実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第609回】小松彩夏@『三匹のおっさん3』第8話の巻


『皇帝のいない八月』(1978年松竹)


 渡瀬恒彦さんが逝去されました。もともとサラリーマンだったのがいきなり東映で主演デビュー。日活スター渡哲也の弟ということもあり、スカウトされて映画界入りしたようだ。



 2002年の秋に古巣の東映京都で制作された主演の刑事ドラマ『おみやさん』は、断続的に10年以上続き、テレビでの渡瀬恒彦の代表作のひとつとなった。その第1シーズンのプロデューサーが丸山真哉だ。丸山Pは2003年春の第2シーズンを手がけてから『おみやさん』を離れ、同年秋の実写版セーラームーン(2003年〜2004年)プロデューサーに就く。ライダーでもスーパー戦隊でもない、女の子だけの特撮アクションをどう表現するか、と思案した丸山は、音楽の雰囲気も大切だと考え、『おみやさん』の音楽を担当していた大島ミチルに依頼をかけた。これは大成功だったと思う。



 セーラームーンのテレビレギュラー放送が2004年の秋に終わると、丸山Pは再び渡瀬恒彦を主演に刑事ドラマを一本制作する。それが2005年の2月に放送された『警視庁捜査一課強行七係』(脚本:深沢正樹/監督:吉田啓一郎)である。この作品は一本限りの単発に終わるが、設定を練り直す形で、一年後にほぼ同じスタッフで始められた新番組が『警視庁捜査一課9係』だった。主演はもちろん渡瀬恒彦。これも『おみやさん』に負けず劣らず長期シリーズとなった。
 そして丸山Pは『警視庁捜査一課9係』シリーズに次々と実写版セーラームーンの戦士や四天王たちを起用する。ワンポイント出演の場合の方が多いし、渡瀬恒彦との共演といっても、被害者の死体役で検分されるぐらいのものであるが、ともかく大した顔ぶれである。


沢井 美優
第5シリーズ第5話「殺人DJ」2010年7月


泉 里香
第5シリーズ第11話「殺人ネイル」2010年9月


安座間 美優
第8シリーズ第6話「127の殺意」2013年8月


小松 彩夏
第6シリーズ第3話「赤い破片の秘密」2011年7月


小池 里奈
第3シリーズ第1話「堕天使」2008年4月


渋江 譲二
第6シリーズ第2話「殺人バースデイ」2011年7月


窪寺 昭
第1シリーズ第6話「動く指紋の謎」2006年5月


窪寺&里香
第5シリーズ第11話「殺人ネイル」2010年9月


松本 博之
第2シリーズ第7話「狙われた誕生会」2007年6月


遠藤 嘉人
第3シリーズ第6話「殺しのピアノ」2008年5月


黄川田 将也
第4シリーズ第5話「殺人ダイヤモンド」2009年8月


 丸山真哉の名は、2014年の『警視庁捜査一課9係 season9』、そして翌年のシーズン10の第1話までクレジットされていて、これを最後にプロデューサーを降りたようである。ところが翌2016年、丸山真哉は13年ぶりに『おみやさん』のプロデューサーに復帰する。でも、『おみやさん』は、すでにレギュラーシリーズとしては2012年に一端終了していて、そのあと2014年にスペシャルが作られたきりだった。それが、丸山Pのもと、2016年には2月と10月の2回にわたってスペシャルが放映されている。



 これはどういうことか。『おみやさん』は石ノ森章太郎の漫画が原作だが、舞台は京都に変更されてている。ここが『警視庁捜査一課9係』との一番の違いと言ってもいい。そして渡哲也によれば、2015年に弟の病気が発見されたとき、すでに医師からはかなり厳しい見通しを告げられたそうである。そういう状況のなかで丸山真哉は2016年、渡瀬恒彦が最も愛着を抱いていた古巣の東映京都で、久々に彼と『おみやさん』を撮った。そこに様々な思いが読み取れるような気がする。ひょっとしたら渡瀬がもっともっとシリーズを続けたいという意欲で元気を取り戻してくれないか、なんてことも祈っていたと思う。



 断っておくが以上は憶測である。私は丸山真哉氏のことをほとんど知らない。でも戦士たちが北川景子の披露宴で歌ったという『Friends』の歌詞や、雑誌やメモリアルCDボックスのライナーノーツのインタビューなどからわずかにうかがえる人となりや、そして何よりも、特撮番組で仕事をしたことのあるキャストを、刑事番組のゲストに積極的に起用していく態度から察するに、この人はそういう義理堅い人情家ではないのか、昨年の『おみやさんスペシャル』は、丸山真哉が渡瀬恒彦に示した男の友情の証ではないのかなぁ、と推測しているのです。
 名古屋支部として渡瀬恒彦追悼の一本を挙げるなら、クライマックスが全編ウェットスーツ姿の『恐竜・怪鳥の伝説』(1977年)にも個人的な思い入れはあるけど、やはり相米慎二の『セーラー服と機関銃』(1982年)ということになるかな。HuluでもAmazonプライムでも配信中。



 広告代理店のサラリーマンだった渡瀬恒彦を東映にスカウトしたのは、当時40代半ばですでに東映の制作部門のトップにいた岡田茂だそうだけど、北大路欣也もやはり、岡田茂に口説かれたクチだ。もっとも北大路欣也の場合、父親の代から東映には縁があった。ただ、Wikipediaによれば、若い北大路欣也は東京の大学に進学して、演劇の勉強に専念したがっていた。でも岡田は高校を卒業したばかりの松方弘樹と北大路欣也を飲み屋に連れて行って、大学に通いながらでも構わないから映画俳優を続けるよう北大路を説得したんだそうである。
 1970年代に入ると東映は実録ヤクザ映画路線に入り、北大路もスクリーンでは現代劇が続いた。でもテレビでは長らく時代劇のイメージが強かった。最近は現代劇でもよく見かけるようになったが、テレビの現代劇でしかも主演となると『三匹のおっさん』は35年ぶりの作品であるという。





 いちおうタイトルに「三匹」とはあるが、これは北大路の単独主演ドラマである。クライマックスで三人が町のチンピラとか泥棒とかを対治する見せ場では、やはり竹刀を振るう北大路欣也のオーラが違って、そこだけ時代劇みたいなのだ。



 『三匹のおっさん』は有川浩の小説が原作である。退職して父から継いだ道場を営む剣道の師範代、清田清一ことキヨ(北大路欣也)、引退した居酒屋のオヤジで柔道使いの武闘派、立花重雄ことシゲ(泉谷しげる)、電気関係の工場オーナーで発明が得意な頭脳派、スタンガン使いの有村則夫ことノリ(志賀康太郎)、悪ガキ時代からの幼なじみ三人が、板橋区の皐ヶ丘界隈にはびこる悪を対治するため、還暦過ぎて自警団を組織して大活躍、町内の平和はオレたちが守る、という連作短編である。以前NHK教育テレビの夕方にやっていたようなタイプのライトなホームドラマで。2014年の第1作以来これで3シリーズ目。すでに原作は第2シリーズの途中で消化したので、原作者と相談しながら全8話分のオリジナル・ストーリーを起こしたという。なかなかの人気作品です。



 で、それに小松彩夏が出ていたという情報があったので、見逃し配信で観てみた。『金曜8時のドラマ 三匹のおっさん3 〜正義の味方、みたび〜』最終話(第8話)「三匹のおっさん最後の大成敗!!」(2017年3月10日放送、テレビ東京/撮影:大石祐久/監督:猪原達三)である。不思議なんだけど、私の見落としでなければ、エンドクレジットに脚本家の名前が出てこない。公式サイトには江頭美智留、鈴木聡、森ハヤシ、深沢正樹といった名前が並ぶが、誰が何話目を書いたのかが分からないんですよ。どういうことだろう。





 最終回は、皐ヶ丘で卓球大会が開催されるという話。区議会議員を務める柏木(佐野史郎)のもとに、匿名の中学生から「家族の絆を深めるために、町の卓球大会を開いてほしい」という投書が届く。




 建設会社社長で地元名士として知られる柏木は、意気に感じて経費自己負担で「ファミリー卓球大会」の開催を告知し、出場参加者を募った。資格は家族同士のペアであること。卓球を通じて家族の絆を深めて貰おうという趣向だ。優勝者にはハワイ旅行をプレゼントという商品の豪華さも町中の評判になって、みんな卓球の練習を始めたりして大盛り上がり。これで次の選挙も当選間違いなしと、柏木も満足げだ。



 でも、この大会を呼びかけた匿名の手紙の送り主は、実は柏木にちょっとした悪意を抱く人物で、柏木主催の卓球大会でトラブルを起こし、彼の評判を貶めることが狙いだったのだ……というのが話の本筋なんだけど、今回のレビューではそこには触れません(笑)。すまんな、もう後は物語も何も関係なく、ドラマの中で行われる卓球の試合をひたすらに追っていく。
 清一(北大路欣也)の家族からは、息子の健児(甲本雅裕)とその嫁の貴子(西田尚美)がペアで出場。清一は妻の芳江(中田喜子)と共に観客席から見守る。ところが貴子の対戦相手を見た貴子の様子がおかしい。



芳 江「ああ、始まりますよこっち」




貴 子「ええっ?」



 試合に向けてストレッチをしていた清田夫妻の前に現れたのは、小島育代(藤田朋子)。原作ではこの人は、貴子がパートで勤めてる店の同僚だった。貴子とも親しかったんだけど、そこにつけ込んで5万円を借りてそのままパートを辞めて姿を消したとか、そういう因縁のある人だったと思う。



貴 子「返してよ!」



育 代「だからちゃんと返すって言ってるじゃない!」


 ドラマ版では第1シリーズ、第2シリーズ、そしてこの第3シリーズと、1シーズンに1話はゲスト登場する憎まれ役らしい。藤田朋子が妙なテンションで演じている。基本的にこの人は妙なテンションなんだけど。ま、ともかく今回は小松彩夏とペアで「家族の絆卓球大会」にエントリーである。



貴 子「何で?」



育 代「ひさしぶりね、貴子さん」



貴 子「……ええ……」



育 代「これ、うちの娘なの」





育 代「スポーツマンシップにのっとり、正々堂々とフェアに戦いましょ」



貴 子「ええ、もちろんそのつもりですよ」



貴 子「何が正々堂々よ!」
健 児「貴子、貴子、落ち着こう、肩の力を抜こう」



 司令塔の貴子が冷静さを欠いて、清田家代表ペアはすでに危険信号である。どころではない。試合が始まるやいなや、小松彩夏の実力がベールを脱ぐ。動きが普通じゃなくて、どうも素人レベルじゃないっぽい。








 唖然として見過ごす清田夫妻。これじゃ勝ち目はない。めちゃくちゃ強い小松。変な演技で勝ち誇る藤田朋子。いや藤田朋子って本当に変な人だ。ともかくそういうわけで、初戦はラリーの応酬もほとんどなく、小島育代と娘のペアが圧倒的な強さを見せつける。











 試合終了。さっくり準々決勝進出だ。この間、声をあげるのは藤田朋子だけで、小松彩夏は一言も口にしない。寡黙だが強い奴、ということであるが、しかし全然セリフがないのは、女優・小松彩夏的にはまずいんじゃないか。と思ったら、これが何と、ちょっとした伏線だったのには笑ってしまった。



 その後も当然のように勝ち進み、ついに決勝までコマを進めた最強親子ペアの藤田朋子・小松彩夏。




 迎え撃つは栗田豆腐店の栗田真一(小倉久寛)美奈代(ふせえり)夫妻。この夫婦にもこの夫婦のドラマがある。反抗期の息子(今井悠貴)と口論していて、卓球大会に優勝したら父親の言うことを聞く、みたいな成り行きになってしまったのだ。もっとも小倉久寛は、単なるオヤジの意地というだけではなく、これまで息子にちゃんと向き合って来なかったことへの反省も示したいという想いがある。ともかく、ここで何としてでも勝って、息子との関係を前向きに変えて行きたい。ケンカの末に家を飛び出して行った息子も、やはり気になるのか会場に来ている。小松彩夏は脅威だが、こっちもこっちで絶対に負けられない。



 そのとき、惨敗してから姿を消していた清田家の嫁の西田尚美が、どこからか体育館に戻って来た。手には書類のようなものをもって、宿敵、藤田朋子に一瞥をくれながら、興奮気味に義父の北大路欣也のもとに駆け寄る。



貴 子「これ、見て見て、体育大学の卓球部の名簿」




芳 江「あら、あのお嬢さん」



貴 子「中国からの留学生ですよ」



健 児「中国?」



貴 子「インチキやってんのよ。留学生を自分の娘と偽って出場させてんの」



健 児「でもどうやってこんなの見つけたの? 恐ろしいね。我が妻ながら恐ろしい」
貴 子「ルール違反よ、タイム、タイム! ちょっとちょっと、ほら」



美奈代「ルール違反?」



貴 子「そうなんですよ。向こうの反則負けですよ」



美奈代「反則負け?」



真 一「……いや、でも最後まで勝負させてください」
貴 子「え?」



真 一「息子の前で、最後まで正々堂々と戦って、そんで勝ちたいんです」
貴 子「でも……」



清 一「いいじゃないか、それで」
貴 子「……はい……」



清 一「がんばってください」



真 一「はい」


 なんと小松彩夏は藤田朋子の本当の娘ではなくて、中国人学生リー・ジンレイさんだった! 卓球王国中国から大学を全国優勝に導くための招聘留学であろうか。だったらしゃべらないのも当然だ!
 ただファミリー同士のペアであることがこの大会の参加条件なので、本来は失格のはずだ。しかし小倉久寛の意向で試合を行うことに。いやセリフがない理由が、小松彩夏のセリフ回しのせいはなかったようなのでホッとした。だからこの後も彼女は何にもしゃべりません。息詰まる無言のラリー。

























 途中で小松彩夏のスマッシュがスローモーションでインサートされたりする。ありがとう猪原達三監督。これで「卓球ものだったら小松彩夏が使える」という情報がテレビ業界に共有されると良いと思う。



 しかし、いくら一方の選手が驚異的に強くても、ペアはチームワークが肝腎だ。こっちは二人がかりで必死の形相で球に食らいつく。小松彩夏のスーパースマッシュも、小倉久寛一家の「家族の絆」の前に、ついに敗れるのであった。
















 ゲームセット。実は私、卓球のルールもよく知らないんだけど、ともかく小倉・ふせペアが勝ちました。自分のミスで試合を落とし、優勝賞品のハワイ旅行を落としたくせに、しゃべれない留学生のジンレイに不満たらたらの育代。



美奈代「いやったあああ」



育 代「ちゃんとやってって言ったのに!」


 で、このあと勝利した栗田豆腐店夫婦と息子の和解とか、ドラマ的にはいちばん大事なクライマックスとなってまいりますが、小松彩夏の出番が終了したのでこのレビューは無情にもここでお終い! 本日は字数のわりに画像だらけになっちまったなぁ。小松彩夏のセリフが一時もないから仕方ないんだけど。
 それにしてもここんとこ二ヶ月近く、沢井美優、泉里香、そして小松彩夏出演作品にほとんどを費やしてしまった。すばらしいことである。ではまた。


P. S.
 『大貧乏』最終回は、期待に反して泉里香が出てきてくれなかったので、レビューは割愛させていただきます。当たり前の話ではあるが、ドラマ自体はハッピーエンドで、わりと心地よく着地することができた。泉里香をもっと出してくれればもっとレビューしたのに(笑)。ま仕方ないです。



 それと私事ですが、来週末は久しぶりに家族の小旅行に出かけますので、一回お休みをいただければと思います。仮にも楽しみにしてくださる方おられたらすみません。予定では再来週、Act.14レビューとともに再開したいと考えています。



【お知らせ】次週このブログは一回休みになります。次回は四月更新の予定。