実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第568回】北川景子『黒い樹海』の巻(6)

1. 江口のりこリターンズ



 トヨペット・クラウン。昭和30年代にはよくタクシーに使われたために、自家用車でもタクシーに間違えられたという。ほんとうかな。
 『黒い樹海』の原作には、この錯覚を利用して、普通車をタクシーと思い込ませるトリックが使われていて、「トヨペット・クラウンを所有しているか」というのが容疑者絞り込みの条件のひとつになったりしていて面白い。もちろん舞台を現代に置き換えてしまえば、使えないネタである。



 近年の松本清張作品の映像化で、時代設定が原作どおりのものって、私は『ゼロの焦点』(2009年、東宝、犬童一心)くらいしか知らないのだけど、ほかにあるのかな。『三丁目の夕日』なんかと同様、あれもいろいろ、半世紀前の日本を再現するのに、セットとかCGとか苦労が多かったことと思う。それでも私の知人は「北陸本線のシーンで、汽車のはずなのに架線が見えた」とか文句を言っていた(笑)。そのくらい見逃してやれよ、なんていうと鉄道好きの方々に怒られるんだろうな。



 もちろん、昭和の作品を映画化しようと思っても、やっぱり時代は現代にしちゃうのが手っ取り早いんだろうけど(当然だね)、高度経済成長期前と後では価値観やモラルがかなり違うから、人物の考え方や行動がうまく馴染まない面もあって、なかなか難しい。まして松本清張とか坂口安吾のように、作品にくっきり「戦後」が刻印されている作家の場合、やはり原作どおりの時代設定が望ましい。でも低予算ではどうしようもないし、どうしたらいいんだろうね。



 数年前「ふうん、そういう手もあるのか」と思ったのが、脚本家荒井晴彦の弟子、井上淳一が監督として撮った『戦争と一人の女』だった(2013年、ドッグシュガームービーズ)。1945年に実際に起こった「小平義雄事件」と、坂口安吾が1946年に雑誌に発表して、GHQの検閲でオリジナルが発禁処分となった同名の原作を素材にした、一種の「戦争映画」で、往年のピンク映画とかATG映画(私のなかでこの二つはだいたい似たようなもん)のテイストに満ちていた。



 撮影期間は10日ほど、俳優のギャラも、永瀬正敏とか村上淳とか江本明とか出ているわりには、かつかつな状態だったという。特別協力として京都造形芸術大学の名前がクレジットされているが、これも映画学科の学生たちのボランティア協力みたいなもんだろうね。そんな低予算映画で、どうやって「戦中戦後の混乱期の昭和」の光景を再現するんだよ、と思ったら、ロケ地に京都の太秦映画村を使用したのだ。つまり、いま現実の街を改造したりCGで粉飾するよりは、時代劇のセットにちょちょっと手を加えた方が、安価でわりと簡単に空襲後の焼け跡や、戦後復興に向かう町並みといった、昭和の風景を作れるのだそうです。う〜んそうか。昭和はすでに江戸時代に近い。



 この『戦争と一人の女』のヒロインは江口のりこ。坂口安吾(永瀬正敏)の愛人の役で、明るくて頽廃的で良かった。
 江口のりこといえば、北川さんの記念すべき主演デビュー作『チェリーパイ』(2006年)で、主人公キヨハラ(北川景子)の友人、八千代を演じていたね。登場するなりキヨハラの首を絞めていた。身長170cmということなので、ちょっと迫力。




 それ以後は北川さんとの共演はなかったと思うが、今年は10年ぶりに、松本清張スペシャル『黒い樹海』で再会したのでありました。



 ということで、あとセラミュの話題も出そうと思っていたけど、流れでこのまま『黒い樹海』レビューの続きに入る。セラミュの話題は最後の方でね。

2. 最後の言葉


 さて、前回は吉井(向井理)が「あの日、同じバスに乗っていた人を見つけた」と祥子(北川景子)に伝えたところまでだった。



吉 井「お姉さんは即死ではなかったそうだ」



祥 子「え?」


 事故を起こしたバスに乗っていて、姉の信子の最後を看取ったらしい人を見つけたというのだ。



 さっそく二人は、仕出し屋(だと思う)で働いている最中のその乗客、村田頼子(宮地雅子)を訪問する。



祥 子「あの……姉は事故のあと少しのあいだ息があったって……」
 



頼 子「はい……あんなにひどい事故でしたから、もう後ろの方はぐしゃぐしゃで……」


╳    ╳    ╳





頼 子「生きてます、この女のひと生きてます」




頼 子「しっかり……しっかり!」


頼 子どうしよう、どうしよう」



╳    ╳    ╳



頼 子「でもそれきり動かなかったんです」



頼 子「ごめんなさいね……もうどうしてあげることもできなくて……ごめんなさい」



祥 子「あの……もうひとつだけ教えてもらえませんか?」



祥 子「あの、最後まで言葉は何も?」



頼 子「何か、何か言いたそうにはしていたみたいでした」






╳    ╳    ╳



吉 井「少し息があったんだね」



吉 井「お姉さん、きっとさっきのあの人のことを妹の君だと思って、最後の力で、あの人の手首をつかんだんだ。」



 結局のところ、姉がなぜそんなところで死んでいたか、誰が姉の死の発見を遅らせようとしたのか、そういった謎の解明につながる情報は得られなかった。ただ、息を引き取ったときの様子を知ることはできた。最後に姉は、誰に何を伝えたかったのだろうか?

3. セクスィー小児科医


 そうこうする合間にも、祥子のもとには、先日のパーティーの主役だった小児科医の西脇(沢村一樹)から、さかんにアタックの電話がかかってくる。評判どおりのナンパ医師である。



祥 子「はい、東都新聞文化部……花山です」



西 脇「どう、よかったらこれからランチでも」



祥 子「コラムの打合せでしたらご自宅か病院に伺わせていただきますが」



西 脇「うんうん、いやでもほら別の話とかもしたいじゃん。……もしもし?」



祥 子「そういうの困ります」


 という具合で、たんなるナンパにしか見えないが、このしつこさは異常ともいえる。はたして西脇はなぜこれほど祥子に執着するのか。

4. 江口のりこリターンズ(承前)


 一方、同僚の吉井(向井理)は新たな情報を掴んでくる。
 バス事故の被害者のなかで、姉の信子(小池栄子)だけが最後まで身許が判明しなかったのは、荷物の中から免許証やカードの入った財布などが見つからなかったせいである。信子はふだんそれらをまとめてハンドバッグに入れているはずなのだが、事故後、誰かがそれを現場から持ち去ってしまった。なぜそんなことをしたのか。考えられるのは、人目を忍ぶ旅の途中だった信子の不倫相手が、彼女の不意の事故死に動転して、できるだけ発覚を遅らすように、身許の分かるものを咄嗟に持ち出してしまった、ということだ。




 でもそうすると、なぜそのまま持ち去らず、バスを降りてすぐ、その辺に捨てちゃったのかが謎である。結局、ハンドバッグは近くのソバ屋「丸藤食堂」の店員が、事故現場の近くで拾ったと言って警察に届けて、それで信子の身許も、なんとかその日のうちに判明したのである。



 どうしてその人物は、信子のハンドバッグをとことん隠蔽しなかったのか。
 ハンドバッグを発見して警察に届けたソバ屋の店員に聞けば、何か分かるかも知れないのだが、あいにくその店員は店を辞めてしまって、行方知れずだっただった。ひょっとしてこれも事件と何か関係があるのか?と思っていたら、吉井が新情報をつかみ、電話をかけてきた。




祥 子「はい」



吉 井「これからさあ、山梨へ行かない?」



祥 子「山梨?」



吉 井「そう。ほら、お姉さんのハンドバッグを届けた丸藤の斎藤常子が山梨の実家に戻っているらしい」



ということで、元「丸藤食堂」の店員、斎藤常子(江口のりこ)の実家がある身延山まで駆けつける祥子と吉井。





常 子「私、前から決めてましたから。あの日に店やめようって」
吉 井「そうだったんですか」



常 子「だからいろいろめんどうだったんだけど、店に来たお客さんからハンドバッグを拾ったからって」





祥 子「お客さんから預かったんですか?」
常 子「事故現場の近くで拾ったからって……。お客さんでもなかったけどね。何も注文しないで帰っちゃったし」



吉 井「その人の名前とか連絡先、聞かなかったの?」
常 子「だから、いろいろ面倒くさかったし」



祥 子「どんな人でしたか?」




常 子「四十代くらいの男の人だったと思うけど、顔はマフラーでよく見えなかったし、服装とか、もう忘れちゃった」



常 子「お礼にって十万円もくれたし……」


吉 井「十万!」

 謎の解明につながる目撃者ということで期待していたが、基本的な部分は空振りだった。まあ付随的な情報は得られたけど、ともかく祥子と吉井は帰途につく。



吉 井「結局、彼女自身が事故現場で拾ったわけじゃなかったんだ」
祥 子「でも、何でその男の人、交番じゃなくてソバ屋に届けたんだろう。食事に来たわけでもなかったみたいだし」



吉 井「交番に届けると、届けた人の名前とか住所、連絡先を書かされる。つまり自分の素性を隠す必要があった」
祥 子「十万も払って……」


なんてことをおしゃべりしていたら、なぜか遠回りして常子が逆の道からやって来る。



常 子「ねえ……ねえっ!」



吉 井「あ、ああ何か思い出しました?」



常 子「そうじゃないんだけど、私あんまり長く実家にいたくないんですよね」
吉 井「え?」



常 子「このままだと父親にむりやりお見合い結婚とか、させられそうで」



吉 井「はあ……」



常 子「あなたたち、新聞社の人なんでしょ」



吉 井「ええ……まあ……」
常 子「何かソレ関係の仕事、バイトでもいいです、紹介してもらえません?」



吉 井「はい?」



常 子「私、本当は昔っからマスコミの関係の仕事、したかったんです」



吉 井「しかし急にそう言われても、申し訳ないけど……」
祥 子「いいですよ!」



吉 井「え?」
常 子「ホントに!」



祥 子「また改めて連絡もらえませんか?いくつかあたっておきますから」



常 子「了解です!ふふ、やったあ、言ってみるものね。じゃ」



吉 井「いいの?安請け合いしちゃって」



祥 子「彼女とつながりをもっておけば、そのうち、姉のハンドバッグを届けに来た男の人のこと、思い出してくれるかも」



吉 井「そりゃま、そうかもしれないけど……」


 で、東京へ戻った祥子はさっそく常子を受け入れる手はずを整え、しばらく自分のところに住ませてやることにする。死んでしまった姉の部屋にでも泊まらせればいいわけだが、このへん、ちょっと不自然ではある。
 原作では祥子のほうから東京へ来るよう勧めることになっている。ハンドバッグを届けたと思わしき人物に常子を引き合わせて、反応を見ようというのだ。ちょっと原作を読んでみるね。


 「常子さん」
 祥子は呼んだ。
 「あなた、その人を、実際に眼の前に見たら、今でも当てることが出来ますか?」
 常子は思案していたが
 「思い出すかもしれませんわ」
 と、わりにはっきりと云った。
 想い出してくれるのだったら、それが一番いい。しかし、判らなくとも効果はある。常子を連れて、これと見当をつけた人物の前に現われる方法もある。当人だったら、常子を見て、必ず動揺するに違いない。顔色を変えるかも分からないのだ。その反応を見よう。常子は知らなくても、対手の方が狼狽するに違いない。この場合、常子よりも、当人が自分で立証する結果になる。常子は、この実験のリトマス液である。
 「常子さん、東京へ出て頂けませんか」
 祥子は云った。一、二ヶ月くらいは自分のところで遊んでもらってもいい。働きたかったら、自分が責任を持って、世話をしようと云った。
 「東京なら行きたいわ」
 常子は眼を輝かして答えた。 
 「わたし、もう先から東京へ出たかったんです。東京で働きたいわ」
 「そう、それだったら、わたし、お世話しますわ」


 まあそういう諸々が頭の中にあって、祥子は常子が東京に出てくることを歓迎したのである。でもこの原作だと、ちょっと祥子が打算的に見えてしまう。なにしろ原作の常子は、はっきり「頭が弱い」と描かれていて、しかも華やかな世界に憧れているものだから、「東京へ出て頂けませんか?」なんて誘ったら、もう一も二もなく飛びつくよね。そしてその結果、すぐ後に出てくるけど、彼女は人生を棒に振ってしまうのだ。
 要するに原作だと、聡明な祥子が、自分の姉の死にまつわる謎を解明したい一念で、知恵遅れの田舎娘を都合よく操った感じになって、ちょっと現代そのままリメイクするには問題が多すぎる。そこで今回のドラマ版では、常子はそんなに頭の弱い娘ではなくなっているし、積極的な性格で、自分から祥子に東京行きを売り込んでいる。売りこみ方が軽薄でバカっぽいと言えなくもないが。
 ともあれ、それで喜々として上京した常子は、駅で迎えの車に乗る。







常 子「なんかすいません」



常 子「わざわざ迎えの車まで出してもらって」



 でも祥子はこんな車を手配していない。運転手は町田知枝を自殺にみせかけて殺した犯人である。ハンドバッグを届けた人物が誰かを知られたくないので、迎えの車を装って常子を乗せ、多摩川の河川敷まで連れて行って殺してしまった。





 江口のりこ、出番少なかったな。
 一方、そんなこととになっているとはつゆ知らず、祥子はカレーを作りながら、上京した常子の到着を待っているのであった。ちなみにカレーはわりと普通だ。



 あと部屋の時計が、プラネタリウムみたいに天井に時間を投影するプロジェクターになっている。




 エプロン姿でわりと普通のカレーを作っていて、ダイニングが意味もなく小洒落ていて、なんだかいかにも、ダンナの帰宅を待っている新婚ほやほやの若妻っぽい。これはスタッフが、結婚間もない北川さんを意識して作り込んだ画面だと私は思うのだが、勝手な思い込みかも知れない。



 それはともかく、こうして、笠井信子のバス事故死は、同僚の町田知枝の謎の首つり、そして遺留品の届け出人であった斎藤常子の怪死と、次々と屍体を増やしていくことになるのだが、それらの間に連続性を認めているのは、いまのところ祥子と吉井、そして関係者の中にいるはずの「犯人」なのである。それは誰か。
 といったあたりで今回はこれまで。

5. セラミュ2016(これまでの情報まとめ)



 前回コメント欄に心あるみなさまがいろいろと情報をお寄せくださったおかげで、今年のセラミュについてもだいぶ知ることができた。まず大和悠河のタキシード仮面は我々の予想どおり継続。当然ですね。ちびうさと外部戦士については、出るのか出ないのかも含めてよく分からない。そして注目の、総入れ替えが決定していた五戦士のキャスティング。こちらは予想に反して、今回はスターダスト・プロモーションから一人も出てこなかった。すでにミュージカル主演実績のある子から、元U-15アイドル、レースクイーン、研音ガールズ、モデル経験者など、若いのにみなさん幅広いキャリアをおもちですね。


セーラームーン/月野うさぎ
野本 ほたる(のもと ほたる)
砂岡事務所 1997年生まれ


セーラーマーキュリー/水野亜美
黒木 ひかり(くろき ひかり)
(旧名:夏風ひかり・松本あかり)
フリー 2000年生まれ


セーラーマーズ/火野レイ
小林 かれん(こばやし かれん)
アヴィラ 1997年生まれ


セーラージュピター/木野まこと
楓(かえで)
センスアップ 1995年生まれ
(業務提携:セントラルジャパン)


セーラーヴィーナス/愛野美奈子
長谷川 里桃(はせがわ りも)
研音 1998年生まれ


 詳しいことは、またコメント欄に情報が寄せられるのを待とう(自分で調べる気がないのか)。ちょっと気づいたことだけ書いておく。いくつかのネットの記事を見ると、今回のオーディションには武内直子先生が参加されたことが書かれていた。でも武内先生って、これまでだって参加しているんじゃないのか? なんとなく強調されているような気がしないでもない。
 つまり今回の五戦士の決定にあたっては、実写版の時と同様、こう、ちょっと簡単に決まらなかった経緯があったのではないかと思うのである。具体的に言うと、全体的な流れに武内先生がうんと言わなくて、最終的には例によって武内先生の意向が通ったと。そう考えると「事務所の力」的な印象がまったくない結果になっていることも納得いく。
 まあともかく、戦士のコスチュームができてからの制作発表を待ちたい。あとみなさん情報よろしく。なお公演日程は以下の通りだ。



【東京公演】
2016年10月15日(土)〜10月23日(日)
AiiA 2.5 Theater Tokyo


【福岡公演】
2016年10月29日(土)〜10月30日(日)
キャナルシティ劇場


【大阪公演】
2016年11月4日(金)〜11月6日(日)
サンケイホールブリーゼ


 10月〜11月である。名古屋に来て欲しいという気もするが、私の場合、セラミュの舞台を一人で見に行くのはちょっと恥ずかしいので、必ず娘につきあってもらって、娘のエスコート役のフリをして観ているから、いまは娘が住んでいる東京の方が都合が良いのです。
では。