ」



カンナ「ほ〜ら、私が背中を押してあげるから」



トン子「いらっしゃいませ」



トン子「それ可愛いですよね」
め ぐ「ねえ、彼女とどういうつながりなの」



カンナ「危うく息子を取られそうになった仲」
め ぐ「え?」



 客  「……ほかも見てきます……」



トン子「はい、ごゆっくり」


 まあそうすぐに上手くは行かないよね。ため息をついて、ハンガーの服を直すトン子。と、そこへ、さっきトン子のことをチラ見していた少女たち二人が戻ってくる。
 



ファン「まだいるかな」



友 人「えーっと」



トン子「いらっしゃいませ」



ファン「えー!」
友 人「そうだ!」



ファン「あの……」
ファン「緒川俊子さんですよね」



トン子「はい……」



友 人「やっぱりそうだった!」
ファン「可愛い!」




友 人「この子すごいファンで、雑誌とか切り抜いて、いつも参考にしてるんです」



ファン「私、憧れてて、いつも真似してるんです」



ファン「雑誌で緒川さんを見たのが、おしゃれに目覚めたきっかけなんです。」



友 人「(小声で)ほら、握手してもらいなよ」






ファン「ありがとうございます」



トン子「ありがとうございます」




ファン「いま着てるのってどれですか」



トン子「あ、こちらです」



トン子「これなんですけど、色違いもあって」


 前々回に紹介した第8話のエピソードで、モデルをやっていて笑えなくなってしまったトン子がどんなふうに笑顔を快復したかが語られていましたね。



トン子「いま、久しぶりに充実しているんです」



トン子「レオ君、歩くとき私に手を差し出してくれるんです」



トン子「私を信じてちっちゃな手を差し出してくれる」



トン子「レオ君が私を必要としてくれるのが、すごく嬉しくて……」


 彼女を癒すもの、いまの彼女に必要なものは自分に向かって差し出される手。そういう場面を前回に出しておいて、次にファンとの握手が彼女にモデル復帰を決意させる、という展開。繰り返すけど、この脚本って、こまかい伏線を上手に効かせてくれている。というところで、泉里香さんの笑顔も出たし、まだもうちょっと話は続くが、今回はこのへんで。