実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第603回】沢井&里香in『大貧乏』第4話の巻

 

 

 2017年2月3日公開の女子高生スポ根マージャン映画『咲 -Saki-』(2017年、プレシディオ、原作:小林立/脚本:森ハヤシ/撮影:長野泰隆/監督:小沼雄一)。昨年暮れにTBS系で深夜に放送されたドラマシリーズ(全4話+特別編)を、アマゾンプライムでうっかり目にしたのが運の尽き。映画公開を前提としたプロモ的内容にまんまとハマり、北川景子さんの『破門』もそっちのけで、公開初日に劇場に駆けつけてしまった。麻雀の甲子園みたいな大会の地区予選決勝で戦う四組の制服、というかコスプレの美少女たち。

 

 

 

 

 私は原作漫画もアニメも一度も観たことがないし、麻雀のルールも知らない。だから少女たちが「カン」とか「ツモ」とか「満漢全席」とか「上官霊鳳」とか(後半適当だが)ワザの名前を叫ぶたびに周囲が一喜一憂する意味が理解できない。要するに物語の根幹の部分で何がどうなっているのかがほぼ分からないんだけど、廣田あいかが自転車で疾走するオープニングから浜辺美波のきりっとした正面のショットで終わるラストまで、ワンカットも飽きなかったんだからすごい映画だ。瞬きする間も惜しい、至福の103分でありました。

 

 

 

 

 

 かなり早いけど、今年の私のベストワンはこれで決まりだな。ヒットして欲しいんだが。

 

 

 

 さあそろそろ本題に入ろう。
 今回は、やはりこれをレビューするのが義務ってもんだと思う。

 

 

 沢井美優と泉里香、久々の共演。フジテレビ『大貧乏』の第4話である。

1. スパイ風味のホームドラマ

 


 『大貧乏』というタイトルと、小雪と子どもたちのビジュアルからだと、極貧シングルマザーの子育て奮闘記、みたいなホームドラマを連想するよね。



 実際、小雪はバツイチ子持ちで、おまけに勤めていた会社が倒産して職もなし、というドン底状態から始まる話なんだけど、実はその会社の倒産が仕組まれたもので、裏では数十億の金がプールされているらしいのだ。小雪は家族のためにも奪われた金を取り戻そうとする。



 と、いきなりホームドラマに企業サスペンスを接ぎ木したようなプロットになって、エリート弁護士の伊藤淳史が登場する。彼は小雪の高校時代の同級生で、ず〜っと小雪に片思いしていて独身で、でもまったく相手にされず、同窓会でもすっかり忘れられていた。



 が、社会的にはリア充で、正義感の強い弁護士として成功し、年商百億を超える法律事務所を運営している。その彼が、ず〜っと片思いだった小雪のために一肌脱いで、会社倒産のカラクリをあばき、金を取り戻す手助けをしようとするのである。

2. 近すぎる女

 


 さて、第4話「ママがスパイ 迫る危険! 奥手弁護士にモテ期到来!?」(2017年1月30日フジテレビ、脚本:安達奈緒子/撮影:大石弘宜・篠田忠史/監督:土方政人)。
 小雪の勤めていた人材派遣会社「DOH」が倒産したのは、「濱中電子工業」という会社に、250億円もの損害賠償を請求されたからだ。濱中電子の画期的な新製品(充電時間がすごく短いリチウムイオン電池)の設計データが、発売直前にネットに流失してしまった。誤って情報を漏洩したのは、小雪の会社の派遣スタッフだった。
 と思われていたが、伊藤淳史の弁護士は、このところ何件か続いている廉価版PCの発火事故に注目した。調べてみると、そのパソコンのバッテリーは、流出した濱中電子の設計図をもとに作られている。つまりこの新型バッテリーにはもともと、発火しやすいという致命的設計ミスがあった。発売間近になってその欠点に気づいた濱中電子は、設計図のデータを故意に流出させ、その賠償金を小雪の会社に払わせて損失補填をしたのではないか、というのが伊藤淳史が立てた仮説である。
 というわけで証拠を集めなければならない。七草ゆず子(小雪)は三ヶ月の契約社員として濱中電子に潜り込むことに成功。今回のエピソードのサブタイトルにある「ママがスパイ」っていうのはここから来ている。



 総務部の決算準備室に入ったゆず子は、同僚の亜香里(沢井美優)が、もと研究職で、最近までバッテリー開発に関わっていことを知る。どうやって情報を得ようかと考えていたところに、都合よく彼女の仲良しグループから誘われる。

 


レイコ「七草さん、お昼一緒にどうですか?」


ゆず子「あっ、喜んで、はい」

 


 ランチ仲間は、ゆず子に声をかけたさやか(岡本杏里)と、ターゲットの亜香里(沢井美優)、それに異様に距離の近いレイコ(泉里香)。小雪は、若いOLから「キレイですよねえ」と憧れられるだけの美貌とスタイルはもちろんキープしつつ、一方で、子育てで身についたのか、子持ちアラフォーのくたびれ感もそれなりにリアルに出ていて良い感じだと思う。

 


レイコ「七草さんってキレイですよねえ。二人もお子さんいるなんて信じられない」
ゆず子「えっ?いやいやもうアラフォーだし」
レイコ「仕事もすごいできるし、前どこの会社にいたんですか?」


ゆず子「えっ?」

╳    ╳    ╳


柿 原「DOHの元社員だってことは絶対に知られないように」

╳    ╳    ╳


ゆず子「あっ、会社とか、ぜんぜん」


ゆず子「あ……化粧品売ってたりとか、デパートで」


レイコ「ええっ、そうなのぉ?」



レイコ「あっ、だからお肌とかキレイなんだ。やっぱお金かけると違うんだな〜」


ゆず子「はは……ありがとう……(いま使ってる化粧水、スーパーで540円ですけど)」


さやか「どこのブランドですか?」


ゆず子「えっ?(化粧水?)」


さやか「お勤めだったところ」


ゆず子「ああ……」


ゆず子「(よっ読めない)チャ…」


ゆず子「チャ…ミ……」
レイコ「えっ?シャミニョンですか?」


ゆず子「あっ、うん。それ(お、当った)」


レイコ「え〜、すごぉい! わたしシャミニョン使ってみたいなあって思ってたんです!」


レイコ「やっぱあのクリームって……」


ゆず子「あの、亜香里さん、亜香里さんって、もともと総務じゃないんですか?」
さやか「あっ、亜香里さんはバリバリの研究職だったんだよね。あの……何だっけ?何とかバッテリーとか作ってた」


亜香里「ちょっと身体がきつくなったんで、転属願い出して……」


ゆず子「あのバッテリーって、それって……」


レイコ「ねえ見て!シャミニョンのコンシーラー最強って、シミ全部消えるって、これホント?」


レイコ「わたし夏に由比ガ浜で油断しちゃって」


レイコ「ほらここ、ここにシミできちゃって〜」


ゆず子「ぜんぜん大丈夫よ。ピカピカ、プリプリだから……」


ゆず子「あっあの亜香里さん、あの、研究って……」



レイコ「ゆず子さん明日ってヒマですか?」


ゆず子(この子、距離感近いわぁ)


さやか「あっそっか、いいかも。七草さんも来ませんか?合コン」
ゆず子「ごっ合コン?」
さやか「一人来られなくなっちゃって」
ゆず子「いやいやいや私はないでしょ、ごめんなさい」
さやか「え〜? 困ったなぁ……。亜香里さん誰か連れてこられない?」


ゆず子「亜香里さんも行くの?」


亜香里「はい。もう仕事より婚活にシフトしたんで」




ゆず子「あっ…明日子供いないんだ」


ゆず子「合コンいいな〜。私も婚活したい」

 


 というわけで、引き続き亜香里(沢井美優)から何か聞き出せないかと、合コンにも参加することに決めたゆず子。空気を読めない泉里香の憎めないうっとうしさが楽しい。

3. プリンセスをお持ち帰り


 ところがこの合コンは、柿原弁護士とそのチームが濱中電子の内情に探りをいれるために仕組んだものだった。濱中電子側の女子は先ほどのランチの面々、亜香里(沢井美優)、さやか(岡本杏里)、レイコ(泉里香)それにゆず子(小雪)の四人。柿原弁護士側は、柿原(伊藤淳史)そして柿原の法律事務所の若手、木暮 (神山智洋)と、ゆず子と同じ倒産した人材派遣会社の元社員で、なぜか柿原たちと一緒に倒産の真相を追っている加瀬 (成田凌)、それによくわからないイタリア人(BEN L)。四対四の婚活合コンである。
 で、レイコは法律事務所所長のエリート弁護士、柿原に最初からターゲットを絞りきっていて、いつも柿原のことを邪険にしているゆず子も、こうなるとちょっと気にくわない。

 


レイコ「あの、柿原さんはやっぱりお仕事で海外とかよく行かれたりするんですか?」
柿 原「えっ、ああ、はい。あ、いや、いまその電話とかネットで仕事できちゃうんで」




木 暮「みなさんは? 濱中電子って固いイメージあるけど、お仕事は?」


さやか「コグちゃんいいよもう仕事の話は……ねえねえ、弁護士ってやっぱりモテます?」


加 瀬「まあモテるんじゃないんすかやっぱ」
さやか「モテそう、ね」




木 暮「そりゃモテますよ。うちのボスなんかもう」
柿 原「え?」


木 暮「年商107億の事務所の代表で、仕事メチャクチャできて、なのにほら、ぜんぜん偉そうじゃないでしょ」


レイコ「うんうん」


木 暮「モテないはずがないじゃないですか」
柿 原「いや……」
木 暮「いやいやいやいや。ホントなんで今まで独身なのかなぁって」


レイコ「へえーっ。ホントにお付き合いしている人とかいないんですか?」


柿 原「い、いないんですよそんなあの、忙しいですから」


レイコ「じゃ、好きな人とかも?」


柿 原「へっ?」




柿 原「あ、いやあの、僕……実は」


ゆず子「分かる〜」
柿 原「え?」


ゆず子「モテると思うわ。そんなオーラ出てるもん」


柿 原「えっ」


ゆず子「スマートだし、オシャレだし、メガネとかかけてるし」


レイコ「優しそうだし〜」





ゆず子「うん、この肉おいしい!」

 


 という感じで、合コンは盛り上がったのか何なのか、よく分からないまま、謎のイタリア人はすっかり酔っ払ってしまっている。レイコは柿原にターゲットを絞ってシャインアクアなハニートラップ。

 


木 暮「お店、変えましょうか?」


ゆず子「お金どうしよう、あの会費って……」
さやか「ああ……なんか柿原さんが払ってくれたみたいですよ」
ゆず子「えっそうなの?」


さやか「さすが年商107億、レイコさん完全にロックオン」


レイコ「柿原さん、この後まだお仕事ですか?」
柿 原「あ〜いや、今日はもう……」


レイコ「よかった〜」


レイコ「じゃあもう少し一緒にいられます?」
柿 原「えっ?」


レイコ「まだ帰りたくないな〜」


柿 原(かっ完全に胸あたってるし)


柿 原(目とか潤んじゃってるし)


柿 原(かわいい!)


柿 原(はっ!)


柿 原「う〜」


柿 原「ごっごめん、ちょっと……」



柿 原「く〜」


柿 原「ない。ないぞ。ないないない!」


加 瀬「えっ? とりあえず行くでしょ普通」
柿 原「えっ?」


柿 原「行くって何?」


亜香里「ねえ行くなら行くで早くしてよ」
加 瀬「はいはい」


柿 原「えっ?」


加 瀬「潜入捜査ですよ」


柿 原「かっ、かっ、加瀬春木〜!」

╳    ╳    ╳


加 瀬「行こう」


さやか「じゃあね」
レイコ「じゃあね」


レイコ「行こう」


柿 原「えっ? あっ……」

 


 こうしてプリンセスはアンニュイな雰囲気のまま、ややチャラい加瀬春木にエスコートされ、青の戦士は高収入弁護士の手を引いて、それぞれ夜の街に消えていったのでありました。

4. 行くしかないですね


 その翌日、濱中電子総務部。
 すっかりゆず子になついているレイコは、休憩時間に、わざわざ昨夜の結果を報告にやって来る。あいかわらず距離が近い。

 


レイコ「ちょっと聞いてくださいよ〜」


レイコ「なんか柿原さん『前どこの部署にいたの?』とか『派遣さんと仕事したことあるの?』、とか仕事の話ば〜っか。せっかくホテルのラウンジまで行ったのに」


ゆず子「ラウンジ? ホテルの?」


レイコ「こっちは本気ですよ〜ってサイン出してるのに、もう全然。ず〜っとアウセルがどうとか。ムカついたから、ぜんぶ知らない、って言ってやりました」


レイコ「私アウセルのチームにいたんだけど、無視して酔っぱらったふりして、胸押しつけたりとか〜」


ゆず子「胸って……レイコちゃん駄目よ、そんなこと女の子がしちゃ」


レイコ「ゆず子さん、お母さんみたい」


レイコ「いつもはやりませんよ〜」


レイコ「でも結局ダメで、普通に家に送られちゃいました」


レイコ「めっちゃ紳士。まあそこもいいんだけど〜」


レイコ「何ほっとしてんですか?」


ゆず子「えっ? あっいや……」


ゆず子「だってレイコちゃんみたいないい子が軽く扱われたら嫌だなって思って」


レイコ「まぁ、またこっちから誘えばいいんですよね〜」


ゆず子「そうよ。よし、仕事しよう」


レイコ「は〜い」



ゆず子「えっ? アウセル?」

 


 「アウセル」とは問題の欠陥新型リチウムイオンバッテリーの商品名だ。つまりそのチームに所属していたのは、実は泉里香のレイコだった。てことは沢井美優の亜香里は、たんに思わせぶりなひっかけだったわけだ。う〜ん、なんかちょっと残念。

 


ゆず子「アウセルのチームにいたのはレイコちゃんだったのよ」


加 瀬「亜香里さんがいたのは、電気自動車の方でした」


加 瀬「てことは、カッキー、行くしかないですねレイコちゃん。ねっ?」


柿 原「えっ? あっ、いやそれは分かるけど……」


木 暮「文面できました!」


柿 原「あっ木暮君、それ僕のスマホ!」
加 瀬「コグちゃんどうだったの? さやかちゃん」


木 暮「聞かないでください」
加 瀬「どれどれ……」


加 瀬「『昨日は大変楽しかったです。つきましては、もう少しレイコさんとお話ししたく……』これで来る女いる?」


柿 原「えっ?」


木 暮「『会いたいんだけど明日の夜会える?』」
柿 原「こっこっ……ちょっ……」


木 暮「お〜」
柿 原「あっ!いやちょっ…」


柿 原「おぉぉ、もう返事来た」
三人「『うれしい』うお〜!お〜!ハハハハ…」

 

5. めっちゃ紳士


 というわけで翌日、いざ出陣というときも、レイコはなぜかゆず子にくっついている。会社のお手洗い。
 

 


レイコ「あ〜メーク決まんない。せっかく柿原さんとデートなのに」


レイコ「ゆず子さんやってもらえませんか?」


ゆず子「えっ何で私が?」


レイコ「えっ? だってシャミニョンにいたって」


ゆず子「ああ……」

╳    ╳    ╳


レイコ「わたし早く結婚したいんですよね」


ゆず子「えっ? もったいないよ、まだ25でしょ? 仕事だってこれからなのに。せっかくいい会社入ったのに」
レイコ「えっ? 辞めないですよ」


ゆず子「えっ?」
レイコ「私たちって、仕事ができるようになる時期と、子供を産みたい時期がどうしてもかぶっちゃうじゃないですか。その選択って、結構きついと思うんですよ」
ゆず子「うん……」


レイコ「だったらまだ責任が軽いうちに、ちゃんと好きな人の子供産んじゃうべきだなあって」
ゆず子「でも柿原く……さんと結婚したら、お金の心配はないわけだし」


レイコ「そんなの分かんないですよ。結婚したからってずっと好きでいてくれるか分からないし。柿原さんの仕事だって、いつどうなるか分からないでしょ?」


レイコ「それに、わたし仕事好きだから、だからゆず子さんみたいな人、憧れなんですよ。仕事しながらカワイイ子ども育てて、そこに優しい旦那さまがいたら最高」


ゆず子(この子、私よりずっとちゃんとしてる)


レイコ「柿原さんってねえ、ホント優しいんですよ。今まであんな人いなかったなぁ」


ゆず子「へ〜。そうなんだ」

╳    ╳    ╳



ゆず子「はいできた」


レイコ「うわぁ、すご〜い。やっぱプロって違う」


ゆず子(奇跡だわ……)

 


 というわけでデート。高級ホテルのレストランで御食事である。







 食後のコーヒーが終わるころには、周囲の席もまばらとなる。

 




柿 原(言え、言うぞ……言ったことないけど)


柿 原(てか、こんなこと言うやつ、ホントにいるの?)


柿 原「上でもう少し話しませんか?」


╳    ╳    ╳








柿 原(やっぱ無理!)


柿 原「あの……実は、僕は聞きたいことがあって……」



レイコ「わたし……」


レイコ「ホントに好きです」




レイコ「柿原さん?」


柿 原「僕も……」


柿 原「僕も好きな人がいるんだ」


柿 原「ごめん」


柿 原「じゃあ……」


柿 原「あ、コート」




柿 原「痛!」


 


 わりと軽いようでいて、空気が読めないように見えて、実はいろいろ考えていて、でも決して打算ずくでもなくて、ロマンチックで純情な一面もある。わりと複雑なキャラクターを泉里香は上手に演じていると思う。やはり我々の亜美ちゃんは健在だった。
 そして最後のターンでは、ほんの一瞬だがダーク化までしてくれるんだからたまらない。

6. つかのまの黒亜美


 翌日。柿原さんに振られちゃったレイコは、何とゆず子さんの家まで押しかけている。



 手みやげのケーキに喜ぶ子どもたち。

 


レイコ「何か、好きな人がいるって言われちゃって」


ゆず子「そう」


レイコ「ホントかどうか分かんないけど、とにかく振られちゃいました」
ゆず子「そっか」


レイコ「けっこう頑張ったんですけどね、無理して」


レイコ「やだ……ごめんなさい」


ゆず子「レイコちゃん……」



レイコ「えっ?」


実 結「だいじょうぶ?」


翔 太「実結、そんな汚いタオル……」


実 結「きたなくないもん」


翔 太「ティッシュあげればいいんだよ。はい」


ゆず子「それもどうなの? ごめんね。これ使って」
レイコ「嫌だごめんなさい。急に来てこんな……」
翔 太「ケーキもらったし」


レイコ「フフ。ホントいい子たち」


レイコ「ゆず子さんやっぱすごいな。こんないい子たち、ひとりで育ててるんだもん」


ゆず子「そうでもないよ。普段なんかひどいよ」


レイコ「何か元気出ました。もういいや、取りあえず仕事がんばろう」


ゆず子「ねえ、夕飯でも食べてって、って言えるほどのものはないんだけど」


レイコ「ありがと」
実 結「泣いちゃった」


(チャイムの音)
ゆず子「あっ……」
レイコ「あっ、いいです。私出ます」
ゆず子「ありがとう」

 


 もちろん、ドラマのセオリーとして、ここでチャイムが鳴ったら、来訪客は当然柿原じゃなくちゃいけない。柿原弁護士は何度もここに来ていて、少なくとも子どもたちとは、けっこうツーカーの仲である。

 


レイコ「えっ!?」


柿 原「えっ……レッ、レイコちゃん!?」


翔 太「カッキーだ、カッキーが遊びに来てくれた!」
実 結「カッキーあそぼうあそぼう!」


レイコ「えっ?カッキー?」


柿 原「いっ、いや…」


╳    ╳    ╳


ゆず子「レイコちゃん待って! レイコちゃん!」


レイコ「ゆず子さんひどい」


ゆず子「あっ、あのね違うの。あのこれは……」


レイコ「そっちがうまくいってるなら、そう言ってくれればいいじゃないですか」
ゆず子「いや違うの。説明はできないんだけど……」


レイコ「なあんだ。ゆず子さんも新しいダンナとか、やっぱ欲しいんだ」


ゆず子「えっ?」


レイコ「一人でちゃんとやっててすごいなって思ってたのに。ゆず子さんみたいに、誰かに頼らなくても生きていける人になりたいなって思ってたのに」


レイコ「なんかガッカリです」



╳    ╳    ╳


翔 太「カッキーばば引いた〜!」
実 結「カッキーばば〜」
翔 太「カッキーばば〜、ばば〜」
柿 原「ハハハ」


ゆず子「なに遊んでんの!この状況、分かってる?レイコちゃん泣いて帰ったんだよ」

 


 まあ男なんてこんなものである。
 ともかく、そういう流れでゆず子が柿原を非難して、でも逆に彼を擁護する子どもたちから「パパが欲しい」と、父親がいない寂しさを切々と訴えられてホロリとなっちゃって、というホームドラマ的展開があるんだけど(て言うかそっちが本筋なんだけど)省略。
 翌日。ゆず子としては当然レイコと顔を合わせづらい。

 



ゆず子「どうしよう…気まずいな」


レイコ「おはようございます、ゆず子さん!」
ゆず子「おっ、おはよう」


レイコ「イヤだゆず子さん、顔色悪〜い」


レイコ「寝不足はお肌に悪いですよ」


ゆず子「なんで?」

 


 昨日の愁嘆場はどこへやら、ゆず子はあっけにとられている。いったいレイコになにが起こったか?

 


柿 原「えっ、昨日?」


加 瀬「あっ、はい。何か淋しそうだったんで」


加 瀬「レイコちゃんいい子っすよね。マシュマロみたいだし」


ゆず子「はい?」


加 瀬「色々話してくれましたよ。アウセルのチームにいた派遣スタッフの一人が……USBでのデータ持ち出しを、常習的にやってた人がいたみたいです。禁止なの知ってて」


ゆず子「ノルマ家でこなしてたとか?」


加 瀬「で、調べたら、どうもそのUSBに機密情報が自動的にネットに出るようなバグが埋め込まれてたみたいです」


ゆず子「濱中の誰かが仕込んだの」


加 瀬「たぶん。でもレイコちゃん、そこまで分かってなかった……」


柿 原「ちょっと待てい!」


柿 原「いや重要な証言だということは分かっている。けどその前に春木君……」
加 瀬「はい?」
柿 原「君、もしかしてレイコちゃんと……」


加 瀬「あっ、ああ……話聞いてただけです」


柿 原「って顔じゃないよね?」
加 瀬「まっいいじゃないですか。レイコちゃん元気になってたでしょ?」


ゆず子「肌ツヤツヤだった」


柿 原「うわ〜!聞きたくない〜!」


柿 原「てかレイコちゃん、僕のこと好きだったんじゃないの?」



柿 原(何だ?この振られてもいないのに振られた気分は)


木 暮「ボス、パソコンの解析結果が出ました」


木 暮「発火したリチウムバッテリーは構造が濱中の設計図と酷似しているそうです」


木 暮「照合率92%です」


柿 原「そうか。やっぱり情報漏えいは濱中の策略か」


柿 原「読みは当たってたわけだ!」

 


 ていう感じで、ゆず子が勤めていた派遣会社DOH倒産のカラクリが少しずつ見えてきた。さてどうやってこれを暴くか、ここで柿原は意外な人物と手を組むことにした、というあたりで第4話は終了。
 結局、成田凌の演じている加瀬春木っていう男は、合コンの晩は沢井美優をお持ち帰りしたうえ、柿原に振られて傷心の「マシュマロみたい」な泉里香もちゃっかり味わってしまって、セーラー戦士二人をすばやくゲット。しかも、元研究職の亜香里(沢井美優)が所属していたのは自動車部門で、目下のターゲットではないことを突き止めたり、逆にレイコ(泉里香)こそ、問題のバッテリーの開発プロジェクトに関わっていたこと、そこで怪しい動きをした人物がいたことまで聞き出しているんだから、ただ遊んでいたわけでもない。男とはかくありたいものである。なれないけど。
 この加瀬は、別に柿原の部下ではなくて、ゆず子と同じく倒産したDOHの元社員だそうだ。それで、会社が不当に隠匿した金を取り戻そうとするゆず子と行動を共にして、一緒に柿原の法律事務所で不正を暴こうとしているんだけど、なぜそこまで執念を燃やしているかの説明はまだきちんとされていないみたいで、ドラマのキーパーソンの一人となっている。



 残念なのは、ミステリアスでアンニュイな雰囲気を漂わせ、いわくありげだった沢井美優が、「実はターゲットは里香でした」というひっかけのための伏線でしかなかったこと。なんという贅沢な無駄遣いをするのか。
 他方、泉里香もこの一話でお役ごめんと思いきや、沢井美優ブログによれば、まだ出番はあるとのことである。

 


 昨夜は『大貧乏』4話ご視聴ありがとうございました。とても温かく和気藹々とした雰囲気の現場はとても楽しく、何年ぶりかの里香との共演は嬉しく幸せな時間でした。引き続き里香は出演しますので、可愛い姿を皆さん是非ご覧くださいませ。(沢井美優「MY HEART」2017年1月30日


 もっとも、レイコちゃんがこれ以上、欠陥バッテリーに関する情報をもっているとも思えない(実はそうだったりして)。小雪が潜入捜査を続ける間、同僚のカワイイ後輩としてちょいちょい出続けるだけなのか、それともやっぱり「背の高い女は小柄な男に惹かれる」という俗説どおり、まだ伊藤淳史にご執心で、これからロマンスがらみの騒動がもう一波乱あるのか。どうなんでしょうか。沢井美優は安定のお芝居、泉里香は、いろいろ評価は聞いていたが、期待されたイメージ(最近グラビアでも話題のモデルのゲスト出演)どおりの芝居をしたうえ、けっこうメリハリもあって、個人的には満足した。やはり浜千咲の天才は活きていた、と私は嬉しくなった。みなさんはいかがでしたか。
 じゃ、このへんで。