実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第591回】北川景子『ヒポクラテスの誓い』第5話の巻(下)


『ヤングジャンプ』2016年表紙列伝


21号(4月)表紙の篠田麻里子さん、30歳


34号(8月)表紙の深田恭子さん、34歳


52号(11月)表紙の泉里香さん、まだ28歳



 さて恒例の戦士会……ではなく、今回は小池里奈(セーラールナのポーズを取っています)と男子部門まで集結したのがすごい。



 増尾、最初はよく分かんなかったぞ。
 この人たちもアラサーのくせに相変わらず可愛いし、困ったな。嬉しい悲鳴だ。



 と、話題にはことかかないが『ヒポクラテスの誓い』最終話レビューを終わらせないとね。

1. 理想の医師



 ところで津久場教授と光崎教授って、そもそもどんな関係だったんだろうか。



 若き日の津久場と光崎の因縁。それが語られる場面は、北川さんはほぼ出てこないんですが、私も組織に生きる者として色々と考えさせられるところが大きかったので、長くなるけど、できるだけカットせずにお届けします。



津久場「何十年ぶりかな、ここで君と会うのは」



津久場「時間がないんだ。手短に頼むよ」
光 崎「血栓を発症した患者が出たそうですね」



津久場「栂野君の誤解だ」



光 崎「セチルミンを誤投与された可能性のある患者です」



光 崎「誤投与に気づいたのは、ある殺人事件の被害者がきっかけでした」


╳    ╳    ╳



光 崎「気管に異物」



╳    ╳    ╳



光 崎「あの死体には、死因とは別に不自然な血栓がありました。その後も血栓による死亡例が、解剖により明らかになっています。もはや隠すことはできません。事実を公表して該当者には再検査を、倉本紗雪には至急、外科手術を行なってください」



津久場「悪いができない。分かっているだろう。投与する時点で認識のなかった副作用は本来、医療事故の範疇だよ。だがそれが世間に出れば、まるで殺人事件のように扱われ、医療ミスだ何だと訴訟が起きる」



光 崎「それは甘んじて受けるべき責任でしょう」



津久場「受けた結果どうなる? 激務に加えて、日々更新される報告をすべて把握しろと言われれば、医者は逃げ出し、医療はますます衰退していくよ。それが本当に患者のためになると思うか?」



光 崎「……歳は取りたくないものですね。あなたは、そんなありきたりのご託を並べるような人ではなかった」


╳    ╳    ╳


光 崎「私がまだ内科にいたとき、臨床データの不足で医療事故が起きた」



津久場「遺族には言うなってどういうことですか? 患者より病院の体面が大事ですか?」



医学部長「いや、しかしね津久場君、もしこの病院に何かあれば、他の患者はどうなる? 大学病院には果たすべき役割があるんだよ。ここはひとつ慎重に……」



津久場「患者の生命を守る。医者にそれ以外の役割があるのでしょうか!」



╳    ╳    ╳



光 崎「九州に異動になるそうですね。」
津久場「まあしょうがない。遺族にぶちまけたからな」



光 崎「津久場さん一人で罪を被ったからって、病院は変わりませんよ」
津久場「おれが無駄なことしたみたいに言うなよ」
光 崎「何で出来るんですか? こんなこと」



津久場「理由なんかない。医者としてのおれの矜持だよ」



津久場「よくここで朝までしゃべったな。いろいろと熱くなって」




津久場「また会おう」



津久場「いい医者になれよ」



╳    ╳    ╳



光 崎「あなたにはかなわない。そう思って法医学に転向しました。それぞれの道で医療を支えたかった。でもあなたは変わってしまったようだ」
津久場「もちろん、何の責任もない若造の頃とは違う。手段が変わっただけだ。患者を救いたいという思いは微塵も変わっていない」
光 崎「だが現に患者が死んでます!私には、今のあなたは保身に懸命なつまらない男にしか見えない」



光 崎「医療のため、医師のため、そんな耳触りの良い言葉だけで、この患者の生命は救えません。あなたは潔く責任をとって、とっとと引退すべきだ」



津久場「光崎君……真っ直ぐで熱い医師になった」



光 崎「……失望させないでください。これ以上失望させないでください」
津久場「それは、済まなかった」



津久場「君の言うように、私も老いたのかも知れないね」



津久場「代わりに君のような後輩が育ってくれたことは、心底うれしい。それが大勢の患者を救うことにつながる。君たちを育て、そして守ることで、大勢の患者を守れるんだ。梶原君のことは断腸の思いだよ。本当に済まないことをさせてしまった。だからこそもう、これ以上は絶対に……栂野君の未来まで、閉ざすわけにはいかないんだ」



光 崎「それは違う。彼女をうちに送ったのは、こちらの動向を探らせるためでしょう」


╳    ╳    ╳






医 師「担当医以外の入室は遠慮してもらえるかな」





╳    ╳    ╳



光 崎「彼女はいま苦しんでいます」



光 崎「未来ある優秀な若者が、理想の医師になろうとして悶え苦しんでいる」



光 崎「彼女の未来を絶とうとしているのは、あなたじゃないですか」



光 崎「津久場さん!」


2. 決断


 さて一方、個人採取したデータをもとに、紗雪ちゃんの本当の病名が、肝臓の血栓によるバッド・キアリ症候群であることを証明し、外科手術にもちこもうと奔走していた真琴は、頼りにしていた医学部長に裏切られてしまった。



 大学病院中に箝口令が敷かれ、彼女のデータは「なかったこと」にされてしまい、手詰まりとなる。なす術もなく法医学教室に戻ってくる真琴。



 古手川刑事たちも、警察から撤退を命じられて肩を落としている。



樫 山「光崎教授と津久場教授は昔、切磋琢磨して、腕を磨きあった仲なの」



樫 山「認めあって、尊敬しあって……あなたと津久場教授みたいにね」



真 琴「……光崎教授が……」



樫 山「でも光崎教授の思いは届かなかった」




╳    ╳    ╳




真 琴「光崎教授」



光 崎「……済まん……」






 「能力と判断の及ぶ限り、患者の利益となる治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない」ヒポクラテスの誓いを見上げる真琴の脳裏にインスピレーションが降りてくる。









そうだ! まだ打つ手はある。刑事の古手川の力を借りて、ひと芝居打てば、なんとか紗雪ちゃんを手術に持ち込める。このあたりから北川景子、アニキモード全開になる。



古手川「本気か?」



真 琴「協力してもらえますか?」



古手川「左遷どころか、クビになるぞ!」



真 琴「裕子を死なせて、紗雪ちゃんも救えなかったら」



真 琴「私はもう、医者じゃないから」


 意を決して、紗雪ちゃんの病室のあるフロアの、ナースステーションに突き進んでいく真琴。



 ここ、スローモーションね。



 どうも喩えが古くて申し訳ないが、耐えて耐えて、堪忍袋の緒が切れて殴り込みに行く任侠映画の高倉健とか、そういうニュアンスで受け止めて欲しい。



 セーラーマーズに変身しないのが不思議なくらいのカッコ良さだ。




津久場「紗雪ちゃんの病室へは……」



真 琴「分かっています」




真 琴「みなさん聞いてください。倉本紗雪さんの生命にかかわることです」





真 琴「ナースステーション前にお集まりください」



╳    ╳    ╳





紗雪の母「真琴先生、一体どういうこと?」



真 琴「倉本さん……」



真 琴「申し訳ございません!」



真 琴「紗雪さんの容態が急変したのは、私の責任です」



紗雪の母「え?」



真 琴「私が、内科の研修中に、セチルミンという抗菌薬を誤投与したからです」



紗雪の母「誤投与って……」



真 琴「後になって、セチルミンはカルシウム製剤と一緒に投与すると、患者の体内に血栓が生じる、という副作用があることを知りました」





真 琴「紗雪さんは腹膜炎が悪化したのではなく、血栓によって、急性のバッド・キアリ症候群を発症しています」



真 琴「一刻も早く外科手術をしないと、紗雪さんは助かりません!」



紗雪の母「助かりませんって……何なのそれ?」



真 琴「ここに血液検査と、カラードップラー検査の結果があります。両方とも、バッド・キアリ症候群の症状を示しています」



担当医「いや、でもおかしいでしょ、そんなの津久場先生がカルテを見れば、すぐに……」



真 琴「カルテは……」



真 琴「私が改竄しました」





古手川「みなさん、すみません。埼玉県警です」



古手川「実は内々に捜査していたんですが、本日、この方の自白を受けて調べたところ、倉本紗雪さんのカルテは、確かに改竄が行われている事実が判明しました」





紗雪の母「どうしてそんな……」



真 琴「申し訳ありません。どうしても言い出すことが……」







紗雪の母「この子どうなるの?どうなるの! 助けてよ」



真 琴「申し訳ありません」



紗雪の母「助けてよ!」



真 琴「申し訳ありません」




真 琴「一刻も早く」



真 琴「外科手術をお願いします」



真 琴「お願いします!」



真 琴「みなさんお願いします」



真 琴「お願いします。助けて下さい」





真 琴「助けて下さい、お願いします」



古手川「お願いします。お願いします」



真 琴「紗雪ちゃんを、お願い」



真 琴「お願いします」



津久場「もういい」






津久場「まだ間に合う」



津久場「緊急手術を行う。外科に連絡してくれ」
医 師「いや、でも……」



津久場「私だ。私がやった。セチルミンを誤投与したのは私なんだ」



津久場「患者はバッド・キアリ症候群を発症している。すぐに手術に回せ」





津久場「手術が終わるまで待っていただけますか?」



古手川「お待ちしています」



真 琴「津久場教授……」






津久場「君の元でならきっと……」



津久場「そう思って送り出したのは、本当だよ」






 さっきの回想シーンにあったように、かつて津久場は、大学病院が隠蔽しようとしたデータ不足による医療事故の内実を、医師としての正義感から遺族にぶちまけて、それで九州の病院に異動になった(関係ないけど、指原莉乃さんがスキャンダルでAKB48からHKT48に移籍したとき、漫才の博多華丸・大吉が「博多は左遷先じゃなかと」とか怒ってたよね)。で今回は、真琴が大学病院ぐるみの不正を暴こうとして、医学部長から九州の病院への出向を命じられたけど、それでもめげず、医師生命をかけて真相を家族に打ち明け、なんとか患者の生命を救おうとした。真琴の医師としての情熱は、若き日の津久場以上であった。
 それが土壇場で津久場教授を動かしたんだけど、もうひとつ、家族に対する真琴の謝罪が、本当は芝居ではないことも大事だと思う。第4話、ことの真相が明らかになってきたところで、彼女のこんなセリフがある。



真 琴「私はこの副作用を知りませんでした。梶原先生もきっと、何かでこの報告を読むまで知らなかったんですよね。いつも使っている薬だからと、何の疑問も持たずに裕子たちに投与した」


 実際にセチルミンを誤投与したのは梶原かも知れないが、真琴がその立場にいたら、そうしていたかも知れない、というか多分そうしていた。だからお母さんに謝ったのは、ただ紗雪ちゃんを救うための方便ということでもなくて、梶原がいない今、彼にかわって謝罪するのは自分しかいない、そういう思いが込められている。

3. 大団円


 まあともかく、原作では死んじゃった紗雪ちゃんが、このドラマでは一命を取り留めて、よかった、よかった。




紗 雪「ありがとう」
紗雪の母「本当にお世話になりました」



╳    ╳    ╳



坂 元「えー、今回の件は、当病院に勤務しておりました津久場医師の独断により、行われたものでございます」



坂 元「また当大学におきましては、常より司法解剖の重要性を提唱しておりまして……」



古手川「茶番だな」



樫 山「光崎教授の功績まで自分の手柄にしちゃって」



真 琴「でもそのお陰で教授も私も異動がなくなりました」



樫 山「でもこれからどうすんの? もともと津久場教授の指示でここに研修に来てたんでしょ?」



真 琴「光崎教授」



真 琴「もう少しここで研修させていただけませんか?」



光 崎「君は臨床の方が向いている」



真 琴「法医学は人を救えるって思えるようになったんです。亡くなった患者さんも、ご遺族も、それから、医者も」



光 崎「次の司法解剖は11時だったな」



古手川「はい。11時から二体行きます」






真 琴「光崎教授のもとで勉強したいんです」



光 崎「生きている人間は苦手なんだ。嘘をつくからな」



光 崎「だがまあ、この間の嘘は悪くなかった」






樫 山「法医学教室へ、ようこそ」




 樫山の背中を追って嬉しそうに飛び出していく真琴。
 と、お話はこれで終わりなんだが、ドラマの方はここからあと、エンドタイトルがけっこう楽しいんだ。
 第1話のレビューなどで書いたとおり、中山七里の原作は、前半けっこうユーモラスで(といっても基本が遺体解剖の話だからブラック・ユーモアだが)偏屈な解剖学教室の老教授と、その教授を心から信じて疑わない准教授、正義感と情熱にあふれる若い刑事、そしてしばしば猪突猛進に突っ走るヒロイン、といった個性豊かなメンバーがドタバタぶつかり合う、ある種キャラクター小説的な面も持ち合わせている。それが後半になると、親友の死とか、大学病院ぐるみの医療ミス隠蔽とか、テーマが重くなり、がぜんシリアスな雰囲気に入って行く。
 でも今回の映像化は、のっけからユーモアのかけらもないシリアス路線で来たので、そのままで終わるかなと思っていた。そしたら最後の最後、エンドタイトルで、原作前半の楽しげなテイストが味わえるようになっているのである。実に口当たりの良い幕引きだ。



手術を終えて疲れ切った感じで部屋に戻る光崎、そして樫山。



一拍おいて、大量の資料を抱えてあたふたする真琴も還ってくる。



夜。古手川刑事と岡村刑事が、なんか安い居酒屋のクーポン券付きチラシみたいなものを持参してやってきて、飲み会のお誘いである。解剖学の面々を慰労でもするつもりでしょうか。



嬉しそうに飛び出してくる真琴と、後に続く樫山。



なかなか出てこない光崎教授に古手川刑事が声を掛ける





でも研究室に引き返そうとする光崎。気になる資料があるのかとも思うが、どうも、わいわい飲み会に行くのが苦手なのではなかろうか。



しかし真琴が戻ってきて、教授は半強制的に引っ立てられてしまう。






こうして法医学教室の一日が終わる。

 

 いいね。やっぱりドラマの終わりはこういう感じでなくちゃ。
 というわけで『ヒポクラテスの誓い』レビューもお陰様で無事終了。地上波でコメディ路線の『家売るオンナ』を、作品的にも視聴率的にも成功させた直後、このWOWOWドラマ『ヒポクラテスの誓い』でシリアスなサスペンスものでもいい作品にあたって、しかも新年早々ご結婚と、2016年の北川景子はなかなかの当たり年だったと言えよう。こういう言い方をするとアレだが、来年もジャニーズ系の人との共演があまりありませんように。ま、ジャニーズ作品のレギュラーでも『謎解きはディナーのあとで』のような拾い物もあるので、一概に否定はしないけどな。



【作品データ】WOWOWプライム 日曜オリジナルドラマ 連続ドラマW『ヒポクラテスの誓い』第1話/2016年10月2日(日)22:00-23:00放送/製作著作:WOWOW/制作協力:国際放映<スタッフ>チーフプロデューサー:青木泰憲(WOWOW)/プロデューサー:河角直樹(国際放映)、堤口敬太(WOWOW)/中山七里「ヒポクラテスの誓い」(祥伝社文庫刊)/脚本:篠崎絵里子/撮影:金澤賢昌、山崎一央/監督:常廣丈太(テレビ朝日)/音楽:井筒昭雄【製作】制作担当:古谷雷太/制作主任:伊藤栄/制作進行:秋山広輔/スケジュール:最知由暁斗【演出】監督:内片輝/助監督:増間高志、嶋田明美、関根佑介、大津海/記録:江口由紀子【音楽・音響】フジモトヨシタカ、戸田有里子/MA(音声も):関川力央/MA助手:清野博伸/選曲:原田慎也/音響効果:安藤友章【撮影技術】技術プロデューサー:川田万里/映像:舘野晃一/照明:宮脇正樹/音声:関川力央(MAも)/撮影助手:佐藤勝成、遠藤大輔/照明助手:西島亮、坪井洋子、小泉賢治、小野寺優佳、岸本青佳/音声助手:高橋俊、伊藤祐美/編集:涌井真史/ライン編集:来栖和成/編集助手:黒川翔太郎/技術デスク:星宏美/技術編集デスク:三枝栄/CG:佐々木宏/スタジオ:TMC-1【美術】デザイン:荒川淳彦/美術プロデューサー:森川一雄/装飾:高橋俊秋、日野奈津子、陳内恒河/持道具:日内地和泉/衣裳:藤島和沙、渡辺文乃/ヘアメイク:山口圭子、田口舞/ヘアメイク(北川景子):對馬 晶子/大道具:手塚常光/大道具操作:中島和範/建具:岸久雄/造園:兵頭二郎/特殊造型:神田文裕/美術デスク:佐藤康【そのほか】編成:中薗慶子/宣伝:野村由佳里/警察監修:永澤敏敬/メイキング:目学/番宣予告:皆藤一/スチール:中岡美樹<キャスト>栂野真琴(浦和医大研修医): 北川景子/津久場公人(浦和医大内科教授):古谷一行/光崎藤次郎(法医学教室教授):柴田恭平/樫山輝(法医学教室准教授):濱田マリ/梶原英雄(浦和医大内科医):相島一之/坂元義彦(浦和医大医学部長):金田明夫/古手川和也(埼玉県捜査一課刑事):尾上松也/岡村壮介(埼玉県捜査一課刑事):橋爪遼